唯「おー、りっちゃん行ったねー」

ミカン「どうかご無事で……」

唯「ねぇねぇ、ミカンちゃん?」

ミカン「はい?」

ベッドの横で、デンリュウの看病をしながらミカンが首を傾げた

唯「ミカンちゃんはここに結構きてるの?」

ミカン「はい、アカリちゃんは友達で、意外に寂しがりやだから……それに私はこの街の……」

唯「えっ!? ミカンちゃんこの街の…………なの!?」

ミカン「あ、はい。すいません言ってませんでしたね」

唯「………りっちゃん帰ってきたら驚くよ」

ミカン「?」



――アサギ港

律「さてと、行くか。頼むぞオーダイル」

律が海へとモンスターボールを投げ、海に浸かったオーダイルの背中へと飛び乗った

律「よし、もう落ちないぞ……っと」

そのとき、オーダイルがフラリと水の中で揺れた
そして、波が少し引き

律「これは、あの時と同じ……」

思い出すのは先日のこと
ちょうど今のようにオーダイルで波乗りをしようとしたときだ
あの時も同じように

律「やっぱり、あの渦潮はおかしいと思ってたんだよなぁ……こんな街の付近でなんて」

律「で、また今回もってか。でも、今度はかまってやれないぞ」


No.117 シードラ
オスが こどもを そだてる。
そのとき ちかづくものは 
もうどくの トゲを つかって おいはらう。


図鑑の向けた先、うずの中心点。
そこに青いトゲトゲしいタツノオトシゴのような姿があった

律「毒か……近づくわけには行かないな……でも時間をかけるわけにもいかない」

律が数秒の間口元に手を当て、

律「ならっ……渦を飲み込むほどの激流だ。ハイドロポンプ!」

掛け声とともに律がオーダイルにしがみつき、
そしてオーダイルは口を大きくあける。
その口からでるのは波に負けないほどの水流だ。

オーダイルの口から放たれた水流は渦の上から呑みこんでいき、やがて中心部のシードラを飲み込んだ

律「よしっと、あとは……」

律がオーダイルに静止を指示し、モンスターボールを取り出した
律が待つのは、波がもう一度収まるとき

律「いまだ!」

ハイドロポンプの水流が消えたあと、そこに渦はなくただ一匹、ひるんだシードラが浮かんできていた
そして、そのシードラは律と目を合わせると、もう一度渦をつくろうとするが

律「おそいよ」

律がモンスターボールをシードラへと放った
そしてそのボールがシードラを捕らえると、プカプカと水の上でゆれ収まった

律「よっし、とりあえずシードラゲットか。ま、これが一番早いよな」

律が浮かんだボールを拾うと、ボールの中のシードラを見た

律「おおっと、まだイキがいいな。はは」

律「さて、急ぐぞ、オーダイル」

律は再びオーダイルへと指示を出し、どんどん小さくなっていくアサギの街を振り返った

律「そういえば、ジムリーダーみつけられなかったなぁ……まっ、帰ってからでいいか」



「VS シードラ」 〆



――41番水道

律「お、見えた。あれがタンバシティか」

オーダイルにサーフィンのようにのりながら、海を渡っていた律が前方を見た

律「意外に時間はかからなかったなぁ」

律がアサギシティを出発してから、それほどの時間は経過していなかった
律の感覚としては2時間程度。
その感覚が正しいか確かめようとポケギアを見れば

律「よっし、大体思ったとおり」

時刻は昼下がり
太陽が真上から下がろうとする時間帯だった
しかし、振り返り空を見れば雲がある
暗雲だ。
丁度ここへ来る途中見た、いくつかの島のあたりを暗雲が層を作っていた

律「もうちょっと遅かったら……」

雨の中あそこを通らないといけなかったんだろうなぁ、と言葉を作らずにに思う
そしてぶんぶんと首を振り

律「さぁ、ラストスパート頼むぞ、オーダイル」

言うと、オーダイルが速度を上げる形でその指示に答えた

律「はやくしないとな……」


――タンバシティ(タンバ薬屋)


律「え?夕方までかかるの……?」

タンバシティのフレンドリィショップ代わりともなっている薬屋で律が落胆の声を

あげた。
律の前には年輩の老女が一人

薬師「うむ……症状は毒じゃったな? おそらく話しを聞くかぎりその毒は猛毒じゃろう……
    とするとその毒に効くクスリとなると強いクスリが必要なんじゃが、
    今そのクスリは作れないんじゃ……
    だから複数のクスリで補うしかないんじゃが、数をつくるとなると時間がかかってそれくらいになってしまうのぅ」

律「そんなぁ……」

薬師「急ぎのようかい?」

問いに律がコクリと頷いた

薬師「そうかい、それは困ったねぇ……少し前であれば大抵の毒に効く万能薬ともいえるクスリがつくれたんじゃがなぁ」

律「そうだ、さっき強いクスリは作れないって……! なんでなんだ?」

薬師「そのクスリを作るのにあるポケモンのトゲが必要なんじゃが、
    最近そのポケモンはうずまき島~アサギのほうに住処を移したらしくてのう……
    そのポケモンがタンバの付近であまりみられなくなってしまったんよ」

