澪「レッツゴー、突き抜けようぜ♪夢で見た夜明けへ、まだまだ遠いけど♪」

バババババババッ!

ガムリン「澪さん!あぶない!!」

澪「メイビー、どうにかなるのさ愛があればいつだって♪」

澪「おれの歌を聞けば、簡単なことさ、二つのハートをクロスさせるなんて♪」

ピシューーーン

律「行くぞ!」

紬「うん!」 梓「はい!」

唯澪「夜空を翔けるラブハート♪燃える想いを乗せて~♪」

唯澪「悲しみと~、憎しみを~、撃ち落として行け~♪」

“本当の空へ。本当の空へ。命輝く空へ。”

ドイツの哲学者の言葉に『大地という現実に忠実に生きよ』というものがあるらしい。
時に空想や夢を抱きながらも、ささやかだけれど幸せな高校生活という“現実”を、私たちは大切にして来た。

しかし、“大地という現実”に忠実に生きた者のみが飛び立つことのできる“本当の空”が、“命輝く空”があるとしたら…。なんてことは考えたことがなかった。

高校三年間最後の学園祭ライブ。そんな平凡で幸せなある日に「出会い」は訪れる。


ライブ前!部室!

律「おい、澪、なんか変な音が聞こえないか?」

澪「耳鳴りか何かと思ってたんだけど…、律もか…。」

遠く、低く、耳鳴りというには深すぎるうめき声の様なものが頭の中と体中に響く。

律「大丈夫か?」

澪「あ、ああ。そろそろステージ行かなくちゃだしな。」

眩暈がするが、高校生活最後のライブ。そうも言っていられない。



学園祭ライブ!

演奏が始まると“眩暈”はもっと激しくなっていく。唸り声と違和感に他の三人も気づいたようだ。

梓「(え…、なにこれ!?)」

唯澪「ああ神様お願い、ふたりだけの♪ドリームタイムください♪」

律「…。」ツツタン♪ツツタン♪

紬「(なんだか、違うわ…)」タータター♪

唯澪「お気に入りのうさちゃん抱いて~、今夜もオヤスミ♪」

梓「(体がねじれるような…)」

澪「う…わ…」

ピューーーーーーーーーンッ!!

サビ入ろうとしたとき、私たちはまばゆい光と巨大な唸り声に包まれた!!


シティセブン!広場!

ピューーーーーーーーーンッ!!

唯澪律紬梓「!?」

私たちが放り出されたのは青空の下。芝生が広がる公園の様な場所だ。

唯「ふわふわ時間♪」

澪「ふわふわ時間♪」

なにが何やら分からずしばらく私たちは演奏を続けていた。
青空!?空はよく見るとガラスのドームに覆われていて、なにかスクリーンの様なものに青が映し出されている。

事に気づいて5人が同時に演奏をやめる。

澪「な、なあ。なんか変だよな!?」

律「ここはどこなの…?」

紬「一旦落ち着きましょ。」

辺りでは家族連れの子供たちが遊んでいる。危険な場所ではないようだ。
しかし、何かがおかしい。

梓「なんで急にこんなところに来ちゃったんでしょう…」


バトルセブン艦内!

千葉「マクシミリアン艦長!バサラ君たちと同等の歌エネルギーを感知しました!」

マクシミリアン「何!?本当か!」

エクセドル「本当なら救世主ですな。」

マクシミリアン「場所はどこだ?」

千葉「シティセブンのB4地区です。協力要請に向かいますか?」

エクセドル「バサラ君たちがいない今、市民に要請するのもいたしかたありませんな。」

マクシミリアン「私も向かう。私が直接話した方が早いだろう。」


シティセブン!広場!

シューーーン!

唯澪律紬梓「!?」

私たちがしばらく途方に暮れ、辺りをさまよっていると、4台の車に囲まれた。
車といってもタイヤがない!宙に浮いている!

ガチャ

マクシミリアン「私は統合軍、バトルセブン艦長のマクシミリアン・ジーナスだ。」

車の中から軍人風の男性が数人出てきた。話しかけてきた男だけが立派な衣装を纏っている。

マクシミリアン「君たちに協力を要請したいことがある。バトルセブンまでついてきてくれないか?」

律「ついていかないと殺すってか?」

マクシミリアン「市民を守るのも統合軍の任務だ。そんなことするはずがない。」

千葉「レスポール!?ジャズベースとムスタングもある!」

梓「楽器、お好きなんですか?」

千葉「あ、ああ。紹介が遅れた。私は軍医の千葉だ。」

千葉「艦長!こんなビンテージ物を持っているとは、なかなかの凄腕かもしれません!」

マクシミリアン「頼む。参加は任意だ。説明だけでも聞いてくれ。」

唯「行ってみようよ~♪」

紬「悪い人たちじゃなさそうだし、困っているみたいだしね。」

律「うーん…、そうだな。」

澪「え、ええ…?」

何が何だかさっぱり分からない。ついていかなくてもどうせ途方に暮れるだけである。
私たち五人は車に乗り込んだ。


車内!

