その羽へとガーディは牙を突き刺し

律「そのまま火の粉だ。焼き鳥にしてやれ!!」

――ジリッ

羽を焦がす音がごくわずかだが生まれた

ハヤト「ピジョン、ふきとばせ!!」

かまれた翼をおもいっきり振るった

その勢いに負け、ガーディは地へと戻される

律「へへ、だけど今ので大ダメージを与えたぜ」

ハヤト「たしかに今のはダメージが大きいようだね。おれのピジョンが空中でうまく飛べなくなってる……だけど」

「――はねやすめ!!」

ピジョンが自分の舞台から、地上へと舞い降りた

律「えっ……?なんで地面に……」

そこには翼をたたんだピジョンが棒立ちしている

律「(なんだ……罠か……?)」

その奇怪な光景に律とガーディは様子をうかがっていたが

ハヤト「おや、いいのかい。ピジョンがこのまま回復してしまうよ」

その判断がいけなかった

律「なっ、回復の技かよっ!……くっそ、いけガーディもう一度かみつけ」

ハヤト「――もう遅いよ。さぁ、もう一度空へと舞い上がれピジョン!!」

再び空からの猛攻がはじまった

ハヤト「今度はしんちょうに行こうか。でんこうせっかだ!!」

何度目かの同じ光景が繰り返された

ピジョンが空から攻撃し、ガーディがそれをなんとか避けるが、またピジョンはそのまま空へと戻る



――ヒュン

すでに何度目だろうか

さきほどから続くのは、ピジョンのしんちょうな攻めに、ガーディのなんとかかわす 

といったパターンだ

ハヤト「はは、そのまま防戦でいいのかい?」

律「…………」

律は反応せず、バトルに集中している

ハヤト「(このままいけば、おれの勝ちかな……)」

当然だ。

こちらは攻撃を仕掛けている側で、相手は避ける側だ

おそらくそれも長くは続かないだろう

ハヤトは、まるで狩りのようだ と思う

鳥の狩りとは、狩りとるその瞬間までじっくりと焦らず、確実に狩れる瞬間をまつ

相手のガーディを見ると、もうそろそろその時だろう 

ハヤト「もう、そろそろ限界のようだね……」

その言葉を言ったとき、律がニヤリと笑った

律「――あぁ、あんたのピジョンがな」



律はずっと気付いていた

そう、相手のピジョンがやけどを負っていることに

さきほどガーディが噛み付き、ひのこで攻撃したときだ

あのときにやけどを負わせていたことに気付いたのは、羽休め後のでんこうせっかの一発目のときだが

律「はは、どうやら弱ってきているのは私のガーディだけじゃなく、お前のピジョンもだな」

ハヤト「……っく、かみつかれたときにおったやけどか」

ハヤトは歯を食いしばる

そして

ハヤト「だが、弱っているのはそっちも同じこと。それならば、ここで一気に決める!」

「たいあたりだ」

ハヤトが上空にいるピジョンに指示をだした

指示にしたがいピジョンはガーディへと滑空するだが

律「おいおい、いいのかしんちょうに攻めなくて?」

ハヤトは答えない

これ以上、時間をかけるつもりはないようだ

律「ははっ、なら私の勝ちだ。」

そう言葉を作ったときにも、ピジョンはガーディへと近づいている

律「だって――こっちにも回復する技があるんだから」

「ガーディ、あさのひざしだ!!」

ガーディ「ワオーン!!」

上を向き高く、大きく吼えた

空へむけてではない。太陽に向けてだ

ガーディ「――」

そしてガーディが日差しの力を吸収していく

ハヤト「なにっ、くっ……とまれピジョン!!」

律「もうこの距離だ。遅すぎるぜ。減速はできても、急には止まれない……ってね」

勢いづいたピジョンが止まることなく、ガーディへと突っ込む

律「――向かい打て、かえんぐるま」

ガーディの周りを炎が円をかくようにつつむ


そして

ピジョンへと向かい

ガーディ「グルッ……」

一度、喉を鳴らし

――飛び出した

ぶつかり合う音が響く

そこへ継いだ音は、なにかが地面へと落ちる音

つまり

律「よっしゃああ、勝ったぁーー」



