唯「……」コツコツコツ

コツコツコツ

唯「……」コツコツコツ

コツコツコツ

唯「……」

振り返る

シ-ン

唯「……」コツコツコツ


コツコツコツ


「こんばんは」

唯「……」

「怪しい者ではありません。私はあなたを救いにきたのです」

唯「……」コツコツコツ

「逃げ場なんてありませんよ。さあ、私の話を聞いてください。悪いよう

にはしませんから……」

唯「……」

どうしよう……。

唯「おじさん、だれ?」

「私どもは全ての人に平等な救いを与えているのです。もちろんあなたに

も……」

唯「ごめんなさい。そういうのよくわからないんです」

唯「それに、憂が知らない人とは話しちゃダメって」

「ご安心を。私はあなたを救いを……」

唯「だからぁ……」

唯「私には、今悩んでる事なんてありません。それに危険な事もなんにも

ありません」

唯「もう帰りますね、失礼します」

コツコツコツ


「だから……現実に危険が迫っているんですよ」

唯「えっ?」クルッ

シ-ン

唯「いない……」

唯「……早く帰ろう」コツコツコツ


コツコツコツ


唯(さっきから、誰かが……)コツコツコツ

コツコツコツ

唯「……!」タタタタッ

タタタタッ

いる

誰かが私の後ろに

唯「……!」タタタタッ

タタタタッ

唯(もうすぐ、家……!)

シ-ン

唯(あ、足音、止んだ?)

唯「……」


唯「……ただいま」バタン

憂「おかえりお姉ちゃん。ご飯出来てるよ」

唯「……ん」

憂「どうしたの、食欲ない?」

唯「あははっ、ちょっと疲れちゃってね。さ、ご飯ご飯~」タタタッ

憂「……変なお姉ちゃん」

ヒラッ

憂「あれ。何か落ちた……名刺?」

憂「でも電話番号だけしか書いてない……う~ん。いいや、後でお姉ちゃ

んに渡せば」

憂「さ、ご飯ご飯と」

……。


翌日

唯「……って事が昨日あってさ~」

澪「……」ガタガタ

律「はぁ、何もなくてよかったな唯」

梓「最近この街で事件が多いですからね……唯先輩の話を聞いてちょっと

ドキッとしましたよ」

唯「あれ、そうなの?」

紬「確かによく聞くわね。事故、強盗、放火……そして」

通り魔事件。

唯「通り魔……」

梓「本当、なにもなくてよかったですよね」

澪「……」ガタガタ

律「ま、澪も気を付けるんだな。何かあってからじゃ遅いからさ」

唯(通り魔……あの人が?)

律「さ、今日は解散と。またなみんな~」

唯「……」

唯(おとなしく帰ろう。まだ日も高いし……大丈夫だよね)


――――

唯「ただいま~」バタン

憂「おかえり~」

唯「ふぅ」

憂「あ、お姉ちゃん。昨日言い忘れたんだけど……はい、落とし物」

唯「んっ? 何これ」

憂「名刺みたいだね。お姉ちゃんが昨日落としたんだよ?」

唯(私、こんなの持ってた覚えないんだけど……)

憂「お姉ちゃん?」

唯「あ、うん。ありがとうね憂~」

唯(この電話番号……どこのだろう?)


