――唯の家(午前8時30分)

唯「うーん!!」

全身を弓のようにそらし間延びした。

起きたばっかりの様子をみせる唯だ。

唯「今日はジム戦だね~、みんなよろしくね」

そういって枕元の目覚ましの横に並べた、モンスターボールに話しかけた

そのなかには、さまざまな形状のポケモンが入っているが、

その言葉にとった行動は一つだ

みなが、力強くうなずいた

唯「(うん、きっちりと起きれたし、体調も悪くない)」

普段憂に起こされるまで起きない自分にとっては、すごく貴重だ とおもう

唯「(緊張してる……のかな?)」

自分でもわからない感覚にとらわれているようだった

――コンコン

唐突にノックの音が響き、部屋のドアが開いた

憂「おねえちゃん、起きてるー?」

エプロン姿の憂が顔をだした

唯「うん、ばっちりばっちり。このとおりだよっ!!」エッヘン

一人で起きたことに得意げになるが

憂「ふふふ、ご飯できてるから、着替えたら下におりてきてね?」

スルーされた

唯「それじゃ、いってくるねー。憂もよかったら見にきてね~」

憂「うん、食器とか片付けてからいくね~」

リビングから返答がある。

朝食も取り、準備はばっちりだ

……いよいよジム戦かぁーやるぞー

気合を心の中で入れ、玄関の扉を開いた


憂「おっ、おねえちゃん!!モンスターボール、モンスターボール!!」

5つのモンスタボールを手のひらにのせた憂に、呼び止められた

唯「ありゃ……?」


――トキワシティ

一番道路を抜け、トキワの町へ入る

小さな街だ。

街道にさえ入ってしまえば、ジムなどすぐに姿をあらわす

唯「いよいよだね……さぁ、みんながんばろうっか♪」

ジムはすぐそこだ。

唯は歩く速度をほんの少し上げ、ジムの扉へと向かうが

しかし

グリーン「……きたか」

ジムの外壁にもたれ掛かるグリーンがいた

グリーン「ついてこい」

その一言だけをいうと、町外れの森のほうへと歩を進めた


――トキワ郊外

グリーン「ここでいいだろう」

あたりを見渡せば、木々に囲まれた天然のフィールドともよべる場所があった

その中央には大きなスペースがあり、ジム内より大きいバトルフィールドだ

唯「わぁ……すごいね~」

唯ののんきな声とはうらはらに、グリーンの鋭い声が響く

グリーン「お前は好きな数だけポケモンを使うといい。それでお前が俺のポケモン

を一体でも倒せたなら、グリーンバッチをやろう」

唯「え?」

いいながら、対面に向かって歩いていくグリーンを見送りながら、唯は思う

唯「(それって……)」

なめられている

お前とはそれぐらい力の差がある。そう叩きつけられたようなものだった

対等ではない。そういわれた気がした

胸のうちに悔しさが生まれる

だから

……勝つ

勝ちたいからという意思から、勝つという決意に変わった

そしてグリーンが唯の対面につき向かい合った

唯「いくよ、カラ太」ボンッ

グリーン「カラカラか。行け、リザードン」ボンッ

お互いの初手となるモンスターが繰り出された

最初に仕掛けたのは――

唯「カラ太、速攻だよ。ふところにとびこんでボーンラッシュ!」

カラカラが骨を両手で握り、飛び掛った

グリーン「リザードン、こわいかおだ」

ギンっとリザードンがカラカラを睨み付ける

カラカラ「カラッ!?」

カラカラがリザードンに威圧され、少しの隙をみせた

グリーン「ひるんだ隙を狙え、しっぽをふれ」

ゴウッとリザードンの尻尾が地を這いながら轟音を上げた

向かう先は

唯「カラ太、守って!!」

その指示にカラカラが骨を縦に構え、受け止めた

グリーン「ほぅ……これぐらいでは吹き飛ばないか……」

ならば、とグリーンが繋ぎ

グリーン「飛べ、リザードン!わざわざ地上戦に付き合ってやることはない」

リザードンが大きな翼を広げ、太い足で大地を蹴り出した

唯「カラ太、まだ高度は高くないよ。ホネブーメラン!!」

カラカラ「カラっ!!」

骨を投げた

クルクルと回転しながら骨はリザードンの翼へ向かうが

グリーン「カラカラごと熱風で吹き飛ばせ」

リザードン「ガアアアアアア」

翼を大きく後ろへ逸らし、そして羽ばたいた

風が空を切る音がやけに大きい

そして骨は風に負け、地面に叩きつけられ

カラカラ「……!?」

熱風が真上から叩きつけられるように襲う

地上の砂が巻き上げられ

カラカラを巻き込みながら地上へぶつかった風と熱は、横へ逃げるように方向を変える

当然、その真っ只中にいたカラカラは

真横へと吹き飛ばされ

――ドンッ

木へと衝突し気絶した。

唯「っ、戻ってカラ太!!そしていって、ビー太!」

カラカラをボールに戻し、かわるように出てきたのは

スピアーだ

唯「こうそくいどう!!」

残像を残しながら、加速していくスピアーを

グリーン「火炎放射で狙い打て」

リザードンの口から出た炎が襲う


唯「大丈夫、あたらないよ」

その言葉通り、スピアーが上から降るように放たれた炎をかわす

唯「上昇して、みだれづき!!」

いつのまにかスピアーの位置はリザードンの真下にあった

そして、スピードを落とさずに高度を上げる

懐にはいりこみ

唯「いっちゃええええ」

スピアーが両手の針でリザードンを何度も刺し当てるが

グリーン「スピードに頼りすぎで、力が入っていないな。そんなものではリザードンの体はつらぬけない!」

