そこにいたのは勝者と敗者だった

どうやら勝ったのは、帽子を後ろ向きに被った少年で

敗者は

律「あっー!! 泥棒!!」

赤毛の少年だった

律の声に、勝者と思われる少年は、え?という顔を見せる

律「いいから、そいつ捕まえてー」

帽子の少年へと叫ぶと

しかし直後

赤毛の少年が動きを見せた

赤毛の少年「っち……退くぞ、ヒノアラシ!」

ボールに今まで戦わせていたポケモンを戻し、逃げ出した

律「ワニノコ、追うぞ!」

叫ぶようにワニノコを見ると……

ワニノコ「ワニワニ!」

チコリータ「チコッ!」

帽子の少年のポケモンとじゃれ合っていた。

そして

帽子の少年「えっと、何がなんだか分からないんですけど、説明してもらっていいですか?」

律はその疑問に一瞬まよった顔を見せるが、

律「(今から追っても……まぁ追いつけないか…)」

「はぁ……」

大きな溜息をつき、少年へと説明を始めた



ゴールド「えぇー!!ウツギ研究所で泥棒!?」

ゴールドと名乗った少年は驚きの声を上げた

律「あれ、ウツギ博士は知ってるの?」

ゴールド「あ、はい。実は自分も今日ポケモンをもらって旅にでたんです」

その言葉に律は

律「(あぁ、そういえばウツギ博士が私の前にポケモンをあげたっていってたっけ)」

「で、君はなんでさっきの赤毛の子とバトルしてたのさー」

ゴールド「博士のところへの届けるものがあったから、
ワカバに戻ろうとしたら急にバトルをふっかけられちゃって……」

まぁ、勝ちましたけどね とキリっとした表情を見せたゴールドの言葉を律は相手にせず考える

律「(アイツの目的はなんなんだ……?バトルしたってことは売買ってわけじゃなさそうだけど……)」

ゴールド「えっと、律さん聞いてますー?」

律「えっ?あぁ、聞いてる聞いてる。それじゃ、あいつの名前とかわかんないよなー?」

ゴールド「あぁ、それなら分かりますよー。たしかシルバーって……」

律「だよなー。やっぱり、わからないよなー……って、えええええ!!」

ゴールド「うわぁ、びっくりしたなぁ。いきなり大声をださないでくださいよー」

律の声に体を一歩のぞけらせたゴールドがのんきな声をだした

律「なっ、なんでわかったんだ?」

ゴールド「いや、バトルのときにアイツのトレーナーカードがチラっとみえましたから」

なんて視力してるんだ……と律が内心呟くと、

ゴールド「これでも視力も動体視力もいいんですよ!」

またしてもキリッっとした顔で答えた

だが、律は

律「(シルバー……か。忘れないぞ)」

そして

律「君、えっとゴールド君だっけ?ウツギ博士のところに行くならこのこと伝えておいてよ」

ゴールド「律さんはどうするんですか?」

律「えっと……私は……」

ポケモンセンターで寝る とは言えず

律「この先の30番道路に待たせてる人がいるんだよ!」

嘘はついていない、と律は頭の中でオーキド博士を思い浮かべ

うんうん、と頷いた

ゴールド「?」

「はぁ……まぁわかりましたけど、それじゃぁ早速僕は向かいますね」

そういってゴールドはチコリータと呼ばれていたポケモンを抱え、律に背を向けた

律「まっ、私だって女の子だし、夜くらいは男の子パシらせても罰は当たらないよなー」

ゴールドがいなくなった後、律が一人で呟き

ワニノコ「ワニッ!!」

よくわかっていないワニノコがとりあえず頷いた

1人と1匹の向かう先は、街で最も灯りを発している場所

ポケモンセンターだった

律「(よっし、野宿はまぬがれたなぁー)」



――30番道路(翌朝)

