リル「アイロニーを並べて、それがクールなの?」

リル「そんなんじゃあ、どこにも居場所なくなっちゃうよ」

律「……なんとでも言えっての。こっちが親切に心配してやってるんだからさ」

リル「……はっ」


リル「だめだ」


――

澪「……ナナちゃん……」

――


ガタッ

律「……何?」

律「おい、何するんだよ……」

律「部屋なんか真っ暗にして……。なあ、私だっていいかげん怒る……」


……イヤァァァァァアアアアアア!

律「!」ビクッ


グシャッ

律「……」

律「ああ」

律(一階の一番手前で、窓がせまくて、とても汚い景色が見える部屋……)


―――

澪「どうしてなんだよ……」

ヒュゥゥ

澪「どうして、そんな簡単に死ねるんだよ……」

ヒュゥゥー

澪「……戻ろう」


10階

澪「ん……」

ナナ「……」

澪「ナナちゃん……無事なの? あなたが助けてくれたの?」

タケル「俺も自分で何かしようって。さっき、リツって人に教えられて…

…それで」

澪「リツ? ……あの律が?!」

タケル「どのリツかは知らないけどさ。行動しなきゃ始まらないって……

ズシッて来たよ」

澪「そ、そっか……律が、ね」

澪(なんだか、成長したんだな、あいつも)

澪「大丈夫? ナナちゃん歩けるかな?」

タケル「大丈夫だけど……ナナさ、まだ気絶しているみたいで」

澪「ああ、なら私も手伝うよ」

タケル「……うん。ありがとう、お姉さん」

澪「いこう! ……な?」

……。


団地前

梓「……あ、唯先輩にムギ先輩!」

唯「あずにゃん……ごめんね、遅れちゃって。ちょっと道がわからなくて」

梓「それは別に大丈夫ですけど……あれ、澪先輩は来なかったんですか?」

紬「それが、途中でね。ちょっと……はぐれちゃったの」

梓「へえ……純情派なんですね。私は情熱系の方が好きですけど」

唯「えっ」

紬「えっ」

梓「……さて、どうしましょうかね。こっちも色々大変なんですけど」

梓「実は、私も律先輩とはぐれちゃって……」

唯「もしかして、何かあったの?」

梓「実は……」

……。

梓「……それで、律先輩はリルちゃんを探しにいって、それっきり……」

梓「いなくなっちゃったんです」

紬「……」

唯「と、とにかくさ。りっちゃんと澪ちゃん探してみんな合流しないと!」

梓「そう……ですね。じゃあ、手分けして探しましょう。私が律先輩を」

唯「あ、待ってあずにゃん」

梓「はい?」

唯「りっちゃんは、私が探すよ」

梓「唯先輩が?」

唯「うん……何か引っかかるんだ。そのリルちゃんって子」

梓「……わかりました。私は澪先輩を探します」

紬「じゃあ私も、梓ちゃんと一緒に澪ちゃんを探して来るわね」

唯「うん……多分ね、澪ちゃんとナナちゃん一緒にいると思うんだ」

梓「勘、ですか?」

唯「うん。なんとなくだけど……あずにゃん。場所わかる?」

梓「うう~ん……」にゃんにゃん

紬(何かしら、あのポーズ)ヒソヒソ

唯(さ、さぁ?)ヒソヒソ

梓「んん~……」にゃんにゃん

梓「あっちの団地の方だと思います」キリッ

紬「あっ、えっ?」

唯「……あ~。すごいんだね、あずにゃんのってさ」

梓「いえいえ、とんでもございません」

唯「……澪ちゃんはC棟だね。じゃあ、私はA棟に行くからさ」

梓「はい、わかりました」

紬「唯ちゃん、無理はしないでね?」

唯「うん……あずにゃんとムギちゃんも気をつけてね」

紬「うんっ」

梓「はいっ」

……



律「……」グダァ

リル「こうなってくれてよかったわ」

リル「きっかけでも何でもないと、私たちには何もできないから」

律「……」グッタリ

リル「しょせん、私たちは子供だもの。無力なのよ」

リル「弱いのよ」

律「……」グッタリ

リル「シンボルからサブスタンスになれる瞬間。私のリアルを取り戻すの」

律「……」

リル「ありがとう、律さん」

……。



団地前

澪「ヤバいな、なんか」

タスケテ

タスケテ

コナイデ

サミシイ

ドッカイッテ

澪「殺気が、広がってる……怖い」

澪「なんだろう、この思いの塊みたいなの」

澪「……違う」

サミシイ

サミシイ

澪「泣いている……の?」

ウッ ウッ

グスッ

グスッ

澪「……みんな乾いてるんだ。欲している」

澪「ナナちゃんと一緒だ……」

タスケテ

ウッ ウッ

サミシイ

グスッ

コナイデ

澪「……」


逃げる
動かない
戦う
説得する

※動かない


ウッ ウッ

グスッ

澪(怖い、怖いけど……逃げたら)

澪「逃げたら、またナナちゃんみたいに悲しむ子ばかり」

澪「……な、なんとでも。す、す、す、す……」ガタガタ

タスケテ

サミシイ

タスケテ

タスケテ

澪(は、話も通じそうにないしな……)

