空は冬の色に満ちていた

空へ上がると、雪が一層、唯の視界を埋めた

ランス「今度は空中戦というわけか」

唯「ヒー太、火炎放射!!」

先制をしかけたのは唯だった

雪の世界を、溶かす豪火がリザードンの口から吐き出される

ランス「っち、炎タイプか。フリーザー、かぜおこし」

フリーザーが翼を豪快に振るう

突風が作り出され、こなゆきと共にリザードンを襲う

唯「っ……!でてきて、ビー太!!こうそくいどう」

風の中リザードンの背中から一匹の尖兵が繰り出される

一度真上に飛び上がったスピアーは、上からフリーザーをかく乱しながら狙う

唯「ダブルニーd

ランス「フリーザーを相手にスピードなど無意味だ!!こころのめ、そして絶対零度」

フリーザーの瞳が閉じられる

――キンッ

気付けば、スピアーが完全に凍っていた

ブンとうるさかった羽音は今では一切音を発さず、重力を受け地へと向かう

唯「ごめんね、ビー太ありがとう」

唯はリザードンと共に下に回りこむと落ちてくるスピアーをキャッチした

スピアーをボールに戻し、もう一度ランスを見る

唯「ヒー太、火炎放射。連射して!!」

ランス「冷凍ビームで応戦しろ」

空中で赤と青の光りがぶつかりあう

互いに空を滑るように飛び、あたりかまわずエネルギーを放ち続ける

唯「ヒー太、フレアドライブ!!」

リザードン「!!」

その指示にまず驚いたのは命令をだされたリザードンだった

なぜなら、それはリザードンの体に炎を纏い突撃をかける攻撃

現在唯が乗った状態で使うと……

唯「大丈夫、ヒー太の炎なら大丈夫だよ。私は信じてる」

そういって、リザードンの頭を撫でた

リザードン「ガァ!!」

そしてリザードンの体に炎が宿った

唯とリザードンを覆うように炎の膜ができる

そして

ランス「なんだっ!?」

リザードンがフリーザーに突撃をかけた

冷凍ビームが直撃するが

唯「いける!!いけるよ、ヒー太!!」

冷凍ビームが裂けるように割れた

道ができる。フリーザーへと一直線の道だ

その中心を炎をまといながら滑空する

――ダンッ

ランス「な・・・なにっ?」

青の体にリザードンの体が激突した

唯「やったっ!!」

ランス「まだだ。まだ終わらん。フリーザー、ふぶき」

炎に焼かれたフリーザーは高度は落とすも、墜落することはなく飛び続ける

そして、雲を呼んだ

真っ黒の雲が白の世界を演出するように覆った

唯「ヒー太っ」

風と雪がリザードンを襲う

炎タイプとは言え、あまりに強い雪の前ではさすがに体力を消耗する

やがて

――ピキピキ

リザードンの翼が凍り始めた

高度が下がり、

やがて唯ごと墜落した

ランス「ふはははは、勝った!!あの女をも乗り越えた!!これでサカキさまに――」

そのとき

――ゴロゴロ

――ドーン

雷が落ちた

激しい稲光が襲ったさきはフリーザー

ランス「なっ、どういうことだ」

わけがわからずランスが辺りを見渡すと

真下にハクリューの背に乗り宙を飛ぶ唯がいた

ランス「――」

言葉を失ったランスは、なぜ、と考える

あれは、最初に凍らせたはずだ とも

伝説が落ちる

完全に不意をつかれた一撃はフリーザーをしとめるのに充分だった

唯「どうしてって顔してるから、教えてあげるね。このリュー太の特性は脱皮って

言って状態異常から回復できるの。
つまりはそういうことっ。最後の雷もこの子の技。いやぁ、そのフリーザーが雲を

呼んでくれたおかげで助かっちゃった」テヘッ

おちるランスにあわせてハクリューが飛んだ

ランス「くそっ、でてこいゴルバット!!」ボンッ

堕ちるフリーザーから、ゴルバットの足に捕まりなおし

ランス「だが、俺にはこれがある。この破壊の遺伝子がな」

ランスが懐からさきほど奪った破壊の遺伝子を取り出した

