……
唯「んぐ、ちょっと小さいかな」
梓「あ、そ、そうですね……」
唯「胸のあたりとか」
梓「あう……」
唯「うそうそじょーだんだよぉ」
唯「さてと、タイヤキおひとついかがですかー!?」
唯「おいしいおいしいタイヤキだよーー!」
唯「焼き立てだよー! うまいよー」
梓「……」
梓「……ふふっ」
唯「安いよー! うまいよー! あっつあつだよー!」
梓「……ありがとうございます」
梓「よーし! がんばってつくるぞー!」
夕方
唯「はー、疲れたー」
梓「なにもこんな時間まで手伝ってくれなくても……」
唯「いいよいいよー暇だし」
梓「あ、お給料……すぐに」
唯「のんのん。それはうけとれないね」
梓「でも……」
唯「なによりおいしいタイヤキごちそうしてくれたし!」
梓「そう……ですか」
唯「昼から結構お客さんきたよねー」
梓「そりゃあこんな美人な外人さんが売り子やってたら……モニョモニョ」
唯「えっ?」
梓「な、なんでもないですっ!!」
唯「なんか顔赤いよ? つかれた?」
梓「今日はありがとうございました」
唯「たのしかったー」
梓「……その、よければ……」
唯「?」
梓「夕飯とかご一緒にどうですか?」
唯「おお! いいの!?」
梓「はい……まぁ、そんなにいいものはご馳走できませんけど」
唯「じゃあ遠慮無く~~」
梓「二階にどうぞ」
唯「あ、このお店に住んでるんだ」
梓「はい一階部分を店舗にしてるだけです」
唯「へー、小さいけど一人で切り盛りしてるんだから立派なもんだよ」
梓「どもです……」
「へい、お楽しみのとこ悪いデスがー」 「ちっ、相変わらずきったない店デス」
「もうちょっと稼いでもらえないデスかねー」 「おらぁ! さっさと今月の分払うデス!!」
梓「!」
唯「な、何この人たち……」
「おいおいおー、こりゃとんだぺっぴんさんデス」
「ねぇちゃん。私たちとイイコトしないデス?」
「この外人さんのおかげで今日は随分潤ったんじゃないデスか?」
梓「あわわわわ……」
唯「や、やくざだー!!」
「やくざじゃねーデス。こう見えてもまっとうな取立て、ゴホン。請求にきただけデス」
梓「こ、今月はもうぎりぎりで……ごめんなさい。もう少しまってくれませんか……」
「そりゃーこまったデス」 「こっちにも生活があるデスー」
「なら肩代わりにそこのご立派なタイヤキ機でももらっていくデス」 「それがいいです」
梓「あっ! そ、それだけはっ!!!」
「それともそっちの美人さんをもらっていくデス?」
「それがイイデス!」
梓「あっ、いやこの人はお客さんで」
唯「……」
「それがいやならさっさと4000アズニャンドル雁首揃えて渡すデス!」
梓「えう……」
唯「4000アズニャンドルでいいんだね?」ゴソゴソ
唯「……ほれ」 ペシン
「おおっ!!」 「生金デス!!」 「うひょー!」 「外人は金持ちデス!!」
唯「……行きなよ」
唯「もうこないでね……」
唯「……」
梓「あっ、あの、お客さん……」
唯「唯、だよ」
梓「……どうして」
唯「……なんでだろ、なんか、放っておけなくて」
梓「あんな大金……私、どうしたら」
唯「気にしなくていいよ。私がやりたくてやったことだし」
梓「でもだめですよ! お金ってそんな簡単に」
唯「うん、知ってる」
梓「……」
唯「たくさんバイトして苦労して手に入れたお金だった……でもね、だからこそ好きなことに使っていいんだよ」
唯「恩を売ったつもりもないよ。どっちみちこの国で使い果たすつもりだったから」
梓「……」
唯「変なことばっかして無くなっちゃうくらいなら、多少かっこつけたほうがキモチいいかなって……えへへ」
梓「……私……感謝してもしきれませんし……」
唯「さてと、晩ご飯たべたいな」
梓「あ、はいっ! ただいま用意いたします!!」
唯「そんなにかしこまらなくていいよー」
梓「でもですねっ、昨日今日あったばかりの人にこんなご恩」
唯「じゃあさ、私をここで少しでいいから働かせて?」
梓「えっ」
唯「間違えて帰りの飛行機代も渡しちゃった。失敗失敗」
梓「……それくらいなら、家中のお金かきあつめたらすぐ」
唯「違うよー。私もこの国でお金稼ぎがしたいのー」
梓「……」
唯「いいでしょ?」
梓「わ、わかりました。しばらくの間お願いします」
唯「やった♪」
