――セキチクジム

アンズ「アタイの完敗でござる……やはりアタイには父上の跡など……」

唯「!! そんなことないよっ!」

そういった唯の傍らにはずっと頭をよせているハクリューがいる

唯「アンズさんとの勝負楽しかったよ。最後は私もちょっと予想外だったけど」

エリカ「まぁ、そういうことらしいですし、あまりアンズさんも落ち込まないで」

アンズ「唯殿、エリカ殿……あ、そうでござる!これが勝者の証、ピンクバッチでござる」

唯「わぁ、ありがとう!!」

唯は差し出された、ピンク色のバッチを受け取る

アンズ「しかし、唯殿。さっきの負けは私も悔しいでござる。なので、また今度アタイと対戦してほしいのでござるが」

「アタイもジムを守って今よりずっと強くなるでござる」

だから、とアンズが続けようとしたが、唯がその前に

唯「そうだね、また対戦しようね!でも、今度も負けないよ~!」

エリカ「あ、そうですわ。私もそろそろジムへ戻りませんと…!」

唯「あ、エリカさん本当にありがとう。いろいろお世話になっちゃって」

エリカ「いいえ、ロケット団のことはあなただけの問題ではありません。
むしろあなたはそのことで褒められることはあれ、責められることなどはもっての

ほか。なので気にしないでくださいな」

言ったエリカは唯に笑顔を向け

エリカ「それで、唯さんは次はどちらへ?」

唯「うーんと、グレンタウンに向かおうと思うよ」

エリカ「あらっ、それでは私からも一つお願いしてもよろしいですか?」」

唯がうなずくと

エリカ「ナツメさんがムチャしているようだったら、助けてあげてくださいな。あの人は辛くなっても自分から言いませんから」

ナツメを気遣うエリカに唯はもう一度大きくうなずいた




「VSモルフォン」〆




――セキチクシティ

唯「あはは、久しぶりだからリュー太もはりきってるねっ」

「やっぱりセキチクシティに来たら、ここに寄らないとね~」

ハクリュー「リューー」

彼女達の目の前にはセキチクシティの名物とも呼べる一つの施設がある

サファリパークだ

唯「ここではじめてリュー太とあったんだよね。もうずいぶん前になるかな」

「みんなはもうポケモンを持っていたのに、私だけのろまでポケモンの一匹も捕まえられなくて、みんなでここにつれてきてもらったんだっけ。
 あのときはムギちゃんも一緒だったなぁ。懐かしいなぁ~」

