唯「それじゃぁ、行ってくるね~」

玄関に手を振り、自宅を後にし

リザードンを出し、その背に乗った

だが、そのとき

おい、と呼び止める声が来た

みえばそこには

グリーン「……ジョウトのバッチ3つだ。どこでもいい、ジョウトで3つバッチ集

めてきたならば、その時はもう一度勝負してやろう」

その言葉だけ告げると、背を向けゆっくりと去って行ってしまった

呆然とその姿を見送る唯は

唯「ふふふ、やっぱりいい人だよね」

そして

唯「さぁ、飛んでヒー太」

空へと飛び出した

………

……

――ヤマブキシティ

ナツメ「で、どうして唯はここにいるのかしら?」

唯「えへっ、きちゃったっ♪」テヘッ

ナツメ「テヘッじゃないわよっ!!どうしてここにって聞いてるのよ?」

唯「いやぁ、えっとジョウトってどうやっていけばいいかわかんないし、頼れる人はナツメさんだけなんだよ~!」

「妹と後輩にも大見得きって出てきちゃったし……」

声が響くのはヤマブキシティのナツメの家だ

唯が泣きまねをしながらナツメにすがりく

ナツメ「唯ってほんとに変わってると思う」

唯「えへへ、そうかなぁ?」

ナツメ「言っておくけど、褒めてないからね?でも、よく私の家がわかったわね?」

唯「えっと、街でナツメさんの家がどこか聞いたらおしえてくれたよ」

唯が今度はナツメの部屋を見渡し、あちらこちらへと物色している

透明なガラスケースが机の上には設置されており、その中には

唯「(……スプーンコレクション!?)」

ナツメ「それで、ジョウトへ行くって言っていたわね……」

「まったく、タイミングはいいんだから」

唯が物色しているのをまったく気にする様子もなくナツメが続ける

ナツメ「こっちへきなさい。唯」

唯「?」

呼ばれ振り返った唯が、疑問を顔に出しながらもナツメへと近寄っていく

ナツメ「はい、これ」

差し出されたものは

唯「定期入れ?」

ナツメ「えぇ、そこにはヤマブキからコガネへの定期券が入っているから、使うといいわ」

唯「ナツメさん……!!」

そして一瞬の間を置き

唯「ありがとおおおおお~~」

抱きついた

ナツメ「えっ、ちょ、やめ、やめなさい//」

あまりこのようなスキンシップに慣れていないナツメが顔を赤くする

唯「ちゅ~~!!」

ナツメ「えええ、ちょ、え、だめ」バシン

頬に真っ赤な紅葉ができた

唯「あれれ、デジャブのような……」



「VSリザードン(後編)」 〆



―――行こう、ジョウトへ

カントー編 了




――ワカバタウン


夜。

月は雲に隠されること無く空にある

民家からぼんやりとこぼれる灯りの中

町の名前を表記した看板のまえに少女がいる

赤いカチューシャをつけ、おでこが出しているのが特徴的だ

律「はじまりのまち……か」

目の前の看板に書かれていた文字を田井中律は、目でなぞりながら口にした

律「よっし、いくか」

気合を入れるように自分の頬を叩き、方向を転換する

向かう先はこの町の研究所、ウツギ研究所だ

ジョウトまで一緒に来たオーキド博士の紹介で、そこへまず行くことになっている

『ワシもずっとジョウトにいられるわけではないからの。なにか困ったことがあるならウツギ君を頼るといい』

そういって、オーキドは先にある30番道路まで行ってしまった。

律「ここが、ウツギ研究所……だよな?」

問いかけに当然答えが返ってくるはずもなく、

律「まっ、この町のそれらしいところはここしかないし、ここか」

はは、と自嘲ぎみに笑った律はそのままドアに手を伸ばす

律「それにしても、やけに静かだなぁ」

ドアノブを回したところで、うち開きのドアが開いた

律「(あれ?まだ、押してもいないのに]