ハヤト「ふふ、完敗だよ。これがウイングバッチだ、受け取ってくれ」

律「……!!」

差し出された、バッチを受け取ったとき

ワニノコの進化の瞬間のような喜びがあった

ハヤト「まいったね。いや、本当にまいった。君は才能があるよ、きっと凄いトレ

ーナーになれると思う」

律「いやぁ、そんな」

ハヤト「謙遜しなくていいよ。負けたこっちとしてはむしろ誇ってくれないとな。

あ、そうだ次はヒワダタウンに行くといいよ。そこには次のジムがある」

律「はい、ありがとうございました」

「(嬉しいけど、まだ一つだ……唯はすでに3個もってたっけ?)」

そんな考えが浮かぶが

律「(ま、素直に喜んでもいいよな)」



「VSピジョン」 〆




――32番道路


律「なんだここ……まるで火事でもあったみたいだな……」

今まで草むらを抜けて来た、律は不思議そうに呟いた

そこだけはサークル上に草がまったくなく、あたりにこげた跡があったからだ

そこへ

「なんでもそこで事件があったみたいっすよ。ロケット団が捕まったとか……」

唐突にかけられた声のほうを振り向くとそこには

ゴールド「先日はどうも。そういえばウツギ博士がたまには報告をしてくれると助かる って言ってましたよ」

律「(あっちゃー、そういやこっちから連絡いれてなかったなぁ……)」

「って、そうじゃねー。ゴールド!!お前なんでこんなとこに」

ゴールド「いやぁ、自分はちょっとこの先のつながりのどうくつに用がありまして」

律「……ふぅ~ん。まぁ、いいや。それより、じゃぁ、この焼けた跡はロケット団の仕業だっていうのか?」

そう尋ねると、ゴールドが、いや と否定の言葉を作る

ゴールド「それが、被害者のほうがロケット団関係らしいすよねー」

「このへんであくどい商売してた、とかなんとか」

へ?と律がとぼけた声を出した

律「なんだそりゃ? じゃぁ、正義の味方でも現れて、そいつに天誅を下したってわけかー?」

ゴールド「うーん、よく分からないんですけど。まぁそんなやつがいたならかっこいいですよねー」

律「ははっ「かっこいい」ねぇ……そんなもんかね……まぁ、すごいやつもいるもんだなぁとは思うけど」

なにしろ相手は有名な巨大な犯罪組織だ

いかに相手が下っ端でも、なにが自分の身に返ってくるかはわからない。

それを恐れずにできるのは、立派だ と思う

それにしても

律「(ロケット団ってたしか2、3年前に、解散したんじゃなかったのか……!?)」

ゴールド「……律さん?」



――つながりのどうくつ


律「ありっ? 真っ暗なんだろうな と思ってたが、結構明るいな」

ゴールド「そうっすね。結構人の入りとかもあるからですかねー」

律の後ろに続くように、ゴールドが歩きながら呟く

律「………ところで」

「なんでお前一緒にいるの?」

ゴールド「はは、まぁいいじゃないですか。自分もここにちょっと用があったんですって」

律「そういや、さっきも言ってたなぁ……」

ゴールド「聞きたいですか?」

ゴールドがどこか嬉しそうにニヤニヤし始めた

律「(………)」

「じゃぁ、いいや」

そういって律は先に先にと進んでいく

ゴールド「ちょ、もうちょっと興味もってくれてもいいじゃないっすかー」



律「はぁ? どうくつから歌が聞こえるぅ?」

ゴールドの話はごく簡単なものだった毎週金曜日になると、この洞窟から不思議な歌が聞こえてくるらしい

そしてそれがポケモンの歌だと、予想した目の前にいる男は、それを捕獲するために今日を待っていたというものだった

ゴールド「ほんとあの音すごいですよ!!すごく綺麗な声で歌ってるんです」

律「なんだお前、その歌きいたことあるのかー?」

ゴールド「ハイッ!!少し前にラジオで取り上げられてたんですよ。謎の歌声に迫る とか特集ついちゃって」

ゴールドはとても活き活きした顔で話す

律「へぇー、それで正体は分かったの?」

