――キキョウシティ


田井中律はその日、早起きをしていた

ジムへと挑戦するためだ

しかし

律「あぁー、散々な目にあった」

目の下に隅をつくった律が、げっそりとしながら言った

昨日、マダツボミの塔での出来事だ

ゴースに襲われそうになったところを、炎で切り抜けたのだがそれがまずかった

あの後、上から降りてきた長老っぽい坊主に、散々怒られた

木造の建築で炎を使ったのが、どうやらまずかったようだ

幸い被害などがでてなかったのでお説教ですんだが

律「ちくしょー、シルバーめ。さっさとトンズラしらがって」

「……っと、ここがキキョウジムか」



――キキョウジム


律「すいませーん、ジムに挑戦しにきたんですけど」

扉の先には一人の男しかいなかった

その男は空中を見上げ、

???「おっと、挑戦者みたいだね。さぁ、戻っておいでピジョン」

言った後、その腕をまっすぐ突き出し

ピジョン「ピジョーッ!!」

そこへピジョンが止まった

ハヤト「やぁ、ようこそキキョウジムへ。おれはここのジムリーダーハヤト」

律「私は律とでも呼んでくれ。それでここはジムリーダーだけ?」

大抵のジムにはジムリーダーの下にジムトレーナーがいて、そのトレーナーを倒し

たものがリーダーに挑戦できる

それがここには、見渡した限り目の前の男一人しかいない

ハヤト「おっと、すまないね。今はおれがトレーニング中だったから、みんなには出てもらってるんだ」

律「へぇ~、えっとじゃぁジム戦は……」

ハヤト「あぁ、もちろん受けさせてもらうよ。こちらの落ち度で挑戦者を帰すわけにはいかないからね」

ほっ、と律が息を吐いた

また無駄足になるかとおもったからだ

ハヤト「それじゃぁ、上にいこうか?」

ハヤトが言いながら上をさした

律がその言葉に疑問を持ちながら、上を見上げた

ジムは吹き抜けになっており、空が見えるが

……なっ!!空中のフィールド?

