澪「ムギ、唯!」
紬「…?」
唯「ん~?なあに澪ちゃん?澪ちゃんも混ざる~?」
澪「二人に頼みたいことがある!」
紬「頼み?」
唯「なあに?」
澪「お使いだ!これからいつもの楽器店に行って…えっと、そうだ、ピック買ってきてくれ」
唯「ぴっく?」
紬(澪ちゃん?どうして?)
唯「あ…えっと、りっちゃんとじゃダメ?あずにゃんでも澪ちゃんでも…」
澪「唯、ムギと一緒に行くんだ。わかったな?」
唯「う、うん…」
律「でもなんでピック?わざわざ買わなくても…」
ガツン!
律「……」
澪「じゃあよろしくな!」
唯「…行ってきます」
紬(澪ちゃん…どういうつもりなの?私、唯ちゃんに嫌われてるのに…)
紬「……」
紬「な、なんか曇ってるわねえ~」
唯「……うん」
紬「あ、雨が降りそうね~」
唯「……うん」
紬「二人きりだと…寂しいわね…」
唯「……」
紬(どうしよう…全然しゃべれない…)
紬(やっぱりこうなっちゃう…
好きなんて言ったから、唯ちゃんは私のこと変な子だって思ってるんだ…)
紬「ゆ…唯ちゃん…?」
唯「……なに?」
紬「どうして…前みたいにしゃべってくれないの?」
唯「……」
紬「私が…私が告白なんてしたから?だから私のこと気持ち悪いとか、そう思ってるの?」
唯「……」
紬「なにか…なにか言ってよ!私のことが嫌いならはっきりそう言ってよ!」
唯「む…ムギちゃん?」
紬「そういう風にはっきりしてくれないから変な期待しちゃうの!
言ってよ!告白なんてされて嫌だって!」
唯「ち…違うの…私は…」
紬「違ってない!唯ちゃんは私のことなんて好きじゃないんでしょ!?だから…」
唯「ムギちゃん…」
紬「だから…だから…早く諦めさせてよ…」
唯「ムギちゃん…私…私は…」
紬「私、先に楽器店行くから…唯ちゃんは学校に帰って…?」
唯「待ってよ!私も…」
紬「帰って!」
唯「うっ…」
紬「一緒に行きたくないなら無理しなくてもいいから…じゃあ」
唯「む、ムギちゃん…」
楽器店
店員「あ、ありがとうございました紬お嬢様ぁ!」
紬「はぁ…ピックってこれでいいのかな…?」
紬(私、唯ちゃんにひどいこと言っちゃったかな…後で謝ろう…大切な友達だものね)
ザァァァァ…
紬「雨、降ってきちゃった…唯ちゃん、学校着いたかな…」
プルルルルルル
紬「もしもし…あ、澪ちゃん?」
澪『あ、ムギ?雨降ってきちゃったからさ、このまま家帰っていいからな』
紬「うん…ねえ澪ちゃん、どうして私たちを?」
澪『うん…なんとなく…かな…よく分からないけど、このままじゃいけないと思って』
紬「そう…でもありがとう澪ちゃん」
澪『え、うまくいったのか?』
紬「ううん…私、なんだか唯ちゃんのこと、諦められそうだから」
澪『え?それどういう…ピッ…ツーツー…』
紬「このまま唯ちゃんが私から距離を置いてくれれば…きっと諦められるから…」
ザァァァァ…
紬「ただいまー…」
斎藤「お嬢様!今すぐお着替えを…!」
紬「もう…大げさねえ…」
紬(あ…唯ちゃんが学校着いたか、澪ちゃんに聞くの忘れてた…ま、着いたわよね)
プルルルルルル
斎藤「はい、琴吹でございます…紬お嬢様ですか?少々お待ちください」
紬「どなた?」
斎藤「平沢…という方から」
紬「え…唯ちゃん?」
紬「もしもし…唯ちゃん?」
憂『つ、紬さん!』
紬(なんだ…憂ちゃんか…なんで私ホッとしてるんだろ…)
紬「どうしたの?」
憂『あの、お姉ちゃんがまだ帰ってこなくて…
梓ちゃんに聞いたら紬さんと一緒だって言うから…』
紬「え?家にも、学校にも帰ってないの?」
憂『梓ちゃんにはついさっき聞いたので学校にも…紬さん、知りませんか?』
紬「そ、そんな…」
憂『…紬さん、お姉ちゃんとなにかあったんですか?』
紬「え?それは…」
憂『昨日もお姉ちゃん、ずっとボーッとしてて何か悩んでたみたいで…何か知りませんか?』
紬「あ…わ、私、唯ちゃんを探してみるから…また後で電話するわね!」
紬(唯ちゃん…私のこと、嫌いなはずなのに…なにを悩んでたの?)
ザァァァァァァァァ…
紬「すごい雨…唯ちゃん、どこ?」
紬(私…唯ちゃんにひどいこと言っちゃった…自分がイライラしてたからって…)
紬「あ、もしかしてさっき別れたところかな…?」
紬(嫌いって言えなんて…ただ私が唯ちゃんから逃げたいだけじゃない…!)
