――33番道路


律「っと、久々の陽の光りー……っと、思ったらもう真っ暗じゃん……」

ポケギアの時間を見ると、すでに夕飯時の時間だ

もうこんな時間だったのか、思ったとき

――ハッ、それでは私達はここ、ヤドンのイドを担当させていただきます

声が聞こえた。女の声だ

方向は

律「むこうの外れの林か」

その声の方向に足をむけた

だが

律「(なっ、あれは……!!」

とっさに隠れ、その様子をうかがうことにした

その理由は

律「(あれって……昔ニュースで見たロケット団の服装じゃ……!!)」

先ほど、ゴールドとロケット団の話をした時は、正直半信半疑だったが

律「(ほんとに……復活してるのか)」

そんな律に気付かずに、ロケット団たちの会話は進む

そこには4人の団員がいる

その中にいる一人の男がゴルバットを取り出し

そして

――俺はこれからもう一度カントーに戻る。だからここはお前らに任せるその言葉を受けた残りの3人の中の1人が

――しかし、ランス様!!なぜ、いまさらカントーへ?つい先日帰ってきたばかり

では!その上伝説の3鳥を捕まえるなんて……

どうやら、様付けで呼ばれている今ゴルバットで飛び立とうとしている男はロケット団の中でも幹部級のようだ

――借りを返しにいくんだよ!! そう借りをな……だが、そのためには伝説クラスの力が必要だ

――しかし、伝説のポケモンなど自由に操れるとは……!!

――黙れ!! それでも、俺はあのシオンの屈辱を忘れない……確実にあの女を潰す

声を荒げた幹部級の男が、そのまま空へと飛び立とうとし

――いいか、お前ら! 俺は確実にカントーで最強のポケモンを作り出す。そのためにカントーでやることがある。

だから、と告げ

――お前らは俺の任されたここを俺の代わりに守れよ

――ハッ!!

そういって男が空に消える



律「(なんだってんだよ……)」

気付けば律はその場から離れていた

おそらく、あいつらはここでなにかをやるつもりだ

律「たしかヤドンのいどって言ってたな……」

どうする と自問する

相手は犯罪組織だ。かかわるべきではない と思う

相手はポケモンを改造、虐待、非合法な販売など無茶苦茶なことをやってきている

組織なのだ。

だが、

律「(本当にそれでいいのか……)」

そんな律の前に看板が現れた

文字を目でなぞり、口にだす

律「ポケモンと ひとが ともになかよくくらすまち ――ヒワダタウン……か」

……これからロケット団たちは、この人間とポケモンが仲良く共存する町で問題を起こそうというのか

その最悪の未来を予想する

それは、おそらくこの町のポケモンと人間の仲を裂くことになるだろう

ロケット団達によって、被害を受けたポケモンたちは人間から遠ざかる

それが、悪いやつらの仕業かどうかなんて、ポケモンたちには関係がない

だって、それは同じ人間が起こしたことなのだから

律「やっぱり、見てみぬフリってのは、できないよな」

ならやることは一つだ と心の中で呟く

律「ヤドンのイドっていってたな。そこへ向かえば………っと、そういえば」

「ヤドンのイドってどこだろう?」

肝心の場所が分からず、律が溜息をつく

律「はぁ……とりあえず、町に行って、明日の朝は情報集めかな」

……洞窟に入る前に、犯罪組織にわざわざ喧嘩うるなんて他人事だと思ったけど

律「まさかこの私が……ねぇ……」

……澪や唯は心配するかな?

律「澪なんて泣いたりしてー……なんてな」

律「(まぁ、そのときには笑って、大丈夫だったよ っていえると良いな)」

律は言葉をそこへ残し、夜のヒワダへと消えていった



「挿話」 〆



――ヒワダタウン


律「……ったく、あのジイサンなんであんな足が速いんだよ」

そう言った律が追うのはさきほどポケモンセンターであった初老の男だ

ガンテツと名乗ったそのボール職人の男は律の話を聞くやいなや、すっとんでいっ

てしまった

律「……くそおお、もうちょっとしんちょうに行くつもりだったのに、これじゃぁ、正面から行くしかないじゃないか」

走りながらも律はさきほどの会話を思い出す

それは……

……


――ポケモンセンター(30分前)


ジョーイ「はい、お預かりしたポケモンは元気になりましたよ」

律「ありがとうございます。ところで聞きたいんですが……」

ジョーイ「はい?」

律「えっと、このへんでヤドンのイドって呼ばれてるところとかどこにありますかねー?あー、それっぽいところとか……」

その日律は、情報を集めようと町を駆け回るつもりでいた。

そしてその前にポケモンセンターでポケモンを回復させようとして、ついでにと思

い尋ねたところ

ジョーイ「あら、ヤドンのイドっていったら、この町の東にある普通のイドよ? 

