はじまりは、いつもの通学路からだった。
梓(夜更かししてネット通販やってたら寝坊しちゃった!……早くしないと遅刻しちゃう!)タッタッタッ
ガキ1「やーい、のろまー!ここまでおいでー!」
唯「あ~ん、ギー太返して~」
梓「ん?あの声は……」
ガキ2「へっ、逃がすかよ!」ガシッ
ガキ3「これでも食らえ!このこのっ!」ボコスカ ボコスカ
唯「あいたたた!やめてくだせ~、お願いします~」
梓(唯先輩……子供相手に一方的……)
梓(でも、ここは助けないと!)
梓「こらー!なにやってるのアンタたち!」
唯「あっ、あずにゃん!」
梓「この人のギター、返してあげなさい!」
ガキ1「ケッ、うるせえな」
ガキ2「ちっこいヤツは黙ってろ」
ガキ3「貧乳に用はねーよ」
梓「なななななんですってー!!」ドカーン
梓「アンタたちは全国1億のあずにゃんファンを敵に回したァー!!」ウガー
ガキ共「うわああ!逃げろおぉぉ!!」ドドドド
梓「はっ!私ってば、怒りに任せて一体何を……」
唯「うわああん!あずにゃんありがとおぉぉ!」ダキッ
梓「にゃっ!やめてください、こんな道端で!」
唯「あずにゃんは命の恩人!感謝永遠にぃ!」
梓「そんな大げさな……でも唯先輩も、あんな子供にやられてるなんて、情けないですよ」
唯「だって私……ドジでのろまなカメだもん」イジイジ
梓「何ですか、それ……」
唯「というわけだから、助けてくれたお礼に、あずにゃんを竜宮城に招待しちゃうよ!」フンス
梓「…はい?」
唯「楽しいところだよぉ。乙姫様は美人だよぉ」
梓「さっき、頭でも殴られましたか?」
唯「さあ、私の背中に乗った乗った!」
梓「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!ていうか、学校はどうするんですか!?」
唯「よいしょっと」
梓「わ、わわ!唯先輩~!?」
唯「それでは、れっつごー! ♪むっかし~むっかし~あずにゃんは~助けた私に連れられて~」ノロノロ
梓「おろしてくださいよぉ!もうぅ!」
梓は振り回されながらも考えていた。
ああ、これはきっとまた夢なんだと――
唯「ぜえぜえ……つかれた~……」
唯「それに……ここ……どこ……?」
梓「案内する側が迷ってどうするんですか!」
唯「えへへ、ごめんねあずにゃん……うう、腰痛い……」
梓「私だって肩が痛いですよ!自分のギターと先輩のギター、2本しょってるんですからね!」
唯「あっ!あそこに竜宮城!」タッタッタッタ
梓「えっ、ホントですか!?」タッタッタッタ
梓(実はちょっと楽しみだったり……)
『龍宮城ホテル三日月』
梓「……唯先輩?」
唯「でへへ、なんちって」
梓「やると思いました……ていうか、木更津なんですか、ここ」
唯「ああっ!今度はあそこに乙姫様!」タッタッタッタ
梓「えっ、ホントですか!?」タッタッタッタ
『HOTEL乙姫』『休憩¥4200‐ 宿泊¥7000‐』
梓「///」
唯「見た目は竜宮城っぽいね!それにこの辺、かわいいお城がいっぱい!」
梓「ボケ倒しもいいかげんにしてください!しかも、こ、こんなところで女二人でいたら、ぜ、絶対変な目で見られますって!」
唯「休憩だけでもできるんだね~。疲れたし、少し休んでく?」
梓「だ、ダメですよ!わっ、わっ、そのまま進まないでくださ~い!」(ま、まだ心の準備が……)
憂「あれ?お姉ちゃんと梓ちゃん?」
和「こんなところで何してるの?」
梓「う、憂!?それに和さん!?」
憂「うい?私は妹ガメだよ?」
和「私はメガネウオだけど……」
梓「え…?」(そうか、これは夢なんだ夢……でもメガネウオって何?)
