律「なんだ指を振っている時は隙だらけじゃないか。そのまま後ろにまわりこんで」

アリゲイツだ

律「ゼロ距離から水鉄砲だ!!」

ピッピの背中側に回り込んだアリゲイツがすかさず、放った

その水圧にピッピが吹き飛ばされ

――ドンッ!!

壁に打ち付けられた大きな音が生まれた

アカネ「ピッピ……」

アカネの声にピッピはこたえること無く、そのまま目を回し地面へと倒れこんだ

律「やった………え?」

そのとき

――ゴロゴロ

――ドカン

アリゲイツへと空から一閃が走った

雷だ

律「うわぁ、アリゲイツー!?」

そしてこちらもその声に返答することなく、地面へと倒れこむ

アカネ「ピッピの指をふるや……よくやったで、ピッピ……」

その様子を見ていたアカネはそういいながら、倒れたピッピを抱き上げボールに戻した

そして

アカネ「グズッ……まだまだ終わってない!! 次や、いくでミルちゃん!!」

ボンッ

ボールから現れるのは乳牛のようなモンスターだ

律「(……どうでもいいけど、なんであいつ半泣きなんだ……ちょっと罪悪感が生まれてくるじゃないか……)」

アカネ「ほらっ、アンタもさっさとだしいや!!」

律「あ、あぁ……」



律「いけ、イーブイ!!」ボンッ

イーブイ「ブイ~♪」

アカネ「や~ん、かわいいポケモンもってるやん。 でも、手加減はせえへんで」

「ミルちゃん、転がるや!!」

乳牛のようなモンスターが体を丸め、地面を転がった

向かう先は、イーブイだ

律「でんこうせっか!!」

イーブイが真正面から、ぶつかりに行く

ドンという音ともに、ミルタンクの軌道がずれ、別の方向に転がっていく

アカネ「ミルちゃん!!」

その呼ぶ声に答えるように、ミルタングがそのままもう一度イーブイへと転がる

律「はっ、何度やっても同じさ。イーブイ何度でも受け流してやれ、でんこうせっか!!」

もう一度、さきほどと同じようにイーブイとミルタンクがぶつかった

――ドンッ

律「(……あれ……さっきよりぶつかった音が……)」

ミルタンクは再び軌道をはずれ、なにもいないところを転がっていく

アカネ「まだまだや!!」

そしてミルタンクがさらにイーブイ目掛けて引き返してくる

イーブイはもう一度受け止める気満々で、すでに駆け出そうとしていた

律「………ダメだ!!」

が、それは遅かった

――ドンッ

さきほどまでのミルタンクのスピードならあそこから避けるのも可能だっただろう

しかし

ミルタンクのスピードはどんどんと上がっていた

律「イーブイ!?」

ミルタンクに押し負けたイーブイがなんとか立ち上がる

アカネ「まだいくでぇ~!!」

さらにミルタンクが転がりつづけ

律「イーブイ、ダメだ。その攻撃は威力を増してる。よけろー!!」

イーブイが転がるその脅威をなんとかかわし、律は安堵を得る

アカネ「なんや、気付いたんだかいな。ミルちゃん、攻撃方法をかえるからいったんストップや」

静止の言葉にミルタンクが従い、ぐるんと丸まった体を起き上がらせた

アカネ「あっちゃー、でんこうせっか2発やと思ってなめ取ったら結構なダメージくらってたかー」

「ミルちゃん、いったん回復や。ミルクのみ」

律「な、ここも回復技持ちかよ!!」


No.241 ミルタンク
ミルクは えいようまんてん。
おとしよりや びょうきの ひとに 
とって さいこうの のみもの。


アカネ「よっし、ならふみつけや」

起き上がったミルタンクの巨体が、イーブイにせまる

そして

前足をイーブイ目掛けて叩き下ろした

――ズシン

律「イーブイっ!?」

その攻撃に食らったイーブイは吹き飛ぶが、すぐに立ち上がり

律「……勝つんだもんな………いっけ、イーブイ、その分厚そうな肉をかみついてやれ!!