特に旅人さんにオススメする観光スポットって場所でもないけど……」

律「へ?」

返ってきた答えにマヌケな声を返してしまう

それは予想以上に早く目的の場所が見つかったこと

そして

律「(……なんだ?そんな表立ったところでなにかしてるのか……?」

普通は誰にも見つからないところなどでやるものではないか と思う。

現ににカントーにいたころには、アジトを持ちそこで主な行動を起こしていた と

言うニュースをみた記憶がある

ジョーイ「あ、でもあまり人気はないところだから気をつけてね。あのあたりはヤ

ドンばっかりだから野生ポケモンに襲われる心配はないと思うけど……」

律「はい、ありがとうございます」

……人気がない……か。だからそんなところなのか?

それとも

律「(また別の目的があるのか……)」

いずれにせよ急ぐべき かな と思う

そして

踵を返し、ポケモンセンターから出ようとしたとき

???「嬢ちゃん、あんなところになんかようか?わしもこれから行くようがあるから、一緒にどうや?」

律「え?」

声のするほうへと、向くと、そこには初老の男がいる

その手には少し代わったモンスターボールが握られているが

ジョーイ「あらっ、ガンテツさん。あそこになにかご用が?」

カウンターにいたジョーイさんがその男――ガンテツに向かって親しげに話しかけた

ガンテツ「あぁ、最近水道の出がおかしいことがあるやろ。あれの原因を探りにと思ってな」

律「ちょ、ちょっとまったー!!」

ガンテツの言葉を受けた律が待ったをかけた

律「えっと、まずガンテツさん?でいいんですよね?」

ガンテツ「あぁ、そうか嬢ちゃんは旅人か。それなら自己紹介しとこうか。わしは

ガンテツじゃ。ここでボール職人をやっとる」

律「いや、まぁそれはいいんですが」

この流れはまずいなぁ と思う

この人は確実に、事が知れれば突っ込んでいってしまう

そのことがまずい

そしておそらくそこにはロケット団がいる。

そこにノコノコと現れれば、結果は見えている

ガンテツ「なんじゃ? 嬢ちゃん、なにか知ってそう顔してるな」

まずい。これは

律「いやぁ、ちょっと今はやめといたほうがいいかなぁ なんて」

ガンテツ「やっぱりなにかしっとるんやな」

確実に

律「えっと、あはは……」

ガンテツ「嬢ちゃん……!」

洗いざらい知ってること吐かされる流れだ

律「……」

ガンテツ「なんやいってみぃ」

ほら、こうなった

律「……はい」

………

……

ガンテツ「なんやてー!!ロケット団が悪さをしとるー!?」

怒声が混じった声が部屋に響く

今律はガンテツの私工房ともいえる場所にいる

どうやら、この頑固そうな職人は弟子もとらず、ただひたすらボールにうちこんで来たらしい

あたりの棚には、いろんな完成形の変わったボールや、その製作途中のものがおかれていた


今放ったガンテツの怒声により幾個が宙へと転がり、重力によって下へと引かれた

律「と、とりあえず落ち着いてくださ……」

ガンテツ「これはこうしてはおれん!今すぐ急いでたわけどもをとっつかまえてやる」

律のなだめる言葉など聞かずに、ガンテツは帰ってきたばかりの工房を後にしようとする

手にはボールの製作に必要なものなのか、そこらにあった金槌をもっている

ガンテツ「それじゃ、嬢ちゃんはここでまっとき!! わしが解決してきたる!!」

律「ちょ、まっ…」

律の返答など聞かずに、ガンテツが外へと飛び出した

その勢いに呑まれ、呆気に取られた律だが

律「いやいやいや、なんでこうも……!!」

言うと後ろ髪を掻き

律「ああ、もう私も追うしかないじゃないかー!!」

誰もいない工房で一人むなしく叫んだ

……


そして、今その後を急いで追いかけるように足を急がせるわけだが

律「って、私正確な位置とかわからないんだけど……」

「えぇい、なんとでもなれー!」

ヒワダの町を横切りながら、そんなことを叫んだものだから、周囲の住人の目が痛いが

そんなことに頬を染めている暇すらもない

律「っと、いたー!!………って、曲がった!!」

