さわ子「今日の掃除当番は窓際の列ね」
さわ子「それじゃあ解散」
「さようならー」
律「よーし部活行こうぜー!」
さわ子「そうだ、田井中さんと琴吹さんはちょっと職員室に来てもらえるかしら」
律「ぐえー」
紬「そういうわけだから澪ちゃん先に行ってて」
澪「ああ」
唯「私も掃除が終わったらすぐ行くよ~」
唯「よーし掃除がんばるぞー。よいしょっと」
和「唯、机から教科書落ちてるわよ」
唯「うわっと!」
ちか「あはは」
唯「あぶないあぶない」
もう落としちゃったけど。
それより早く掃除終わらせて部室に行こっと。
『きゃあぁあああぁああ~~!!』
唯「なっなに!?」
和「1組から聞こえた気がするけど」
『助けて美空ぁ!』
『ひっ! 恵にいちんごが生えてる!!』
唯「!?」
俊美「いちんご……!」
ちか「私ちょっと見てくる!」
唯「あっ」
多恵「行っちゃった」
美冬「ついでにゴミ捨て行ってきて欲しかったな」
ますみ「俊美、私達も見に――」
『きゃあああああああ!』
『いやあああああぁぁぁ!!』
『やめてえええええぇ!!!』
唯「うぉ!?」
多恵「ね、ねえ……」
ますみ「なんだかヤバそう」
1組だけが騒がしいと思ったけどそうじゃないみたい。
いつもの放課後にあるわくわくするような活気じゃなくて、なんだか学校中がどよめいてる。
教室に残された私たちが不安がっていると1組を見に行ったちかちゃんが帰ってきた。
ちか「……」
美冬「ちか、何があったの?」
ちか「……ヤバイ」
美冬「え?」
ちか「わ、わた……私にも生えちゃった」
美冬「何言って……え?」
ちかちゃんは腰に巻いていた紺色のカーディガンでスカートの前面を隠していた。
美冬「はいはい冗談言ってないでゴミ捨ててきて」
ちか「冗談じゃ、なくてね?」
そう言ってちかちゃんがカーディガンを取る。
スカートの前面がなんだか……テント張ってるみたいな?
ちか「ほら」
唯「あっ!」
続いてちかちゃんがスカートをたくし上げるとそこには――
唯「い、いちんごが生えてる……」
美冬「うそ!?」
ちか「はぁ……はぁ」
ちかちゃんが息を荒げながら私たちの方へ歩み寄ってきた。
ますみ「え……野島さんパンツ履いてない」
ちか「1組の人に取られちゃった」
俊美「え……え?」
ちかちゃんをよく見るとパンツはいてないし制服も乱れてて、何よりいちんごが生えてて様子がおかしい。
ていうか
唯「うあ……いちんごってあんなになってるんだ……」
ちか「み、美冬~」
美冬「ちょっ、何するのちか!?」
唯「おおっ!?」
ちかちゃんが美冬さんに抱きつき腰をカクカクし始める。
美冬「や、やめっ……ひゃああ!?」
多恵「うええっ!?」
俊美「うわー!」
ますみ「ナニコレ……」
いつの間にかちかちゃんが美冬さんを組み伏せて服を脱がせてそれから……なんかすごいことしてる。
ちか「はあはあ! も、もう入れてもいいよね!」
美冬「は、はあっ!? あんた何言ってるの!?」
ちか「あああああもうがまんできないよおおおお!!」
そう言うとちかちゃんが美冬さんの別腹にいちんごを挿入しちゃった……!
