律「まさかあの真鍋和と幼なじみとはな~世間ってやつは狭いもんだ」

澪「この辺りでもっとも強いと言われている侍……真鍋和、か」

唯「みんなが言ってたのって和ちゃんのことだったんだ~。確かに昔から強かったよ~」

律「でも今は将軍のお抱え侍だろ? こんな野武士討伐なんかに出てきてくれるのか?」

唯「さあ?」

澪「さあって……」

紬「友達と城下町歩くなんて夢みたい!」

律「興奮してほんとに白昼夢起こさないようにな」

澪「あ、見えてきた。あそこだよ。真鍋和の本家」

唯「ごめんくださ~い」

和「どちらさま……あら、唯。久しぶりね」

唯「ヤッホー」

和「何の用かしら?」

唯「野武士退治手伝って!」

和「わかったわ」

唯「ありがとう和ちゃん!」

和「ちょっと待っててね。準備してくるから」

唯「はーい」



律澪「って待て!!!!」

唯「ほぇ?」
和「なにかしら?」


澪「話つくのが早すぎだろ!」

律「ほら、将軍のお抱え侍だから無理なの……的な展開は……」

和「ないわね」

律「さいですか……」

唯「幼なじみだからね!」ブイッ!

紬「いいなぁ~。私も唯ちゃんと幼なじみなりたぁい♪」

澪「ムギ、幼なじみは……いや、何でもない」

和「実は野武士にはこっちも頭を悩ましているのよ。村が荒らされたら年貢が減るから上も焦って討伐隊組んだもののお付き侍ってプライドだけは高いから全く動かないのよ。
ほんとは野武士にビビってるのね、あーやだやだ」

澪「何か大変そうだな……」

和「というわけでこちらとしても好都合なわけなの(唯も心配だしね)。野武士討伐、ご一緒させてもらうわ。
真鍋和よ、よろしく」

唯「よろしくね!和ちゃん!」
澪「よろしく」
律「よろしく……」
紬「よろしくねっ!」

和「ええ」

唯「これで六人揃ったよ!」

澪「いよいよ野武士と戦うのか……緊張してきた」ガクブル

律「けっ、野武士の10や20私が一人で蹴散らしてやるよ!」

紬「みんなは私が守るわ! 友達だもの!」

唯「さあ! 決戦の時だよ!」




梓∥じ~

梓「侍……!」



【六人目 真鍋和】

将軍の付き人侍。この辺りでは和に並ぶものなしと言わせる程の実力。
将軍の夕食時、ハエが飛び待っていたため切り落とせと命じられ、居合い一閃、一発で切り落とし、死骸を味噌汁の具の一つにしてしまったのは余りにも有名。

