文芸部の部室の傍にある階段を下りて1階へ辿り着いた。
このまま昇降口から学校を出よ……お?

澪「……しまった」

生徒用の昇降口にはいちんごをぶら下げた生徒が待ち構えていた。
そういえばこの騒ぎが起こったのって掃除中だった。部活のない生徒は丁度帰るところ……それでこの人数なのか。
既に何人もの生徒がこちらに気付いている。
強行突破は無理そうだ。

澪「講堂へ逃げるか……? いや、講堂で挟み撃ちされたら立て篭もる場所がない……正面玄関に行くぞ!」

逆方向に駈け出した澪ちゃんが早々に足を止める。
正面玄関への廊下にはさっき文芸部の部室へ入ってきた生徒が。
それに続いて赤緑青、赤青緑、緑緑赤緑。
一階だけあって緑が多い。
みんな挙動がおかしくて、スカートを見るとみんな生えてる。
ふつふつと嫌な汗が出てきてYシャツがへばり付く。

唯「ど、どうしよ澪ちゃん……」

澪「……ごめん」

あ……私ここでやられちゃうのかな……うぅ……怖いよ、嫌だよ、死にたくないよ!
膝が笑う。動悸が激しい。ヤバイ。どうしよう。
澪ちゃん、澪ちゃん、みおちゃん……そうだ澪ちゃん!
澪ちゃんはいちんごが生えてるからここにいるみんなの目的はほぼ私のはず。
私を優先して狙ってる訳だから上手くいけば澪ちゃんだけでも逃がせ――

和「ゆいぃーーーーーー!!!!」

唯「!」

いちんご生徒のさらに奥の廊下にみんなが目を向ける。
生徒たちの隙間から見覚えのあるシルエットが確認できた。
職員室の前辺りで忙しなく動いてる。身振り手振りで何かを伝えようとしているのかな?
とにかく和ちゃん無事だったんだ!

唯「のど――おぅあ!?」

腕を引っ張られて倒れ込みそうになった。
笑ってる膝でなんとか持ちこたえる。
一瞬の出来事に頭がついてこない。

澪「和のおかげで助かった」

いつの間にか更衣室に入っていた。
そっか、いちんご生徒が和ちゃんに気を取られてる隙に澪ちゃんが私の手を引いてくれたんだ。
階段と昇降口の間にある小さな更衣室。
ここには鍵もついてる。
扉がガタガタいってるけど気にしない。気にしないフリ。
……あっ!

唯「和ちゃん大丈夫かな!?」


澪「和の周りに生徒はいなかったし私たちを囲んでた生徒があっちにいっても職員室に立て籠もれる……かな」

唯「そっか。また和ちゃんに助けられちゃった」

澪「でもこの後どうするかな」

唯「このあと?」

澪「これだけいちんごの生えた生徒がいたら先生たちだけじゃ手に追えないだろうな」

澪「それにいちんごは人にうつる。こうしている間にもどんどん増えてるはずだ」

なるほど。
私は今も更衣室のドアを叩いてる子たちが怖くてそこまで考えられなかったよ。
澪ちゃん本当に怖くないんだね……。

澪「いつまでもここにいるのはマズイかもしれない」

唯「そ、そっか……」

それならどうするかを考え始めた澪ちゃんが黙る。
私も何か考えなきゃ。
うーん……。

澪「唯」

何か……何かを……。

澪「唯!」

唯「はいっ!?」

澪「携帯鳴ってないか?」

唯「え?」

携帯を取り出すとブルブル震えている。
全然気が付かなかった。

唯「和ちゃんからだ! もしもし?」

和『唯、大丈夫?』

唯「うん! 和ちゃんも?」

和『ええ、職員室で立て篭もってるわ』

唯「そっかぁ、よかった~」

和『あんまり良くはないわね。唯も見たでしょ、あの生徒の数』

いちんごの生えた生徒の事だよね。

唯「うん……あっ!」

和『?』

唯「りっちゃんとムギちゃんそっちにいない?」

和『……こっちにはいないわ』

唯「そ、っか」

和『大丈夫、きっとどこかに隠れてるのよ』

唯「そうだよね」

和『ええ。ところで唯』

唯「何?」

和『職員室にいる先生だけじゃどうにもならないみたいだから私は外に助けを呼びに行くわ』

唯「え、大丈夫なの?」

和『廊下側はあの生徒で溢れてるけど職員室には校庭側にも出入り口があるしね。そこから出て敷地の端にある通用口から校外に出る予定なの。出来れば唯達と合流したいんだけど……』

通話中も扉をがったごと言わせて邪魔をされる。

唯「私たちは大丈夫だよ! こっちはこっちで何とかしてみる。だから和ちゃんも気を付けて」

和『そう、分かったわ。……ごめん』

唯「大丈夫だよー。私たちも出来たら学校を抜け出して助けを呼んでみる」

和『無理しちゃだめよ?』

唯「まかせてよ!」

和『……大丈夫かしら』

そんなやり取りを繰り返して電話を切った。
そっか、和ちゃんは外に助けを呼びに行くんだ。
2回も助けられたのにこれ以上和ちゃんばっかりに助けてもらうわけにはいかないよね。
……よし、決めた。