ゴールド「いえ、その放送では結局正体がわからなかったらしくて。誰かが洞窟内で歌の練習でもしてたんじゃないかって……」

ふーん、と言葉を残した律は続けて

律「でも、全然聞こえてこないぞ」

ゴールド「……そうみたいですね。もうすぐ出口ですし……」

言った時

――♪~♪

聞こえた

かすかに、だが、洞窟内にたしかに反響するように音が流れる

メロディラインをなぞったかのようなそれは歌といっても遜色ないものだろう

律「!!」

ゴールド「!! こ、これです!!この鳴き声です」

「行きましょう、たぶん方向はこっちです」

そういったゴールドが先行しようとし、小走り気味なるが

そのときに律が気付いた

律「(これは……霧? いや、小さな氷の粒か?)」

白の霧のようなものが空中を漂ってきていた

その方向はゴールドが走り出そうとしたほうで

律「やっぱり、向こうになにかいるのか……」

ゴールドの後ろを追うように、ついていくが

律「まて、ゴールド!!足元足元!!」

ゴールド「え?」

――ドブンッ!!

まぬけな声と共に大きな水しぶきが上がった

律は寸で足を止め、ゴールドが浮かびあがるのを待つ

そして

ゴールド「ぶっは!! さむ!!」

ゴールドが水面から顔を出し、こちらを見た

ゴールド「もうちょっと早くいってくださいよー!」

律「いや、言ったし……」

はぁ と律が溜息をつき

律「まぁ、とりあえず上がれよ。さむいんだろ?」

だが、ゴールドは一度考え込み

ゴールド「………いえ、自分はこのまま泳いで向こうの岸まで行きます。ほらっ」

そういってゴールドが指さす先を見ると、そう遠くない場所に同じような陸地がある

律「ん、あんまり暗くて見えないけど……たしかにあるなぁ……」

ゴールド「で、律さんはどうします?」

今も流れているこの音の正体に少し興味はあるが

律「いや、私はいいや。あいにくなみのりできるポケモンはいないし、泳いでいくのもなぁ……」

「さすがに、アリゲイツに乗るってのは無理そうだし」

ゴールド「そうっすか。まぁそれじゃ、自分は向こうまで行きますんで」

そういう言って腕でクロールの形を真似したゴールドに

律「お前が向こうにまで渡りきるまで私はここで見といてやるよ。ポケモンに襲われて溺れられたら、後味悪いしなぁ」

ゴールド「ちょっと、怖いこと言わないでくださいよ!」

律「まっ、そのときはアリゲイツを助けにだすって」

ははっ、笑いながら言う律にゴールドが、ほんとですね!?と確認を取る

律「ほらっ、さっさと行った行った」

絶対ですからね とゴールドが最後に言葉を残し、水面へと潜った

律「(ったく……)」

その間、律は流れるメロディーに耳を傾け

本当にきれいな曲だなぁ、呟いた

ここからでは微かにしか聞こえないが、本当にきれいな音だと思う

ゆったりと流れる曲に身を任せてしまえば、眠ってしまいそうだ

律「おっと……それにしてもちょっと寒いな」

原因はさきほどから漂ってきているこの白い霧のせいだろう

細かな氷の粒の中にいるのだから、当然だ

――ザブンッ

少し向こうから、水の音がした

律「(ん、ゴールドが向こうについたのか)」

そして

『おーい、きこえますかー』

ゴールドの声が向こう岸からきているのだろう

それに、聞こえてるよー、と返す

『どうやら、まだ下の階があるみたいです!!自分は下に言ってみますんで、律さんはもう先にいってください』

律「した?」

地下があるとは思わなかった律が、疑問の声をだした

そして

律「おっけー、それじゃぁ私は先にいくからお前も気をつけろよー」

『ハイー、ありがとうございましたー』

律「まっ、あれだけ元気なら大丈夫だろう。私も行くか……」

そういうと、ゴールドの消えていった方向に背をむけ、出口に向け歩き出した


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最終更新:2011年06月13日 01:47