赤いフレームの眼鏡と、袴姿がとても良く似合うため、影にファンクラブが出来る程の人気があることを本人は知らない。

愛刀 唯命(ユイメイ)
部類 長覆輪大太刀



憂「おかえりお姉ちゃん!」

純「おかえりなさい皆さん!」

唯「ただいま憂! 純ちゃんもふもふ~」
純「ひゃあ~」

憂「ん~っ!」

和「あら、お姉ちゃんをとられて嫉妬かしら?」
憂「和ちゃん!!! 来てくれたんだね!」

和「唯と憂の頼みじゃ断るわけにはいかないもの」

憂「ありが……あっ」
和「会いたかったわ……」ぎゅっ


律「……なんだろう、この疎外感」
澪「わ、私はしないからなっ! はしたないっ!」

律「誰がしたいって言った!」

紬「ちょっと行ってくるね!」
律「まてぇい!」
紬「むぎゅっ!?」

律「抱き締めるのはいいけど力加減を考えような、ムギは」
澪「そんな興奮して抱き締めたら中身出ちゃうよ……」


――――

「全くなにやってるんですか。敵の予想侵攻ルートの作成は?」

和「わ、わたし?」

「そうですよ。眼鏡つけてるんだからそういうの得意でしょ?」

和「え、ええ……まあ」

「そこの頭もふもふしてるのは村人の陣形チェック。急いで」

純「は、はいっ!(あれ? こんな人いたっけ……)」

「あなたは私と一緒に作戦会議」

憂「え? えっと……」

「後は野武士退治に向けて素振りでもしててください。じゃ」

律「じゃ、じゃないだろ!!! てかお前誰だよ!」

澪「いつの間に仲間にしたのか?」

憂「いえ……さっきお姉ちゃん達と一緒に帰って来てたから新しい仲間の人かなって思ってんですけど」

律「私達も憂ちゃん達も知らない……じゃあお前はなんだ!!!」

「よくぞ聞いてくれました……私こそが、七人目の侍!」

梓「中野梓です!!!」デデーン

唯「んん~ちっちゃくて可愛い~」ぎゅ~

梓「や、やめてくださいっ! こちとら侍ですよ!? なめんなやがれですっ!」モガキモガキ

澪「……どうする?」

律「どうするって……」

和「侍ならいいんじゃない? 人は見掛けによらないし、案外この子も凄いのかも」チラッ

紬「?」ニコニコ

梓「ふん、この梓流剣術さえあれば野武士なんでズバババーンですよ!」

律「まあ得物だけはデカいな」

澪「長干しか、身長よりあるんじゃないか? それ」

梓「へっちゃらですよこのぐらい! なめないでください!
侍ですから! 私!」

唯「」クンクン

唯「おかしいなぁ~あずにゃんからはお米のいい匂いがするんだけど」

梓「に゛ゃっ」

律「……ちょっと刀抜いてみろ」

梓「よ、余裕ですよこのぐらい!」

梓「ふんぬ~」

紬「頑張って!」

梓「はい! ありがとうございます!」ペコリ

律「律義だな」

梓「ぬんふぅは~ていや~抜けろ~こんにゃろ~んしょぉ!」

紬「もうちょっとよ! 頑張って!」
唯「頑張れ!あずにゃん!」
憂「がんばって梓ちゃん!」

梓「よいこらしょ~こにゃろ~ふんしゃ~~~~んにゃあっ!」スポン

梓「どうですか!」ヘヘン

紬「凄いわ!」パチパチ
唯「よくがんばったねあずにゃん」パチパチ
憂「偉い偉い」パチパチ

梓「えへへ」

律「えへへじゃねぇよ!!! 戦場なら5太刀は浴びてるぞ!!!」

澪「さすがにちょっと……な」

和「小太刀を渡せば使えるってレベルじゃないわね」

梓「そ、そんなこと言うなら眼鏡の人やってみてください! これすんごく重くてくねってて抜きにくい」

和「」スサッ ザンッ チャキン

和「刀はいいわね」

律「ひゅ~カッコいい~」

澪「あれが居合いかぁ~」

唯「惚れ直したよ和ちゃん!」

憂「和ちゃんカッコいい~」

紬「凄いわ~」

梓「ぐぬぬぬ」

純「ケラケラケラ」

梓「ガミガミガミ!」

純「ふーん」

梓「ぐっ……農民にもバカにされるとは……! こうなったら……!」

梓「仲間に入れてください」ヒラニー

律「次は土下座か……なんと言うか忙しいやつだな」

梓「デコ八は黙ってやがれです!」

律「デコ八?!」

澪「ぷふっ」

律「笑うなー!」


梓「どうかお願いです……私を七人目の侍として認めてください!」

唯「どうしてそんなに侍になりたがるの?」

梓「農民じゃなにも得られない……守れない、ただ失って行くだけだからです。私は……強くなりたいんです!!!」

律「(こいつ……昔の私そっくりじゃないか)」

唯「斬り斬られる覚悟は出来てるの? ここにいるみんな遊びでやってるんじゃないんだよ?」


梓「……出来てます!」
唯「……どうしよう」

和「私は反対ね。変に関わって死なれたら後が悪いわ」

澪「私も反対かな。もっと別な生き方があると思うんだ」
憂「私も反対です。危ないから……ね?」

梓「……」
紬「私は」

梓「」パァァ←味方してくれてたから期待してる人の図

紬「反対ね」

梓「」ガックシ←裏切られて落ち込む人の図

紬「こんな危ないこと、出来るなら関わって欲しくないわ」