唯「澪ちゃん、あのね……私外に助けを呼びに行こうと思うの」

澪「そっか。携帯から和の声が漏れてたから大体分かったよ」

唯「どうかな?」

澪「やってみるか」

唯「うんっ!」

澪「しかしだ……はぁ。更衣室の出入り口は一つ。こっちの廊下にはいちんごの生えた生徒が沢山いる、と」

唯「そうなんだよねぇ」

澪「やっぱり唯のにおいが強すぎるのかもな」

唯「ええー……」

澪「パンツもないし余計に」

唯「う゛っ。でもタイツは履いてるし!」

澪「はぁ……こう密室で唯のにおいを嗅いでるとヤバイな」

唯「え」

澪「そうだ、においをごまかしてみるか。どうせ暫くはここから出られないんだし……はぁはぁ」

唯「澪ちゃん……?」

澪「そうだな、うん。そうすればきっとうまくいく」

唯「澪ちゃーん?」

澪「ゆい、そろそろあれなんだ。この作戦でいこう……はあはあ」

唯「も、もうきたの?」

澪「ああ……唯の手を握ったからかな?」

聞くまでもないけど聞いてみた。
だっていきなりそんな……ねえ?
私だって恥ずかしいし……ねえ?

唯「えっと、それで私は……」

澪「はあはあ……ゆい、おねがい」

唯「う……」

くあ……恥ずかしい。
澪ちゃんは恥ずかしいとかそれどころじゃないみたいだけど私はすっごく顔が熱いよ!
澪ちゃんが冷静(?)だから私ばっかりあせってる感じがする。
こうするしかないし私もそのつもりだけど……うああ。

唯「…………わかった」

でも自分から動くのは恥ずかしいし……。

澪「それじゃあ……唯、膝ついて」

唯「え、うん」

またさっきみたいにすればいいんだよね。
うあードキドキする。

澪「で、だ。私のいちんごは段々快楽に貪欲になってきてる。多分もう手だけじゃ満足できない」

ん……?

澪「だから唯……いちんご食べてくれないか?」

なんですとぉー!?

唯「ええと、えと、え?」

澪「それに唯のにおいをごまかすための方法でもあるんだ」

あ、もうやる気だね澪ちゃん。
でもまあにおいをごまかす? ためでもあるんだよね?
そこまでの考えあっての事なんだし私も覚悟を決めて――

澪「はあはあはあはあ……ゆいの……おくち……!」


唯「わ、わかった。やる!」

これがにおい消しとどう関係あるのかわからないけどもうやけくそだ。
私は澪ちゃんの前にひざまずいた。
澪ちゃんが震える手でスパッツを下ろしていちんごを取り出す。
澪ちゃんの胸の高鳴りが聞こえてきそうだよ。
そのくらいいちんごがワクワクしている。

唯「じゃ、じゃあ……」

目の前に鎮座するいちんごに口を近づける。
さっき文芸部の部室で嗅いだ液体のにおいと、いちんごそのもののにおいが混じりあう。
ん……あんまりいいにおいじゃないかな。
でも澪ちゃんのだし我慢できないほどのにおいじゃない。
では、いきます。
舌先をとがらせていちんごの先端を撫でた。
一回、二回、三回。
うあー舐めちゃってる舐めちゃってるよ。
ほんの僅かなしょっぱさと生暖かい感触は生まれて初めて経験する味だった。
これを繰り返していればいいんだよね?
いいのかな?

澪「……唯が舐めてるっていう状況ですごく興奮するけどそんなに気持ちよくないかも」

唯「れろ……えぇ……そうなの? じゃあどうすれば……っ」

澪ちゃんと目があった。

唯「あ、あんまりこっち見ないで……」

澪「え、でも見たいよ」

唯「うう……」

こんな所見られたくないってば!
でも澪ちゃんは目を離さない。
ううううぅ……。

澪「ふふ、それでさ、口に含んでみてくれないか?」

口に……含む……。
そっか、そうだよね。

唯「うん……」

澪ちゃんのだけどそれでも抵抗があった。
だからいちんごを舐めた舌が口内に触れないように舌を浮かせている。
いちんごと絡み合った涎を飲み込まないようにしている。
けれど口に含んだらそんなことしてられない。
私が言い出したことだし……いけるできるやれる……よしっ!
私はいちんごと接触してから嚥下出来ずに溜め込んでいた涎を飲み込んだ。

唯「ん……くちゅ」

うお、異物感あるなあ。
澪ちゃんの大きいよ。……多分だけど。
ええと、このまま含んでるだけじゃダメだろうし手でした時のような刺激を与えてみよう。
さっきは手で扱いてたから今度は口を前後に。
歯を当てたら痛そうだから気を付けないと。
主に舌と唇を使っていちんごに刺激を与えると口の中に独特のしょっぱさが広がってきた。
涎が溜まる。

