――タマムシシティ(ポケモンセンター前)

澪「じゃぁ、そろそろ私も行くよ」

そういって澪の手を置いた先には自分の羽を毛づくろいしているピジョットの姿が

ある

唯「うん、澪ちゃんも頑張ってね!」

澪「唯……。律が旅立つって言った時に唯が言ってた言葉、今でも覚えてるか?」

あのときを思い出す

それは律のガーディと戦った後、交わした言葉

唯「うん、ちゃんと覚えてるよ。私がカントーのバッチを、りっちゃんはジョウト

、澪ちゃんはまたそことは違う地方

のバッチを制覇するっていったことだよねっ」

澪「あぁ、あの時私は無理だって言ったんだっけな。でも……」

澪の目に強さが宿る

澪「私もやる。絶対にバッチを集めて、律と唯に置いていかれないように、いや負

けないようになる」

ピジョットの背中に乗りそう告げた澪に

唯「大丈夫、澪ちゃんならできるよ。でも、わたしも負けないよっ!」

そしてピジョットの翼が広げられた

幾度か羽ばたき

上昇した。


そのとき

――ここのゲームコーナーの地下にはロケット団のアジトがあるんだって

後ろから声が聞こえた

どうやら通りすがりに話している声が聞こえてきたようだ。

だが、それに唯は一瞬ビクリとする、が

――ばっか、お前それ2年前の話だろ

その言葉を聴き、内心でほっ……と胸を撫で下ろした

澪「唯……?」

一瞬唯がビクリとしたのを澪は見逃さなかった

だが、その後の唯の顔はいつもどおり。

にこやかな顔をしていたので気のせいだと思い気に留めるのをやめた

唯「おーい、澪ちゃーん!!今度会ったときは誰が一番強いか勝負しようねーっ!

!」

澪「あぁー、そうだなー!あと唯も頑張れよー!」

見下ろす形になるが、そう叫び返し

ピジョットが出発した

唯「さぁ、私もジム戦がんばるぞっーー!!」


――タマムシジム前

唯「たのも~~~!!」

ドアと共に開けていく視界に唯は驚いた

1つはジム内いっぱいに花が植えられて、花畑のようになっていること

もう1つは

唯「わぁ……!!女の子しかいない!」

そこにあったのは女性しかいない光景

あるものはおしゃべりし、あるものは花に水をあげたりしている

そしてその花畑の中心位置、そこでウトウトと座っている女性がいた

その容姿端麗ともいえるその姿は、とても絵になっていて

ナツメとはまた違った美しさをかもしだしている。

唯「わぁ……和服美人ってやつだよ……!」

呟きながら、その女性のほうへ近づいていくと

???「……少し寝てしまっていたみたいですわ」

唯の影によって翳りができたことで、女性が意識を覚醒させた

唯「えっと、ジム戦がしたいんですけど……」

???「あらっ、挑戦者でしたのね」

そう言って唯の顔を見上げ

そして

???「!!……あなたもしかして唯さんではありませんか!?」

和服の美人が驚いた声をあげた

唯「えぇっー!!なんで私の名前を!?」「もしかして私結構有名人になってるの

かな」

「ジムを次々に破って行ってる美少女がいる、とか!!」

一人で舞い上がる唯を傍目に、女性は微笑んだ

???「ふふっ…あなたのことはナツメから聞いています」

唯「えっ、ナツメさんから?」

???「ええ、とても変わった少女がいる、とね。……おっと、私の自己紹介がまだ

でしたね。私の名前はエリカ」

「このタマムシジムのリーダーですわ」

告げたエリカは背を向け

エリカ「どうぞ、こちらへ」


通された場所はバトルフィールド

そこは芝が敷き詰められており、鮮やかな緑の色をしていた

エリカ「さぁ、お話は後にしてジム戦をやってしまいましょうか」

告げたエリカの手のひらには3つのモンスターボール

エリカ「使用ポケモンは3体ということでよろしいですね?」

唯「うんっ!……じゃなくて、ハイっ!」

言い直し唯も3つのボールを取り出した

エリカ「では、参ります」

唯「いくよっー!!」

エリカ「行きなさい、ウツボット!」 唯「ヒー太、頑張って!」

繰り出されたのは草と炎。その相性は

唯「やった、相性は抜群だよっ」

エリカ「あらあら、これは少し不利なようですね。……しかし」

「ウツボット、あまいかおり」

先に指示をだしたのはエリカのほうだった。

ウツボットの葉から甘い香りが漂い、それはリザードの鼻にも入る

唯「ヒー太、惑わされないで!炎の牙っ!」

リザード「リザッ!!」

リザードがウツボットに向かい猛進する

その時、エリカの顔が怪しさを含んだ笑みをした

エリカ「さそい出されましたわね……。唯さん、あなたさっき惑わすって表現しま

したわね?