唯「じゃあ反対多数で……」

梓「そんな……私にはもうこれしか」

律「待ってくれ」

梓「!!?」

唯「りっちゃん?」

律「私はこいつを入れてもいいと思う」

唯「理由はあるの?」

律「この戦国時代ってのは力がすべてだ。ないものはただ失って行くだけ……ここでこいつが一人になっても死ぬだけだ」

梓「っ……そんなこと!」

律「どのみち死ぬならここで死ね」

梓「!!!」


純「いくらなんでも酷すぎじゃ……」

憂「ううん、違うの。律さんの言いたいことは」

その場の全員がもし農民ならその言葉の意味を間違えて解釈していただろう。

律が言ったのはそんな簡単なことではない。

ここで死ぬようならどのみち死ぬ、ならばここを生き抜いてこの時代を生きて見せろ、と言う意味合いが込められていた。

梓「……ハイッ!」

この意味がわかった瞬間、もう彼女は侍になったのかもしれない。


【七人目 中野梓】

元農民。侍になるために旅をしているところで唯達を発見し、仲間になろうと決意する。

体に似合わぬ大太刀は父親が戦場から拾って来たものを持ち出した。
両親共々野武士の焼き討ちに合い死亡している。

籠手を額に巻き付ける格好をよく取るが頭が小さい為すぐにずり落ち、首飾りとなっている。

愛刀 無丹(ムッタン)
部類 大太刀



そして、いよいよその時が来た────

純「今日が収穫日……来るなら間違いなく今日です!」

憂「作戦開始するよ!」

唯「うん!」律「いよいよか」澪「ああ」紬「頑張らなきゃ」和「腕が鳴るわね」

憂「澪さんと和さんは北口に! 紬さんは南に! 火縄銃があるかもしれません! 十分注意してください!」

澪「わかった」
和「任せて」
紬「火縄がなんぼのもんじゃ~い」

唯「私は?」

憂「お姉ちゃんは私と一緒に東口だよ! 律さんは梓ちゃんと合流したら西口に!」

唯「了解だよ!」

律「わかった」

純「私達も頑張りますから皆さんもがんばってくださいね!」

唯「あの時の白ご飯の恩義……今日返すよ!」

バカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッバカラッ

梓「怖がるな……!」

私が怖がったらみんなが後に続けない!

ムギ先輩に作ってもらった旗を地面に深く突き刺す。

行けっ! 私っ!

梓「きやがったですきやがったですきやがったですーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」

梓「やってやるです!!!!!」


野武士「村が……あんだありゃ?」

野武士「城みたいになってやがる……」

野武士の頭「構うもんか!!! 突撃だ!!!!」

「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」



梓「あんなに……」

律「もうビビってんのか?」

梓「そ、そんなこと……」

律「覚えとけ、弱いやつほど良く群れるんだよ。そして、強いやつほど孤独を好む」

脇差しを抜刀し、修羅像のように構える。

梓「私達は……?」

律「さ、どっちだろうな!」

律が馬の軍勢に突っ込んで行く。
分隊してるとは数は優に20を越える。

野武士「バカが一人突っ込んで来てるぞ!」
野武士「生意気に刀なんか持ってやがる!!! 首を飛ばせ!!!」

律と野武士、その距離実に30m。どっちも接近し合いの片方が馬ならほぼ距離はないと言っていい。

律「首が飛ぶのはどっちかな!」

その時、律が片方の脇差しを深く地面に突き刺した。

野武士「見てみろよあれ。落っことして抜けなくなったか~? 」

笑いながら突っ込んで来る野武士達、完璧に小兵の律がこちらに手出し出来るわけがないとタカをククっている。

が、その慢心が命取りとなる。

律「妙技……」

律は地面に刺さった脇差しの柄を踏みしめ、

野武士「なっ」

空高く飛び上がった──

律「馬跳び」

すれ違い様に首が二、三個鮮血を撒き散らしながら飛ぶ。

律「首が飛ぶのはあんたらだったな」


梓「凄い……あれが……侍」

馬に乗っている野武士相手に次から次へと斬り伏せ、返り血が頬にかかるのも気にせず、ただ己の命の為に敵を斬る。

梓「私には……やっぱり無理だよ……こんなこと」

足が震える、喉がカラカラに渇き今すぐここから逃げ出せと脳が信号を送り続けてくる。


梓「でも……逃げたらほんとに侍じゃなくなっちゃう」

梓「だから!!!」

大太刀のムッタンを抜き出し、両手いっぱいに握りしめ駆け出す。

梓「うああああああ!!!!」

私を侍にしてくれるチャンスをくれた律先輩を守る為にも、絶対に逃げるわけにはいかない!

梓「どのみち死ぬならここで死んでやるです!!!」


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最終更新:2011年06月06日 22:04