呼びかけと共にオーダイルが前足を地面にべったりとつけた
這うような格好になるが、これが一番スピードの出せる格好だ
そして

律「アクアジェット!!」

口から出した水流を後ろに発射し、そのまま体を突っ込ませた
速さは威力に直結する
まるでそう言わんばかりのスピードで巨体がスイクンに突進していく

だがスイクンもまたそれを避けることはしなかった
真正面、オーダイルが突っ込んでくるほうへと四肢で大地をけり駆け出した

――神速
そのスピードをもってスイクンはオーダイルに対抗する
直後、大きな音と共にその場が震えた

スイクン「――!!」

だが、2匹は衝突後、距離を取ることはない
零距離。その位置で二匹の意地がぶつかり合っていた
だが、そこにさらなる介入がある
オーダイルに勝たせてやろうとする思いをもった律の指示が――

律「オーダイル!!」

組み合ったオーダイルが下から突き上げるように力を入れる
ゆっくりと……だが、たしかにスイクンの体が宙に浮いていく
そして頭上にまで持ち上げたとき、そのまま

律「――ばかぢから!!」

投げつけた。
スイクンの体が不安定なまま宙を滑空する
だがやがて、重力にひかれて地面に落ちるが
それでもその勢いは止まらず、砂煙を巻き上げながら地面を滑る

律「よっし、やったなオーダイル!!」

オーダイル「――!!」

律「にしても、大きくなったなぁ」

言うとオーダイルが嬉しそうに鳴き声をあげた

律「なんだ、そんなに大きくなってもあんまり中身は変わってないんだな」

律がオーダイルの背中をなでながら、
ワニノコと旅立ちの頃を思い出す

律「(そういえばあの時噛まれたんだっけな、はは)」

少し苦笑いをして、ポンポンと軽く叩いた

律「さてと……」

息を吐きながら言うと、もう一度砂煙のほうを見た
そろそろ砂煙が晴れる頃、そこにスイクンの姿が――
――あるはずだった

律「いない……?」

晴れたその場にスイクンの姿はない
だが、そのさらに向こう。50mほど先の位置に唯がいるのを確認した

唯「おーい、りっちゃーーん、大丈夫」

走りながら彼女はこちらに手を振っていた

律「おい転ぶなよー、唯ー」

唯「うわっと……」

律「言った側からかよっ!!」

唯がエヘヘと頭をかきながら、律の前へとたどり着いた

律「ったく、そういうところは変わってないなぁ。」

唯「あはは、そんなに褒めてもなにもでないよ?」

律「褒めてねーよ!!」

唯「ふぅ……にしてもりっちゃん大丈夫だった?」

律「あぁ、まぁな。ふふん、唯にも見せてやりたかったぞ私とポケモンの勇士」

唯「むむっ、私のポケモンだってかっこよかったよ!!」

唯と律が顔を見合わせ同じタイミングで笑い声を上げた
彼女達の南には光りがある
灯台だ。すでに夕刻となった空を裂くように一筋の光りがくるくると回っている
次の町は港町だ。それゆえ灯台が設置されている