あれはとてもいい表現ですわ。」

そのままリザードがウツボットに牙を剥く

そしてウツボットの体が高温の牙に耐え切れず、火を上げた

唯「やったっ!これでひとまず1勝だねっ!……あれっ、ヒー太?」

喜びもつかの間、フィールドに立っているはずのヒー太の姿はなかった

そこには

エリカ「勝った、と思いましたか?ですが、残念でしたね。このとおりリザードは

眠りについておりますわ」

唯「……ねむりごなっ!?」

エリカ「ご名答ですわ」

そして唯は図鑑を慌てて開いた


No.071 ウツボット
ミツの かおりで えものを さそう。
くちのなかに いれたものは 1にちで 
ホネまで とかしてしまうという


唯「あのあまいかおりは誘い込むための技だったんだ……」

エリカ「ええ。このフィールドを炎のフィールドに変えられるのはもっともまずい

こと。

なのでそうそうにご退場を願いました。」

エリカは落ち着いた様子で

「さぁ、唯。次のポケモンをお出しなさい。それとも、あなたの力はそんなもので

すか?」

唯「……! ううん、まだ負けられないよっ!さぁGOだよ、ビー太!」ボンッ

出されたのは、スピアー。

そのはりきり具合は、羽音がブンブンとうるさいことからも読み取れる

唯「さぁ、エリカさんも次のポケモンを出してね!」

対し、エリカは

エリカ「虫ポケモンもあまり得意ではありませんが、いってくださいなモンジャラ

!」ボンッ

ボールから繰り出されたのは、以前に唯が戦ったことのあるポケモンだった

唯「モンジャラなら前に戦ったことがあるよ。行くよ、ビー太」

「きあいだめ!」

スピアーが両手の巨大な針を互いにカチカチと鳴らし合わせた

エリカ「モンジャラ、つるのむちで叩き落してしまいなさい」

モンジャラの攻撃が蔓がのびる。

その数は一本、二本ではない。数え切れないほどの蔓がスピアーに向かって放たれ


唯「ビー太、みだれづきで全部打ち落として!」

指示されたスピアーは向かってくる幾つもの蔓を点で捕らえ、打ち落とす

だが、攻撃は終わらない

エリカ「モンジャラの蔓はまだまだありましてよ」

打ち落とされては、体の蔓を放つ

放っては、打ち落とされる

数分の攻防のスピードは衰えることなく、続くが

唯「(ビー太の羽音がだんだん小さくなってる……?)」

「はぅ、まさかっ!」

エリカ「気付いたようですね……」

「そう、何度も蔓と針が何度もぶつかり合う瞬間。その時に蔓を通してメガドレイ

ンで少しずつ体力を頂きましたの」

そして唯が叫ぶ

唯「ビー太っ、それ以上は駄目!その蔓を交わして懐へもぐりこんで!」

エリカ「切り替えの早さはいいですが……はたしてこの蔓を抜けていけますかしら


なおもモンジャラの蔓による猛攻は止まらない

唯「ビー太っ、お願い力を振り絞って!」

「こうそくいどう!!」

スピアーの羽音が大きくなる

そして消えた

エリカ「はやいですわねっ!?」」

モンジャラの蔓が漂う中を音だけが駆け抜けていく

モンジャラも必死に蔓をバシバシと振るうが

エリカ「っく……!」

気付けば、スピアーはモンジャラの目の前にいた。

そしてモンジャラの体中をまいている蔓の中身に針をあて

唯「ミサイル針!!」

放った。

エリカ「モンジャラっ……!!」

モンジャラ「……モン………」バタリッ

モンジャラの放っていた蔓が地面に一斉に落ちる

エリカ「ごくろうさまでした、モンジャラ。戻ってください」

その時

――ドタッ

地面になにかが落ちる音がした

スピアーだ。

唯「ビー太っ……!!」

エリカ「どうやら、あなたのスピアーも限界だったようですね」

「さぁ、最後です。行きなさいラフレシア」

唯「戻って、ビー太。さぁ、初陣だよ――」

「――フィーちゃん!!」

繰り出されたのは、先日捕まえたばかりのイーブイだった


――マサラタウン(前日)