アァッ

ワアゥ

ワワワ

澪「……?」

ァァァ

ワッアッアッ

アアアアア

ゥ ゥヮァァァァァ

梓「下がって」

澪「え……声が怯えて……」

梓「……」

澪「あ、梓? なんでここに……」

梓「……ダメですよ。澪先輩を傷つけたら」ビリビリ

澪「あず……さ?」

梓「ここから消えて! 近付かないで!」ジュッ

澪「な、なんだよ。その……光みたいなの」

梓「……」ビリッ

シーン

澪「……梓、一体何をしたんだ?」

梓「澪先輩。せっかく助けたのに、お礼も無しですか?」

梓「まずは一言あるのが礼儀ですよ?」

澪「うん……ありがとね、梓。でもなんでここにいるんだよ?」

梓「……助けにきたんですよ。ほら、ムギ先輩も一緒ですよ」

紬「大丈夫? 澪ちゃん梓ちゃん」ヒョコッ

澪「ムギ……」

紬「唯ちゃんが、澪ちゃんを助けてあげてって……ね」

紬「それにしても、すごいわね梓ちゃん!」

梓「いえいえ、とんでもございません」

澪「……唯か。あいつも、なんだか成長してんのかなあ」

梓「……あの、助けたのは私なんですけど?」

澪「そこはもっと謙遜しろよっ!」スビシッ

紬「うふふっ」

梓「にゃ~。納得いかないな~」ワニワニ

梓「なんか納得いかないな~」ワニワニ

梓「どうにも納得いかないな~」ワニワニ

唯「……で、肝心の唯はどうしたんだ?」

梓「納得いかないにゃ~」ワニワニ

澪「ああっ、もううるさいな! いいからっ!」

澪「唯は一体どこに言ったんだ?」

紬「……りっちゃんを助けにいったわよ」

澪「それはどこなんだ? わかる?」

梓「わかりますけど~、納得いかないにゃ~」

澪「じゃあムギ。案内してくれ!」

紬「うん、わかったわ任せて!」

梓「わわわ、待って下さい! ナナちゃんは……どこにいるんですか?」

澪「ああ、ナナちゃんなら奥にいるよ。タケルって子が付き添ってる」

梓「大丈夫……ですかね? 心配だからちょっと見てきます」

紬「梓ちゃん、野暮な事はしちゃダメよ~」メッ

梓「……」

澪「な?」

梓「わかりましたよ」

澪「じゃあ行こうか、梓」

梓(本当は納得いかないな~)ワニワニ

紬「ふふっ」

……。



団地 屋上


唯「……りっちゃんは?」

リル「私の家で寝ている。心配ないよ」

ヒュゥゥゥ


リル「止めないでね、お願いだから」

リル「これで全部終わりだから……みんなを助ける事ができるから」

唯「みんなのさ、悲しい声は聞こえたよ」

唯「この団地の世界は異常で、そこに住んで……苦しんでいるみんながいる」

唯「でもリルちゃんのしようとしてるそんな方法じゃあ……解決しないよ」

リル「……」

唯「人が死んでも、そこまで関心はしてくれないんだよ?」

唯「誰もそんなには見てくれないよ……みんな自分の事しか関心ないんだよ?」

リル「だからって、何もしないで快楽を貪るなんて私たちにはできないよ」

リル「だからダイブするの。一瞬だけの苦痛と引き換えに私たちは……全てから解放されるの」

唯「……同じだよ」

唯「自分が言ってる、快楽に惹かれる人たちと一緒じゃん……自殺だって

、一瞬だけ。最後の快楽を選んでるんでしょ!」

リル「……」

唯「逃げているだけだよ……死ぬこと自体の意味は変わらないよ」

唯「そこで主張したって、無意味になるだけなの……死ぬことに意味なんてないよっ!」

リル「……」

唯「……悲しいよ、死ぬなんてさ」

リル「意味がないんなら、私が意味を持たせるよ」ニコッ

リル「りっちゃんと約束したの」

リル「私が終わりにする、って……」

唯「……りっちゃんが?」

リル「だから、私に任せて。私が死ぬ事で、ダイブがなくなれば……」

唯「ダメ! 絶対にダメだよ!」

唯「死んじゃダメなんだよ!」

リル「……」

あっちの世界は冷たくて、とっても怖いんだよ

リル「えっ……」

暖かいのは最初の一瞬だけ

みんな、こっちの世界に戻りたがってる


唯「……どうしたの、リルちゃん?」

リル「あの子供みたいに……」

リル「ああ、私の事、迎えに来たんだね」

唯「リルちゃん、どうしたの。何か聞こえるの!?」

リル「天使なんだね」

唯「リルちゃん……リルちゃんてば。私の話、聞こえてる!?」

リル「……こんなに心配してもらった事なかった」

リル「生まれて初めて」

リル「生きていて……よかった」

リル「でも……遅かった」

フラッ

唯「リル……!」

ヒュゥゥゥゥゥゥ……

……。


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最終更新:2011年06月05日 23:07