唯「ふぅ……すでにねむっちゃってるよ」

エリカ「眠り……?そんな、自身の粉は食らわな……!!」

そこで気がついた

先ほどの不振なイーブイの大きく口を開ける行動

あれは

エリカ「あくびでしたのね……!」

唯「あとちょっと眠るのが遅かったらこっちがやられてたけど、フィーが頑張って

くれてよかったよ。ねっ、フィー?」

ボロボロとなったイーブイをそっと抱き上げると

イーブイ「ブイッ!!」

体力も極限の中、イーブイが答えるように鳴いた

エリカ「そうですわっ、このイーブイですけど……」

「もしかして、このイーブイはタマムシ大学にいた3匹のイーブイではありません

か?」

抱えられたイーブイにそっとエリカが近づいた

唯「うん、たしかマサキさんも博士もそういってたよ」

エリカ「やはりそうですか!あのイーブイがこれほど人に懐くことがあるとは……

正直私驚きました」

「あ、そうでした。バッチでしたわね。……はい、これがレインボーバッチです」

そういって花をかたどったような鮮やかなバッチを差し出した

唯「やった、これでバッチ集めも半分のところまできたよっ!!」

喜ぶ唯に、エリカも微笑む、が

エリカ「唯さん、少しお話があります」

すぐに深刻そうな顔に変わってしまった。


――タマムシジム(エリカの私室)