食らいつくように、イーブイがミルタンクの巨体に噛み付いた

アカネ「……こざかしいわ!! ミルちゃん、もう一回転がるでイーブイを振り払うんや」

ミルタンクがもう一度転がるために体を丸めた

律「イーブイ、離れろ。大丈夫、お前はあのころがるを2回目までは受け止めれたんだ……だから大丈夫だ!」

イーブイがコクンと頷き、ミルタンクから距離を取った

アカネ「はっ、なにが大丈夫や? 少なくともそのイーブイは3回目以降は避けるしかできひん」

ミルタンクが転がり始めた

まださきほどの転がるのピークに比べると全然遅いと感じられるスピードだ

律「イーブイ、こらえる!!」

イーブイが地面をしっかりと踏ん張り、ミルタンクを受け止めた

だが、ミルタンクは自分から軌道をずらし、さらにスピードに乗って攻撃しようとする

アカネ「なんや、結局耐えるだけかい!!このままじゃ、ジリ貧やで」

ミルタンクが再び地面を削り始めた

今度は転がる音も大きくなっていっている

律「ジリ貧なんかにはならないさ……」

「――これでおわらせるからな。でんこうせっかだ!!」

アカネ「なんや、さっきとおなじやないか!?」

ミルタンクとイーブイが真正面から何度目かの衝突をした

だが違ったのはそこからだ

ミルタンクは再び軌道をずらし、イーブイから離れていこうと通りすぎようとした

瞬間

律「まだ終わってないさ!! じたばた!!」

ミルタンクの真横から衝撃が走った

ミルタンクに比べて小柄なイーブイが真横から思いっきり体をぶち込んだからだ

そしてそのまま横倒しになり

――ドシン

大きな音が街中へと響き渡った

だが、響き渡ったのはそれだけではない

アカネ「ミルちゃん………グズ……グズッ……うわああああああああん」

アカネの大きな泣き声だ

律「ちょ、えっ? な、な、ななんでこうなるんだよー。おい、泣き止めって……」

言いながらアカネに駆け寄るが、アカネの鳴き声は止まらない

すると遠くから、年上の女性が走ってくるのが見えた

女性「あぁ、アカネちゃん負けちゃったんだ。おっと、ああ、あなたはいつものことだから気にしないでいいよ。
バトルに負けちゃうとこうなっちゃうのよ。そうね、ポケモンセンターで待っててくれるかしら。泣き止んだら向かわせるから」