唯「ならっ……!!」

スピアーがリザードンの懐を抜け、さらに上空の位置につけた

唯「(この後フィーちゃんもいるから、出来る限り飛行手段はなくしておきたい……だから)」

「翼を狙って、ビー太!!ダブルニードル」

翼ならば体に比べて、薄い。

そう考え、スピアーに指示をだす

――ブンッ

狙いを定めたスピアーがスピードをあげた

リザードンの大きく開かれた翼は無防備だ

だから、かまわずつっこんだ

だが

――バサッ

狙いの先にリザードンの翼はなかった

唯「(なっ、空中で翼をたたんだ)」

翼をたたみ重力にしたがい少し下へと下がったリザードンが再び翼を開き

丁度スピアーの真下の位置でホバーした

グリーン「カウンターだ」

リザードンの拳に炎が宿った

そして

アッパーのように、スピアーへと真下からブチこんだ!!

その一連の動作は、唯に闘牛士を連想された

翼をマントのようにしてひらりと、挑発して攻撃を誘う

唯「(やられたっ!!)」

そう思ったときには、すでにことが終わった後

スピアーが落下する

唯「戻れ、ビー太」

グリーン「こんなものか?カントーもレベルが落ちたものだ」

唯「っ……・がんばってフィーちゃん」

イーブイ「ブイブイ」

グリーン「いいのか、そいつで。またカラカラの二の舞になるぞ」

唯「いいんだよっ!フィーちゃん、がんばって」

グリーン「ふん……やれリザードン。熱風だ」

カラカラの戦闘シーンが再び再現されようとしていた

リザードンが高度を下げる

上空にいては、熱風の威力が格段に落ちてしまうからだ

グリーン「そら、お望みの展開だ!」

大きな翼から再び熱と風が放たれた

唯「フィーちゃん、こらえて……!」

イーブイが熱風に巻き上げられた砂埃のなかに消えていく

――ゴウッ

一振り、二振り、とリザードンは翼を振るい

そして技が途切れる瞬間がくる

唯「いまだよ、フィーちゃん、とっしん!!」

砂埃の中、イーブイが空中へと飛び出し

低空へと降りてきていたリザードンのボディへと己の体を捨て身でブチあてた

グリーン「……!? まだ耐えていたか!?」

「だが――」

攻撃を食らったリザードンは空中でフラリとぐらつくが

グリーン「悲しいことに威力が足りないな!!」

持ち直した


一方、最後の攻撃を放ったイーブイは地上へと落ち目を回している

とっしんの反動だ

唯「これもだめ……なの? 戻って、フィーちゃん」

イーブイをボールに戻したとき、カタカタと唯の体に震えがきた

ポケットに入れたモンスターボールだ

その一つを取り出し、中に入っているポケモンと目をあわす

唯「リュー太……?」

じっとハクリューと見つめあうと

唯「おちつけってことかな?」

そういうと、ボールの中のハクリューがコクンとうなずいた

唯「……」

考えてみれば、最後のジム戦ということで余計な力が入っていたのかもしれない

熱くなりすぎた とも

相手は自分より強者だ。

そのことは本当は戦う前から自分でもわかっていた。

認めたくなかっただけだ。

そして

ただ、いつものようになんとかなるだろう と慢心していた。

それが甘かった

相手は勝負に関しては真剣だ。

さきほどから手を抜いている様子などもまったくない

唯「(これは失礼……だったよね)」

一度大きく、深呼吸をした

すると、景色が一新した

辺りをもう一度よく見渡すと、いつのまにか憂がいた

その顔は心配そうで

唯「(心配かけちゃった……よね)」

そして、グリーンを見据える

相手はいまだに何も言わずに自分のことを待ってくれている

まるで万全を出す間を与えてくれているように

相手は待ってくれる相手だ。

そのことにありがたいと思いながらも

唯「ふふ、グリーンさんって実はいい人だったり!」

その言葉にもグリーンは反応は示さないが

唯「これからは今までのようにはいかないよっー!」

唯が新しいボールを掲げた



「VSリザードン(前編)」〆




唯「GO、リュー太!!」

ハクリュー「リューー!!」

オーラを纏う美しい蛇のようなドラゴンが繰り出された

唯「リュー太、竜巻!!」

リザードンの周りを風が渦巻いた

あたりの岩の礫や砂を巻き込みながらも、円を描きながら竜巻は拡大していく

グリーン「っく……リザードン、上空へ逃げろ!」

竜巻の中心部からリザードンが飛び出した

唯「(大丈夫、消耗させてる。まだまだ押せるよ)」

「リュー太、雲を呼んで!!」

ハクリュー「リュウウン!!」

ハクリューの首につけた玉が、光りを放ち

天へと抜ける

大きな雲が空を隠すように覆った

グリーン「リザードン、竜の舞だ!!」

リザードン「ガァアアアア――」

空を飛ぶリザードンが咆哮を上げた


そして

音が響いた

翼で空を切る音だ

ヒュンと鳴らしては、また重なるように音を上げる

風が動く

尻尾の炎が華のように咲きほこり、ゆらゆらと揺れる

そして揺らぎは本体へとも伝播する

――ユラッ

リザードンの体が揺れて、消える

正確には消えているわけではなく、認識をずらす といった感覚だろうか

そして音と動きが重なった


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最終更新:2011年06月13日 00:52