……。
澪「……あれ? おかしいな。私、唯たちと一緒にいたはずなのに」
シーン
澪「どこなの、ここ?」
ヒュウウゥゥ
澪「……」
澪「ここは、団地の……屋上か」
ヒュウウゥゥーー
……。
唯「ヤヨイちゃん! 澪ちゃんに何をしたの!」
ヤヨイ「チャンスをあげたのよ。あとは澪ちゃん次第」
紬「チャンスって……消えちゃったじゃない……!」
唯「ヤヨイちゃん!」
ヤヨイ「楽しく見させてもらうわ。彼と一緒に、ね」
ヤヨイ「……」
唯「……いこう、ムギちゃん。みんなを探さないと」
紬「う、うん」
ヤヨイ「いってらっしゃい」クスッ
……。
律
律「まずこの階は……210か」スタスタ
シーン
律「にしても静かな廊下だよなあ。団地ってのは、みんなこうなのかな?」スタスタ
律「……う~ん、しかもドアに表札も無いから部屋番号がわかりにくいし」スタスタ
律「えっと、206、207、208……」スタスタ
律「209……あれっ?」
壁
律「210号室が……ない?」
律「おっかし~な~。確かに一番端の部屋に電気はついていたのに……」
律「……いいや、とりあえず」
ピンポン
ピンポン
律「……」
ガチャッ
目「誰?」
律「あ、あのさ。リルの部屋教えてほしいんだけど」
バタン
律「……正攻法じゃあ無理、か」
3階
律「んんと、ここは……307、と」
律「また数えながらか。えっと……304、305、306と」
律「んで、307だっ」
ピンポン
ピンポン
律「……」
シーン
律「おっかしいなあ。確かに電気ついてたのに……居留守でも使ってんの
か?」
ピンポン
ピンポン
律「……」
シーン
律「ああっ、もうっ! 次だ次」
4階
律「ここは、明かり無し、と」タタタタッ
5、6階
律「こことここも無し……」タッタッタッ
7階
律「ここは701か……近いから楽だな」
ピンポン
ピンポン
ガチャッ
目「……なんですか?」
律「あ、えっと。リルって子の部屋を探しているんだけどさ」
目「いきなりなんですか、あなた」キィ
律「わわわっ、閉めないで閉めないで。ちょっとリルに用事があるから聞きたくて……」
目「さあ、あまり喋った事ないから。あ、でも……前に部屋に遊びに来なよ、とは言われました」
目「角部屋ので、窓がたくさんあって。夜景が綺麗に見えるから、って……」
律「夜景……か」
目「あの、もういいですか? 私、夕飯の支度をしてるんです」
律「ああ、ありがとうな」
……バタン
律「夜景が綺麗……ね。屋上ってことかな?」
律「……次は8階か」
8階
律「この階は二つ。まずは801に、次は809……」
律「……よしっ」
ピンポン
律「……」
ピンポン
ガチャッ
目「誰なの?」
律「あ、あのさ。ちょっと聞きたい事があるんだけど」
目「うちは勧誘お断りなんだ」バンッ
律「……」
律「制服でカチューシャした女子高生の勧誘員がいるかっての、全く」
律「さてさて、809、809と……」スタスタ
律「808、809……あれ?」
壁
律「この階は部屋が九つしかないのか?」
律「……もしかして見落としが?」
律「いやいや待てよ。確かに部屋の数は……う~ん」
律「ん、待てよ」
律「この団地、確かに部屋は九つ並んでいるけど。部屋の表示は10まであった……」
律「もしかして、どこか数字が……抜けてる部屋がある、のか?」
律「う~ん。そういえばなんか聞いた事があるな」
律「ホテルとかの部屋じゃあ縁起が悪いから、4号室が無いとか何とか……」
律「ここの団地もそうなのか?」
扉
律「……つまり、ここの809だと思ってた部屋は810で」
律「本当の809は」
ピンポン
ピンポン
ガチャッ
目「……はい?」
律(やっぱりそうだ)
目「あの、何か用ですか?」
律「実は隣の子からきいたんだけどさ~」
律「リルが君の事、呼んでるって」
目「え?」
律(さあ、どう出てくる)
目「どうして俺なの?」
律「さあ。私は伝言を頼まれただけだからな。じゃあ」
目「わかった、すぐいくよ」
バタッ……ガチャン
男の子「……」スタスタ
律(ううっ、私ってあったまいい~)スタスタ
男の子「……」カチッ
律(んっ、エレベーター?)