唯「わぁ、すごいっ!」

その空間に足を踏み入れた唯の最初の感想はそれだった

周りをみれば、たくさんの香水を並べた棚や活けられた花、立てかけられた弓など

が目につく

エリカ「それで、さきほどの続きですが」

あたりを興味深深にキョロキョロする唯にエリカが切り出した

エリカ「あなたがロケット団の狙いである破壊の遺伝子をもっていることはナツメ

さんから聞き知っています」

唯「そうだ、ナツメさんっ!!ナツメさんとエリカさんはどういう関係なの?」

ナツメという単語を聞いた唯がすかさず反応した

エリカ「ナツメさんと私はいいお友達ですわよ。同じ立場の職ですしね」

唯「(同じ立場の職……?二人とも綺麗だしモデルさんでもやってるのかな?)」

エリカ「続けますが、唯さんがナツメさんと別れられた後、ナツメさんはここタマ

ムシジムにやってきました」

   「予知夢の話、ハナダシティであったこと、全て話してくれました。そして

協力してほしいとも」

唯「つまり、エリカさんは味方ってことでいいんだよね」

エリカ「ええ、そして唯と名乗る子がジムに来たときに、
    なにか困っていることがあれば聞いてやってほしいともおっしゃってまし

た」

ですがとエリカは繋ぎ

エリカ「その様子では、特に今のところ困っているということはなさそうですね」

唯「うーん、いまのところはない……かな……」

エリカ「ただ一つ気になることができました」

唯「え?」

エリカ「唯さんのイーブイです」

唯は首をかしげたまま、次の言葉を待つ

エリカ「そのイーブイは元はタマムシ大学にいた といいましたね?そしてあまり

に懐かないためマサキさんの手に渡った。ですが、実は懐かなかった という理由

だけで手放したわけじゃないのです」

「その子がまだタマムシ大学にいたころ、ロケット団と思われる男に大学が襲撃を

受けました」

淡々と語りが始まった

エリカ「その男は、イーブイの研究をやっていると知ってやってきたのでしょう。

そこでイーブイを出せ と」

「その場はなんとか追い払いましたが、大学側はやっかい払いをするようにイーブ

イ達をマサキさんの手に渡してしまったのです」

唯「フィーちゃん……」

モンスターボールに入っているイーブイを見つめた

エリカ「そして今はあなたの手に と言うわけです。」

唯「…………」

つまり、とエリカは言い

エリカ「あなたはロケット団に狙われる理由がもう一つ増えてしまったと言うわけ

です」

「まだばれていないのが、幸いですが」

エリカの顔つきが厳しいものとなる

エリカ「あなたに……その2つのものが守れますか?」

唯「……わたしは……むずかしいことはあんまりわからないけど、それでもこれは

守らないといけないってことはわかってる。フィーちゃんだって同じだよ。この子

はもう私の友達、だから」

唯「――絶対に守りきるよ」

そういった唯の顔はいつもよりりりしいものになっていた



「VSラフレシア」〆




エリカ「ここからならば次はセキチクシティになるでしょう」

「自転車はお持ちですか?」

質問の答えに唯は首を横にふる

エリカ「ならば、シオンタウンを経由してそこから南にいくしかありませんね」

「ここから東へ行くと地下通路があります。そこを抜けさらに東に行くとシオンタ

ウンです」

唯「うん、いろいろありがとう。エリカさん」




そうして唯が出発したのがジム戦の翌日だった


――シオンタウン

唯「やっとついた~、ここがシオンタウンかぁ」

一人ゴチる唯に1人の少女が近づいてくる

少女「ねぇ、お姉ちゃんはこの街は初めてなの?」

唯「うん、実はそうなんだ。よかったらこの街のことを教えてくれるかな?」

唯が少女に目線をあわすため、しゃがみ問いかけた

少女「えっとね~、この街はね。もうすぐラジオ塔ができるの!ほら、あそこ」

そう言って1つの塔のほうを指差す

唯「あれのこと?」

唯がおなじほうを指し、確認の意味を込めて聞き返すと

少女「うん!少し前まではポケモンのお墓だったんだけど、ラジオ塔になるんだっ

てー」

「あとは一番上の階を局長室に工事するだけなんだけど……」

少女の言葉が濁る

が、唯がそのさきをやさしく促がすと

少女「お化けが出てねー、そのお化けの鳴き声が聞こえるんだって」

「今、フジっておじいちゃんがそのお化けとお話しにいってるの」


――タマムシシティ

唯を送り出した後のエリカはいつものようにジム業に戻っていた

そこへ

ジムトレーナー「エリカさま、ナツメさまから通信が入っております」

エリカ「!!……わかりました。すぐにいきます」

そうしてエリカはその場を後にした


――シオンタウン(元ポケモンタワー)

