梓「で、唯先輩は急にかえってきてどうしたんですか?」

テーブルにごろんと前かがみに倒れた唯の横についた梓が少し強めの口調で言った

唯「……あずにゃん、なんか怒ってない?」

梓「……怒ってないです」

二人のやりとりに唯の対面にかけた憂がははは……と苦笑いする

梓「一度帰ってきたときに、私だけ仲間はずれにされたことなんてぜんぜん怒ってませんし」

「いつのまにか澪先輩や律先輩がいなくなっちゃってることも全然怒ってません」

一度帰ってきたとき。それは3つ目のバッチを取りディグダの穴を抜けマサラに帰ってきたとき

あの時はたしかイーブイを探しまわっていて、それで……

唯「あっー!!そっか……あずにゃんごめんね。あの時は少し忙しくしてたんだよ~~」

思い出し、そして情けない声で横の梓に呼びかけた

憂「ふふふ、梓ちゃんも寂しかったんだよね~」

梓「なっ、憂!!」

顔を真っ赤にする梓に、それを暖かい目で見守る憂

唯「あずにゃ~~ん!!」

机に伏していた唯が、横の梓に襲うように抱きついた

唯「あずにゃ~~ん、ごめんねー」ナデナデ

梓「なっ、ちょ、やめてください」

唯「ここがええんかーここがええんかー」

ふざけながら首を撫でる手を止める様子のない唯に

梓「……にゃあ……」

鳴いた

憂「梓ちゃん、本当の猫みたい~」

梓「はっ!!久々だったからつい!!」

唯「いいんだよ~、もっと甘えてくれても~」

梓「もう……それで唯先輩はどうして急に?」

質問に唯が抱きつくのをやめ、

唯「ふっふっふ、とうとう私もバッチを7つ集めたのだよ」

そして、じゃーんと言う掛け声と共にテーブルの上に7つのバッチを並べた

梓「……!! 本当にバッチ集めしてたんですねっ!!すごいです」

憂「わぁ……やっぱりおねえちゃんはやるときはやる人だよっ!!」

唯「えっへん、もっとほめるがいい」

そういって胸をはるが

梓「もうっ、すぐ調子にのるんですから」

梓に少し呆れられた

憂「あれ、でも7つってことは……」

唯「うん、明日トキワのジムに挑戦するんだ~」

梓「わぁ、がんばってください!!唯先輩ならきっと勝てますよ……」

唯「……う、うん」

曖昧に濁した返事をしたことに、しまったと思う。

不安の色を気付かせないか、と心配したがどうやら気付かれた様子はなさそうだ

憂「(……おねえちゃん?)」

梓「それで、バッチ8つ集めたら唯先輩はどうするんですか?」

質問が来た

唯「うーん、そうだね。どうしよっか」

梓「どうしよっか、って……なにもきめてないんですか?」

唯「うん、全然考えてもなかったよ」

憂「ふふふ、おねえちゃんらしいね」

笑う憂と少し息巻く梓を見て、一つのことが思い浮かんだ

唯「そうだっ!!どこか3人で旅行にでも行こっか!私が好きなところに連れて行ってあげるよ!!どんな地方でもねっ!」

「ヒー太も大きくなったことだしね」

唐突の提案に憂と梓が驚きの表情を作る

唯「……だめかな?」

ありゃ、だめかな と思い二人に確認の意味も込めて尋ねると

梓「……いいんですか?」

たずね返された

唯「うん、もちろんだよっ! 憂にはずっと家で留守を任せてたから寂しい思いさせたし、
あずにゃんには前に顔出せなかったお礼ってことも兼ねて、ね?」

言うと、返ってきたのは

憂「やった、おねえちゃんとあずさちゃんと旅行か~。たのしみだな~」

梓「ふふ、期待してますよ。唯先輩!」

笑顔と喜びの言葉だった



憂「そういえば、さっきおねえちゃん、梓ちゃんが部屋の前にいた とか言ってなかった?」

唯「あっ、そうだった。あずにゃん、夕方私の部屋の前にいたよね?」

梓「さっきも言いましたけど、今日はずっと憂と一緒にいましたよ?」

梓が不思議そうな顔を作った

唯「あれ、おかしいなぁ……」

疑問は残るが、考えていても答えは出ない

唯「まっ、いっか」

憂・梓「?」