――

唯「ごちそうさま」

憂「お粗末様でした」

『……臨時ニュースです。○号線で車同士が衝突をおこし……』

唯「あっ、番組変わっちゃった」

憂「大きな事故みたいだね~」

『……に乗っていた、○○さんが病院に運ばれましたが、まもなく死亡が

確認され……』パッ

憂「あれ、この写真……お姉ちゃん!?」

唯「私に……そっくりだね」

『……以上、臨時ニュースでした』

プツッ

憂「……」

唯「……あははっ、すごいそっくりさんだったね~」

憂「あんまり笑えないよ~。一瞬本当にビックリしちゃったもん」ウルッ

唯「ね。私もビックリだった……」

プルルルル

プルルルル

唯「あ、電話? もしも~し」ピッ

紬『唯ちゃん。今家にいる?』

唯『あ、ムギちゃん。どうしたの~?』

紬『ニュースを見て、気になって……あれ、唯ちゃんじゃないわよね?』

唯『うん。別人だよ~、憂とも今その話をしてたんだ~』

紬『よかった……ニュースを見た瞬間心臓が止まりそうになったわ……』

唯『ごめんね、なんだか心配させちゃって』

紬『……ううん、唯ちゃんが無事ならそれでいいの。ごめんね、こんな夜

に電話しちゃって』

唯『平気、心配してくれてありがとう~』

紬『じゃあ……またね。おやすみなさい』

唯『おやすみなさ~い』

プツッ


次の日

律「唯~! ニュース見たか!」

澪「唯、あれ唯じゃないんだよな!?」

唯「違うよ~。そっくりさんなだけだよ~」

梓「……そっくり過ぎですよ、あの写真は。私も今朝ニュースを知って、

思わず叫んじゃいましたよ」

ヒソヒソ

ヒソヒソ

紬「学校中で噂になってるわよ。あれは唯ちゃんだ、って……」

唯「あはは~、私はここでピンピンしてるからさ」

梓「……」

梓「唯先輩。一つだけ気になった噂があるんですよ」

唯「ん、な~にあずにゃん?」

梓「昨日の事故。車同士が衝突した事故ってのは知ってますよね。遺体は

……例の唯先輩にそっくりな女性一人」

梓「目撃者によるとその女性、綺麗に首が吹っ飛んでいたらしいですよ」

唯「!」

澪「ひぃぃっ……!」ガタガタ

唯「あ、あははっ。そうなんだ~……怖いねぇ」

梓「それだけじゃありません。その首……つまり頭部ですね」

見つかっていないみたいですよ、頭。

唯「!!」

律「なんだよそれ、こえぇな~……」ブルッ

梓「……私も噂で聞いたくらいですから。本当に頭が見つかってないのか

は知りません」

梓「噂好きな誰かが、話を大きく怖くして楽しんでいるだけの可能性もあ

ります」

唯「……」

澪「ま、ま……まったく、く」ガタガタ

梓「まあ、この話はあまり気にしない方がいいと思いますよ」

唯「そう……だね、うん」

唯(頭が……見つかっていない?)

律「……あ~。止めた止めた。今日は部活中止にしようぜ」

紬「そうね、なんだかちょっと不気味だわ……」

澪「う、うん……」

律「帰ろうぜ。なんか……な」

ヒソヒソ

ヒソヒソ

唯(学校の空気が、なんだか重い……)

唯「……ただいま」ガチャ

シ-ン

唯「憂はどうしたんだろ。買い物かな……」

唯「ふぅ、なんか疲れちゃった」

唯「首から上が……ね」

……。

『危険が迫っているんですよ……』

唯「っ!」

唯「……あの変な人の仕業なのかなぁ」

唯「……」

唯「あ、そうだ。憂から受け取った名刺……」

ピラッ

唯「もしかしたらこれが、あの人の電話かな?」

唯「……どうしよう」

電話をかけようか。

それともかけないか……。

唯「どうしよう……」

唯(よしっ、思いきって電話してみよう)

唯(携帯で……っと)

ピッピッピッ

プルルルル プルルルル プルルルル

唯「出ないなぁ……」

プルル……ガチャッ

唯「あ、も、もしも……」

『ぁぁ……』

唯「……?」

『……入場料は二千円は二千円』

唯『あ、あの、すいませんけど……』

『夜からイベントやってるよイベントやってるよ』

『地下で待ってるよ待ってるよ』

唯『あ、あの……』

『うへへへへぇ……』

プツッ

ツーツー

唯「……」

唯「今の……なに?」

唯「よく聞こえなかったけど、地下ってどういう事だろう……」

唯「イベント? よくわかんないや……」

唯「ああ、もう」

憂「どうしたのお姉ちゃん」ヒョコッ

唯「わあああっ!」

憂「あははっ、そんなに驚かないでよ。お買い物袋落としそうになったじ

ゃん」クシャッ

唯「ご、ごめん。ちょっとボーッとしてたから……」

憂「すぐご飯にするからね~」クシャッ

唯(お買い物……紙袋なんて珍しいな。ビニールじゃないんだ)

憂「今日はカレーだよ、お姉ちゃん」

唯「う、うん……」


次の日

唯「ねえみんな。地下ってお店知らない?」

律「はぁ、どうしたんだよいきなり」

梓「新しいゲーセンとかですか?」

唯「ううん、そんなんじゃなくてさ……何かイベントのあるお店なんだけ

ど」

唯「ムギちゃんとか、何か知らない?」

紬「さあ? 私にもさっぱり……」

唯「う~ん……」

バタン

さわ子「……」

唯「あ、さわちゃんだ」

紬「あら先生。今お茶をいれ……」

さわ子「お茶はいらないわ。平沢さん、ちょっといいかしら?」

唯「へ? 私?」

律「あのさわちゃんがお茶を断るなんて……」

唯「あの、私何かしましたっけ?」

さわ子「いいから来なさい。さあっ」グイッ

唯「い、いたいよさわちゃん。手引っ張らな……」

バタン

律「……」

澪「何か、あったのかな?」

梓「さあ……」

紬「でもただ事じゃなかったわね。あの表情は」

律「お説教かな?」


2
最終更新:2011年06月05日 22:33