思い出す

あれは……


――過去

唯「うわぁ、ここがさふぁりぱーくなんだ~。すごい、すごーい!」

憂「おねえちゃん、少しおちついて」

律「わぁ、みおちゃんみてー。にどらんもいるよー」

澪「あわわ、りっちゃんもおちついて」

紬「うふふふ」

梓「はやく、行きましょう!」

……


唯「みんなで行ったのはいいけど、私だけはぐれちゃって大変だったんだよねぇ~」

ハクリュー「りゅー?」

今ならばあの草原のにおいもおもいだせそうだ。

唯「でも、リュー太に会えたのもそのおかげだから、良かったのかも」

ハクリュー「リュウウン」

唯「あ、でも私がはくれちゃったのもリュー太のせいだったり」

ハクリュー「?」


――過去

すでに園内を歩き続けていた少女達

幼い足にも疲労がたまっていた

律「うーん、すこしきゅうけいしようよー」

唯「えー、うーん、もうすこしー」

紬「ゆいちゃん、むりはだめよ。そんなにあせらなくてもだいじょうぶだから」

澪と梓もコクコクと首を縦にふる

しかしその時、

唯「あっ、あのくさのところにあおいしっぽみたいなのが」

憂「おねえちゃんっ?」

静止の言葉もきかずに、草むらに突っ込んでいく

幼い足で必死に走るその姿は草むらのかげに消えた

律「あ、あとをおおう!」

皆がポカーンとしていた中、律が声をあげた

そして幾分か遅れて全員で後をおった

唯「うーん、このへんにまできたとおもったんだけど」

時間を忘れて後を追ってきた結果

その後ろに続く姿はない

唯「あ、いたー!!」

視線の先には、水色の蛇のようなポケモン

ニョロっと這わせて移動していたため影しかみえない状態だったが、

今では全体が唯の目の中にはっきりと写る

唯「わぁかわいい~。あの子と友達になれたらなぁ」

その姿に羨望の眼差しを送るが、ポケモンは違う一点をみつめる

否、にらみつけて動かない

唯「?」

思いポケモンの視線の先に目をやると

硬そうな岩の鎧を纏った一本角の4足歩行型のポケモンがいた

唯「にらみつけられてうごけなくなっちゃってる……」

そして、岩のサイのようなモンスターが鼻息を荒くした

唯「あっ!!」

気付けば、唯は青い蛇のようなモンスターの前に両手をひろげて飛び出していた

ミニリュウ「!」

サイのモンスターが後ろ足で地を蹴った

突進だ

唯は足が震えるが、逃げることはない

ゆっくりとモンスターが突進をかけてくるように思えた


「――」

どこからか聞こえた声と共に突進が強引に停止した

……止まった?

そのことに気が抜け、まず小さな体から力が抜け、気を失った


――サファリパーク前(現在)

唯「あれ、そういえばあの時はなんで助かったんだろう……?」

幼さゆえにまったく気にしていなかったことが今思い出し、気にかかった

唯「あれ……まぁ、いっか」

ハクリュー「りゅー?」

唯「あのあと目覚めたら、憂と憂が捕まえたラッキーに看護されてたんだっけ」

「みんなも泣いたり、怒ってくれたりで……」

「リュー太もずっと側についててくれたんだもんね」

あれからか、と口に出したとき懐かしさと共に笑みがこみ上げてくる

唯「さぁ、サファリパークでも見学してから行こうか?ねっ、リュー太!」

うれしそうに鳴くハクリューを横に連れ

建物内に入ろうとすると

【立ち入り禁止!!パルパーク建設予定地】

ピタリと唯の足が止まった

唯「あれ、もしかして」

「なくなっちゃったのーーー!!」

セキチクシティの端で唯の声が響いた

唯「そんなぁ~~」

ハクリュー「りゅ~~」

ともにガッカリといった風なトーンを落とした声をだしたとき

老人「おやおや、ハクリューじゃないかえ。珍しいのう」

一人の老人が唯に声をかけた

老人「ここになにかようがあったのかな?」

唯「う~ん、この子の故郷のサファリパークを見学しようと思ってたんだけど、つぶれちゃってて」

そういいながらハクリューに手を当てると

老人「おやまぁ、このハクリューはサファリパークにいたポケモンかえ」

「この土地にまだハクリューやミニリュウが生息していたとは」

少し驚き気味に言うと、

老人「ほほう、ならば良いものを上げよう。ちょっとまっておれ」

老人が背を向けゆっくりとその場を離れていった


――10分後

老人「ほっほう、おまたせしたかの」

言われたとおりにその場で待っていた唯はハクリューとじゃれあっていた

唯「ううん、そんなことないよ」

老人「ならよいのじゃが。ほら、これをもっていきなさい」

差し出されたのは、透明なキラキラと光ったウロコ

老人「これは、りゅうのウロコと言ってこのサファリパークにお祀りしていたものじゃ」

唯「おおっ、きれいだね~」

そういいながら、りゅうのうろこに触れた

唯「でも、そんな大事そうなものをもらっちゃっていいの?」

老人「いいんじゃよ。もうサファリパークもなくなてしまうしのう」

「昔はミニリュウやハクリューもこの場所には極わずかじゃが、それでも生息はしていて姿を時々みることもあったんじゃ。
その時にサファリでみつけられたのが、このウロコなんじゃよ」