梓「……ありがとうございます」
唯「そんな顔しないでー、せっかく借金もなくなったんだから笑顔でいてよー」
二階
唯「ほえー、思ったよりせまい」
梓「すいません……散らかってて」
唯「いいのいいの」
梓「卵料理でいいですか?」
唯「うん!」
梓「はい、先にお茶どうぞ」コトン
唯「……あ゙」
梓「?」
唯「ホテル代精算しないとやばい! 残金で払えるかな……ちょ、ちょっと荷物とってくるー!!」
梓「えぇっ!? じゃあどこで寝泊りするんですか」
唯「こ、ここ! お願いします!!!」
梓「!?」
唯「ご飯は食べるから~~~まってて~~~!!」スタコラ
梓「……いっちゃった」ポカーン
梓「……クス」
梓「なんだか騒がしくなりそう」
梓「お父さん、お母さん」
梓「私、諦めずにこの店で頑張ります」
梓「だから心配しないで……見守っててください」
梓「気になる人もできました……」
梓「ちょっと変な人だけど、すごく優しくて、かっこ良くて」
梓「ま、まだ全部しってるわけじゃないですけど」
梓「……」
梓「明日もがんばろ」
梓「と、その前にお風呂も洗わないと……あっ、寝るトコどうしよう……」
梓「……ううーいろいろ考えることがありそう」
……
唯「ちょっと雨ぱらぱらきた……」
唯「……こっちでもそりゃ雨くらい降るよね」
唯「……」
唯「……いいのかな」
唯「私、こんなんでいいのかな」
唯「……こんなに身も心も汚れた私が借金の肩代わりだなんて、おこがましいよね」
唯「あーあ……この雨が、全部洗い流してくれたらいいのに」
唯「過ちも痛みも欲望も全部全部……」
唯「……なんてね」
唯「……この国でなら、新しい私がみつかるのかな」
唯「どんな風にでも生きていけるのかな……まだわかんないや」
唯「ま、なるようになれ。だね」
唯「明日からがんばるぞー!」
……
唯「ただいまー」
梓「おかえりなさい」
唯「お、なんか我が家風」
梓「あ、いえ……そういうつもりじゃ」
唯「ということでホテル引き払ってきたから今日からお世話になります」
梓「はい、こちらこそ」
唯「ほんとにこんな得体のしれない外人泊めていいの?」
梓「大丈夫です」
唯「うむ」
梓「雨ふってるんですね。お風呂先沸かしてますのでどうぞ」
唯「やった♪」
梓「なにかわからないことがあったら聞いてください」
唯「うん!」
唯「え、なにこれぬるい……お風呂はいった気しないよ……」
唯「はっ? 洗濯機ないの?」
唯「ほええ!? ご飯手でたべるの!!?」
唯「いまから明日の仕込み~~!?」
唯「ふええ、テレビもパソコンもないんだ……暇ー」
唯「わあああっ、ム、虫ー!! でっかい虫がーー!! え゙、手でいくの!!?」
唯「一緒のベッドで寝るしかないかー……むふふ、おっと平静平静」
深夜
唯「ちょっと文化が違うだけでも大変だねー」
梓「文化っていうかそもそも生活レベルがですね」
唯「たしかに……ちょっとあずにゃんのおうちは貧乏だもんね」
梓「……わるかったですね、どうせ流行らない汚いタイヤキ屋です」プイッ
唯「んもー、可愛いなぁ」ギュ
梓「にゃっ」
唯「くんくん、いい匂いー」
梓「……あったかいですね」
唯「だねー」
梓「狭いベッドでごめんなさい」
唯「いいよー私何か抱かないと眠れないからちょうどいいー」
梓「……私は抱き枕じゃありません」
唯「あず枕~~」ギュウウ
梓「……もう……だいたんな人」
唯「毎晩だっこして寝ていいの?」
梓「……ベッド買いましょうか」
唯「置くところないのに?」
梓「む……もっと稼いだら拡張工事します」
唯「じゃあがんばらないとね?」
梓「もしかしたら、最初はあまりお給料払えないかもしれませんが」
唯「いいよー」
梓「すいません……」
唯「ゆっくり頑張ろ?」
梓「国に戻らなくて大丈夫なんですか?」
唯「まぁねー、大丈夫なような大丈夫じゃないような」
梓「はぁ……日本の学生ってそういうもんなんですか」
唯「だらだらしてるよー」
梓「そうなんですか。私、日本には少し縁がありまして」
唯「へーそうなんだ」
梓「おやすみなさい、唯」
唯「あ、やっと名前呼んでくれた」
梓「さんとか何か、付けたほうがいいですか?」
唯「ううんいいよ気にしなくて」
梓「はい……」
唯「おやすみ、あずにゃん♪」
最終更新:2011年05月27日 22:33