さんねんご!
唯『ひゅーどろどろどろっ うーらーめーしーやー!』きゃっきゃ
和「はいはい。これからドイツ語の勉強するからあっち行ってて」
唯『ちぇー。最近和ちゃん冷たいよ』
和「お通夜の時のあんたに比べたら冷たくないわね」
唯『そういう意味じゃないよ! まったくもう、和ちゃんはでりばりーってものがないよっ』
和「そりゃ、私はピザ屋じゃないもの」
唯『でっ、でりかしー!』
和「本当、生きてた頃と変わらないわね」
唯『えへへ、そうかな?』
和「もう私も大学三年よ、ちょっとぐらい成長しても良さそうなのにね」
唯『……だよねえ』ぷにぷに
和「なんで胸の話になるのよ・・・・」
唯『うぅ・・・・あずにゃんでさえ成長したのにー・・・・化けてでてやるもんっ』
和「もう化けて出てきてるでしょうが……それより唯、なんで梓ちゃんの」
唯『てへぺろ☆』
和「……はぁ。ちょっと反省してなさい」
唯『そんな、私は後輩を見守る守護霊なんだよー?』
和「ところで唯、軽音部室ポルターガイスト事件って知ってるかしら」
唯『そっその節はたいへんもうしわけございませんでしたっ!!』
和「まったくもう……あんたの悪ふざけのせいでお祓いまでしてもらったのよ」
唯『おかげで部室に入れなくなっちゃったもんね、私』
和「自業自得でしょ」
唯『だってぇ……ちょっとこう、ギー太弾いてみたいなって思っただけなのに』
和「私だって勝手にギターが宙に浮いて爪弾かれてたら卒倒するわよ」
唯『和ちゃんだけだもんね、私が見えるのって・・・』
和「まあ、唯の子守りには慣れてるもの」
唯『和ちゃんしどい・・・えぐえぐ』
和「はぁ・・・憂はもう公務員試験の勉強はじめてるっていうのに」
唯『えっ、憂まだ大学二年だよね?!』
和「なんでもそうだけど、意識が高い子は違うの。あなたも・・・まあ、唯はいいけれど」
唯『あははは・・・・地味にへこむよ、それー』
和「悪かったわね」
唯『はぁ……そうなんだよねえ、憂もあずにゃんももう二年生かー』
和「……」
唯『……和ちゃん。まだあずにゃんと連絡取れないの?』
和「……憂は、元気そうだって言ってたけれど」
唯『・・・・私がいきなり死んじゃったりしなければ、よかったんだよね』
和「唯のせいじゃないわよ。・・・・梓ちゃんのことは、どうしようもなかったから」
唯『あずにゃんも、いつか分かってくれるよ』
和「……ありがとう」
和「ところで、今日はずいぶん遅かったじゃない」
唯『うん。一人旅もいいもんだよ』
和「あんたは暇そうでいいわね……」
唯『昨日はね、うちの近くとか散歩してきたんだ』
和「へえ。どうして?」
唯『うーん……雨、降ってたからかな?』
和「理由になってないわよ。……まあ、今もすごいけど」
唯『まあ、適当に電車乗ったら桜ヶ丘着いちゃったんだよ。えへへ』
和「ふうん・・・ホットミルク、飲む?」
唯『うん。なんだか冷えてきちゃったもんね。ありがと』
和「はい」
唯『えへへ。……あったまりますなあ』
和「もう6月じゃない・・・」
唯『私は冷え性なの!』
和「そりゃあ、もう夜中の二時だもの」
唯『え? うわあ、ほんとだ』
和「それで、桜ヶ丘はどうなってたのよ」
唯『うーん……変わってない、わけじゃなかった・・・かも』
和「どっちつかずね・・・」
唯『私だって、昔のことあんまり覚えてないもん』
和「あんたはいつのことでもはっきりしないじゃない」
唯『あはは、和ちゃんひどーい』
唯『あ、そうそう。あの児童公園の向こうのエスコがつぶれてた!』
和「えっ・・・・ああ。スーパーたらいや、だったかしら」
唯『そうそう、私たちが小学校入る頃はたらいやって名前だったんだよねえ。なつかしいなあ』
和「そういえばこの前、実家に帰ったときに商店街のほとんどがシャッター閉まっててびっくりしたわね」
唯『そうそう、そうなんだよ! あのお惣菜屋さん、とみおばあちゃんとよく一緒に行ったのになあ・・・』
和「変わるものねえ……」
唯『……私は変わらないけどね』
和「言ってないわよ、そんなこと」
唯『幽霊だもん、変わったらこわいよね。あはははっ』
和「……言わなくてもいいじゃない、そんなこと」
唯『えへへ。・・・・でも、やっぱ変わったほうがいいに決まってるよ。和ちゃんも、憂も』
和「……憂、ひどく熱心に勉強してたわ。身体壊しそうなぐらいに」
唯『そうなんだ・・・そうだよねえ』
和「・・・・・憂にも、唯が見えたらよかったのにね」
唯『私の言うことも、心配も、和ちゃんが伝えるしかないよ』
和「でも・・・・ごめんなさい、唯」
唯『ううん、和ちゃんってそういうのへたっぴだもんね!』
和「唯に言われるとしゃくにさわるわね・・・」
唯『あはは。・・・・憂やあずにゃんには、私のことは忘れて幸せになってって、それだけ伝わればじゅうぶんだよ』