驚いたのはその間だ

ジムの中空には、もう2階部分があった

だが、その2階部分はところどころ穴が開いており、下からでもその穴を通して、

先にある青空が見える

一見不安定にも見えそうだが、サイドの部分で固定されてて、落ちそうにもない

律「なっ、あそこでやるのかよ……足踏み外したらシャレにならないな」

ハヤト「そうかい? 意外にやってみると気持ちいいもんだよ。まるで空に立って闘っているみたいだしね」

「――さぁ、上に行こうか」

そういった時、ハヤトのたっていた部分が押し上げられた

そして

律の足場も――

律「うわっ、なんだ、この床エレベーターみたいになってんのか」



ハヤト「さぁ、さっそくやろうか。挑戦者。そちらがわのフィールドにつくといい」

そういってハヤトは向かいの場所についた

……どうやらフィールドと呼べる場所はあるみたいだ

ところどころ穴があいているが、土のフィールドに止まり木みたいなもの置かれている

ハヤト「使用ポケモンは2体でいいね?どちらも戦闘不能、もしくは降参で決着だ」

「さぁ、おれの一番手はこいつだ。いけっ、ポッポ!」ボンッ

ポッポ「ポッポッ!」

律「やっぱり、飛行タイプか!! いくぞ、ワニノコ!」ボンッ

ワニノコ「ワニ!!」

それぞれのポケモンが展開された

ハヤト「ポッポ、たいあたり!」

先手を取ったのはポッポだ

空からの急襲がくる

律「ワニノコ、かみつけ!!」

指示にしたがい、ワニノコがポッポの攻撃にあわせて、口を大きくあけ

そのポッポのつっこんでくるタイミングにあわせて、口を閉じるが

――ガチッ

そこにポッポの姿はない

だが、一瞬おくれて

――ドンッ

たいあたりがきた

その攻撃にワニノコが地面を転がるが、

ポッポはそのままとおりすぎて空へと逃げる

律「タイミングがずらされた……」

ハヤト「ふふっ、当然だね。君達は一度空中で攻撃を繰り出せば止められないけど、鳥たちは違う!」

「なんたって、翼があるからね。空中での速度を遅れさせることだって自在だ。もちろんスピードを上げることだってね」

「――ポッポ、そのままでんこうせっか!」

空中でUターンしたポッポがワニノコへ向けて飛来する

そのスピードは速いが、あわせられないほどではない

律「よっし、今度こそ、うまくかみつけよ、ワニノコ」

ワニノコ「ワニッ!!」

ハヤト「だから、無駄だよ」

――ビュン

ポッポが目の前に来て、いきなり伸びるように速度をあげた

それは一瞬だが風切り音が聞こえるほどの速度だ

だが、その伸びに対応できず、ワニノコは再び地面を転がった

律「くっそー、空とか卑怯だろ!」

ハヤト「ふふ、飛行タイプの真髄がわかったかい? 君達が地面に縛られ闘う中も
その何倍もの体積を鳥ポケモンは自由に移動できる。これが飛行タイプさ」



律は少し焦っていた

何度もポッポとは闘ったことはあるが、トレーナー付き

しかもその専門のトレーナーが付いてるポッポがやっかいだとは思わなかったからだ

……くっそ、野生とはまるで違うか

律「(あいつら、ヒット&アウェイなんてしてこないもんなぁ……どっちかというとヒット&ヒットって感じだもんなぁ)」

ともかく、攻撃が当たらないことには始まらない

……いかりで力を上げても、結局その攻撃が当たらないんじゃ、意味ないしなぁ…


律「さてと……どうするか………ん?」


おかしい

律が見たのは、ワニノコだ

攻撃され転がったワニノコは立ち上がったのだが

律「(震えている……?)」

そして

光が来た

それはワニノコを包みこむ光りだ

律「これは………」

光りが収束していく

そう、かつてワニノコだった新しい姿を残して――



ハヤト「(あれは……まさか)」

律と同じ様をハヤトは見ていた

ハヤト「進化がきたか!!」

ハヤトがその声をあげたとき、律がハッと顔をあげ、こちらをみた

そして

律はポケモン図鑑をとりだした



No.159 アリゲイツ
キバは ぬけても つぎから つぎに 
はえてくる。いつも くちのなかには 
48ぽんの キバが そろっている。


律が目で追うのは図鑑の文字だ

そして、なにか内側から沸きあがってくるものを感じる

律「(これが……進化か!)」

嬉しさにも似た感情だ

そしてそれはトレーナーとしての喜びの感情だ

ウツギ博士が研究用のポケモンとは言っていたが

……進化のスピードもはやいものなのか

律「……アリゲイツ、いけるな?」

アリゲイツ「――」コクッ

律の言葉に静かに、進化したてのそれは頷いた

律「よっし、いくぜ、アリゲイツ。ここからが逆転劇だ」

そして

律「アリゲイツ、みずてっぽうをお見舞いしてやれ」

指差す先にはハヤトのポッポがいる

アリゲイツ「アリッ!!」