開かれたドア――そこには一人の少年がいた

律「(赤毛?)」

肩まで伸びた長髪、赤毛の少年が口を開いた

???「どけっ!!」

そういいながら、律を押しのけるようにどけ、そのまま走り去った

律「なんだ……?なんか感じ悪いなー……」

その少年の後ろ姿を見送った律は、今度こそ部屋へと視線を向けた

律「えっ?」

部屋の中は暗い

地面を見ると、ガラス片のようなものが落ちていた

どうやら、蛍光灯が割れてしまったその残骸のようだ

天窓から入る月明かりにその光景を見ていると、なにかが床に転がっていた

目を凝らし、近づいていくと

律「――!? 人?」

白衣の研究者とも思われる男が床に転がっていた

思い当たるフシはたった今あったばかりだ

赤毛の少年が急いで出て行ったわけは……

律「泥棒かっ!!」

今から追えば追いつけるか?と心の中で考えるが

やめた

律「今は、この人が優先だ」

言うと、その男へと呼びかけた

律「おーい、生きてますかー」

研究者の上体を起こし、反応を待つ

すると

???「ん………あれ?……僕はどうして……」

目覚めた…よかった と律が思っていると

???「ああ!!泥棒!!」

今まであったことを思い出した男が、上体をガバっと起き上がらせた

律「へっ?」

疑問の声と共に、なる音が一つ増えた

――ゴチン

急に起き上がった男と律のデコが衝突した



――ウツギ研究所


ウツギ「いやぁ、ごめんごめん、つい動転していて気がつかなかった」

ウツギと名乗った研究者が頭を下げながら言う

律「いや、まぁ、いいですけど」

律がデコをさすりながら答えた

ウツギ「そっかそっか、君がオーキド博士の言っていたトレーナーだね」

「どうだい、このジョウト地方は?」

律「うーん、まだ来たばかりだからよくわかんないけど……」

「やっぱり、カントーにいないポケモンを見れるっていうのは楽しいかな」

言った律にウツギが微笑みを見せる

ウツギ「そうか、やっぱり旅は楽しくないとね。君は君の旅を楽しむといいよ。ポケモン達と一緒に、ね」

一息入れウツギは、ところで、と話を続ける

ウツギ「泥棒の件だけど、君は犯人の顔を見てるんだよね?」

律「はい、赤毛の少年ですよね?」

ウツギ「うんそうそう。僕は犯人の顔を見る前に気絶させられてしまったから、よかったら協力してくれないかな?」

律「はぁ……まぁそれはいいんですけど、何が盗まれたんですか?」

質問にウツギが苦い顔を作った

ウツギ「ポケモンだよ。ほら、そこ」

指差した先には、1つのボールと2つの窪みがある。

どうやら2つの窪みのほうにもボールが置かれていたようだ。

ウツギ「1つは君と同じように旅立つ少年に上げたんだ。で、残った2つの中から君に一匹あげようと思っていたんだが……」

「どうやら一匹赤毛の少年に持っていかれたようでね」

自分で放った言葉にウツギが心配そうな表情を見せ

ウツギ「悪用されなければいいんだけど……」

律「……」

ウツギ「まぁ、それはひとまず置いといて、君の旅でなにか手がかりやあの少年を見つけたら教えてほしいんだ」

律の中の答えは一つだ

放っておければいいんだけど、とも考えるが、やっぱりできないよなぁ とも続く

そしてだした答えは

律「はい!」

その依頼を引き受ける言葉だった



ウツギ「それじゃぁ、これ」

差し出されたそれは、腕時計のように手首にまくようになっており、小さな画面もついている

律「?」

とりあえず差し出されたものを受け取ると

ウツギ「これはポケギア。電話の機能もあるから、なにか分かったらこれで知らせてほしいんだ」

律「でも、これ高価なものなんじゃ……」

ウツギ「まぁ、依頼料とでもおもってくれればいいよ。」

そういうと、ウツギはさてと、と話を切り替えた

ウツギ「ところで、さっき言っていたポケモンだけど、君さえ良かったら連れて行ってやってほしいんだ」

言われ、律は置かれているボールを見た

中から青いワニのようなポケモンがこちらをみていた

律「まぁ、もらえるなら……」

ウツギ「そうかいっ!よかったよ、こいつも旅に出ることを楽しみにしていたんだ」

そういったウツギはボールを手に取り、こちらに手渡した

ウツギ「さぁ、開けてやってくれないか?」

律「……よっし、でてこい」ボンッ

二足歩行の水色のワニが姿を現した


すると

ワニノコ「ワニッ!!」

一度元気よく鳴き

嬉しそうに律の足元へ駆け寄った

ウツギ「この子はワニノコっていってね、あんまり感情を出さないポケモンなんだけど……」

「……どうやら、君のことが気に入ったみたいだね。とても嬉しそうだ」

律「へへっ……よろしくな、ワニノコ!」

ワニノコを撫でてやろうと手を出したそのとき

ウツギ「あっ……!!」

ワニノコ「ワニッ!!」バクッ

ワニノコが差し出された手に噛み付いた

律「――!!」

律が声にならない声を上げた

ウツギ「ごめん、言うの忘れてたけど、ワニノコの習性として、よく噛み付いたりするんだ」

律「……さきにいってほしかった……」



「VSワニノコ」 〆




――29番道路


律「よっし、ワニノコいい感じじゃん」

野生のポケモンを倒したばかりのワニノコを褒める

律「夜だからか、梟みたいなポケモンが多いなぁ。向こうでのポッポみたいなものかな」

「さて、急ぐぞワニノコ!」

ワニノコ「ワニ!」

頷いたワニノコを見届けてから、律は走り出した

走ることには理由がある

一つは

律「あの赤毛……まだ遠くにいってないはずだよな」

そしてそれにと付け加え

律「なんとかポケモンセンターまではたどりつきたい。野宿はいやだ」

などと一人で呟いていると、街の灯りがぼんやりとみえてくる


その時、横のワニノコが速度をあげた

変化はワニノコのスピードだけではない。

走る向きもだ。

ワニノコは町より少しずれた方向へと向かい

律「おい、そっちは郊外だぞ。っておい、まてよワニノコー」

今度は律がワニノコを追う形になった



律「おい、ワニノコどうしたんだよー」

今いるのは、町の外れだ。

夜ということもあり、少し離れた町から音が消えていた

だが

――チコリータ!!とどめだ、はっぱカッター!!

律「なんだ?」

疑問が生まれるが

どこかにポケモンバトルをしているものがいる、そう悟った律は

律「へっへーん、面白そうじゃん。ワニノコ、ちょっと見に行こう」

声の方向へと歩みを進めた


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最終更新:2011年06月13日 01:13