ランス「この力を持ち再びお前を――」

???「リザードン、ブラストバーン!!」

声と共に炎が来た

その行く末は

ランスの手元。正確に破壊の遺伝子を打ち抜いていた

ランス「――!!!!」

唯は見る。

カツラがどれほどやっても消滅させることのできなかった破壊の遺伝子が、サラサラと消滅していくところを

唯「(なに?だれ!?」

???「やれやれ、おじいちゃんにロケット団が再び活動し始めたと聞いて探してみれば、こんな雑魚とは」

声の方向へと二人は一斉に首を向けた

ランス「な、貴様は……トキワジムのジムリーダー!!グリーン!なぜここに」

唯「(トキワジム……?……最強のジムリーダー!!)」

グリーン「しかもだ、おじいちゃんに図鑑をもらったやつがいるとも聞いていたが、こんな女だとは……」

唯「おじいちゃん……?もしかして博士が言ってたお孫さん!!」

唯の驚きの表情とは間逆に、ランスの顔色が悪くなっていく

ランス「……ゴルバット、黒い霧だ!!」

ゴルバットの口から黒い霧が吐き出され辺りを覆った

グリーン「リザードン、ねっぷうでふきとばせ」

グリーンのリザードンの翼がゴウッっと音をたてた

一振り。たったそれだけでゴルバットの作ったきりを吹き飛ばす

グリーン「ちっ、逃げたか」

吹き飛ばされた霧の中にすでにランスの姿はなかった

グリーン「まぁ、いい。どうせもう破壊の遺伝子はない」

「おい、下に降りるぞ」

唯にそうぶっきらぼうに言葉を投げると、ゆっくりとグレンの廃墟へ下降していった


――グレンタウン


ナツメ「唯!!」

唯がグレンに降りたときはじめに言葉を作ったのはナツメだった。

ナツメ「大丈夫だった?」

唯「うん、なんとかね」

そう答え、ナツメの周りをみると

地面にサンダー、ファイヤー、フリーザーが寝転がらされていた

唯「カツラさんも、ナツメさんも、買ったんだね」

ナツメ「えぇ、伝説のポケモンっていってもトレーナーに縛られた状態ですもの」

カツラ「さらに、そのトレーナーの指示すらない状態ということだったからな」

唯「……このポケモンたちはどうなるんだろう」

唯の疑問に答えたのはグリーンだった

グリーン「こいつらはそもそも人に操られるようなポケモンじゃない。体力が戻れば野生に戻るだろう」

唯「そっか、よかった~」

安堵をみせる唯にグリーンはさらに続けた

ナツメ「それで破壊の遺伝子は……」

グリーン「あれは俺が処分した。問題ないだろう」

カツラ「なっ、あれを……かね?」

驚くカツラにグリーンは

グリーン「なにか問題があったのか?」

鋭い視線でカツラを見据えた

カツラ「いや、問題ない」

グリーン「おい、そこの女。どうやらバッチを7つすでに手に入れているみたいだな」

唯を強い口調で呼びかけ

グリーン「3日くらいなら俺もトキワにいる。ジム戦もうけてやるよ。だが――」

「その程度では、俺は倒せない。もう少しマシになってくるんだな」

そういうとグリーンはリザードンの背に飛び乗り

グリーン「飛べ、リザードン」

マサラの方向へ飛んでいってしまった

ナツメ「どう、唯?少しは勝てそうかしら」

その質問に唯は答えることができず、ただ口を閉ざすばかりだった



――どこかの空


ランス「くそっ!!」

ゴルバットにつかまり、空を飛ぶランスが怒声に近い声をあげた

唇からは、怒りをこらえるためにかみしめたのか血が流れている

――ランス、失敗したならジョウトへこい

ランスの腕につけられたポケギアから声が流れる

――こっちの計画はすでに進みつつある。お前の計画はすでに潰えた。だからジョ

ウトへこい

――そもそも本来ならばこっちのほうが本計画だ。

ランス「ちっ、ジョウトか……」

舌打ちしたランスは、ゴルバットに指示を出す

ランス「ゴルバット、いかりのみずうみまで飛べ」