美冬「いぎぃ!? あ、あ゛っ!」
唯「う、うわー……!」
俊美「ごくり」
ますみ「……」
私たちはちかちゃんが美冬さんをペロリしているところを唖然としながら見ていた。
ちか「あっ……っく、ああああ美冬っわたしもう出る! なにか出ちゃうっ!」
美冬「あっんあっや、やだっ、やめてっ! んひぃ!」
ちか「……っあ゛!!!!」
ちかちゃんが腰を打ち付けるのをやめたかと思ったらビクッビクッと震えだした。
美冬さんはぐったりしちゃってる。
ちか「あ……ひは……はあはあ」
ゆっくりと引き抜かれたいちんごは濡れてテカテカ。
でもさっきより小さくなったかも。
あとへにゃってなってる。
俊美「だ、大丈夫?」
美冬「はあはあ……あ?」
美冬さんがゆっくりと起き上がる。
なんだか様子がおかしい。
そりゃあそうだよね、いきなりこんな……ショックだよね。
美冬「あ……あ……」
俊美「……?」
それからゆっくりとこちらに体を向ける。
俊美「えっ!?」
多恵「嘘……」
私の考えははずれだったみたい。
美冬さんのスカートがテントを張っていた。
ますみ「……マジで?」
美冬「マジみたい……はぁはぁ」
美冬さんの息が荒い。
さっきのちかちゃんみたいだ。
美冬「はあぁははぁあはぁ」
美冬さんがゆっくりと俊美さんに近寄っていく。
やっぱり様子がおかしい。
喜んでいるような恥ずかしがっているような不思議な表情を浮かべてる。
俊美「ちょっ……大丈夫なの?」
美冬「だめ……我慢できない……ごめ、ごめんっ!」
俊美「きゃあ!?」
突然美冬さんが俊美ちゃんに襲い掛かった。
それでやることはさっきのちかちゃんと一緒。
いちんごを入れ……うわぁー……。
ちか「あ、私もまた……」
ちかちゃんとちかちゃんについているいちんごがムクムクと起き上がる。
多恵「ひっ」
ますみ「なんで生えたの!? さっきまでなかったのに!」
和「これって……うつるのかしら」
俊美「そうみたいだよ」
美冬さんに襲われていた俊美ちゃんがいつの間にかますみちゃんの傍に。
ますみ「と、俊美?」
俊美「ますみぃ……はぁはぁ」
ますみ「いやぁぁぁああ!」
何がどうなってるの……?
いつの間にかクラスにはいちんごの生えた女の子が3人。
残った4人の内襲われているのが2人。
これってまずいんじゃ……。
和「唯、出るわよ」
唯「え?」
返答を待たずに和ちゃんは私の手を引いて教室を飛び出した。
そっか、逃げるんだ。
唯「でもっみんなが!」
和「2対5じゃどうにもできないわよ」
唯「2対5?」
和「松本さん(美冬)と柴矢さん(俊美)を見てたでしょ。アレが生えるの」
唯「う、うん」
和「多分もう矢田さん(ますみ)と菊池さん(多恵)にも生えてると思う」
唯「ええっ!?」
和「それにいつもの彼女たちなら絶対あんな風に人を襲ったりしないわ」
唯「たしかに」
和「あのマラ……いえ、いちんごは人にうつるのよ。恐らくいちんごを入れられるか中に――」
唯「あっ待って!」
階段に差し掛かり迷うことなく1階へ降りようとする和ちゃんを引き留めた。
廊下に出て分かったけど悲鳴のような声がそこかしこで聞こえる。
きっとさっき教室で見たような事があちこちで起こってるんだ。
和「唯?」
唯「私部室に行く! それで澪ちゃんたちにも知らせないと!」
和「なら私が――」
唯「和ちゃん職員室に行くつもりだったんでしょ? 先に行ってて。私たちは後から――」
和「いえ、来なくていいわ」
唯「えー!?」
和「よく考えたら部室で騒ぎが収まるのを待ってた方がいいかもしれないし」
唯「あ、そっか。じゃあそうするねっ」
和「じゃあ私職員室行って先生にこの事を伝えてくるから。あんた気をつけなさいよ」
唯「和ちゃんもね!」
和ちゃんは「まったくこの子は……」みたいな顔で鼻からため息をついて階段を降りて行った。
