――元ポケモンタワー5階

唯「これで問題解決だねっ」

たった今、騒動の原因を捕獲した唯はニコニコ顔でそういった

フジ「……お嬢さんは不思議な子じゃのぅ」

唯「えへへ」


――コツコツ


先ほどまで歌で満たされていた部屋に今度は足音が響く

音のほうを追うと、あるのはこの部屋への唯一の出入り口

階段だ

???「フジに用があってきてみれば……この前のナツメを助けた女もいるとは今日

はつくづく運がいい」

男がいた

その格好は黒を基調とし、服の真ん中にはRの文字がある

以前まみえた相手

それは

唯「ロケット団!!」

ランス「ほぅ……ナツメから話でも聞いたのか。なら俺の目的もわかっているんだ

ろう?」

唯「……」

唯は一歩ジリッと後ろに下がり、ボールに手をかける

ランス「まぁいい。女、お前は後だ。フジ、お前に用がある」

そういってフジへ話しかけた

ランス「単刀直入に聞くぞ。ミュウの研究日誌はどこにある?」

唯「(……研究日誌………?)」

ランス「お前がミュウの研究をしていたことは分かっている。当然研究成果を記し

たものはあるよなぁ?フジ博

士」

フジ「……そんなものを手に入れてどうする気じゃ………」

ランス「そんなものは決まっている。作るのさ!最強のポケモンをな」

フジ「……!!」

フジの顔が変わる

それは焦りというよりも、憤りに近いなにか

フジ「いかん!!もう2度と悲劇を繰り返してはならんぞ」

温和な雰囲気を持ったフジが怒声に近い声を上げた

ランス「……まぁいいさ。どうせ素直に教えてもらえるなんてこっちも思っていな

い」

「でてこい、スリーパー」ボンッ

振り子を持ったモンスターが現れる

ランス「このスリーパーの催眠術は強力でな。眠っているうちに嫌でも在り処を吐

いているさ」

「やれ、スリーパー」

唯「行って、リュー太!!」ボンッ

フジ「!!」

フジににじりよろうとしていたスリーパーの行く手をミニリュウが塞いだ

唯「まきつく!」

続けて、ミニリュウがスリーパーの動きを制限する

ランス「女……なんのつもりだ……?」

唯「そんなことは絶対にさせないよっ。おじいちゃん後ろにさがって」

フジを自分の背中におき、手で制する

ランス「……お前にはナツメの居場所さえ吐いてもらえれば、手荒な真似はやめて

やってもいいともおもっていたのだが」

「どうやら、そういうわけにもいかなそうだな!!」

そしてもう一つボールを掲げ

ランス「行け、マタドカス!そのミニリュウを排除しろ」

風船状の紫色のモンスターが現れる

その体からはなにかガスのようなものが噴出されている

唯「2体目っ!?」

ランス「ヘドロ爆弾!!」

毒毒しい色をしたヘドロでボールの形が作られていき

放たれた

唯「っ……!ヒー太、加勢して」ボンッ

「メタルクロー!!」

飛び出したリザードがヘドロを爪で真っ二つに切り裂く

ランス「面白い、2対2というわけか。だが、ミニリュウのほうがおろそかになっ

ているぞ」

「スリーパー、毒ガスをだせ」

唯「……!! リュー太、いったん引いて」

まきつくことを解除したミニリュウが唯の手前まで戻る

ランス「どうしたっ? そんなもんか」

「そら、マタドガス。だめおしだ」

マタドガスの攻撃がリザードに直撃し、唯の前まで吹っ飛ばされる

唯「ヒー太……!」

ランス「次はそっちだ。スリーパー、サイコキネシス!」

スリーパーの念の力により、ミニリュウの体が宙に浮き

壁に叩きつけられた

唯「リュー太まで!!」

ランス「さぁ、女チェックメイトだ。後ろのフジをこちらに引き渡してもらおうか


唯「………」

にじり寄るランスから逃げるように唯も一歩遠ざかる

そのとき、

唯のあいだにミニリュウとリザードが入り込んだ

ランス「……ちっ、もういい邪魔だ。マタドガス大爆発だ!」

マタドガスが発光するように、白く光り

瞬間

爆風が広がった

唯の目の前にはかばうようにリザードとミニリュウが存在している、が

盾の役割となっていた2匹も爆発を受け、その場に倒れ伏した

唯「なっ……!? そんな自分のポケモンごと……!!」

唯の視界にはリザードとミニリュウのほかに、スリーパーがいた

一番間近で爆発を受けた影響かその姿は無残にも最もボロボロになり倒れている

ランス「あー、これで催眠術で穏便に、っていうわけもいかなくなってしまったな