律「行こうか」

唯「だねっ」

目指すのはアサギシティ
灯台の光りがまるで彼女達を歓迎するかのように彼女達を照らしていた



――とある道路

満月を背にしたとある大きな岩場の上、3匹のポケモンがいた
一匹の体は朱く、一匹の体は青く、そしてもう一匹は黄色かった

やがて集まるべくして集まった3匹のポケモンは互いに顔を見合わせ、コクリと頷いた
そして

エンテイ「――」

スイクン「――」

ライコウ「――」

三匹が満月に向かい咆哮をあげた
それはまるでなにか嬉しいことがあったかのように
そしてなにかを確信したかのように



「VS オーダイル」 〆



――アサギシティ

夜の港町。
空の高い場所に光りが点滅を繰り返していた。
その光りの発生源は街のシンボルともなっている灯台だ。
そしてその足元、二人の少女が灯台を見上げ、

唯「りっちゃん、見てみて灯台だよ!灯台!」

律「うおっー、近くでみると大きいなぁ」

唯「りっちゃん!」

律「唯!」

言うと二人は顔を見合わせ

唯・律「海だーー!!」

暗い海に向かって声を上げた

律「って、唯お前はカントーで何度もみてるだろー!」

唯「ふふふ、りっちゃん海にきたら叫ぶルールがあるんだよ!」

律「聞いたことねーよ」

唯「ぶぅぶぅー、ノリわるーい。りっちゃん」

律「あ、そうだ……」

唯が疑問の顔を作った横、律が自分のカバンを漁り一つのモンスターボールを取り出した

唯「? ……オーダイル?」



――ポケモンセンター

律「たく、唯が悪いんだからなぁー」

唯「えっー? りっちゃんだよー」

二人はびちょびちょに濡れた全身をタオルで拭いながらぼやいた。
髪の毛からはまだほのかに磯の匂いが漂っている

律「にしても……派手に落ちたなぁ……」

唯「りっちゃんが初波乗りだー、とか言ってもう暗いのに練習をはじめたせいだよー」

律「……唯もノリノリだったじゃん! 自分も「ずるーい、リュー太私達も!」とか言ってはじめたくせに」

唯「うぅ……にしてもなんだったんだろうねー、あの渦潮」

律「なんかもうちょっと海にでると渦潮が名物みたいに発生してるらしいけど……」
  あんな街から近くでなんてなぁ……」

唯「ぷぷぷ、あの時のりっちゃんださかったね」

律「なにをっー!?」

唯「焦ってバランス崩して海に落ちちゃうなんて」

律「むむ、その後唯も落ちただろー!」

唯「私は落ちたりっちゃんを助けようとしたんだもん」エヘン

律「ぐぬぬ……」

唯「ふっふっふ……ハクシュン」

律「……着替えようか」

唯「だねっと……明日はジム戦かー」

律「そういえば、ジムの明かり点いてなかったな……」

唯「夜だからじゃない?」

律「……そっか。そうだよな」

唯「さてと、今日は寝ますかー」

律「風邪引くなよ」

唯「りっちゃんこそ」



――アサギジム前

律「いない……!!」

唯「なんでだろうねー」

ジムの前で二人がドアノブに手をかけて開こうとすると、鍵の錠が音を立てた
そして二人はジムの横の窓へと回り込むと

律「……なんか最近こんなんばっかだなぁ」

唯「あ、やっぱりジムの中は空っぽだね。電気も点いてないや」

律「どうみても、これ覗きだよなー」

唯「うーん、どうしたんだろう……」

律「よし、人に聞いてみよう」

言うと、律が手上げて通りすがりへと声をかけた

律「おーい、すいませーん!ここのジムって……」



――灯台前

律「まったく、ジムリーダーが灯台でなにしてるんだよー」

唯「まぁまぁ」

律「………唯、今灯台見学できて嬉しいなぁ とか思っただろ」

唯「ギクリッ……」

すると律が肩をあげてやれやれとポーズをつくると

律「……まぁいいや。でもジムリーダー探しにきたんだからな。本分を忘れるなよ」

唯「了解であります! りっちゃん隊長」

律「んじゃ、いきますかっと」



――灯台1階

唯「ねぇねぇ、りっちゃん」

律「ん?」

唯「灯台ってさ、お昼も普通は灯りついてるよねー?」

律「まぁそうだなぁ」

唯「ここ入ってくる前に見上げたとき、灯りついてなくなかった? それに昨日のよるもなんかチカチカしてただけのような……」

律「そうだったかー? 昼間は明るかったから見えなかっただけじゃないのか? 
夜はそれどころじゃなかったな……」

唯「うーん、そうかなぁ……」

律「ほら唯、階段、足元気をつけろよ」


――灯台3階

唯「うーん、ジムリーダーっぽい人いないねー」

律「っていうか、人がいないな」


――灯台4階

律「うお、穴が空いてる」

唯「あ、でも見てりっちゃん。下の部屋のところにまた階段があるよ」

律「……うーむ、他に上に上がる階段はないし……降りてみるか」



――灯台5階

唯「ほらね、りっちゃんやっぱり一回降りてまた上るのが正解だったんだよ」エヘン

律「だれだよ……こんな構造考えた奴」

唯「うーん、みんなきっとみんなエレベーター使うんだろうね」


――灯台6階

律「おおっと、ここが最上階か」

唯「おお、ナイスな眺めだね」

二人がたどり着いたのは360度ガラス張りの窓になっている部屋だった