アニメでしか見たことのないような近未来的な建物、道路が窓の外を目まぐるしく通過していく。しかし先ほどから、空とこの空間そのものに私は違和感を覚えていた。

通過する景色から察するに、相当のスピードが出ているはずなのだが、揺れはほとんど感じない。タイヤのある車よりも乗り心地がいいかもしれない。

マクシミリアン「これからお話しすることは、軍の重要機密ということで、一切口外しないでいただきたい。」

澪「は、はい…。」

律「口外する相手もいなさそうだけどな。で、話って何なんだ?」

マクシミリアン「私たちは今、正体不明の敵と戦っている。」

二人の顔つきが変わる。

千葉「敵には一切の兵器が通用しない。しかし先の戦いのプロトデビルンと同様に歌エネルギーが有用であることが分かっている。」

梓「歌…!?ぷろとでびるん!?」

律「おっさんたち、厨二病なの?」

紬「失礼よ、律っちゃん。続けてください。」

マクシミリアン「しかし、敵によってあのサウンドフォースが戦闘不能状態へと追い込まれてしまった。」

唯「さうんどふぉーす?」

千葉「君たち、FIRE BOMBERを知らないのかね?」

澪「有名人なんですか?」

マクシミリアン「ああ。その若さで知らないとは…。もしかしてシティセブンの市民ではないのか?」

律「シティセブン?」

梓「私たちは桜ケ丘市民です。」

千葉「桜ケ丘!?」

唯「日本だよ。」

マクシミリアン「日本!?まさか君たちは地球から来たのか!?」

律「じゃあおっさんは宇宙人なのかよ。」

マクシミリアン「いや、私も地球人だ。」

律「話がさっぱり見えん。」

そうこう話しているうちに検問らしき場所を通り、窓の外の景色が変わっていく。
先ほどの様な緑は一切なく、無機質な空間にドでかい機械が並んでいる。
「軍事施設」というのは本当のようだ。

バトルセブンブリッジ!

律「う、宇宙だぁ~~~っ!!!」

唯「星!星だよ律っちゃん!」

マクシミリアン「何をそんなに驚いている?」

驚かないほうがどうかしている。
連れてこられた場所は船の操縦席のようになっていて、外には暗闇の宇宙空間が広がる。

ヌワーーン

エクセドル「いやいや、これまたかわいらしいお嬢さんたちですな。」

澪「う、うわぁああああ!」ガクガクブルブル

目の前に巨大な人間の顔が現れた。顔だけで私たちの身長の2倍はある。

エクセドル「プロトデビルン…!」ブルブル

梓「ん?」

なぜ梓を見ておびえるんだろうか。

マクシミリアン「こちらはエクセドル参謀だ。マイクローン化していないゼントラーディを見るのは初めてかな?驚かせてすまない。」

ぜんとら…?マイクローン?さっぱり意味が分からない。

唯「かわいい♪」

エクセドル「おじさん恥ずかしい///」

さっぱり意味が分からない。

梓「それで、『協力してもらいたいこと』ってなんなんですか?」

律「まさかさっき言ってた『正体不明の敵』と戦えっていうんじゃないだろうな?」

マクシミリアン「そのまさかだ。話が早い。君たちには戦場で歌ってもらうだけで良いんだ。」

律「おいおい…。」

千葉「こちらは君たちの高い能力を検出してお願いしている。君たち以外に頼めるものがいないんだ。」

澪「…。」

プシュー(ドア)

ドアから、20代前半くらいの男性が入ってきた。
若干おでこが後退しているが、姿勢のよさから潔い人柄が伝わってくる。

ガムリン「お呼びですか?艦長。」

マクシミリアン「ああ、ガムリン大尉。新しいサウンドフォースのメンバーが到着した。」

ガムリン「ダイヤモンドフォースのガムリン・木崎大尉であります!」ピシッ(敬礼)

唯「はっ!」ピシッ(敬礼)

律「おいおい…」

マクシミリアン「我が艦きってのエースパイロットだ。君たちの護衛および訓練の指揮を取ってもらう。」

マクシミリアン「5人を宿舎へ案内してやってくれ!」

ミホ「はい!」

ミホ「こちらです。」

澪「あ、ありがとうございます。」


プシュー(ドア)

私たちはオペレーターと思しき女性に連れられて宿舎へと向かう。
泊る場所のあてもなく、とりあえず身の安全だけでも確保してくれそうな人たちだったので促されるままに従った。

ガムリン「あんな子供たちにバサラやミレーヌさんの変わりができるとは自分には思えません!!」

マクシミリアン「それを言うならミレーヌだってまだ15歳だったんだ。」

ガムリン「しかし…」

エクセドル「もはや希望の光は彼女たちにしかありませんからな。」


宿舎!