唯「いや~、実はあずにゃんを竜宮城に連れてってあげようとしたら、道に迷っちゃって」
和「まったく、しょうがないわねえ」
唯「でへへ……私ってば、ドジでのろまで子沢山のカメだから」
梓「なんですか、子沢山って」
憂「私たちも一緒に行ってあげるよ、お姉ちゃん」
唯「ホント!?うわ~ん、ありがと~!!」
梓「一人で竜宮城に行けないカメって、どんだけですか……」
憂「ほら、こっちの道だよ」
唯「♪あずにゃんのためなら、エンヤコ~ラ~」
梓「でも……二人はなんでこの辺を歩いてたの?」
憂和「なんでもないよ(わ)」
唯「?」
ところかわって、竜宮城――
律「うん、分かった。もう迷わずに来いよ~」ピッ
紬「りっちゃん、じゃなくてタイちゃん、今の電話誰から?」
律「カメからだよ。何でも、いじめられてるところを助けてくれた人を、竜宮城に招待するんだって」
紬「まあ、久しぶりのお客さんになるわね!」
律「久々に見せてやるか!私たちタイとヒラメの舞踊り!」
紬「おー!」
律「でも……なんでお前がヒラメなんだ?キャラからして乙姫様が妥当だろ?」
紬「私、ヒラメみたいな普通の魚になるのが夢だったの~」
律「そ、そっか……あんまし普通じゃないけど」
澪「な、なぁ……」キラキラ
紬「あら、澪ちゃん、じゃなくて乙姫様」
澪「本当にこんなキラキラした格好しなきゃダメか?は、恥ずかしい……」キラキラ
律「うぷぷぷ、よく似合ってますわよ、乙姫ちゃま」
澪「う、うるさい!」ゴチン
律「あいた!暴力反タイ!」
紬「あっ、タイだけに?」キャッキャッ
竜宮城の門前――
唯「ここが竜宮城だよ、あずにゃん!」フンス
梓「道迷った人が威張らないでください。でも、すごく綺麗……」
唯「でしょでしょ!? 絵にも描けない美しさだよね~」
憂「ここには私たちみたいなお魚がいっぱい住んでるんだよ」
和「それを統括してるのが、乙姫様ってわけ」
唯「ささ、あずにゃん、レッドカーペットをわたって」
梓「あ、はい……」(この夢、いつまで続くのかな……)
大広間に通された梓。
唯「今、乙姫様をお呼びするからね~」タッタッタ
梓(乙姫様って誰だろ……やっぱりムギ先輩?それとも澪先輩?まさか…)
律「よぉーこそ、竜宮城へ!!」
梓「わっ!律先輩!?」
紬「歓迎いたしますわ~!!」
梓「ムギ先輩!?」
律「このたびは、うちのドジでのろまで天然なカメを助けてくれてありがとう!」
梓「まさか、律先輩が乙姫……」
律「申し遅れました。私は乙姫様に仕える、タイで~す!」
紬「ヒラメで~す!」
純「三波春夫でございます~!」
梓「」
純「あれ、スベった?」
梓「純、何やってんの?ていうか、なんで三波……」
律「ほら、イソギンチャクは向こうに行った行った」
純「い、イソギンチャクとは何ですか!?」
律「だって、髪型がイソギンチャクっぽいじゃん」
純「そんな酷い!そういう先輩こそタコみたいな頭じゃないですか!」
律「な、なんだとー!」デコピカー
梓「純、もういいよ」ニコリ
純「ひっ!梓、目が全然笑ってないよ!」
律「あ~あ、空気ぶち壊されちゃったよ……ま、とにかく、乙姫様が来るまでの間、私たちタイとヒラメが舞い踊っておもてなししまーす!」
紬「是非、ご覧あれ~」
梓「は、はあ……」
律「それじゃあ、ワン、ツー、スリー!」
ドンドカドカドカ ドンドカドカドカ
ピロピロピロリン ポロポロポロリン
梓「って、ドラムとキーボード!?」
律「ん、そうだよ」
梓「全然踊ってないじゃないですか!」
律「あったりまえだろ?私たちは軽音部だぜ?」
紬「演奏するだけで精一杯だから……」
梓(何でそこは現実と一緒なんだろ……)
さわ子「くっくっく。そんな音じゃあ、オーディエンスはノらないわ」
梓「そ、その声は……」
律「ミノカサゴ!」
梓「ミ、ミノカサゴ!?って、さわ子先生!なんてトゲトゲしいカッコ……」
さわ子「デスフィッシュ IN 竜宮城!お前が来るのを待っていたー!シャアアアアアッ!!」
ギュイイイイイン!! ドワアアアアッ!!