夜も更け、だんだん眠りの時間に近づいてくる頃

唯「うーん、この子の名前どうしようかなぁ」

先ほど捕まえてから、ずっとイーブイをもふもふしていた唯が首を捻った

イーブイもまんざらでもなく、唯に顔を摺り寄せている

律「もう、ブー太でいいんじゃねぇの?」

めんどくさそうに泊まりにきていた律が言う

イーブイ「!!…・・・ブイッ!!」

イーブイが律のほうをキッと睨み、首をイヤイヤとするようにふった

律「…………こいつ本当に臆病なのかよ……」

そういいながら唯の抱いたイーブイをつつく

唯「りっちゃん…………」

唯が律のほうを哀れんだ目で見つめた

律「っ!!なんだよ、その目はー!」

唯「りっちゃん、この子女の子なんだよ。さすがにそれはないよ」キリッ

律「あぁーもう唯のセンスはわからん!」

そういった律は布団にバタッと寝転んだ

唯「ねぇねぇ、澪ちゃんはなんかいい名前ない?」

唐突にふられた澪がえっ?といいながらイーブイをじっと見た

澪「うーん……ブイブイとかイーちゃんとか……」

そういった澪の声はだんだんとしぼんで行く

唯「うーん、あんまりピンとこないね……」

その言葉にガーンとショックを受け澪もノックダウンした。

澪「もう自分でなにか考えろよぉ……」

律「そうだっ!そうだっ!」

唯「女の子だから、『ブ』って文字は避けたいなぁ……」

律も澪もすでに寝る体勢に入り、唯が一人唸る

そして

唯「そうだ、『ブ』から濁点をとって、イの文字を小さくして、フィーにしようっ

!!」

律「あー、はいはい、好きにしてくれ」

澪「……ブイブイも悪くないと思うだんけどなぁ……」


時は戻りタマムシジム

唯のボールからフィーと名づけられたイーブイが飛び出した

イーブイ「ブイッ!!」

エリカ「(あの子は…………)」

唯「さぁ、行くよフィーちゃん。でんこうせっか!!」

先手をうったのは、イーブイ

繰り出されたラフレシアへ突撃をかける

エリカ「ラフレシア、受け止めなさい」

大きな花弁ででんこうせっかを受け止め

エリカ「メガドレイン!」

花弁がイーブイを包み込むように覆う

唯「まずい!フィーちゃん、じたばたしてっ!!」

慌ててイーブイが花弁から抜け出し、距離を取る

エリカ「ならば、踊りなさいラフレシア。はなびらのまい!」

ボンッと言う音とともにラフレシアのつぼみが開いた

中から飛び出たのは膨大な量の花弁

そして放出された花弁は意思を持つかのように宙をひらひらと舞う

唯「フィーちゃん―――」

唯がぼそっとなにかの指示をだすが、エリカには聞こえない

そしてイーブイに動きが見られた、が

その動きは一度大きく口をあけただけ

エリカ「(……なにかひっかりますがこのまま押し切ってしまいましょう)」

「さぁ、花弁たちよ、あのイーブイを襲いなさい」

唯「フィーちゃん、向かってくる花びらにすなかけ!」

イーブイが後ろ足で砂をかき、そのまま花びらが待っている方向へ蹴り出した

花弁と砂が互いの間で拮抗しあう

唯「フィーちゃん頑張って!!」

イーブイ「ブイブイッ!!」

呼びかけにこたえるように、イーブイがさらに砂を蹴り上げた

砂の力が花びらを上回り始める

意思をもったかのように見られた花弁は砂とぶつかりあい、ただ舞い落ちる

そして花びらによって遮られていた視界がひらけた

そこには

エリカ「お見事です。しかしこの間に日本晴れにさせていただきました」

「さぁ、とどめです。ソーラービーム!!」

ラフレシアの構えた花びらの砲台から、まばゆい光りが放たれる

唯「っ……!フィーちゃん、こらえて!」

避けるまもなく、イーブイが光りのビームに包まれた

だが、イーブイはそれでも自分の四肢によって立っていた

エリカ「こらえきりましたか……ですがもう虫の息。止めをさしてあげましょう」

「ラフレシア、もう一度ソーラビームです」

だが、ラフレシアは動かない

エリカ「ラフレシア…?」


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最終更新:2011年06月13日 00:14