男「えぇ、だから………これから作るんですよ。カモネギ、いあいぎり!!」

男が自身満々に、カモネギに指示をだすが

カモネギ「グアァ」

カモネギはそっぽを向いている

男「…………」

律「…………」

男「あははは……このとおりボクの言うことなんて聞きやしない……」

男がトホホと肩を落とすと、見かねた律がカモネギの頭に手を置き

律「なぁ、頼むよ。カモネギ、なにかわからないけど、命令をきいてやってくれないか?私も今少し困ってるんだ」

すると、カモネギがこくりとゆっくり頷き

カモネギ「ガッー、グワワ!!」

大きく鳴くと、カモネギが律の背中のほうへと回り

律「お、おい、そっちは木が邪魔して、いきどまりだぞ」

男「はは、まぁ少し見ていてください」

その言葉に律は従うことにし、カモネギを見守る

すると目の前に木を見据えたカモネギは手に持ったクキを構え

カモネギ「――!!」

斜めに一閃した

――ズズズドン

切られた木がが切れ目を滑るようにずれていき、地面に大きな音を立てて倒れた

律「うおお、すっげ………」

男「やればできる子なんでですけどね~……さてと、カモネギ、そのまま道まで切り進みなさい」

その指示を受け、カモネギが切った木の奥まで進んでいく

男「さてと、ぼくらはもう少し待ってましょうか」




律「……ほんとに道ができた……」

律は簡易的にだが、たしかに進める道があることに感心する

その横ではカモネギが堂々と胸を張っているのだが

律「でも、こんなことしちゃっていいのか?」

男「まぁ、あの木がボクの目的の木だったんで」

そういいながら、切り倒された木を指差した

男「ウバメガシって言うんですよ。あれが僕たちの仕事、木炭の材料なんです」

律「……そっか………さてと、それじゃぁ、私も行くかなぁ……」

男「あ、はい。ではお気をつけて」

律が後ろに手を振り、数歩歩き出したとき

男「この道を抜けたら、祠があるんで、そこを道なりに進んでください~!」

後ろから声が聞こえた

そして

律「ありがと~~!」

そうして律は男の視界から消えていった




男と別れしばらく進んできたとき、男の言っていた祠へと突き当たった

律「あぁ、これか。えっと、ここを右にと……ん?」

律が言いかけた言葉を止めた

それは

――リ-ンリン

音だ

律の耳に微かだが、鈴の音に似た音が聞こえてきた

律「なんだ?……これは……祠からか?」

言いながら、祠に近づいていくとピカっと祠がまばゆい光りを放った

律「な、なんなんだよ、まぶしー」

余りの眩しさに目を細めた時

律「――!?」

なにかが祠から飛び出した

『ビィ――!!』

律「(眩しくて見えない………なんなんだ、ポケモンか?)」

『ビィービィー」クスクス

その鳴き声が聞こえた直後、光りが収まり

さきほどの真っ暗な森の景色にもどるが

律「……なにもいない」

そのとき、カタカタと腰につけたボールが揺れた

アリゲイツのボールだ

さきほど、毒をくらってからボールでおとなしくしていたのだが

律「……毒が治ってる……?」

目の前に持ってきたボールの中には、毒をくらったことなど忘れたかのように平然とするアリゲイツがいた

律「いったいなにが起こったんだよ……」

言葉通りなにが起こったのかわからない律はしばらく、ただその場に立ち尽くしていた



「VSカモネギ」 〆



――コガネシティ


コガネの中心にはジョウトで随一のデパートがある

コガネには背の高い建物がいくつかあるが、そこもその一つだ

コガネ百貨店と書かれた垂れ幕を飾り、その横には安売りを示すセールの文字の垂

れ幕が風に揺れている

そんなわけで、今日のコガネ百貨店は人の入りがいつもの倍以上あった

そして

律「えっ?進化の石売ってないの?」

律もそのデパート、2階トレーナーズマーケットにいた

店員「申し訳ございません。当百貨店では取り扱いをしていません。あ、しかし1

週間ほどかかりますが、取り寄せが……」

律「あ、そうですか。それならいいです。ありがとうございました」

肩を落としながら、その店員に背を向け

律「(あっちゃー、ガーディとイーブイのためにと思ってたけど売ってないのか……)」

律「しかたない、また進化は別の機会だな」

そう一人呟き、階段へと向かおうとするが

???「なんでやー、なんでピッピ人形が売ってないんやー。いつもあーんなに売ってるやないか」