梓「すっ、すごい迫力!でも、何かいいかも!?」
澪「ひいぃっ!見えない聞こえない見えない聞こえない……」
梓「あっ」
さわ子「あら?」
唯「乙姫様、大丈夫~?」
梓「もう来てたんですね……」
さわ子「やっちゃった、テヘ」ペロ
梓「そのカッコでカワイ子ぶらないでください」
数分後――
澪「おほん、梓と申す者よ。このたびは、カメを助けてくれて本当にありがとう」
梓(乙姫様の澪先輩、やっぱ綺麗だな……)
澪「ここは本当に良いところだ。ゆっくりしていくといいぞ」
梓「は、はい」
澪「じゃあ、まずは料理だ。たくさん食べていいからな。」
澪「おいムギ!じゃなくてヒラメ!あれの用意を!」
紬「かしこまりました~」
梓(もしかして、いつもみたいな高級なお菓子かな……?)ドキドキ
ドッサリ ホカホカ
梓「……これって……」
澪「タイヤキだ。梓、好きだろ?」
梓「好き、ですけど……」(さすがに予想外というか……)
澪「いっぱいあるからな。エラぶたから思い切りかじるといいぞ」ニコッ
梓(夢だと澪先輩も、何かヘン……)
梓「は、はい。いただきます」
ヒョイ
梓「あーん……ん?」
律「」ジー
梓「な、なんですか、律先輩?」
律「梓、食べるのか!?私というタイがいる目の前で、タイヤキを食べるのか!?」
梓「え…?」
律「食べるんだな!そうだもんな、タイヤキはお前の好物だもんな……しかし!お前はもっと空気読めるヤツだと思ってた!よりによってタイの目の前で!タイヤキにかじりつこうだなんて!外道!外道にもほどがある!」
梓「何言ってるんですか、いったい」
唯「」ジー
梓「ハッ!」
唯「あずにゃん酷いよ!りっちゃん、じゃなくてタイちゃんがかわいそうだよ!」
梓「ゆ、唯先輩まで何言ってるんですか!」
唯「で、でも、そのタイヤキ美味しそうだね……すこ~しでいいから、私にも頂戴?」
律「あっ、カメ!お前まで!」
唯「だって~、ホカホカの焼きたてだよ~?」
律「見損なった!私はお前を見損なった!同じ海の仲間だと思ってたのに!」
唯「りっちゃん、じゃなくてタイちゃん、タイヤキとタイは別物だよ?」
律「じゅあお前はカメの形した食べ物があったら、どう思う!?」
唯「ええっ!?それは嫌だけど……でも、タイヤキは甘くて美味しいんだよ!? やっぱり食べたいよぉ!!」ブーブー
律「美味い不味いの問題じゃねー!!」ギャーギャー
澪「二人ともいいかげんにしろ!梓が食べづらいだろ!!」ゴッチン
律「あいったァ!なんで私だけ……」
澪「うるさくしてすまなかったな。遠慮なく召し上がってくれ」
梓「はぁ……」(疲れる夢だなぁ……)
ヒョイ パク
梓(甘くて美味しい……)ホワ~ン
澪「じゃあ食べている間は、私が詩を朗読してあげるからな」
梓「え?」
最終更新:2011年06月05日 08:36