3階、階段前
唯「おかしいよ、こんなの」
けいおん部、部室前
唯「結局、来ちゃった……」
唯「なんだかずいぶん色んな階段を昇り降りしたけど」
唯「まあ、着いたんだからいいか……」
唯「えへへっ。みんな~」
ガチャッ
シーン
ユイ「……アレ?」
ユイ「ココハドコ? ミンナハドコ?」
ユイ「ナンダロウ、コノバショ。マエニモキタコト、アルミタイナ……」
目の前には、何もない森林が広がっている。
ユイ「……」
澪「……ふふっ、それでさ。唯のやつったらさ~」
律「あはは、やっぱり唯は唯だよな~」
梓「あ~ん」パクッ
紬「はい、梓ちゃん。お茶のおかわりよ」
ユイ「ア、ミンナ」
ユイ「ウワア、ケーキオイシソウダネ。ワタシニモチョウダイチョウダイ」
アレ、カラダガウゴカナイヨ
律「あ~、それにしても唯の奴、早く来いよな~全く」
ユイ「ナニイッテルノ。ワタシハココニイルヨ」
梓「本当に唯先輩は、遅刻してばっかですよね」モフモフ
ユイ「ミンナ……ワタシヲミテヨ」
澪「本当にな。あ~唯の分もケーキ食べちゃおっかな」
ユイ「ヤメテヨ、ヤメテ。ワタシハココニイルノニ……」
紬「ふふっ、はい。澪ちゃんどうぞ、唯ちゃんの分のケーキよ」
アッ……
澪「美味しいなあ」モグモグ
律「さて……今日はもう帰るか~」
ア、イヤダヨ。
ミンナ、トオクニイカナイデヨ。
ヒトリニシナイデヨ。
ワタシハココニイルヨ、ソッチニハイキタクナインダヨ。
ネエ
マッテヨ、ミンナ……ミンナ……
ワタシ、ヒトリボッチ
唯「私だけ、ひとりぼっち」
唯「それならいっそ……みんな殺してやる」
……キーンコーンカンコーン
唯「……はっ!」
1階、玄関前
唯「……あれ? 私……」
律「おっ、唯~。こんなところで何やってんだよ」
唯「りっちゃん、みんな……あれ?」
唯「部活はどうしたの。まだ終わる時間じゃない……よね?」
梓「備品の入れ替えだかで、今日は部活が出来ないんですって。さっき唯先輩にも電話したんですけど……出なかったから」
唯「え? あっ、本当だ」パカッ
澪「しっかりしてくれよな、全く」クスッ
律「じゃ、みんなで下校と行きますか~?」
唯「えっ、ケーキは?」
紬「冷蔵庫に入れておいたから、一日なら大丈夫よ。明日の部活で食べましょう」ニコニコ
唯「えっ……」
唯「ケーキは?」
澪「だから、明日の部活でみんなで食べようって……」
唯「……」
梓「唯……先輩?」
唯「やだ、ケーキ食べる」
律「おいおい唯。だから部室には今入れなくて……」
唯「そうやって。みんな私を除け者にして、私の分のケーキ食べちゃったから、そんな嘘言うんでしょ」
澪「何言ってるんだよ唯、ケーキはちゃんと……」
唯「澪ちゃん。人のケーキ食べたくせによく笑っていられるね。また太っちゃうよ?」
澪「はあっ! お前なっ、なんだよその言い方!」
唯「ほら図星だ。バレたくないから逆切れしてる」
澪「……呆れた。みんな帰ろう」
梓「……唯先輩、ちょっと言い方がひどくないですか? 澪先輩はケーキなんて食べてないですよ」
唯「へ~っ。あずにゃんもそっちの味方なんだ。まあ、どうせ私はひとりぼっちだもんね~」フンス
梓「何ですかその言い方……ムカつく」
唯「なんでも結構。早く帰ってよ、うっとおしい……」
律「唯……いい加減にしろよっ!」
紬「唯ちゃん。ちょっと落ち着いて。ほら澪ちゃんも」
澪「……ふん」
唯「ふんだ」
律「いいか唯、澪は唯のケーキなんて食べてないんだから。安心しろよ、な?」
澪「何言ってもムダだよ、律」
梓「そうですよ。こんな頭悪い人に説明なんかしたって」
紬「二人とも」メッ
唯「……」
唯「……証拠」
澪「はっ?」
唯「見せてよ、私のケーキ食べてないっていう証拠をさ」
澪「……お前な、ガキみたいな事言って……!」
律「まあまあまあ! 唯、証拠があれば満足するんだろ、な?」
唯「……」コクッ
律「じゃあちょっくらみんなで部室行こうぜ。冷蔵庫のケーキを見せれば、唯も澪も仲直り、な?」
唯「……」
律「澪」
澪「……」
梓「仲直りの前に、謝ってほしいですね。そうしたら折れてやらない事も
ないですよ」
律「梓、お前なぁ……」
唯「いいよりっちゃん。証拠が見つかったら私ちゃんと謝る」
律「唯……」