唯は少女の話を聞いた後、好奇心に負けポケモンタワーまで足をはこんでいた

唯「へ~、一回はもうラジオ局の受付になっているんだね~」

話しかける相手は傍らにいるミニリュウ

ミニリュウ「リューー」

なんだかんだといっても、唯はお化けという恐怖の中一人でいくのを不安に思い

お供にポケモンをだしていくことに決めたのだ

局長「おおっと、ここより上は立ち入り禁止だよ」

立派な白髭を蓄えた初老の男性が2階への階段まえで立ちふさがる

唯「えぇー、そんなぁ~」

局長「今は幽霊騒ぎでいろいろ急がしいんだ。見学ならまた今度にしてくれるかな

?」

唯「ぶーぶー……せっかくきたのに~」

不満をそのまま口に出したとき、唯の顔がピンッとなにかを思いついた顔に変わっ


唯「ねー、おじさん。その幽霊騒ぎの原因が見つけてきてあげる!」

局長「ダメダメ、君みたいな子がうろうろするのは危険だから」

手のひらでしっしっと追い払う動作をする

その動作に唯はグチグチと不平を漏らしながら、回れ右をした

唯「ちぇっ!……これでもバッチ4個ももってるのに……」

局長「!!」

唯の背中を見送っていた局長の顔が、変わった

局長「……君、ちょっと待ちたまえ」

唯「?」

静止をかける言葉に唯は、ハテナ顔を作る

すると、局長はゴホンッと一度せきをして

局長「そこまで言うなら君にもお願いしようかな」

と、先ほどとは態度が変わった姿勢を示す

唯「えぇ~、もういいよぉ~。セキチクに向かうついでによっただけだし~」

そういいもう一度背中を向け去ろうとする唯に

局長「そ、そうだ!君が解決してくれると言うのならば、このスーパーボールを上

げよう!」

取り出したのは、モンスターボールの赤とは違う青のボール

唯「わぁ……!青いモンスターボールだ。本当にこれもらってもいいの!?」

局長「あぁ!そのかわり原因の捜索はまかせたよ?」

唯「うん、うん!もちろんだよっ!」

「行くよ、リュー太!」

ミニリュウ「リューー!!」


――元ポケモンタワー2階

唯「ここももうラジオ局って感じになってるんだねー」

【2階営業部】と階段の横に貼り付けられているプレートを見て唯は呟いた

局員「こらっ、ここは立ち入り禁止だぞ!どうやってはいったんだ」

局員の一人が駆け寄ってきながら、唯に声をかけた

唯「違うよー、ちゃんと下にいたおじさんに頼まれてお化けの探索にきたんだから

っ」フンス

言うと

局員「し、失礼しました!」

その様子に満足した唯はごきげんに階段を上っていった


――元ポケモンタワー4階

唯「もう、いやになっちゃうよー」

唯は3階4階と共に同じ注意をされることに、少しうんざりしていた

唯「それにしても、リュー太。なにか聞こえない?」

ミニリュウ「りゅー?」

――――

唯「やっぱり、なにか聞こえる……」

「なんだろう、この音」

そうして唯は耳を澄ますため、目を閉じた

―――

唯「これは……唄……?」

ミニリュウ「?」

横につくミニリュウが首をかしげる

唯「唄だ……さっきと同じ音程が繰り返されてる。何かが歌っている?」

「それにしてもなんて悲しいメロディ……もしかしてこれが幽霊騒動の原因……?


そして唯は階段に足をかけ、上の階へと上ろうとする


唯「少しいやな予感がする。リュー太、一度戻って」

ミニリュウ「リューー」

ボールにミニリュウを戻し、もう一度階段に足をかけた


――元ポケモンタワー5階

唯が足を踏み入れた最終フロア

そこには一人の老人が一点を見つめて、立っていた

フジ「おや、君は……?」

唯「えっと、一番下にいたおじさんに頼まれて幽霊騒動っていうのを探りにきたん

だけど……」

尻すぼみになっていく言葉には理由がある

唯があるものを見つけたからだ

フジ「最初から幽霊騒動なんかじゃないんじゃよ……あの子がただ寂しくて泣いて

おっただけじゃ」

まだ撤去されていないポケモンのお墓の後ろにいる影のようなものを指差した

よく見ると、白い骨のようなものが見えている

フジ「あのポケモンの母親はとっくに成仏しとるというのに、あの子はまだ母を思

って歌うんじゃよ」

唯は影のほうに図鑑を向ける


No.104 カラカラ
しんだ ははおやの ホネを かぶる。
なきごえは ホネのなかで 
ひびいて ものがなしい メロディになる。


唯「やっぱり、あの子は唄を歌ってるんだ……」

「止めなきゃ、こんな悲しい唄」

フジ「なにをするきかね?」

唯「この唄を止めて……唄はもっと楽しいものだって教えてあげなきゃ」

フジ「だが、あの子に近づくと手にもった骨が飛んでくる……」

唯「ならっ――」

ボールからモンスターを出そうとする唯を

フジ「ポケモンは出さないほうがいい。この唄は滅びのうたと言ってポケモン相手

には立派な技となる」

フジが手で制し止めた

唯「…………」

少しの沈黙が流れる

そして

黙りこくった唯が、なにか決意めいた顔をした

唯「……うん、やるよ」

その言葉は自分に言ったようにも思えた

フジ「な、なにを」

唯が呼吸をスゥっと吸い

唯「――――」

歌った

その唄はカラカラの奏でるメロディとは間逆

唯の明るい声が部屋を満たしていく

そして

カラカラの唄が止んだ

唯は歌うのをやめ、カラカラのほうにそっと歩いていき

唯「もう大丈夫。寂しいのなら私と一緒に行こうっ!」

カラカラのほうに手を差し出す

カラカラ「カラ……」

カラカラがそっと自分の持っていた骨を唯の手に渡し、骨越しに手をつないだ形に

なった

唯「そうだっ、丁度さっきのボールをもらったんだった」

そういってスーパーボールを取り出すと

唯「一緒に行ってくれるなら、このボールに入ってくれるかな?」

そう問いかけると、カラカラは自分からボールにコツンと軽く頭をぶつけ

スーパーボールの中に吸い込まれていった



「VSカラカラ」〆



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最終更新:2011年06月13日 00:15