澪「あ……いいかも?」

そこまで気持ちいいわけじゃないのかな。
……あ。
もおおこっち見ないでって言ったのに!
口とか首が変な風に動いてる分さっきよりもさらにハズい。
もう上は向かないことにしよう。

それより早くコレを終わらせたい。
顔やら背中から汗が……暑い暑いあつい。
やだなぁ顔赤くなっちゃってるかな私。
……集中しよう。
確か吸うといい感じっていう話を聞いたような。
とりあえずやってみよう。

唯「んっ……ずぢゅー……ぢゅ」

うわあっ、音が、音がぁー!
これは却下で――

澪「あ、それいい。もっと……」

……。
もう澪ちゃんにちょっかい出したりしないから許して下さい。

唯「じゅ、ちゅ、んふ……ずぢゅー」

澪「おお……」

澪「あ、あといちんごの首とか裏とかを舐めてみて」

前後運動をいったん止めて今度は舌でいちんごをなぞる。
いちんごの頭と胴体の間にあるミゾをぐるりと一周……が中々出来ない。
口からいちんごを出してしまうと上下左右に動いてしまって上手く舐められない。

唯「あ……んん」

澪「……唯、手を使っちゃダメっていうわけじゃないぞ?」

あ。
言われてみれば。
……恥はかき捨てていちんごを手で掴んだ。
いちんごの首はなんこつみたいで、裏の筋付近はもも肉みたいなさわり心地。

澪「っあ!」

半音上がった嬌声。
こんな感じでいいんだね。

澪「さ、先の方も……はぁはぁ」

裏筋からいちんごの口に向かって舌を這わす。
あれ、今までとはまた違った味がする。
しょっぱいのは同じなんだけどこれもまた独特で、しかもヌルヌルして舐めても舐めても味が無くならない。
口に含んだいちんごの形を想像してみる。
今舐めてる場所がいちんごの先端かな。
澪ちゃんはいちんごの首から上をされるのが気持ちいいみたいだ。

先端の鈴口をペロペロされるのも好きなんだね。
ちょっとずつ染み出してくる液体でわかる。
それならここを吸ってみるのはどうだろう。
アヒル口をいちんごの頭に押し付けて力の限り吸ってみた。

澪「あっ! あ、んぅぅぅ……!」

澪ちゃんの腰が砕けた。
これはいける。
口からいちんごが離れないように根本を強く掴んで続行。
こんなに口で吸う事って初めて……じゃないかも。
何か前に……そうだシェイクだ。
マックスバーガーの解凍しきれてないシェイクを吸ってるような感じかな。
こっちは逆に熱いけど。

澪「ゆいっ! このままっ……このままでっ!」

勿論そのつもりだ。
頬が痛くなってきたけど吸い入れるのはやめない。
澪ちゃんの身体が強張るのが分かる。
文芸部の部室でした時と一緒だ。
……え。
このままで大丈夫なんだよね?

澪「あっもう……い、ああっ――――!」

唯「んぅ!?」

勢いよく熱いシェイクが……っていきなりはひどいよ澪ちゃん!

唯「っぷ!」

流石にこれは――

唯「え、まって、んぷ! んぐっ……むーーーー!?」

澪「ふ……ああっ!! ……っ!! っはぁ、あっ、うぁ……!」

頭をガッチリ掴まれていちんごを口の中にねじ込まれた。
口内を暴れ回るいちんごに幾度も液体を吐き出される。
あまりに暴れるからさっきまで大丈夫だったのに嘔吐感が。
それに耐えるために反射的に涎を飲み込もうとしてしまい、澪ちゃんから吐き出された液体を喉に通してしまった。
必死に抵抗するもいちんごは私の口から抜けない。
喉を突かれて繰り返し訪れる嘔吐感を必死で耐えることしかできなかった。
口内がヌルヌルといちんごでいっぱいいっぱいでどうしようもない。

澪「……ふはぁ」

唯「ごほっ! んぐ! っぺ! げほっげほっ! ぺっ、ぺっ!」

やっと、やっと解放された。
とりあえず口の中のヌルヌルを吐き出したい。
今も残っている嘔吐感の所為で胃の中まで出してしまいそうになるから慎重に。
涎を吐いたり飲んだりして口内と喉に付着した液体をなくそうとしたけど、へばり付くようなザラザラとしたヌルヌルが取れない。
澪ちゃんの馬鹿。

澪「はぁ、はぁ……ごめん」

あんまり感情がこもってない気がする。
いつの間にか優しかった澪ちゃんがいなくなってしまった。

唯「ひどいよみおちゃん……ぺっ」

澪「ごめんな、でもこれも作戦の内だ」

唯「……はい?」

澪「簡単に言うと唯のにおいを私のいちんごのにおいで隠す」

澪「体内と体外の両方から」

……。
……。
……ひどいよ澪ちゃん。


5
最終更新:2011年06月01日 04:18