平沢家

憂「お姉ちゃーん!帰ったんならシャツと靴下洗うから持ってきなよー!」


憂「もう!後で持ってきなよ?」
唯「……」

憂「どうしたのかなお姉ちゃん…なにかあったのかな…」

唯「……」

ピンポーン

憂「はーい」

ガチャ

紬「こんにちは、憂ちゃん」

憂「あ、紬さん…ちょっと待っててくださいね?今呼んで…」

紬「あ、いいの…お邪魔してもいい?唯ちゃんとお話したいの」

憂「え、構いませんけど…」

紬「あと、出来たら二人きりにさせてくれない?大事な話だから…」

憂「わ、わかりました…どうぞ」

トントン

唯「……うい~、今体調悪いから…」

紬「あ、あの…紬です…唯ちゃん?」

唯「!!」

紬「よかったら…ドア、開けてくれない?大事な話があるの」

唯「……」

唯(ムギちゃん…)

紬(やっぱり…ダメか…)

カチャ

紬「あっ…」

唯「ムギ…ちゃん…どうぞ」

紬「唯ちゃん…どうしたの?もしかして泣いて…」

唯「…大事な話って…なあに?」

紬「う…うん…」

紬「ええと…昨日私、唯ちゃんに好きって言ったわよね」

唯「…うん」

紬「あれは、友達として、じゃなくてね…?」

唯「…もういいよ」

紬「え…?」

唯「ムギちゃんが言いたいことはわかったよ。澪ちゃんが怒ってた理由も。あはは…私、最低かも」

紬「唯ちゃん?ど、どうして?」

唯「私、鈍感だから…ムギちゃんの気持ちも分からないで、軽く流しちゃった…」

紬「それは私が悪いのよ!唯ちゃんにちゃんと言わなかったから…」

唯「違うよムギちゃん、私が悪いんだよ…
 ムギちゃんの気持ちに気付くチャンスなんていくらでもあったのに」」

紬「唯ちゃん…」

唯「花火のとき、お弁当くれたとき、席替えしたのだってそうだよね」

紬「確かに、そうだけど…」

唯「なのに私は気付かなかった…ごめんねムギちゃん」

紬「い、いいの…そんなのはもういいの!私は今日もう一度…」

唯「ねえムギちゃん?澪ちゃんが言ってた通り、私はバカなんだよ?
 私のことをこんなに好きでいてくれる子の気持ちにも気付けないくらい…」

紬「そんなことないわ!唯ちゃんはとってもいい子じゃない!」

唯「こんな私には…ムギちゃんと恋人になる資格はないと思うよ…?」

紬「唯ちゃん…」

唯「だから…私からの返事はね…」

紬「ま、待ってよ唯ちゃん!」

唯「ごめんなさい!私はムギちゃんの恋人にはなれません!」

紬「ゆ…唯…ちゃ…」

唯「でも、今までと同じで友達だから!明日からまた仲良くしようね!」

紬「……」

紬(終わっちゃった…?私の恋…)

唯「いやあ、それにしても驚いたよ!いつ私のこと好きになったの?」

紬(そう、だって唯ちゃんはこんなに苦しんで…目が腫れぼったくなるまで泣いて、
 私と友達のままでいることを選んでくれたんだから…)

唯「まあそういう話はまた明日しようか!今日はもう帰りなよ?暗くなってきたから」

紬(その気持ちを裏切って、好きって言うなんて自分勝手なこと、私には…私には…)