梓「意外と広いですね♪」

あまりものがそろっているとは言い難いが、必要最小限のものがあり小奇麗だ。
寝具なども清潔感があり、案外に心地よい部屋である。

唯「合宿みた~い♪」

澪「なんでそんなに能天気なんだよ…。」

私にとっては、というか冷静に考えれば絶望的な状況の中で、4人はいつもよりむしろ楽しそうだ。

紬「ねえ、律っちゃん、カレンダー見て?」

律「2046年…!?」

梓「まさか…。未来に来ちゃったの?」

あり得ない。
しかし異様に発展した科学技術を見る限り、あり得ない話ではないと思えてしまう。

律「唯…」

唯「律っちゃん…」

唯律「新大陸だぁ~~~~~っ!!」

大陸じゃねえし。

澪「でも、どうするんだよ…。もう帰れるないかもしれないんだぞ?」

唯律紬梓「……。」

皆なにも言えなくなった。
しばらくして、沈黙を破ったのは律だった。

律「まあ、艦長さんたちに協力するしかないだろうな。あの人たちなら帰り方も分かるかもしれないし。」


プシュー(ドア)

ミホ「艦長がお呼びです。バルキリー格納庫まで来てください。」

唯「は~い♪」



バルキリー前!

無機質な格納庫に3機のロボットが並んでいる。その全長は20mくらいであろうか。
一同は見上げた姿に絶句する。

マクシミリアン「これが今までサウンドフォースが使っていたバルキリーだ。」

律「す、すげえ…!」

アニメなどで出てくるようなロボットであるが、間近で見ると金属の重厚感が威圧的である。

千葉「左から紹介しよう。律君と紬君に乗ってもらうVF-17T改ストームバルキリーだ。」

律「よし!」 紬「うん!」

千葉「真中が唯君と梓君に乗ってもらうVF19改ファイヤーバルキリー」

唯「うん♪」 梓「はい!」

千葉「そして澪君に搭乗してもらうのがVF11MAXL改ミレーヌバルキリーだ。」

唯「澪ちゃんのだけかわいい!」

梓「ずるいです!」

確かに私の前にあるロボットだけが白を基調とし、女性的なフォルムをかたどっている。
しかし、よく見ると傷を修復し跡があり、確かに「兵器」として使われているものであることを伺わせる。

澪「なんで私だけ一人なんだよ…。」

そしてなぜか私だけが赤いレオタードを着させられている…。

澪「っていうかなんで私だけこんな格好してるんだよ!」ブルブル

千葉「それはミレーヌ君が着ていた服だ。君にはそれを着てもらわないと歌エネルギーを存分に発揮できないからな。」

絶対にウソだ…。

律「よく似合ってるわよ、澪ちゅあん♪」

澪「///」


プシュー(ドア)

ガムリン「バルキリーの点検、終わったか?」

千葉「はい。今この子たちに明日乗るバルキリーを紹介していた所です。」

グババ「キィー!」

ガムリンさんの背後から全身毛でおおわれたまりものような小さなネズミが嬉しそうに駆け寄ってくる。

唯「なにこれ~!かわいい!」

ガムリン「これは銀河ネズミのグババだ。」

グババ「キー、キー!」ピョンピョン

グババ「キー♪」スリスリ

グババは私の肩に飛び乗り頬ずりしてくれる。確かにかわいい。

澪「か、かわいいな//」

唯「澪ちゃんばっかりずるい~!」

ガムリン「(グババが初対面の人になつくなんて…)」

千葉「これはバサラ君たちが歌っていた歌の楽譜だ。」

梓「あ、はい…」

千葉「サウンドブースターは今はバサラ君たちの歌に最適化してある。是非覚えていただきたい。」

澪「分かりました。」

ガムリン「バルキリーの搭乗訓練は明日の正午だ。それまでゆっくり休んでくれ。」

唯「イエッサー!」ピシッ

澪「おい…」


宿舎!

その晩はバルキリーの操縦の仕方を一通り教わって、明日の訓練に備えることとなった。
思っていた以上に操作はシンプルだったが、あのどでかい鉄の塊の中に入って戦場へ行くのかと思うとなかなか眠れなかった。

澪「…。」

梓「」すー、すー

唯「」すぴー、すぴー

律「澪?」

澪「律…」

律「眠れないのか?」

澪「あ、ああ。」

律「大丈夫。大丈夫だから。」

澪「う、うん…。」

いったい何が「大丈夫」なのかは分からないが、律の声を聴いた後は安心して朝まで眠れた。

紬「しゃれこうべ…」


2
最終更新:2011年06月08日 21:02