唯「それで、憂とあずにゃんはどこに行ってたの?」

その問いに、梓が少し興奮した様子で答えた

梓「そうだっ!!唯先輩、あのお月見山で見たあの妙なポケモン覚えていますか?」

お月見山?と首をかしげて思い出すと

唯「ああ!!ミュウのことだね」

梓「そうですっ!実は今朝あのポケモンがこのマサラにいたんですよ」

「それで、憂にお月見山で唯先輩と一緒に妙なポケモンを見たって言った時、
憂が見たいなぁっていってたのを思い出して、今日一日ずっと探してたんですよ」

ミュウかぁ……とその姿を唯は思い浮かべる

唯「(ん?なんか……)」

なにかが引っかかっている気がするが、なにが理由かがわからない

だから、そうなんだ~と話を進めると

憂「だって、おねえちゃんと少しでも同じものが見たかったんだもん」

と、憂が少し照れくさそうに答えた



唯「ふぅ~、いいお湯だった」

日はとっくに沈み、時刻は21時を回っていた

梓はすでに帰宅し、唯もお風呂に入り自室で今に至る

ベッドにバタンと倒れてしまえば、あとは思考だけが働く

さきほどから、なにかひっかかているものがある

唯「あずにゃんにミュウの話を聞いたときからだよね。この引っかかった感じは」

一人呟き、考える。

……ミュウか。思い出せば、ロケット団とはミュウにかかわる問題で対決してきたんだったよね

お月見山でピッピに変身していたミュウを……とそこまで考えたとき

今まで引っかかっていたものに気付いた

唯「そうか、そうだったんだ!!」

気付いたときには、図鑑だけを持ち部屋を飛び出し階段を下っていた



――マサラタウン

唯「えっと、図鑑の分布機能で、っと……」

唯は夜のマサラタウンを走っていた

家を出るときに、憂にどこへいくの?と心配されたが、すぐに戻ると告げ走り出した

今唯が見るのはポケモン図鑑だ

調べるのは

唯「あった、ミュウのページ……」

一度遭遇したときには、読み込まなかったが

以前、マサラに戻ったとき、お月見山での読み込まなかった話をし、オーキド博士に改良してもらったため

唯「やっぱり、まだこのマサラタウンにいるんだ」

図鑑の分布機能の点滅は、マサラを指していた

唯「あっちだ……」

そういって、唯はマサラの郊外の小さな森林地帯のほうへと駆け出した



小走りで図鑑が示すほうへ走る

白い息が口から漏れるが、気にせずただ走る

そして

唯「――いたっ」

森の中の小さなスペースにソレはいた

唯「……ミュウ!」

ミュウ「ミュウウウン」

空中をフラリフラリと浮翌遊しながらミュウは鳴いた

唯「夕方、あずにゃんに化けて私のところにきたのは君だね?」

言うと、ミュウがうなずくようにもう一度声を上げる

唯「私、君が変身できるってことすっかり忘れてたよ。」

「あずにゃんにマサラに君がいるって聞いた時、なにかが引っかかってたんだ」

「そのときに、直感的に夕方のは君だって気付いてたのかもしれない」

言葉が通じているかもわからないが、続ける

唯「……もしかして、お礼を言いにきてくれたのかな?」

一連の事件。すべてにミュウが関わっていた。

あのままいくとロケット団に捕らわれていたかもしれない

だから、自惚れかな?とも思いながらも口にだした

すると

ミュウ「ミュウウウ!!」

返事ともとれる鳴き声を発しながら、唯の周りをくるくると回った

長い尾のさきからは、あとを追うようにキラキラとした光が振りまかれる

唯「ふふ、きれいだねっ♪」

何度か唯の周りをくるくると遊ぶように回ったミュウは

唯「――そっか、もういっちゃうんだね?」

その問いには答えることなく、空へと飛び去った

残されたのは


No.151 ミュウ
きよらかな こころと 
つよく あいたいという きもちを 
もつと すがたを あらわすらしい。


図鑑の文字と、それを眺め

唯「ふふっ、私が君に強く会いたいと思ったのかな?それとも君が私に会いたいと