そして、この空に一言を残し、姿を消した

覚えていろ と



「VSフリーザー」 〆




――マサラタウン

唯「ただいま~、憂~!!」

久々の帰宅に唯は声をはずませた

いつもならばすぐに「おかえりー」の声と共に憂が姿を現すが、今日にかぎっては

そうでもない

唯「あれー?憂いないのかな?」

首を斜めにかしげ、靴を脱ぎ

リビングへ足をむけるが

唯「やっぱりいないなぁ~」

そこには整理された無人の部屋があるだけだった

唯「それにしても……憂がいないとなんだか寂しいなぁ」

空っぽの部屋の中で呟くが

唯「そっか、私が旅にでてから憂は一人だったんだね……」

憂が帰ってきたら、ごめんね と言おうと思うが

唯「ううん、この場合ありがとう……かな?」

そして無人のリビングを後にした


――唯の部屋

扉を開いた先にあるのはやはり完璧に整理された部屋

人形などがそこらに転がっていたはずだが、綺麗に机の上やいつもの定置に戻され

ている

憂には感謝しきれないなぁ と思い

綺麗にベッドメイキングされたベッドに倒れこんだ

そうしてまず思い出すのは

これから闘わなければならない相手のことだ

唯「(あのリザードン……よく強そうだったなぁ…)」

攻撃の制度、威力、指示のスピード、適所な技の選択。

どれもが、自分より上なのは先日の戦闘からわかっていた

あのとき、グリーンのリザードンから放たれた破壊の遺伝子を焼き払った技はおそ

らく命中精度のため、
あれでも威力は抑えられていたのだろうなぁ とも

唯「(元チャンピオン……なんだよね……ということは、あと5体もあのレベルなのかなぁ~)」

思考の結果がそのまま溜息として出た

唯「やっぱり勝ちたいよね~」

呟きは誰に届くわけでもなく、ただ静かな部屋に沈んだ

唯「……ん~~、あれ?寝ちゃってたのか~」

窓から差し込む西日に当てられ、目を覚ました唯が寝転んだまま間延びした

枕元にあった時計を見てみると

唯「うそ、もうこんな時間!?」

気付けば3時間以上睡眠をとっていたことになる

唯「あれ、じゃぁ、まだ憂は帰ってきていないのかな」

いまだに物音のしない家に疑問がうまれた

憂が帰宅したのならば、そろそろ夕飯の支度の音がするはずだ

しかし

一切の物音すらしない

そして扉のほうをみた

そこには

唯「あずにゃん!?」

開きっぱなしの扉の前に梓の姿があった

唯「あれ、どうしたの?あずにゃ~ん」

ベッドから降り、立ち上がろうとした時

梓「――」ペコリ

梓が頭を下げた

そして

クルっと背を向けると、唯から逃げるように階段を下り

――バタン

玄関の扉が開く音がした

唯「??…どうしたのあずにゃん?」

なにがなんだかわからないが後を追いかける

音を立てながら階段をくだり、同じように外に出た

そこで

憂「おねえちゃん!!」

梓「唯先輩!!」

憂と梓に遭遇した

再び疑問が生まれる

唯「(え?あれ?)」

その疑問が口から生まれる前に、先に言葉が来た

憂「おねえちゃん、帰ってたんだ!!おかえりなさい!」

うれしそうにする憂と

梓「もう、唯先輩帰ってくるなら前もって連絡するとかしてくださいよ~」

少し愚痴っぽくなっているが、やはり嬉しそうな梓だ

唯「あ、あれれ?」

憂「どうしたの、おねえちゃん?」

梓「なんか様子が変ですね」

唯「い、いま、あずにゃん私の部屋の前にいたよね?」

梓「え?私はずっと憂と一緒に外にいましたけど」

あれ、どういうことだろう と思うが

憂「うーん、とりあえず中に入ろうよ。おねえちゃんも梓ちゃんも」

その言葉に従い再び家の中へ戻っていった


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最終更新:2011年06月13日 00:44