ワニノコのときよりもはやい水流がアリゲイツの口から発射された

だが

ハヤト「そんな直線的な攻撃じゃ、当たらない。ポッポかわしてそのまま、でんこうせっかだ」

水はあっけなく避けられる

それどころか、そのままポッポが水を潜り抜け、接近してきた

ハヤト「最高速度でうちぬけ!」

ポッポ「ポッポ!!」

狙うのはアリゲイツの胴体だ

――ブンッ

先ほどよりも強烈な風が舞った

律「いいぞ……ひきつけろ…………そこだ、アリゲイツ、こわいかお!!」

アリゲイツへと残り1m。その地点でギロりとアリゲイツが凄んだ

それをモロに受けたポッポは怯み、スピードを落とす

律「へへ、さすがにこれは避けれないよな。いまだ、アリゲイツ、かみつけ!!」

スピードの落ちたところ、アリゲイツがポッポめがけて噛み付いた

ようやくの初激だ

ハヤト「くそ、ポッポ。羽ばたいてふりきれ!」

だが

律「無駄だよ」

ハヤトの口真似をして言ってみた

ハヤト「………」

律「おい、なにか反応しろよー。こっちがはずかしいだろ。……まぁ、無駄だわ。それ」

「アリゲイツは一度噛み付いたら、逃がさないように牙の先が反り返ってるんだ」

まぁ、私もさっき知ったことだけどな と付け加え

律「だから、これでもう逃げられないし」

「――これで終わりだ。アリゲイツ、冷たい一発をぶちこんでやれ。冷凍パンチ!!」

アリゲイツは拳を握ると、そのまま噛み付いたポッポへと向かって一撃を放った

――ピキ

打たれたポッポの翼の部分が凍っていく

律「これで、終わりだな」

ハヤト「……もどれポッポ。……ふふっ、なかなかやるようだね。でも、もう終わり?いいや、ここからだろう?」

「さぁ、いけピジョン。でんこうせっか!!」

ボールから出た瞬間、風が走る

その風の中に、鳥を携えて

――ダンッ

そして、ポッポ倒したばかりのアリゲイツを打ち抜いた

律「なっ、はやっ!!」

これで計3度目となる攻撃をうけたアリゲイツは

アリゲイツ「アリ………」バタッ

鳴き声を残して倒れてしまった

ハヤト「さぁ、まだこれで1対1だ」



律「さすがに、もう無理そうか……」

倒れて床で目を回すアリゲイツを見る

律「もどれ、アリゲイツ。……それじゃ、頼むぜガーディ!!」

ガーディ「ガルル!!」

替わりに出したのは、律と最も付き合いの長いガーディだ

ハヤト「へぇ、さっきのが切り札かと思ったけど、そのポケモンもよく育っているようだ」

そしておもしろいね と呟いた思ったら

ハヤト「ピジョン、かぜおこし!!」

速攻の攻撃が来た

風だ

翼で薙いだ風がそのままガーディを襲う

律「ガーディ、ふんばれよ……!」

地へと姿勢を落とし、その4つ足で踏ん張るガーディに

ハヤトはさらに追撃にでた

ハヤト「でんこうせっか!!」

その指示と同時に風は止むが、時間差でピジョンの体が来る

連撃だ

律「ガーディ、よけろ」

とっさに指示をだすが、ガーディはよけきれず

ピジョンの翼が、その朱い体を掠めた

そしてピジョンはそのまま勢いを落とすことなく空へと逃げていく

律「くっそ、またヒット&アウェイか。それなら……」

「火の粉をばら撒け!!」

ガーディがグルッと喉をならし、当たりに火の粉を撒いた

だが

ハヤト「――ふきとばし!」

ピジョンが羽ばたいただけで、その灯は消滅してしまう

ハヤト「つづいて、かげぶんしん!!」

空中にいたピジョンが2体に増え、4体……6体とまで増えた

律「なっ、分身した!?」

ハヤト「ふっ、別に増えたわけじゃないよ。実体があるのは一匹だけ。まぁ、どれか見破れないと意味はないけどね」

どこかハヤトには余裕のようなものがうかがえる

ハヤト「たいあたりだ!!」

律「……くっそ、そういうことなら………ガーディ、なんとかやりすごしてくれ」

フィールドの穴を避けるように地面を走り回るガーディとそこへと必死に体当たりをかけるピジョン

――ビュン

――ビュン

――ビュン

律「(くっそ、ほんとに他のは虚像なのかよ。風を切る音まできこえてるぞ……!!)」

「(でも、実体が一つっていうんなら、まだやり方もある……)」

そして

――

風切り音が止んだ

ピジョンの次の攻撃への体制の組みなおしだ

律はそのときを見逃さない

律「いまだっ、ガーディ!!かぎわけて、本物へと噛み付け」

そこからの行動は早い

ガーディが鼻をスンと吸った時には、すでに走り出していた

匂いの下を辿る

そして

律「――かみつけ!!」

ガーディ「グルルッ…・・・!!」

喉を鳴らし、飛びついた先は

ハヤト「なに、本物を当てたか!?」

実体のあるピジョンだ


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最終更新:2011年06月13日 01:40