よーし私も早く部室に行こっと。
それにしてもみんな信じてくれるかなぁ。
もし信じてくれなくても部室の外に出なきゃ大丈夫だよね。
こうして私と和ちゃんは道を違った。
桜校は3階建ての校舎で私のいる3年2組の教室は2階にある。
3年2組の隣には中央階段があってそこから1階に降りれば玄関、3階へ登れば音楽室と私たち軽音部の部室。
部室に入って鍵をかけておけば襲われないよね。
和ちゃんが職員室に行ってくれてるから先生たちが何とかしてくれるはず。
階段を一段飛ばしで駆け上がり勢いよく部室の扉を押し開く。
唯「みんなっ!」
……。
唯「あれ、誰もいないや」
おっかしいなーみんな先に来てるはずなのに。
……まさか。
じっとりとした汗が出てくる。
嫌な予感が脳裏を過った時、部室奥にある物置の扉がゆっくりと軋みながら開いた。
唯「だっ……だれ?」
扉からちょこんと頭を出してこちらを窺っている人物が一人。
澪「唯、か?」
唯「澪ちゃぁん! はぁ~よかった~」
恐怖は一瞬で消し飛んだ、が。
どこからか悲鳴が聞こえてきて私は慌てて部室の扉を閉めて鍵をかけた。
唯「び、びっくりしたー」
澪「今の悲鳴……」
唯「そうだ大変だよ澪ちゃん! 実は――」
私は教室で起こった事を伝える。
澪ちゃんは黙って聞いていた。
だけどうんともすんとも言ってくれない。
やっぱり信じてくれないのかな。
ていうか説明するの結構恥ずかしいんですけど。
唯「えっと、澪ちゃん?」
澪「……」
唯「だからね、本当にみんなに、えっとぉ、い、いちんごが生えちゃって……」
澪「わかってる、信じてるよ」
唯「ほんと?」
澪「ああ」
唯「あと和ちゃんが言ってたんだけどね、いちんごをあ……あそこに入れられるとその人にいちんごがうつっちゃうんだって」
澪「……それは少し違うと思う。いちんごを入れられて尚且つ中に出されるとうつるんだと思う」
澪「あといちんごが生えた人は……脳をいちんごに支配されるっていうか、とにかく他の女の子を襲いたくなっちゃうんだ」
唯「そうなの?」
澪「多分だけどな。女の子にだけ反応するアンテナがあるんだろう」
うーん……教室での出来事を思い返してみよう。
確かにいちんごを入れられてすぐに生えてはいなかった気がする。
ちかちゃんが美冬さんを襲った時もちかちゃんが最後にビクビクッってなっていちんごを引き抜いた後だった。
その後美冬さんが急に襲いだして……。
ってことは澪ちゃんの予想で合ってるっぽい!
唯「そっかーやっぱり澪ちゃんはすごいね!」
澪「そんなんじゃないよ。それに和も分かってたと思う」
唯「そういえば私が和ちゃんの話を途中で切っちゃったんだった。でへへ」
澪「まったく……」
唯「とにかくいちんごを入れさせなければいいんだね」
澪「だな。それでなくてもそう易々とやられたくないだろうけど」
唯「あはは、だよねえ」
澪「……だよな。それに相手も女の子だろ。普通は……嫌だよ、な?」
唯「え? どうなんだろうねー」
澪「……」
唯「時に澪ちゃん」
澪「ん?」
唯「澪ちゃんてこういう話したら恥ずかしがると思ってたけどあんまり恥ずかしくなさそうだね」
澪「え、ああ、そういえばそうだな。それにさっきは怖かったのに今はそんなでもないみたい」
唯「おお、澪ちゃんが頼もしく見えるよ!」
澪「はは」
唯「それとさ」
唯「りっちゃんたちは?」
澪「まだ来てないんだ」
唯「大丈夫かな……」
部室の外からは相変わらず悲鳴や嬌声が響いている。
澪「だめかもしれない」
唯「そんなぁ! りっちゃんたちにもい、いちんごが生えちゃったのかな」
澪「……」
唯「どうしよう澪ちゃん」
澪「……」
澪ちゃんは質問に答えず俯いている。
私は澪ちゃんの傍に行こうとしたけど、澪ちゃんの一言で足が止まった。
澪「私が探してくる」
最終更新:2011年06月01日 04:11