女の声だ

店員とのなにかやり取りをしているのだろうが、大きな女の声しか聞こえてこない

???「ふ~ん、もうそれやったらいいわ。入荷したら教えてな」

その声がするほうに振り返ってみると

――ゴチン

振り返った時、衝撃が来た

後ろから来た人に誰かにぶつかったと気付いたのは、その衝撃に負け腰をついた後だった

律「――!! いっつ……」

???「――……!!」

目の前には、同じように腰をついた、明るく淡い赤の髪の毛を左右で縛った少女が悪態をついている

???「いたた……なにすんねん!!」

律「なっ、そっちがぶつかってきたんだろ!!」

強気に出る少女に対してこちらも負けじと言い返すが

???「そっちがそんなところに突っ立ってるからやろ!」

律「それならそっちもどうせ前みて歩いてなかったんだろ。前見て歩いてたらよけれるもんな~?」

お互い立ち上がりにらみ合い

???「なんやてー! そっちが………ん、あんたポケモントレーナーか」

コガネ弁の女の子が腕を組みながら、改めて律を見て告げた

律「あぁ……そうだけど、なにかあるのかよー!」

???「ふ~ん、それなら、コレで白黒つけるっていうのはどうや?」

そういいながら女の子がモンスターボールをちらつかせた

律「ポケモンバトルってことか……!!へっへん、やってやろうじゃん!!」

売り言葉に買い言葉でそう告げた時、店員がようやく止めに入るが

店員「お客様、店内での揉め事は……それにアカネ様も……」

どうやら桃色の髪の女の子はアカネという名前のようだが

アカネ「あんたはだまっときー!」

「そんでアンタ、バトルやったら表でやろか」

律を指差し、そして表へと出ろと言いながら階段を下っていった

律「なんだよ……あいつ……」

ぼやくと、先ほど止めにはいった店員が話しかけてきた

店員「ああ、あの、バトルはやめといたほうが……」

律「え?」

店員「あの人、あぁ見えてもコガネのジムリーダーなんです……だから……」

律「ジムリーダー?え?さっきのあいつが?」

店員「……はい」

困った顔を見せる店員を傍に律は

律「そっか、ジムリーダーか。そっかそっか! なら丁度いいや」

店員「?」

そして律もハテナ顔の店員をフロアに置き去りにし、階段を下っていった



アカネ「へぇ、逃げずにきたんや? もしかしてうちのこと知らんのか?」

コガネ百貨店の自動ドアを抜けた先、さっきの女がいた

律「いや、知ってるさ。ジムリーダーなんだろ?」

先ほど店員に聞いて知ったのだが、そのことは伝えない

アカネ「知っててもバトル挑もうっていうんかいな。面白いやないの」

律「あぁ、でもさっきと目的が変わっちまったけどな」

アカネ「……なんや?」

律「本当は負けて謝らせようと思ってたけど、それはいいや」

そして

律「私が勝てばジムバッチをもらう! ほら、今までずっと集めてきたんだ!」

そういって、キキョウとヒワダで勝ち取ったバッジをアカネに見せる

アカネ「ふ~ん……アンタ結構な実力者やってんな。 まぁどっちでもいいわ。どっちみちウチが勝つからな」

律「いったな! 約束だぞ、負けたらバッジだからな!」

アカネ「それならウチが勝ったら一週間パシリでもしてもらおかな」

律「なっ……お前ジムリーダーだろ!?」

アカネ「なんや? 勝つ自信ないんかいな。はは、それはごめんな」

バカにしたように笑うアカネに

律「…!! よっし、その条件でやってやろうじゃん!」

アカネ「よっしゃー、やったろやないか」

律・アカネ「まぁ――」

律「勝つのは私だけどな!」 アカネ「勝つんはウチやけど!」

律・アカネ「ムッ……!」



アカネ「それじゃぁやるでぇ」

アカネがモンスターボールを掲げ言う

先ほど決めたルールは、こうだ

お互い使用ポケモン2体までのポケモンバトル

ただし、フィールドは街全体ということだった

律が人がいて危険ではないか、と意見をだしたが、

どうやらこの街ではストリートバトルが流行っており街中でバトルの光景は慣れっこらしい

律「街中全体がフィールド……ねぇ。ま、こっちはいつもどおりやるだけだ」

アカネ「準備はええな? いくでぇ、ピッピ!!」ボンッ

律「いけ、アリゲイツ!!」ボンッ

律のアリゲイツに対して出されたのは、クルっと巻いた頭と尾が愛くるしいモンスターだった