ウイイィィン
ガシャッ
ウイイィィン
律「故障していたんじゃ……ないのかよ?」
……ウイイィィン
律「10階で止まったな、よし。これでだいぶ絞られてきたなっ!」
9階
律「ここは902……近いし、一応回っておくか」スタスタ
ピンポン
ピンポン
ガチャッ
目「……どちら様でしょう」
律「あの、聞きたいことがあるんですけど」
目「どんなご用件ですか?」
律「この団地に、リルって子がいるって……」
目「えっ!」
目「だ、誰に聞いたんですか?」
律「んと……名前聞いてなかったか。ほら、ヒロシとよく一緒にいる、あの子だよ」
目「……ああ、タケルですか。あいつ」
目「わかりました、僕が知っている限りの事はお話します」
律「あれっ? やけに話が早くないか?」
律「私が今まで話してきたガキんちょなんて、みんな嫌々言ってたのに」
目「か、勘でわかるんですよ」
律「ふ~ん。そんなもんかね~?」
目「……リルはなかなか表に出てきません」
目「奥に引っ込んでいるんですよ。この団地の、一番奥……」
律「一番奥って……」
目「ここの最上階の奥。景色が広がって窓がたくさんある、夜景の綺麗に
見える部屋」
目「10階の、10号室」
バタッ
律「ち、ちょっと」
律「……10階の、10号室か」
律「ふふっ、さすがはりっちゃん。すんなり見つかるもんだな~」
律「こういう探索の才能、あるじゃないかな私って」フンス
律「……将来は探偵にでもなるかな! なんてな」
律「次はいよいよリルの部屋か……」タタタッ
10階
律「はぁ、一番上までくるとさすがに疲れた~……」
律「10号室か。まあ、ちょっと緊張はするけど。しょせんは子供だよな、うん」
律「でも、リルって一体何者なんだろうな? みんな怯えているけど……」
律「……」
律「会えば、わかるか」スタスタ
律「あ、でも確かもう一部屋電気がついてたよな。1009号室……」スタスタ
律「う~ん。部屋がわかったのに訪ねるのもバカらしいかな~」
律「早くリルって子に会って、ナナちゃんを助けないとだし」
扉
律「……まあ、一応か。一応」
ピンポン
ガチャッ
騙されちゃダメだよ。
ここの子たち、みんな嘘つきだから。
全部反対の事しか、言わないから。
律「えっ……」
律「ま、待てよ。どういう意味だよそれ……」
騙されないでね?
律ちゃん……。
律「あんた……誰なんだよ……?」
……バタン
律「……」
律「ひょっとして……」
律「全部……嘘ってこと?」
律「反対に話してるってことは……」
律「ああっ、意味わかんねーよ。一体誰を信じればいいんだよっ……!」
律「……」チラッ
律「10階の10号室。1010号室の反対って……0101号室ってことか?」
律「でも、そんな部屋無いしな……あ、じゃあ」
律「単純に101号室って意味か?」
律「……」
律「とにかく、急がないと……」
律「……」
扉
律「1010号室か……」
律「ここにリルがいるのか? それとも、誰もいないで……ははっ、私も
ダイブさせられちゃうのかもな」ガクガッ
律「……膝も顔もひきつり笑いだな」
律「1010号室、か……」
行く
行かない
※行く
●行く
行かない
律「……」
ピンポン
律「……」
ピンポン
律「反応なし……?」
シーン
律「……最上階で」
律「角部屋、一番奥の部屋」
律「夜景が綺麗……」
律「これの反対、か?
律「どういう意味だよ……」
律「……最上階の反対は、1階?」
律「角部屋じゃなくて、一番奥の部屋……だとすると、一番手前?」
律「そして夜景が見えない……」
律「!?」
カチッ カチッ
律「エレベーター、また使えなくなってる……」
律「仕方ない、階段か」
9
8
7
6
5
4
3
2
……。
1階
律「一番手前の部屋」
律「ここが、リルの……」
律「……」
律「よしっ……」ゴクッ
ベルを押す
ベルを押さない
※ベルを押す
○ベルを押す
ピンポン
ガチャッ
律「……リル、ちゃん?」
リル「どうぞ入って」
律「……」
リル「なにもしないよ。遠慮しないでどうぞ」
律「……」
バタン
最終更新:2011年06月05日 22:59