。恨むのなら抵抗した自分を恨め」

蔑むような目で倒れているポケモンを見渡し

ランス「ところでだが」

ランス「――いつ俺が2体しかポケモンを使わないといった?」

言われたときには、すでに手遅れだった

――ドスッ

音の発生源は唯の腹部

そこにはゴルバットの姿と、大きく広げた羽で唯の腹部に直撃している光景がある

唯「!!…………」トタッ

衝撃に耐え切れず、唯もその場に崩れ落ち、図鑑が地面を転がった

ランス「あーあ、せっかく忠告してやったのに……まぁいい、こいつを連れて行け

ばナツメの場所もおいおい分かるだろう」

そういいながら唯に近づき、腕を持ち上げ吊るすように起き上がらせた

だが

フジ「ま、まて。日誌の場所は教える。……だからその子にはそれ以上手を出さん

でおくれ」

フジがランスに待ったをかけた

ランス「ほぉ……ならどこだ。さっさと言ってみろ」

フジ「………………グレンタウン…………グレンタウンのポケモン屋敷じゃ」

フジの声がだんだんとトーンを落としていく

ランス「それは本当だな…?……グレンか……ちっ、やっかいな場所に」

舌打ちをしたランスは忌々しそうな様子をみせるが

フジ「さぁ、その子を離してやっておくれ」

言うが、ランスは開放する様子も見せず、自分のポケモンをボールにしまう様子を

みせるだけだ

そして、ニヤリッといやらしく笑い

ランス「………約束なんて守るとでもおもったか?」

そういいながら、唯を連れて行こうとする

しかし

ランスの足元に2つの影が現れ、その足に停止をかけた

ミニリュウ「……リュー………」

リザード「リザッ……」

2匹のポケモンはボロボロになりながらも、主人を連れていかせまいと奮起する

ランス「邪魔なポケモン共だ」ドカッ

ミニリュウとリザードを蹴り払い、階段のほうへ行こうとするが

フジ「その子は置いていってもらおう」

今度はフジが立ちはだかった

ランス「ジジィ邪魔だ!どけ!!」

フジが手で払いどけられるが

その間に、リザードとミニリュウはもう一度臨戦態勢をとっていた

ランス「どいつもこいつも邪魔ばかりっ!!ゴルバットもう一度でてこい!!」

ランスがモンスターボールを投げよう構えを取ったときだった

ミニリュウとリザードの体が光りを帯びた

ランス「これは……!?」

ボロボロの体を包むように輝くその光は、だんだんと収拾をみせ

2匹の新たな姿が現れる

ハクリュウ「リューーーーー!!」

その姿は、神秘的で進化の光りとはまた違うヒカリをはなっている

リザードン「ガアアアアアー!!」

その姿は、大きな羽だけで相手を威圧できそうなほどの風格をみせ、尻尾の炎は蒼

白くバチバチとなっている

2匹の雄たけびが部屋中を満たしていく

片方は静かに、片方は荒々しく

ランス「………なんだこいつらは……!?」

フジ「………お主はどうやら、この竜たちの逆鱗に触れてしまったようじゃの……


そして

――パリンッ

部屋中の窓が次々に割れた

原因は風だ。気付けば外には暴風が吹き、真っ黒な雲がかかっている

ハクリュウ「――――」

言葉にならない鳴き声を上げた瞬間

突風が部屋の中を突き抜けた

余りの様子にランスは

ランス「………っ」

言葉も出さずに一歩後ろに後ずさるが

リザードン「ガアアアアアアアアアア!!」

炎を灯した竜がランスの後ろ側に回り込む

そして床にあった図鑑が、なにかの拍子に起動し、その情報を映し出した


No.148 ハクリュー
オーラに つつまれる しんせいな 
いきものらしい。てんきを かえる  
ちからを もつと いわれている。

No.006 リザードン
ほんきで おこった リザードンの 
しっぽの さきの ほのおは 
あおじろく もえあがる。


ランス「くそっ!!ゴルバットでてこい」

「くろいきり」

ランスの周りが黒い霧で覆われていき

どんどんと範囲を広げていく

そして霧の中から、人が飛び出した

いや、性格には投げられたといったところだろう

その姿は

リザードン「!!!」

気絶している唯だった

あわてて、リザードンが受け止めるために地面を蹴り、唯をキャッチする

その逆方向、時間差でもう一つの影が飛び出した

ゴルバットの足に捕まり、窓のほうへ飛んでいく

ランス「………この借りは必ず返させて貰う…!」

そうして、ランスはポケモンタワーから飛び立っていった



