──

澪「さて、準備出来たか?」

唯「完了でありますりっちゃん将軍っ!」ビシッ!
律「ようしそれでは幻の生物夢牛求めてゆくぞーっ!」

律唯「おーっ!」

澪「この元気がいつまでもつやら」

憂「私はここを離れられませんから……」

澪「わかってる。唯のことは任せて」

憂「はい!」


唯「それじゃ~いってきま~す」フリフリ

憂「行ってらっしゃ~い」

律「澪、私生きる目標見つけたよ」
澪「ほんとか?!」

律「ああっ! 唯! 憂ちゃんく」
唯「駄目」

律「私は何を目標にして生きて行けば……」
澪「いや、今でも十分楽しそうに見えるよ」


一日目

唯「山をこ~え~海を越え~」ヤンヤヤンヤ
律「旅立つサームライどこへゆくー!」ヤンヤヤンヤ

澪「水はこまめに貯めといた方がいいな」

唯「憂のお弁当うんまぁ」ムシャコラ
律「いい嫁さんになるぞ~あれは!」ムシャコラ

澪「(二人ともそれが三日分ってことわかってるのかな……)」

────

二日目!

律「旅立つサームライ……どこいった?」
唯「さあ……」

澪「森に食べ物がないかもしれないし……明日に残しておいた方がいいな」

────

三日目

唯「侍さんよりごはんどこ……」
律「唯、この葉っぱ結構いけるぞ……」

澪「初日にガツガツ食べるから……ほら、分けてあげるから葉っぱ食べるのやめなさい」


そうしてようやく……。

唯「つ~いた~よ~!」

律「村だー!」

澪「じゃあ早速ムギュウについて聞いて回ろ」

唯「」バタン
律「」バタン

澪「!? 二人ともどうした!?」

唯「……お腹いたい」ガクリ
律「葉っぱ、毒、だったかな?」ガクリ

澪「唯いいいいりつううううううううう」

紬「大丈夫ですか!?」

澪「あ! 村の方ですか!? ちょっと運ぶのを手伝ってもらっても……」

ヒョイ ヒョイ
律 紬 唯

澪「(あんな簡単に肩に担いで……)」

紬「急ぎましょう! こっちです!」

澪「う、うん!(まさか、な)」

唯「うい~……イッツァライス~」

澪「夢にまで南蛮訛りなんて、よっぽど気に入ったんだな。私が教えた南蛮の言い方」

律「みお~……団子~……ミタイナムネダナ~」

澪「おい、起きてるだろ」

律「むにゃむにゃ」

澪「狸寝入りとはまさにこのことだな」

紬「お二人の体調はどうですか?」

澪「だいぶ良くなったと思います。特にこっちの黄色っぽいのには」ツンツン

律「ふごぉ」

紬「ふふ、仲がいいのね。羨ましい」

澪「いやぁ……まあ、うん」

紬「そう言えばこんな辺境の地まで何をしに?」

澪「うん、実はムギュウを探しててさ」

紬「!?」

紬「そ、そうなの」アセアセ

澪「この村にいるって聞いたんだけど……」

紬「そ、そうかしら?」

澪「それで聞きたいんだけど……この村にスッゴい筋肉した明らかに剛力の持ち主!って感じの人いない?」

紬「」ガーン

澪「? どうかした?」

紬「いえ……何でもないわ」

澪「何でも家を吹き飛ばしたり大岩を投げて川を塞き止めたりも出来るって噂だからな。
さぞ大男なんだろうな~怖いなぁ」

紬「」プルプル

澪「ん?」

紬「むぎゅうえ~んっ!」メソメソ

澪「どうしたんだろ……?」

律「やっちまったな」
唯「ですな」

澪「起きてるなら会話に混ざれよ」


澪「えっ!!!??? あの子が夢牛!!??」

律「ああ」
唯「うん」

澪「ないない。背丈も私と変わらないぐらいの女の子が牛を片手で投げられるわけないだろ?
きっとこんなんだよ」

__________

ガチムチ「hai!」

_ ________
 V
 澪「怖い怖い怖い怖い」ガクブル

律「おーい、戻ってこーい」


唯「私も最初はあり得ないと思ってたけど……持ち上げられた感触があの子が夢牛だってことを証明してたんだ」

律「ああ……あれは凄かった。あれに止めさされたと言っても過言じゃないな」

澪「?」

紬「よいしょっ」

律「ッ~─────」

紬が律を持ち上げた瞬間重力が逆行し、押し上げられ、未知の世界へのロードが開かれんばかりの衝撃が律を覆った!

紬「あそ~れ♪」

唯「フンゴォォォォッ─────」

唯が持ち上げられた瞬間、まるで闇空(宇宙)にまで垂直投げされるのではないかと言うぐらい持ち上げの早さそして空気圧!