紬「唯ちゃん…唯ちゃん…」
……
唯「ふぇーっきし!あ゙ー…」
紬「ゆ…唯ちゃん…」
唯「うう…ムギちゃん…へっきし!よかったあ…」
紬「な…なんで…こんなところに?」
唯「えへへ…ズズ…ムギちゃんを待ってようと思ったら雨が降ってきて…
雨宿りしてたけど濡れちゃった…カバンも学校だし、動けなくって…はっくしょん!」
紬「……っ」
唯「それでね…私、今日ムギちゃんと話せなくて、嫌な思いさせ…
へっきし!…させちゃったんだけど…」
紬「うん…」
唯「ズズー…それは…ムギちゃんとどうやって話せばいいか、わかんなくなっちゃったからなの…」
紬「え?」
唯「私…昨日よく考えたんだけど…
ムギちゃんは私のこと本気で好きでいるのに、
今までと同じふうに話したりしたら、それはすごく辛いと思うの」
紬「それは…そう…かもしれないけど…」
唯「じゃあ私はどうやって話せばいいのかなって考えたら、わかんなくなっちゃったの…」
紬「だから今日、あんなふうに…」
唯「私…どうしたらいいのかな…?
ムギちゃんのこと好きだけど…恋ってどういうことなのかよくわかんないんだ…」
紬(私は…なんて言えばいいの?恋っていうのは…なに?付き合うってこと?違う…恋って…)
唯「ふう…ムギちゃん、とにかく今日はごめんね…私、家帰るよ…へきしっ!」
紬「あ…」
紬(こんなに…こんなにびしょ濡れになって、くしゃみして私を待っててくれたのに…
私はなにも言わないの?唯ちゃんになにも言えないの?そんなの…ダメだ!)
紬「ゆ…ゆ…唯ちゃん!」
唯「うぅ…なあに?」
紬「私も…私も恋ってなにか分からないの!」
唯「え…?」
紬「分からないけど…でも、私は唯ちゃんのことが大好きなの!
もっとお話したり、触れあったり…もっと唯ちゃんのそばにいたいの!」
唯「ムギちゃん…」
紬「私…もう嫌なの!遠くからただ見てるだけなんて…唯ちゃんともっと一緒にいたいの!」
唯「……」
紬「だから…だから、こういう気持ちが恋なら…
いつか唯ちゃんにもわかってほしいから…もっと唯ちゃんのそばにいさせて!」
唯「む…ムギ…ちゃん…」
唯「私…今はムギちゃんに恋してるとは言えないかもしれないけど…でも、でもね?」
紬「な、なに?」
唯「ムギちゃんが私を大好きって言ってくれると…すごくあったかい気持ちになるんだよ…?」
紬「唯ちゃん…」
唯「私、もっとムギちゃんのこと好きになりたい…
だから、私もムギちゃんのそばにいたい!それで…いい?」
紬「う…うん!」
紬「ありがとう…唯ちゃん…」
唯「うん!じゃあ…はっくしょい!」
紬「唯ちゃん!?さっきから大丈夫?」
唯「う…うん…だ…ダメ…ズズ…」
紬「え…えっと…どうしたら…」
唯「ムギちゃん、よかったら家まで送ってくれる?」
紬「う…うん!わかったわ!」
唯「へっくし!…ムギちゃん、もっとくっつかないと傘入れないよう」
紬「え?ごめんなさい、なんだか恥ずかしくって…」
唯「でも、こうやって相合い傘すると恋人って感じがするね!」
紬「そ…そうね…」
紬(唯ちゃんと相合い傘…なんだか夢みたい…)
……
唯「ただいまー…っくしょん!ズズー…」
憂「お姉ちゃん!!…と紬さん…あの、何があったんですか?」
紬「え、ええと…唯ちゃん、傘がなくて帰れなくて…私が見つけて送ってきたの」
憂「そうなんですか…ってお姉ちゃん、体ずぶ濡れじゃない!顔赤いし、鼻水も出てるし!」
唯「うい~、世界がまわる~…」
紬「唯ちゃん…だ、大丈夫?」
憂「……?」
憂(…気のせいかな?)
憂「お姉ちゃん、体拭いてあげるから着替えて寝よう?さ、部屋行くよ!」
唯「うぃーっす…」
紬「じゃあ私これで…」
唯「ムギちゃん、雨が弱まるまで家にいなよ~せっかく来たんだし…」
紬「え、でも…」
憂「そうですよ、お茶用意しますからゆっくりしていってください!」
紬「じゃあ…少しだけ…」
紬「唯ちゃんの具合どう?」
憂「熱が少しありますけど、一晩休めば大丈夫だと思います!明日学校行けるか分からないけど」
紬「そう…よかった」
憂「あの、紬さん…今日、お姉ちゃんとなにかあったんですか?」
紬「え?ど、どうして?」
憂「お姉ちゃん、具合は悪かったけど、昨日よりよくしゃべってたし…それに…」
最終更新:2010年01月02日 12:59