「だから、これをこのハクリュー様にかえしておこうかの」

そういって唯の手にウロコを手渡した

唯「ありがとうね、おじいちゃん!!」

「でも、おじいちゃんがなんでこんなものを?」

老人「ほっほう、ワシが最初の園長じゃからじゃよ」

ゆったりとした口調で老人が笑った






閑話 「VSサイホーン」〆




――20番水道


空がある

水色の絵の具だけを溶かし込んだかのような、蒼い空だ

下を見れば海もある

地平の向こうには海の青と空の蒼が混ざり合っている

一面の青の世界に、一滴の朱を零したような炎が灯っていた

リザードンとその背に乗った唯だ

唯「わぁ~~!やっぱり飛行手段があるってのはいいねー」

湿り気と塩を含んだ風が、唯の髪を揺らすが

両の手で押さえつけながら唯が言った

唯「ほら、ヒー太みえてきたよっ!あれがグレンじまだよ!」

リザードン「ガァァア!!」

返事をするように声を上げたリザードンがスピードを上げた



――グレンタウン


唯「……どういうことなの」

疑問の対象は目の前だ

唯「どうしてポケモンセンターしかなくなっちゃってるのー!?」

すでに町として機能していない、建物の残骸を見渡し唯が叫んだ

???「唯!」

叫びに反応する声があった

その声は建物の残骸址から響き、やがて声の持ち主が姿をあらわした

唯「ナツメ……さん?」

ナツメ「えぇ、そうよ。あ、そういえば髪を切ってからは一度もあってなかったわね」

以前みたナツメと髪型、髪の色、共に変わっていたので途中から疑問に変わった唯

だったが

ナツメがとっさにフォローを入れた

唯「わっ!!イメチェンしたんだねっ!!うんうん、これもすごく似合ってるよ~」

「私も前髪切ってみようかな~、少しのびてきたし」

ナツメ「いいえ、それはやめておいたほうがいいわ……なんとなくだけど」

唯「え~、なんでー?」

ナツメ「だってあなたが自分で髪にはさみを入れると、くしゃみとかして余計に切っちゃいそうだもの」

唯「え~、そんなことないよ~」

ブーブーと軽口を叩いた唯にナツメがクスッと笑った

………・

ナツメ「えぇー!?あなた大丈夫だったの?」

唯がシオンでおこったことを話すと、ナツメが心配そうな声をあげた

唯「う~ん、倒れちゃったんだけどエリカさんに助けてもらっちゃった」

ナツメ「……そう、エリカが……よかった」

ナツメが小さく、本当に小さな声で安堵した

唯「ナツメさんもありがとうね。エリカさんに私のことお願いしてくれて」

唯がナツメの手をとり、胸の前で握った

唯「本当にありがとう」

ナツメ「な、……うん、どういたしまして」

素直すぎたありがとうにナツメは顔を赤くし、再び声を窄めた

そこへ

???「おや、ナツメ君。お友達かね?」

スキンヘッドで黒いメガネをかけた男がいた

年齢はすでに初老前といったところだろうか

ナツメ「えぇ、カツラさん。少し前に話していた破壊の遺伝子を預けた子です」

カツラ「おお、ということは君が唯君か!」

そういって握手のためにカツラは右手を差し出した

おずおずと唯が握手に応じる様子を見ていたナツメが

ナツメ「唯、カツラさんはグレンタウンのジムリーダよ」

カツラ「ははは、といっても現在はこのとおりジム自体が亡くなってしまったけれどもね」

唯「…!!そうだ、この町はどうしてこんなになっちゃってるの?」

カツラ「おや、知らずに来たのか。ここはつい最近、あそこの山、グレン山が噴火をおこしてね……」

ナツメ「それでも、悪いことばかりじゃないわ……屋敷と一緒にあれも燃えてしまったみたいだし」

カツラ「……ミュウの研究日誌か」

顔色を変えたカツラが呟いた

カツラ「……たしかに、あれは消失して正解だったかもしれんなぁ。
おそらくロケット団もあれがまだあると思えば狙いにくるだろう……」

そして

カツラ「あれは我々の罪だった。二度と繰り返さぬために と戒めに置いておいたものだったが」

「すでに屋敷の残骸を捜索してみてもみつからず、だ。おそらくマグマにのまれてしまったんだろうな」

黙々と語るカツラを傍に、唯がごそごそとしはじめた

なにかを取り出そうとする仕草

唯「そういえば、ナツメさんこれ……」

取り出したのは預かった破壊の遺伝子だった

唯「まだ、私が預かっておいたほうがいいのかなぁ?」

ナツメ「そうね……本当はこれも燃やしたりしてしまうのが一番いいんでしょうけど」

唯「えっ?」

そこへなにかを思いついた顔をしたカツラが介入した

カツラ「さて、ここでクイズだ。君は旅の途中、これをさっさと破壊してしまえば

ロケット団の計画も潰えるとおもわなかったかね?」

唯「……?」


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最終更新:2011年06月13日 00:28