紬「唯ちゃん」

唯「なあに?」

紬「ごめんなさい私…すこし自分勝手になるから…」

唯「え…?」

ギュッ…

唯「ちょっ…ちょっとムギちゃん!?なにするの?ダメだよ私たちは友達なんだから…」

紬「私、まだ何も伝えてない…」

唯「えっ…?」

紬「私が本当に言いたいことは…まだ私の口から伝えてないの」

唯「だ…だってムギちゃん私に言ったじゃない!好きって!」

紬「あの時は伝わってなかったもの」

唯「で…でも!ムギちゃんの言いたいことは私…」

紬「唯ちゃん、今の私は自分勝手だから…言いたいこと、言うわね?」

唯「う…」

紬「私は…唯ちゃんのことが大好き…友達としてじゃなくて、恋の対象として…
 唯ちゃんが大好きなの」

唯「ムギちゃん…」

紬「これが…私の伝えたかったこと…やっと言えた…」

唯「……」

唯「…ありがとうムギちゃん」

紬「…うん」

唯「ムギちゃんに好きって言ってもらえて、私うれしい…でも」

紬「でも?」

唯「やっぱり私にとってムギちゃんは友達だから…恋はできないよ…ごめん」

紬「…うん」

紬「ありがとう…唯ちゃんの気持ちを教えてくれて」

唯「うん…ホントにごめんね?」

紬「いいのよ、私は唯ちゃんの正直な気持ちがわかってうれしいから」

唯「えっと…」

紬「あ、ごめんねずっと抱きついたままで」

唯「ううん、柔らかくって気持ちよかったよ?
 考えてみたら、ムギちゃんに抱きつかれるのって初めてだね」

紬「うん…そうね」

紬「じゃあ私…帰るわね?言いたいことは言えたから」

唯「あ、ジュースくらい飲んでいきなよ!」

紬「気持ちだけいただくわ、早く帰らないと心配するから」

唯「そっか…ムギちゃん?」

紬「なあに?」

唯「明日からは、もっと仲良くしようね!」

紬「うん!それじゃあね」

憂「あれ?紬さん、もう帰るんですか?話はもういいんですか?」

紬「うん、もう終わったから」

憂「あ、じゃあジュースとお菓子用意しますね!」

紬「ありがとう憂ちゃん、でも早く帰らないとだから」

憂「そうですか…紬さん?もしかして泣いて…?」

紬「じゃあ、お邪魔しました。憂ちゃん、またね?」

憂「は、はい…」

バタン…

紬「はぁ…」

紬(私…結局フラれちゃった…)

紬「……」

紬(フラれたら気にしないで諦めようって決めてたのに、こんな気持ちになるなんて…
 やっぱり心のどこかで、唯ちゃんと付き合いたいって思ってたのかな…)

紬「……あ」

紬(ダメだ…泣いたらもっと辛くなっちゃう…)

紬「う…うっ…ゆ…ゆいちゃん…うぅ…わた、私…うぅ…うぇっ…」

紬(本当は…諦めたくなんて…ないのに…もっと抱きしめていたかったのに…)


……

憂「お姉ちゃん?さっき紬さんの様子が変だったんだけど…なにかあったの?」

唯「…なんにもないよ」

憂「そう?ならいいけど…」

唯「ねえ憂ー」

憂「なあに?」

唯「……なんでもない」

憂「変なお姉ちゃん…ご飯出来たら呼ぶね?」

唯「うん…」

唯(ねえ憂…友達と恋人って…何が違うのかな…よく分からないよ…)


翌朝
紬(ふう…いつまでも引きずってないで、いつも通りにしなくちゃ…)

ガラ

紬「おはよう♪」

律「ようムギ…おはよ」

澪「おはようムギ、遊びにきたぞ」

紬「わあ澪ちゃん、いらっしゃい、あ、りっちゃん、宿題大丈夫?」

律「ああ…じゃあ頼むわ」

紬(唯ちゃんは…まだみたいね)

律「あのさあムギ…昨日、どうだったんだ?」

紬「どうだったって?」

律「いやだから…告白するって言ってたじゃん」

紬「ああ…うん…」

澪「ちゃんと好きって言えたのか?」

紬「言えたわ。ちゃんと全部伝えられた…と思う」

律「それで?OKもらえたのか?」

紬「ううん、フラれちゃった…」

澪「……!」

律「ええマジかよ!もったいないことするヤツもいるもんだなあ」

紬「しょうがないわ…本人の気持ちだから」

澪「…ムギは、それでいいんだな?」

紬「うん、すっきりし…た…から」

ガラガラ

唯「おはよう…」

律「おっす唯!聞いてくれよ!昨日ムギがさぁ…どした、なんか元気ないな」

澪「…唯」

唯「ん?なあに?」

澪「昨日は怒ったりして悪かったな、許してくれ」

唯「うん、私こそ…ごめんね」

律「ふい~これで仲直りかあ」

紬「よかった…」

紬(これで元通り…あとは私が唯ちゃんのことを諦めれば…)

紬「そうだ唯ちゃん、今日宿題やってきた?まだならりっちゃんのが終わったら見せてあげるわ」

澪「甘やかしてちゃダメだぞ?」

律「まったくだな!自分でやらないといかんぞ唯!」

澪「お前が言うな!」

紬「あはは…それでどう?唯ちゃん」

唯「…いい、大丈夫だから」

紬「……え?そ、そう…?」


お昼

紬「唯ちゃん、今日もお弁当持ってきたんだけど…」

唯「…今日はいらない。パン買ってきたから」

律「え?マジ?じゃあ私がもらうぜ~?」

紬「そ、そう…じゃあまた一緒に食べましょう?」

唯「…私、澪ちゃんと和ちゃんと食べるから…じゃ」

紬「ゆ、唯ちゃん…?」


放課後

澪「唯に嫌われた?」

紬「今日、全然しゃべってないし、お弁当も食べてくれなかったし…」

澪「そういえば今日、私たちの教室でお昼食べてたな…珍しいと思ったけど」

紬「私…どうすればいいのかな…やっぱり最初から告白なんて…」

澪「ムギ……」

紬「唯ちゃん、お隣座ってもいい?」

唯「……」

紬「ゆ…」

唯「りっちゃ~ん!あーそーぼ!」

律「なんだよ唯!いきなり抱きついてきてかわいいヤツだな!」

唯「ふふ~♪」

梓「相変わらずですね唯先輩…」

紬「う……」

澪「……」


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最終更新:2010年01月02日 12:55