律唯「」チーン

_ ___________
 V
唯律「ってことがあって」

澪「絶対夢牛だよそれどうしよう酷いこと言っちゃった!」

律「謝りに行くしかないな」
澪「だよな……」

唯「」ポン
澪「唯……」
唯「投げられないようにね!」
澪「励ましのつもりかっ!」

紬「村長……私どうしたら」

村長「おまえさんは優しい子じゃ……話したらき~とわがってくれる」

紬「……こんな私でも……友達に、なってくれるでしょうか?」

村長「んだども」


\すみませーん/

\ごめんくださ~い/
        ガ
       \ス/
\投げられにきまV……すいません/

村長「ほら、迎えにきてくれただえ?」

紬「はいっ!」ムギュンッ

紬「今開けますね~」ドシャバキズスゥォォォ

律Σ扉紬
ゴスン───

ズサアアアアアア
律≡≡≡≡≡

澪「りつうううううううう」
紬「あ」唯「あ」


紬「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

律「まさか扉に当たった勢いで10mぐらい吹き飛ばされるとは思わなかったよ……」

唯「りっちゃんそれ笑えないよ!」

紬「……ごめんなさい」

澪「ちゃんと謝ってるんだから許してあげなよ」

律「もう気にしてないよ」

紬「……ほんと?」

律「ほんとほんと」

紬「良かったぁ」ほっこり

律「(唯と言いこの子と言い人は見た目じゃわからんもんだな)」

澪「さっきはごめんね。その……知らなかったんだ。ムギュウが女の子だなんて」

紬「ううん。気にしないで。当然のことだもの」


紬「私は琴吹紬。よろしくね」

唯「平沢唯だよ!」
澪「秋山澪、よろしく」
律「田井中律だ、よろしくな」

紬「唯ちゃんに澪ちゃんにりっちゃんね! 私のことはムギって呼んでね!」

律「ムギュウは駄目なのか?」

紬「……ムギって呼んでほしいの。駄目?」

律「いーや、駄目じゃないよ、ムギ」

紬「ありがとうりっちゃん♪」

唯「(機嫌良さそうだね」
澪「(ああ。この分だと野武士撃退に協力してくれそうだな」

唯「(よし!」

唯「ムギちゃん、その力を是非私達に貸してください!」

紬「?」


────

紬「そう……村が野武士に」

唯「うん。それで今屈強な侍を集めているんだよ!」

澪「ここから山を三つ越えたところなんだけど……」

律「頼む! ムギがいれば百、いや千人力だ!」

紬「……」



紬「ごめんなさい、行けないわ」

唯「……どうしても?」

紬「うん……。ここのみんなを置いていけないもの」

澪「そうだよな……ここだって野武士が来ない保証なんてないし」

唯「うん……しょうがないよね」

律「ああ。他を当たろう」

紬「……(あなた達も結局力だけしか見てくれてなかったのね……。
本当の友達になれると思ってたのに……)」


村の入口

紬「本当にごめんなさい……これ、私が作ったお菓子なの。後、こっちがお弁当」

律「何から何まで悪いな」

澪「世話になったよ」

唯「じゃあね、ムギちゃん!」

紬「うん」

さよなら、私の初めての友達になってくれそうな人達……。

小さく手を振りながら、三人を見送る。

せめて、無事だけでも祈ろうと目を閉じた時だった。

唯「また来るからね~」
澪「ああ! 野武士を倒したら報告しにいくよ!」
律「それまでこの村ちゃんと守るんだぞ~」

紬「えっ……」

涙が、溢れた。
わからないのに、自然と溢れてきた。
違うの、わかってるけどわかってないの。

彼女達は、私の力なんて関係なくまた会いに来てくれると言っているんだ、それがわかった時、私は声を出して泣き始めた。


紬「ムギュ……クスンムギュ……」

村長「紬、行ってやりなさい」

紬「村長!? でも……」

村の子供「ムギねーちゃんがいなくたってこの村は俺達が守ってやるよ!」

村の子供「だから心配せずに行ってきて!」

村の子供「ムギュパワー見せてやれームギュギュギュギューン」

紬「みんな……」

村長「これを持っていけ」

ドサッ

紬「これは……」

村長「斬馬刀……馬すら一刀両断すると言われている太刀じゃ。今のお前さんなら使えよう」

紬「ありがとう村長! みんな! 私、この力じゃなく私自身を必要としてくれてる人達のところに行ってくるね!」

紬「ううん、まどろっこしい言い方はやめにしましょう」

紬「友達を助けに、行って来ます!」


────

律「はあ……惜しい人材を逃したな」

澪「それは言わない約束だろう?」

唯「ムギちゃんはムギちゃんの、私達は私達の戦いをしよう。大丈夫、きっとまた会えるよ!」

律「全部終わった後にな!」

澪「ああ」


ドスンッドスンッドスンッ

律「な、なんだ!?」

唯「地震?!」

澪「見ろ! 木が何かを避けてる!!!」

律「違うっ! 避けてるんじゃない! 当たったと同時にへし折れてるんだ!!!」

紬「みんな~待って~」バキドサグシャズスゥォォォ

澪「待つから! 待つからその背負ってる刀を縦に持って! 木引きずってるから!」


【五人目 琴吹紬】

巷で噂の夢牛ことムギ。
実際のところ震源地はムギが足の悪い牛に餌をあげる為に持ち運んだのを村に来た商人が見たのがきっかけなそうな。

本当は心優しく動物を投げ飛ばしたりすることなど絶対にしない、が、友達と村人の為なら心を鬼とし、野武士を狩る牛鬼と化す……かもしれない。
しかし、夢牛の伝説は遥か昔からあったと明記されているが……他に彼女のような剛力の持ち主がいるのだろうか。

愛刀 村長の斬馬刀
部類 斬馬刀


唯「これで五人……もう戦えるよね! 憂!」

憂「う~ん……」

律「まだ駄目か……」

憂「この村には北、南、東門がありますから最低でも6人は欲しいんです。
2人づつ配備する予定なので」

澪「ってことは後一人か……」

紬「一気に5人も友達が出来るのね!」

唯「後一人……。仕方ない、あの人に頼ろう」

憂「お姉ちゃん……でも、来てくれるかな?」

唯「きっと来てくれるよ……和ちゃんなら!」


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最終更新:2011年06月06日 22:03