ガンテツの姿を遠目に見つけるが、その職人は方向転換しすぐに律の視界からきえてしまった


――33番道路

律「あれ、このへんだと思うんだけど……」

律は迷っていた

このあたりは緑が豊かすぎて、木々が周りを遮ったりもしている

律「おっかしいなぁ。そんなに遠くないと思うんだけど……」

そのとき

――お前ら!!こんなことしてたたで済むおもてんのかぁーー!!

明らかに聞いた声が空へと響き渡った

それはまぎれもないさきほどのボール職人の声で

律「こっちか!!」

その声の下へと急ごうと、速度を上げた



――ヤドンのいど(周辺)


律「(あれか……)」

律は草陰に隠れてその様子をうかがっていた

下っ端1「まったく、このジジイどこから嗅ぎ付けてきたんだか……」

そこには縄でぐるぐるに巻かれ気絶させられたガンテツの姿とロケット団の男と女がいる

下っ端2「ほんと、嫌になるわね。ランス様に任されたっていうのに、もう問題事」

女のほうの団員がはぁ……と溜息をつくと

下っ端2「しかたない。私はこのへんを見回ってくるわ。このジジイが大声だした

せいで人がきちゃったら大変だもの」

下っ端1「おい、このジジイはどうするんだ」

下っ端2「とりあえず、それはそのヘンに転がしておけばいいわ。どうせ動けやしないだろうしね」

それから女が、それから、と言うと

下っ端2「あなたはさっさと中へ入って合流して作業してきなさい」

その言葉に男の団員がムッっとする

下っ端1「……俺はお前の部下になったつもりはないんだが」

下っ端2「はいはい、分かってるわ。私もあなたも対等。私は私の仕事を、あなたはあなたの仕事を。それでいいわね」

下っ端1「……ふんっ」

男はくるりと背を向け井戸の中へ入っていく

そして

下っ端2「やれやれ、ほんとに疲れるわ」

そういうと、女も木々の中へと姿を消していった

律「(……いまだな。とりあえずガンテツさんの縄をほどくか)」

そうっと、律が井戸へと近づいていく

そして

ガンテツの縄をほどくと

律「あっちゃー、この人どうしよ……まぁ、とりあえず草陰に隠しとくか」

さきほどの自分の隠れていた場所に戻り、ガンテツを隠すように寝かせた

律「さてと……」

律がゆっくりと立ち上がり、イドのまえでどうするかを考える

律「(とりあえず、中に入るか……いや、さっきのやつが帰ってきたら挟み撃ちになるか……)」

井戸の中をのぞくと、そこは井戸というよりかは地下壕のようになっているようにもうかがえる

律「(挟まれたら逃げ場は……なさそうだな)」

「さてと、どうする……」

『あらぁ?さっそく人が来ちゃったじゃない。でも、よかったわ、戻ってきてみて。あぁ、あなたにしては良くないわね。だって……』

律があわてて声の方向へ振り向いた

下っ端2「あなたはもう無事にかえれないもの」

そこには先ほど見回りに行ったはずの女がいた

ゆっくりと近づいてくる彼女から遠ざかるように一歩後ろに下がり、律はボールに手をかけた

下っ端2「あら、トレーナーだったの、あなた」

律「……でろ、イーブイ!!」ボンッ

その言葉に答えず、投げたボールからイーブイが繰り出された

下っ端2「そう、抵抗する気ね。いいわ、どうせ最初から力づくでいくつもりだったもの」

「いけ、アーボ!」ボンッ

対して出されるのはとぐろを巻いた紫色の蛇のモンスターだ

律「……いやぁ、今日は最高についてないと思ったけど、そんなことないなぁ」

律がポツリと言葉を零す

下っ端2「?」

その言葉にわずかに女が首を傾けるが

律「だってあのまま、井戸に入ってたら挟み撃ちだろ? なら、あんたの登場は最高のタイミングだよ」

そう

「あんたを倒しちまったら、あとは後ろを気にせずに中で闘えるもんなぁ」

律が不敵に笑うのに、対して、女が唇を噛む

下っ端2「……いってくれるじゃない」


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最終更新:2011年06月13日 01:55