律「先制だー!冷凍パンチ!!」

アリゲイツがさっそくピッピへと拳を振り上げながら、飛び掛るが

アカネ「そんな大振りな攻撃あたるかいな! ピッピかわすんや」

ピッピがひらりと身を翻し、アリゲイツを横の動きでかわし

そして

アカネ「甘える!!」

着地したアリゲイツに擦り寄った

律「くっそ、そんな攻撃翌利くかよー! アリゲイツ、もう一発だ」

アリゲイツがすりよったピッピに冷凍パンチをしかけるが

律「なっ!?」

アリゲイツの拳がピッピに当たる直前、勢いを落とした

アカネ「甘えるは物理攻撃翌力を下げる技や。 それ、ピッピものまねや」

ピッピ「ピッピ~♪」

ピッピが先ほどのアリゲイツと同じ動作を作った

つまり、拳を大きく振りかぶり

そして

――ドンッ

アリゲイツのおなかへとぶちこんだ

律「な、アリゲイツ! 大丈夫か」

ピッピの冷凍パンチにより、建物の壁まで吹き飛ばされたアリゲイツがなんとか立ち上がる

律「(氷タイプの技で助かった……)」

タイプの相性の問題だ

単純に水タイプに氷タイプの攻撃は利き難い

ましてやノーマルタイプのピッピの攻撃だ。そんなに威力はない

「アリゲイツ、まだいけるな?」

その問いに、アリゲイツがコクリと首を縦にふった

律「よし、物理攻撃がダメなら……狙い打て!!水鉄砲」

ピッピ目掛けて、アリゲイツの口から水が放たれる

アカネ「……や、ピッピ――!!」

律にはアカネがなにかピッピに向かって指示をだしたように見えたが

その声ははっきりと聞こえない

そして

アリゲイツの水鉄砲がピッピに直撃した

律「(なんだ……? やっぱり気のせいか……)」

「ピッピが怯んでるうちに、今度こそ冷凍パンチをお見舞いしてやれ」

アリゲイツがピッピに向かって、走り出し、飛び掛るようにジャンプした

律「そんまま振りかぶっておもいっきりお見舞いしてやれ」

宙で構えをとるアリゲイツが前倒しになり、ピッピへと目掛けたとき

アカネ「――」ニヤ

アカネがいやらしい笑みを浮かべた

そして、アリゲイツが拳を振り下ろそうとしたとき

――

律「なっ?」

律は驚く光景を見た

冷凍パンチの指示を受けたはずのアリゲイツが、拳を振り下げようとしたとき

その思っていた行動はとられず、アリゲイツの口から水鉄砲が出た

空中で水鉄砲を放ったアリゲイツは、噴水に押し上げられるように空へと上って行く

アカネ「はは~ん、驚いた顔しとるようやから、ここでタネあかしや。さっきピッピが水鉄砲食らったときあったやろ?」

「あのとき、ピッピが避けへんこと不思議におもわんかったか?」

律「…………」

律は黙ってアカネの言葉の続きを待った

アカネ「あの時な、実はアンコールしとってん。 いやぁ、ウチって策士やわぁ~」

少し鼻高々なアカネが言うが

律「なんだ、アリゲイツがわたしの言うことをきかなくなったわけじゃないんだな。安心したぜ」

アカネ「なんや?つよがりかいな?」

律「そんなんじゃないよ。 ただ、それならまだやりようがあるって話だよ!!」

律がアリゲイツを一度見て、そういった

アカネ「それなら………そのやりようっていうのを見せて貰おうやないの」

「ピッピ、指をふれ!!」

水浸しになったピッピだが、まだ余力を残している

そして、ピッピの指が光りを放った

律「アリゲイツ、なにかくるぞ!!」

律の言葉にアリゲイツは身を引き締めた

アカネ「さぁ、やったってピッピ!!」

ピッピが光った指を数回振ると、その指に炎が宿った

律「これは……」

アカネ「よっし、火炎放射や!!」

ピッピの指先から、炎がアリゲイツ目掛けて走った

律「炎なら……水鉄砲でかきけせ!!」

アリゲイツが遅れて水流を放つ

アカネ「あかん、炎じゃ水には不利か!」

じわじわと水鉄砲を発射しながら、距離をつめるアリゲイツにアカネが舌を一度鳴らした

律「よっし、そのままピッピへと近づいていけえ」

だが、お互いの技がいったんそこで途切れた

アカネ「まだや、もっかい指をふれ」

律「アリゲイツ、走れ!! あの指振りが終わるまでに懐にもぐりこむんだ」

指に光りを集めるピッピとそれへと向かい全速力で走り出すアリゲイツ

早かったのは――


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最終更新:2011年06月13日 02:25