律「おおっ、やっぱりトレーナーって感じのやつも結構いるなぁ」

目の前に広がる道を見渡した

東の道と西の道に別れており、その中心には林のような木が邪魔をしている

西側の道ではどうやらトレーナー同士が対戦しているようで

律「えっと、博士に会いに行かないといけないから、道はコッチだな」

東側の道へと歩みを進めることにした

……それにしても、やっぱりカントーにはいないポケモンもいるなぁ

あちらこちらで顔を出す野性のポケモンを見て律は思う

律「お、ポッポはやっぱりこっちにもいるんだなぁ。あっ!あの木はコクーンの巣か!」

懐かしいなと思う気持ちは故郷のトキワシティを思い出したからだ

律「(小さい頃よく澪と遊びにトキワの森にいったっけ……あいつ薄暗い雰囲気が苦手で怖がってたなぁ)」

――ブンッ

その時なにか音が響いた

あまり気持ちいい音ではない

律「なんだぁ……?」

言ったとき、気付いた

ここはコクーンの巣だということの意味に

つまり

律「スピアーもいるってことかぁ!!」

後ろを振り向いた

そこには3体の並んだ蜂が自分の両手の針を鳴らし威嚇している

律「でっ、ですわよねー……」

一歩仰け反った律は、すぐに反転し

逃げる体勢にはいった

律「くそおお、スピアーの縄張りだったのかあああ」



律はほとんど全力で走っていた

後ろにはスピアーがついてまわっている

が、

そろそろ自分の域が切れ始めた

律「あぁ、もう。疲れたしめんどくさい!」

言った律が急に足をとめ、3匹のスピアーと向き合った

律「ふふふ、私を怒らせたことを後悔させちゃる……いけ、ガーディ、イーブイ!」

ガーディ「ガウ!!」

イーブイ「ブイッ!!」

三匹に対して繰り出されたのは二匹だ

本当はワニノコも出せればいいのだが、と思うが

律「(正直、そこまで指示がまわらないよなー)」

だから、二匹でスピアーに向かうことにした

律「本当は二匹への指示も慣れてないけど、まぁ野生ポケモンだし、追っ払えればいいし大丈夫かな」

一方、3匹のスピアーは繰り出されたポケモンに対して、戦闘態勢をとっていた

先制を仕掛けるのはスピアーだ

スピアーは集団行動時のできるモンスターだ。

だから、攻撃を仕掛けるときには、より効率的な形を取る

スピアー「――!!」

まず一匹目が直線で来た

狙われたのはイーブイだ

律「よけろ、イーブイ!!」

直線の動きに横にずれる形で対応するが

スピアー「――!!」

二匹目のスピアーが横から加速しながら針を突き出してきた

律「イーブイ、上だ。ジャンプ」

今度はジャンプして、かわす形を取る

そして

スピアー「――」ブンッ

3匹目の羽音が上から来る

本命の攻撃だ

落ちる形になったスピアーは真下に針を振り下ろす形で攻撃にきた

だが

律「へっへん、こっちもスピアーには襲われ慣れてるから、行動はわかってるぜ!!」

トキワにいた頃の経験だ。

「ガーディ、火の粉だ!!」

律の斜め前で構えていたガーディに指示をだす

指した先にあるのは、真下へと落下しようとしていたスピアーだ

ガーディ「ガルッ!!」

チリッと空中に散った火の粉はスピアーに襲い掛かり

その羽を少し焦がした

羽が焦がされたスピアーは、もがき

――ボタッ

落ちた

律「よっし、まずは一匹。次、イーブイでんこうせっか!!」

ジャンプから着地したイーブイはすぐに行動にでた

目指す先は、二匹目のスピアーだ

反転して再び襲い掛かろうとしていたスピアーへとイーブイが体当たりした

完全に不意をついた攻撃となったそれは、スピアーを木に叩きつけるには充分すぎ

る威力だ

ぶつかる音に次いで、再び落ちる音を律の耳は捉えた

律「こうなったら、あとは簡単だな」

残すは一匹のスピアーだ

どこかたじろぐ様子をみせるそれに

律「ガーディ、ほえろ!!」

ガーディ「ワオーン!!」

吠えた

音が威嚇行為となり、そのまま残ったスピアーへと向かう

スピアー「――…!?」

そして

――ブンッ

羽音を残し、林の中へと消えた

律「ふぅ~、なんとかなったなぁ」

一息つき、

律「よくやった、ガーディ。いつも澪とやってた追い払い方を覚えててくれて助かったよ」

「それにごめんなぁ、イーブイ。おとりみたいな役をさせて」

律が二匹の頭をやさしく両の手で撫でた

ガーディ「ガウガウ♪」

イーブイ「ブーイ♪」



――ポケモンじいさんの家

律「ま、なんとか着いたな」

目の前には家がある。

あきらかに、場違いな場所にあるその家が律の目的地だ

律「すいませーん、こちらにオーキド博士がいるって……」

オーキド「おおっ!!ようやくきたか、待ちくたびれるところじゃったぞ」

なにやら慌てた様子のオーキドが、ドアを開けたばかりの律に反応した

律「……? なにかあるんですか?」

オーキド「おー、これからラジオの収録でな、とりあえずこれを」

オーキドが白衣の内ポケットを探る様子をみせ

オーキド「ほれっ、ポケモン図鑑じゃ」

律に差し出されたのは、赤い手のひらより少し大きめの機械だ

たしか唯がポケモン図鑑ってのをもってたなぁ と思うが

律「あれ?でも、これ唯が持ってたやつと形が違う……?」

オーキド「最近になって新しく作ったやつじゃからな。まぁ、唯のと中のデータはほとんど同じじゃ」

「唯に図鑑を渡したのはいいんじゃが、あの子もあまりポケモンを集めるということはしていないからのお」

「まぁ、ミュウのデータを持ち帰るという補って余りある働きをしてくれたんじゃがの」

少し苦笑気味に笑みをみせたオーキドが言い

おっと、と話がずれたことを元に戻そうとし、一度咳払いをした

それから、だからと繋ぎ

オーキド「君にも図鑑の収拾を手伝ってもらいたいんじゃよ。君が悪い子じゃないっていうのはわかっておるしの」

律「いいんですか?」

オーキド「まぁ、昨日面白そうな少年にも託したことじゃしのう。それに、澪君にも手に渡るように手配したところじゃ」

律「(澪にも……!!)」

律「わかりました。ありがたく頂きます」

そういって両手でその図鑑を受け取ると

オーキド「おっと、ワシも早く行かんとな。それじゃぁ、図鑑のことは任せたぞ」

オーキドはポケットからボールを取り出し

オーキド「ピジョット、コガネまで急いでおくれ」

現れたピジョットの背中に乗り、空へと飛び出し

やがて、消えていった

残された律の手のひらには赤い図鑑がある

……ようやく同じ舞台に上がった

唯の手にも同じものがあり、澪の手にも渡るという。

それを見て思うことは

……負けられないな

顔を上げた

見るのは西の方向だ

その方角には

律「行くか、一つ目のジム。キキョウシティへ」



「VSスピアー」 〆




26
最終更新:2011年06月13日 01:21