和(・・・忘れられるわけ、ないじゃない。少なくとも、私には)
唯『・・・?』
和「ううん、気にしないで」
唯『そういえばさ、帰るときヤマダ電機寄ったの。池袋の』
和「ちょっ、ちょっと唯。パソコンとか勝手にいじったりしなかったでしょうね?」
唯『えへへ、やだなあ。ポルターガイストはもうこりごりだよお』
和「そう・・・ならいいけど」
唯『それでね。薄型テレビとかのコーナーで、暇だからドラマ見てきたんだ。再放送してたやつ』
和「へえ。どんなの?」
唯『一本目はちょうつまんなかった! えっとね、恋人と死に別れちゃうだけの話なんだよ』
和「ふうん・・・」
唯『死んでいなくなって悲しいって、そんなのもう流行んないよ。和ちゃんが書いてる脚本の方が面白いよ』
和「それは・・・たぶん、身内のひいきよ。私だって、ちゃんとしたコンテストに受かったわけじゃないんだし」
唯『でも有名なシナリオライターの教授にほめてもらってたじゃん! 和ちゃんはもっとがんばらなきゃ!』
和「はいはい。それで、一本目ってことは二本目があったのよね」
唯『うん。そっちは・・・・なんか、ちょっぴり心に残ったかも』
和「へえ。参考に聞かせて」
唯『和ちゃんも知ってるやつだよ。三年ぐらい前、私が生きてた頃にやってたドラマ。おけぶいん、ってやつ』
和「……なんだったかしら、それ」
唯『ほらあ、主人公の倉沢あいって子が部活に入ってがんばる話! そのころ一番人気だった女優さんだし、すごかったじゃん』
和「ああ・・・・ずいぶん懐かしい話ね。映画化してどっかのコンビニとかでタイアップも取ってたものね」
唯『でも、あの女優さん最近見ないよね。・・・ていうか、なんて人か思い出せないし』
和「そうねえ・・・浮き沈みの激しい業界、だから」
唯『でもテレビの中じゃさ、今も若いまんまなんだよね。・・・・・なんかね、まるで私みたいだなって』
和「どういうこと? 名前?」
唯『違うよっ、歳とらないってこと』
和「……作品になったら、歳は取れないものね」
唯『私みたいだよね』
和「……そう、かもね」
唯『おんなじなんだよ。ドラマのキャラって、歳とらないから』
和「ものにもよるけど、・・・・そうね、一番かわいかった時を脚本にすることは多いわね」
唯『えへへー、私もかわいい? 和ちゃんあいしてるー!』だきっ
和「ちょ、そういうのじゃなくて! ・・・・もう」
唯『・・・ねえ。ぎゅってしてよ』
和「はいはい・・・・どうしたの、急に」なでなで
唯『・・・・・和ちゃんは、生きてるからわかんないんだよ』
和「そうね。・・・・私なんて、分からないことだらけよ。だからちゃんと、言ってくれないと」
唯『あのドラマに出てきた子たちも、ただのキャラなんだよ』
和「そんな言い方・・・・ううん、続けて」
唯『だからね、見た人の心の中では大人になれないで、ずっと女子高生のまんまなんだと思う』
和「……それが、卒業式の日に死んだあなたみたい、って?」
唯『・・・・・』
和「・・・・考えすぎよ」
唯『・・・ごめん、変な話して。ところで和ちゃんはこれから、どうするの?』
和「どうするって・・・そろそろ就活を始めて、できれば放送関係か出版系に内定とって、」
唯『脚本は?』
和「いきなりそれだけで食べていけるほど甘くないわよ。・・・・勤めながら公募を続けるつもり。フジのヤングシナリオ大賞とか」
唯『ほえぇ・・・・さすが和ちゃん』
和「意味わかってないでしょ、唯」
唯『えへへへ』
和「もう、唯はかわら・・・・ううん、なんでもない」
唯『私は変わんないよ、変わらず和ちゃんの恋人だもん。えへへ』ぎゅっ
和「・・・・ふふ、そうね」
唯『・・・・・ごめんね』
和「どうしたの、急に」
唯『やっぱ、私のせいだよ。和ちゃんが演劇のサークルやめたの』
和「それこそ、唯には関係ないわよ」
唯『関係なくないよ』
和「はぁ・・・・あのサークルでトラブったのは、私ひとりの話に決まってるじゃない」
唯『だって、』
和「ちょっと唯。あなたがどうこうできると思う?」
唯『そういうんじゃなくて・・・・・ううん、そうだよね。死んでるもんね、私』
和「・・・・・」
唯『でも、やっぱ離れた方がいいんだよ。幽霊とつきあうのはマチガイなんだよ! 和ちゃんだって――』
和「それは気にしないっていつも! ……ごめんなさい」
唯『・・・・やだ。やっぱ和ちゃんは、私のことなんてきれいさっぱり忘れるべきなんだよ』
和「・・・・・」
唯『3年の花田先輩とホテル行ったじゃん。そこで・・・ちゃんと、えっちすればよかったんだ』
和「・・・・・」
唯『・・・・っ・・ごめん、わたし・・・ぐすっ・・・最低なこと、いってる・・・・』
和「……唯は、悪くないって言ってるでしょう」
最終更新:2011年06月06日 20:54