強く思ってくれたのかな?」

という唯の嬉しそうな呟きだけだった



「VSミュウ」 〆





――梓の家


――ジリリリリッ

カーテンの隙間から朝日がさす部屋に音と少女があった

音の発信源は、ベッドに眠った少女の枕元

時計だ。

目覚ましとして、機能した時計が起床時間を知らせていた

ん……、と声をだした少女が目覚ましに手を伸ばす

梓「ん……今……何時……」

かすんだ視界に針とそれが指し示す文字盤が目に入る

梓「えっと……10時と……」

確認するように口にした梓がはっ、と意識を覚醒させた

梓「あわわわ、唯先輩はジム戦に9時には行くって言ってたから……」

「遅刻だあああああ!!」

慌ててベッドから飛び降りるとき、昨日の記憶がよみがえる

あれは唯先輩の家でご飯をよばれ、もう帰ろうとしたとき……



――前日


梓「えっ?先輩朝から挑戦しにいくんですか?」

夜も更けてきたので、もうそろそろ帰ろうと思った梓は唯の家の玄関をでたところ

そこで声をかけられた

その相手は

唯「うん、だからよかったらあずにゃんも私のジム戦みにきてよ!どれくらいつよくなったか見せてあげるっ!!」

そういうと、梓の手を握り

唯「あずにゃんにも私のがんばってきた成果みてほしいなぁ…」

梓「……そういうことなら……わかりました!!」

唯「ありがとおおお、あずにゃ~~ん!」

何度目かになる抱きつきが来た



………

……

梓「うん、これで大丈夫だよねっ、髪の毛もはねてないし、服装も大丈夫」

鏡の前に立ち、自身と顔を会わせ

よーっし、と一人ゴチり玄関へ向け歩みを進めた

梓「あっ、×××もちゃんとつれていってあげないとね」

思い出したかのように、リビングのほうへ行き

モンスターボールを手に取ると

梓「今度こそいくよーー」

そうしてマサラの町へと繰り出した

目指すはトキワシティ、1番道路のその先だ


――1番道路

梓「今日はポケモンも飛び出してこなくて、いい感じ」

走りながら思う。いつもならば、コラッタやポッポが飛び出してきたりするんだけ

ど と

そして、今日に限ってはラッキーかな?とも思う

梓「急がないといけないもんね。――あっ、みえてきた」

視界にトキワシティをとらえるが

梓「あれっ……なんだろう……」

空に朱が二つあった。

方向としては、トキワから少し外れた上空。

郊外にあたるところだろう

梓「……ポケモン……バトル?」

だんだんとはっきり、大きくなるそれを見て

梓「2匹の赤い竜……?」

「――まさかっ!!」

思い浮かぶことは一つある。

そしてそれが確信に変わる声が来た

――ヒー太、火炎放射!!

走る方向を少しずらし、声の元へと走り出した



トキワというのは森林、緑にあふれた町だ

町を少しでれば森林地帯などざらにある

梓「あっちのほうだよね」

梓は木々のあいだを抜け、さきほど声が聞こえたと思われる方へと走る

そして

開けた場所に出た

そこには3人の人がいる

少し離れた場所にいる一人は自分と同じ年で仲がよい少女、憂だ。

遠めに見える彼女の顔は、なにかを心配するかのように、不安そうに見えた

そして、向かい合う二人がいる

お互い真剣な顔をしながら、距離をあけ向かいあっていた

唯と、おそらく戦っている相手はトキワのジムリーダーだろう と予測する

梓「唯先輩……?」

唯を見れば違和感がある

表情だ

いつもの、のほほんとした雰囲気はなく、苦虫をつぶしたような、どこか悔しそう

な表情を作っている

唯先輩!!そう呼びかけようとしたとき

梓「ゆ――!

――ドシン

大きなポケモンが空から堕ち、大地を揺らした

梓「え……?」


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最終更新:2011年06月13日 00:48