澪「……ふん」
律「よ、よ~し。じゃあみんなで部室行くか~」
紬「お~」
澪「ふ、ふん。ケーキ見たらちゃんと謝れよな唯」
唯「……」
梓「唯先輩、部室行きますよ、ほら」
唯「は? 部室? なんで? どうして?」
澪「どうしてって、お前な……!」イラッ
澪「お前が証拠を見たいって言うから、今からみんなで部室に行くんだろうが!」
唯「どうして部室なの?」
律「唯……お前……」
紬「……」
澪「ケーキが部室の冷蔵庫にあるからだろっ!」
唯「……」
ユイ「チガウヨ」スッ
ユイ「ケーキナラ、ココニアルジャン」
ザクッ
律「あ……」
紬「あ……」
梓「あ……」
澪「……えっ」グチャッ
ユイ「ウフフッ」グチュグチュ
澪「う……うわあぁぁああああ!」ザクッ
澪「ち、血が! お腹から血がぁぁぁああ……!」
ユイ「フフッ、ケーキケーキィ」グチャグチャ
澪「痛い……痛いよ……痛いよ……」ガクガク
ユイ「アー、イチゴタベタカラ、オナカノナカ、マッカダネミオチャン」
ザクッザクッ
澪「あ……ぁ……」ピクピク
ユイ「フフッ、ケーキドコカナー」グリグリ
グリグリ
律「ゆ、唯やめろっ!!」ガチッ
ユイ「ハァ、ナニ? ヤッパリアンタモグルナンダ?」
律「ム、ムギ。早く救急車……それに、先生に連絡を!」
紬「あ、あ、あ……だ、ダメ。立てないの……」ガクガク
律「ちっ、梓っ!」
梓「ぁ……」ザクッザクッ
ユイ「アズニャーン」ザクッザクッ
律「ひっ……!」
ユイ「ケーキドコカナー。アズニャンガタベチャッタノカナ?」
ユイ「イマナラマダオコラナイヨ? ハヤクダシテ」グチャグチャ
梓「……」ビクン
律「う……お、おええっ……」ビチャビチャビチャ
ユイ「リッチャン、ナニソノケーキ」
律「はぁ、はぁ……こ、これはさっき食べた私の……」
ユイ「ソッカア、リッチャンモカクシテタンダネ」
ユイ「ユルセナイ」ヒュッ
ザクッ
律「あ……喉……」ザクッ
ユイ「コウスレバ、モウハキダサナイデスムカラネー」グリグリ
律「ヒュー……ヒュー……」ガクガク
ユイ「フフッ、モウシャベレナインダネ」
紬「ぁ……あ……」ガクガク
紬「に、逃げなきゃ。逃げるのよ私……」ガクガク
ユイ「フフッ、ムギチャン」
紬「!!」
ユイ「ドコイクノ? ワタシヲヒトリニスルノ?」ユラリ
紬「あ……あ……」
紬「ぶ、部室に……ケーキを取りに」
ユイ「……」
紬「ゆ、唯ちゃんのためよ。今から大急ぎで持ってくるから、ね! ね!」ガクガク
ユイ「ソッカー、アリガトウムギチャン」ニッコリ
紬「う、うん。それじゃあ……」
ザクッ
紬「あ……」ドロッ
紬「ゆ……い……」
ユイ「シンデ」
紬「……」ザクッザクッ
梓「……」ザクッザクッ
澪「……」ザクッザクッ
律「……」ザクッザクッ
ユイ「……」
ザクッザクッ
ザクッザクッ
ザクッザクッ
ザクッザクッ
唯「……あれっ、みん……ヒイッ!」
唯「し、死んでる……う、うっ。オエッ……」ビチャビチャビチャ
唯「はぁ、はぁ」
唯「……ナイフ? これ、私のせい?」
澪「……」
唯「ねえ、澪ちゃん。どうして、どうして……?」
律「……」
唯「りっちゃん起きてよ。目覚ましてよ、ねえ」
紬「……」
唯「ムギちゃん。ケーキなんてもういらないから、ねえ……」
梓「……」
唯「あずにゃん……」
唯「……」
唯「ああ、また私、ひとりぼっちだ」
唯「みんな……」
……キーンコーンカーンコーン
3階、教室
……キーンコーンカーンコーン
唯「はっ……」
『下校の時刻になりました。まだ校内に残っている生徒は、すみやかに…
…』
唯「あれ、ここ」
唯「教室?」
唯「血もついてない……」
唯「……」
唯「もう、帰ろう。なんだか疲れたよ……」
タタタタッ
帰り道
唯「……」
……ピーポー ピーポー
唯「あ、救急車だ」
唯「学校の方に向かってる……何かあったのかな」
ピーポー ピーポー……
唯「……」
唯「……帰ろう」
また少し、今夜の月は薄く頼りない光を放っている。
団地の屋上
ヒュウゥゥゥ
男の子「……」
男の子「……」チラッ
瞳 瞳 瞳 瞳 瞳「……」
男の子「……」
スッ
男の子「う、うわあああぁぁぁっ…………!」
ヒュウゥゥゥ……
……グシャッ
最終更新:2011年06月05日 22:49