律「……はぁ」

律はただその言葉に従うしかなかった




――ポケモンセンター

それから、アカネがポケモンセンターに現れたのは30分後だった

その頃には、すでにあったころの元気が戻っており

アカネ「なんや、アンタやるやないか!!」

そういいながらバンバンと律の背中を叩いた

アカネ「これがレギュラーバッジや、受け取っとき」

アカネの手にはジムリーダーに勝ったあかしのジムバッチがあった

それを律に差しだし

律「よっしゃぁ、これで3つめのバッジゲット!」

そして

律「それじゃぁ、わたしは行くから」

言いながらアカネに背を向けたとき

アカネ「あ、あんな……!!」

しぼみそうな声でなにかを言おうとしていることに気付いた

アカネ「そのな……えっと……百貨店の件……悪かったな……」

少し赤くなった顔を伏せるように頭を下げた

そして

律は

律「……ははは、あははははは」

アカネ「な、なんやねん! ウチ、なんか変なこと言うたか~?」

律「いやぁ、だってさ、あまりにも予想外だったからさ~、あはははは」



「VSミルタンク」 〆




――37番道路


律「これでとどめだ、ガーディ! きしかいせいだ!!」

ガーディ「――!!」

プクリン「……!?」パタ

おとなのおねえさん「あぁ、私のプクリンが……!!」

そこで繰り広げられているのは、ポケモンバトルだ

律は自然公園・36番道路を経由してここまできたが、その道の途中、幾度も勝負を挑まれては勝ってきた

そのことは自信につながり、余裕を生む

律「よし、私たち強くなってるよな」

と、隣を歩くガーディに話しかける。

ガウと言う返事しか返ってこないが、それでも律は満足そうだ

律「っと、見えてきたな。あれがスズのとうか」

さきほど闘っていたおとなのおねえさんはすでに後方遠く、律が東北の空を見た

そこにはエンジュシティのシンボルともいえる塔がある

律「よーし走るぞ、ガーディ!!」

そして律は町の入り口へと抜けていく

律が目もくれず通り過ぎた看板には

『エンジュシティー―むかしと いまが どうじに ながれる れきしの まち』

の文字があった

――エンジュシティ


時間はまだ日が西に傾きだして間もないだというのに

律「ジムが閉まってる……」

呆然とジムの前に立ち、律が呟いた

律「………まっ、明日には空いてるよな。と、なればまずは観光だあ!」

「あ、そういえば前にキキョウであったマイコさんが歌舞練場がどうとか言ってたなー」

考える間、一時

律「行ってみるかな……えっと、ジムより東側だから、この道を……っと」



律「ここも閉まってる……だと……」

扉に手をかけ何度も押し引きするが、屈強な扉がそんなことでびくともするはずがなく

律「ああっ、もう、ならスズの塔だスズの塔!!」

そういってさらに北への道を辿っていくが、そこでも

律「え?バッチがないとここは入れない……?」

坊主に止められ、中へは入れてもらえなかった

もうポケモンセンターに行き、不貞寝をしてしまおうかとも考えながら、町を歩いていると

律「なんだ……もう一個塔みたいなのがあるのか?」

西に見えるそれはスズの塔と比べて小さく、二階には燃えた後のような跡が残っており

まだ昔には上の階があったことを推測できる

律「こっちは普通に入れるんだな」

先ほど断られたスズの塔のことを思いだし、愚痴っぽく言うと

そのまま塔の中へと足を踏み入れた



――やけたとう


律「……少し暗いな」

老朽化してきているのか、地面の軋む音がやけに目立つ

建物に灯りなどもあるはずもなく、光りはお堂の横からや上、ところどころから差し込まれる陽の光りだけが頼りだ

律「これは………岩か」

人の一人くらいなら隠せてしまえそうな岩に手をつき、野生ポケモンを警戒するが

律「(……不自然なくらい静かだな)」

このくらいの暗さになるとズバットの一匹でもいてもよさそうなものだが、飛び出してきそうな気配すらもない

だが、そのとき律が目を凝らした

岩場の影に隠れるようにして潜む数匹のコラッタがそこにいた

その様子はなにかを警戒しているようで

律「(これは……怯えている……?うーん、なんか違うな)」

足をとめ考えたとき、話し声が聞こえた

『あぁ?………なぜ俺が……下……………など………ない!!』

不審な空気を感じ取った律はさっと岩場に隠れ、耳を澄ます

イラついた感じの男の声と、もう一つは……女の声だ

『そういえば、あなた、カントーで三鳥まで使って惨敗したらしいわね。あはは、惨めね』

『……さい!!…………グリー………から………だ」

女の声は高く、そのおかげで澄ませば聞こえるが、男の低い声は聞き取りづらく途切れ途切れになってしまう

律「(もう少し……どこかに隠れながら近づいて……)」

ソロリと歩幅を小さく、極力音をたてないようにして音の暗闇へと近づいていく

大丈夫だ、と一度うなずいたときさらに声は続いてきた

『まぁ、なんでもいいけどしっかり働きなさいな。ここにはあなたが惨めたらしくも負けた図鑑の少女なんていないわ。邪魔もはいらないでしょう』

『少し黙れ。アテナ、ここでお前と一戦やってもいいんだぞ』

律「(なんだ……図鑑の少女って? ………まさか…………)」

「(……いやまだ決まったわけでもないし、もし私の思い描いた人物だったとしても、この声の持ち主が負けたってことは、あいつであっても無事だ。本当はあいつにはやっかいごとは抱え込んでほしくないんだけどな……)」

その近場にあった物陰に隠れ、さらに様子をうかがうことにした

『あらっ怖い。でも、私も仕事があるから殺されないうちに帰…………ランス!』

急に鋭くなった女の声がもう一方の男へと呼びかけた

気付かれたか、と思うと同時に一つ思い出したことがある

ランスとは以前聞いた名だ。それを聞いた場所はヒワダタウン

たしかあれは洞窟を抜けて出てきたときだ

つまりあれは

律「(ロケット団!!)」

思ったとき、律はもう一つの気配を感じ取った

それは自分の背後、自分も通ってきた場所である入り口だ

そこに人が一人ボールを持った右手を横に広げ立っている


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最終更新:2011年06月13日 02:34