「VSマタドガス」 〆




――元ポケモンタワー5階

部屋は無残

窓は割れ、部屋の中にあったものはほとんど原型をとどめているものはなかった

その中に2つの人影がある

1つはフジ

もう1つは唯だ。

唯はハクリューの胴を枕にし、床に寝かせられている

さらにその周りにいるリザードンは唯を守るように尻尾と胴で周りを覆い休息をと

っていた

フジ「…………」

さきほどから唯の様子を見ようと近づこうとするフジすらも、この2匹は威嚇して

いた

フジが一歩踏み出せば、リザードンが威嚇し、ハクリューが唯の体を覆う

なのでフジはどうすることもなくその場でたたずむしかなかった




――コツコツコツ

脅威の去った部屋に、さきほどと同じ音が響いた

リザードン「ガアアア!!」

威嚇する。その対象は誰でもなくその音に対して

リザードンの脳にさきほどの男の来襲がよぎる

だが、そこに現れたのは

エリカ「……少し遅かったみたいですね………」

予想外の人物が現れる

だが、リザードンの警戒は緩まらない

それは唯には近づけさせないという意思の表れだろうか

エリカ「ずいぶんと興奮していますようですね。でも――」

「それでは唯さんの状態はかわりませんよ」

言い切ったエリカはさらに続ける

エリカ「お退きなさい」

言葉に力を乗せて、発した

それでも、リザードンはその場を譲ることはなく

エリカ「ならば……!!ラフレシアでてきなさい!」

「まずはこの興奮している状態をどうにかしましょう。アロマセラピー!」

繰り出された巨大な花のモンスターから、辺りに心地よいかおりがひろがった

満たされていくその香りはたしかに2匹の鼻に届いた

リザードンの尾の蒼い炎が通常通りの赤い炎に変わる

リザードン「ガアア……グルル」

エリカ「ラフレシア、くさぶえ!!」

香りが充満する部屋に、今度は笛の音が奏でられた

音が響きわたり

リザードンの目がトロンとし始め、ハクリューは体を丸める

その後地面に伏せ、2匹は寝息を立て始めた

エリカ「これで、ようやく唯さんの状態をみることができますわ」

そういうと、エリカとフジは傍らに同じようにリザードンとハクリューを傍目に唯

に近づいていき

唯のポケットに手を突っ込んだ

エリカ「ありました。これがこの子達のボールですね。」

取り出したボールをリザードンとハクリューに向け

エリカ「あなた達も少しはお休みなさい……」

ボールに寝息をたてた2匹が戻され

エリカ「さて、唯さんの状態を見ているあいだにお話を少し聞かせていただいても

よろしいですね?」

問いかける先はフジ

フジはコクリとうなずき、ここで起こったことをポツポツと話しはじめた

………

……

エリカ「やはり、ここにロケット団がきたのですね」

フジから話を聞いた後、まるで知っていたことを確かめるかのようにエリカが言う

フジ「あぁ。その子がワシを守るために闘ってくれたのじゃが……」

エリカ「そうですか……。あまり自分を責めないでください。あなたのせいではあ

りません。」

フジ「………それでこの子はどうしてめざめないんじゃ? おなかを打たれただけ

ならば、そろそろ意識を取り

戻しても」

エリカ「えぇ、私もそう思います。しかし……」

その時、エリカが一つのことに気付いた

視線の先は唯の腕

そこには

エリカ「……私は破壊の遺伝子がまだ唯さんの手元にあることが、不幸中の幸いだ

とさきほどは思いました。
しかし今は別です。こんなことならば、素直に差し出して手を引いてもらうべきだ

ったと」

エリカの顔が深刻そうな表情を作った

そして言った

エリカ「……ここに噛まれたあとがあります」

「おそらく、さきほどの話を聞く限りではゴルバットでしょうか。目覚めない理由

は毒タイプのポケモンに噛まれ

体内を毒が回っているのでしょう……」

フジの顔色も変わる

フジ「……なんとかならんのかね」

エリカ「容態は私にはわかりませんが、急いだほうがいいのは間違いないでしょう


なので、とエリカが繋ぎ

エリカ「セキチクに今すぐ向かいます」

フジ「なぜそんな場所なのじゃね?セキチクなどここから距離が」

エリカ「あそこには毒タイプのエキスパートがいます」


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最終更新:2011年06月13日 00:20