そこには小さなベッドなども置かれているが、

律「……ん? あそこにポケモンがいるぞ」

唯「え? あ、ホントだー」


No.181 デンリュウ
シッポのさきが ひかりかがやく。
ひかりは はるか とおくまで とどき 
まよったものの みちしるべとなる。


律「へぇ、あ、じゃぁあいつがこの灯台の光りの源かー」

唯「………」

律「唯……?」

律の疑問の言葉に答える前に唯がそのポケモンにダッシュした

唯「りっちゃん、あのポケモン様子がおかしいよ!」

律「なにっ!?」

律が後に続き、デンリュウの元へと駆け寄った
そして唯が丁度、デンリュウに駆け寄った時

デンリュウ「リュウ………」パタリ

フラリとその黄色の体を傾いた
だが

律「いけ、オーダイル!」

倒れそうになったところに青の巨体が飛び込み受け止めた

唯「……やっぱり……この子体調おかしいんだ……」

律「唯、そこのベッドに運ぶぞ。オーダイル頼む」

唯「まって、りっちゃん!! そこのベッドの影になにかいる……ってあれは足?」

律「人だ。人が倒れてる!!」

ベッドの影、そこに近づき、覗き込むと
一人の女の子が気を失い倒れていた



???「……うーん……ハッ、あかりちゃん!!……あれここは……」

唯「よかった……目が覚めた?」

???「え?あなたは……?」

唯「えっと唯っていうんだけど」

???「唯……さん……ですね。……なんで……あれ?ちょっと待ってください少し記憶を整理する時間を……」

そのとき、部屋の隅、ちょうどベッドのほうでまた違う声が上がった
律だ。

律「唯、駄目だ。おそらく毒系統にやられてると思うんだけど、毒消しがきかない」

???「!! そうだあかりちゃん!」

言うと、女の子がガバッと立ち上がり、ベッドへと駆け寄った

律「あ、目が覚めたのか」

唯「うん、こっちは大丈夫みたい」

律と唯がベッドに駆け寄った女の子を見て、息をついた
そして

律「ごめん、悪いんだけどちょっと事情を説明してくれないか?」

律が女の子の肩にポンと手を置いた
すると、女の子が長い髪を揺らしながら振り返り

???「……はい、すいません。ですが、私からも一つお願いがあるんです」



………
……

律「で、ミカンちゃんだっけ? その話しは本当に……」

ミカンと名乗った少女が、律の言葉に頷きながら

ミカン「はい……たしかに本当です。昨日の夕方いきなりロケット団と名乗る集団が現れたと思ったら、
    この部屋を占拠しだして抵抗したアカリちゃんと私を……」

律「……ふぅ……またロケット団か……」

ミカン「!……なにか知ってるんですか?」

律「いや、悪いんだけどここがなぜ狙われたとかはわからない」

ミカン「そう……ですか……駄目ですよね、私……友達になったポケモンすらも守れないなんて……
    せめて自分のポケモンを持ち歩いていたら……
    いえ、すいません言い訳ですね。忘れてください……」

すると今まで黙って話しを聞いていた唯がミカンの手を取った
そして彼女と目を合わせると

唯「ううん、違うよ。この子は倒れそうになりながらも、あかりを灯してた……昨日の夜たしかに見たもん」

唯「あれはきっと、あなたを助けようとして助けを呼ぶ救援光だったんだよ。だから……」

唯「ミカンちゃんがこの子を助けようとした気持ちも伝わってるよ」

ミカン「……そうでしょうか……」

唯「うん、そうだよ」

ミカン「……ありがとうございます」

唯の言葉に今まで泣きそうだったミカンがかすかに微笑んだ

律「さてと……それじゃ、いっちょ行って来ますか」

ミカン「……本当にお願いしてもいいんでしょうか」

律「はは、そんなに気にすることないよ。お使いくらいなら私にだってできるさ」

ミカン「いえ、そうではなく。 あったばかりなのに……」

律「気にしない気にしない。 で、そのタンバでひでんのクスリをもらってくればいいんだっけ?」

ミカン「はい、お願いします!! それがあればこのアカリちゃんの毒も大丈夫だと思うんです」

律「このりっちゃん隊長にまっかせなさーい」

唯「りっちゃん頼んだよ」

律「あぁ、唯もしっかりここ守っとけよ。またロケット団が来たら困るしな」

唯「イエッサー! りっちゃん隊長!」

律「……それにしても、なんでロケット団はここに来てすぐ引き上げたんだろうな……」

ミカン「……わかりませんが、ただ」

律「ただ?」

ミカン「いえ、そんなに重要なことだとは思いませんが……おそらくリーダーであろう人が、そこの窓から向こうのほうを見て……」

律「向こう?」

ミカンが指を指し律が見たさき、そこにあるのは海ばかりだ

ミカン「えぇ、ただ一言待っていろ、と」

唯「なんだろうね……」

律「おっと、こんなことは後でいいか。とりあえずさっさと行って来るよ」

ミカン「あ、はい。すいませんお願いします」

ミカンがペコリと頭を下げると、律が背中を向け手を上げた


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最終更新:2011年06月13日 21:07