律「……しかたないか……はぁ……」

薬師「すまんのう……また夕方きてくれるかえ?」

律「はい、それじゃ……あ、ちなみにさっき言ってたポケモンって?」

律がショップを出ようとしたとき、顔だけ背中へと振り返り言った

薬師「あぁ、シードラと言って、こんな青い……」

律「!!」

薬師「なんじゃ?」

律「そのポケモン……持ってる。」

薬師「……本当か?」

律「あぁ、ほら」

律がモンスターボールを一つ取り出し老女の前へと差し出した
すると老女がボールを受け取り、その中を目を凝らし覗き込む

薬師「おお、このヒレのトゲの部分じゃ。これがあれば」

律「おっけー、なら。でてこいシードラ」

律がボールを真上に投げ、空中でシードラが放たれ下へと落下するが
そのまま腕を構えキャッチした

律「っと、水はないけど少し我慢してくれよ……」

シードラ「――」

薬師「ほう……少しそのままもっておれよ」

律「すまん、シードラ。少しトゲの部分もらうぞ」

言えば、シードラが律の手の中でコクリと頷き
それを見た老女がピンセットでシードラのヒレへと手を伸ばした


――タンバシティ


律「っと、シードラのトゲがあっても一時間はかかるのかよ……」

ポケモンセンターで回復を済ませた律はさきほどのことを思い出し呟いた。

律「さてと、この時間どうするかなぁ……」

何もすることがなく、ただ散策していた律は気付けば浜辺にまで出てしまっていた

律「うーん……ジムに挑戦にしたら時間が足りないよなぁ……」

呟いたそのとき、

――ポツリ

水の音が地面を叩いた。
雨だ。
空を見ればさきほどうずまき島の上空に見えた雲が真上にまで広がっている。
風も強く、雨はすぐに横雨となる。

律「ったく、最近濡れてばっかだなぁ」

そして律が浜辺から急ぎ足でポケモンセンターまで戻ろうかと思った時、
二つの異様な光景を見た

一つは波だ。
さきほどまでそれほど荒れていなかった波が、今では砂浜の漂流物を一切さらおう

とするまでの高波となっていた

もう一つは……

律「なんだあれ……」

浜辺、下半身だけ胴着のようなものをきた上半身裸の中年の男がいた
だんだんと強くなる雨に呼応するように波も高くなる。
その波際だ。その男が仁王立ちでなにかを待つような姿勢だ

そして律があぶないなぁと、そう注意の声を出そうとしたときだとした時だった
突如、海の方角、さきほどまでの波とは比べ物にならない高波が来た
その高さは目測で、およそ2mほど
浜とそこに立つ人を飲み込むには充分な波だ

律「……おいおい、なんで動かないんだ!! 危ない!」

だんだんと浜へと近づいてくる波にも動きをみせない仁王立ちの男へと叫んだ
だが、やはり男は動じずなんのアクションも起こさない

だから律は

律「間に合え、ストライク!!」

ボールから飛び出たストライクは早かった
瞬く間に距離をつめ、その男を目指し走っていく
だがそれでも、波に間に合うかギリギリというタイミングだ

そしていよいよ波があと数瞬で男もろとも助けにむかったストライクを飲み込もうとした時だった
さきほどまでまったく動じていなかった男が、手を動かしなにかを取り出したのを律は見た

律「あの丸いのは……」

律の見たもの、それは自分もよく見慣れていたもの。
赤く、丸い、モンスターボールだった



飛び出したストライクが男にたどり着く直前で足をとめていた
それを見ていた律が思わず息を呑んだ
そして男は

???「出ろ、ニョロボン!! 気合パンチじゃ!!」

呼応するように、男の手に持ったモンスターボールからポケモンが飛び出した
そしてすかさず波に向かって拳を構えると、
ただ一突き――その拳を振るっただけで……

律「……ありえねぇ……」

波が割れた。

男を中心に二つに別たれた波は、ただ回りの漂流物や岩石もぎ取りながらその威力を見せる。
が、男とその男の出したポケモン、そしてその男まであと少しといった距離にいた

ストライクは、
飲まれることなくその場に立っていた。

気付けば雨はやんでいた
まるでその男が波とともに悪天候すらも吹き飛ばしたかのように

そして男がこちらへと振り向き叫んだ

???「いやー、すまんかったのう!! これはいつものワシの修行じゃ。心配せんでもいいぞ」

そう言ってガハハと豪気に笑った男が、律を手招きよせた



シジマ「ガハハ、いやぁすまんすまん。
     ……にしてもよく鍛えられたストライクだな。あそこからここまであの

スピードで来るとはの」

シジマと名乗った男が、律の横に立ったストライクを一瞥してから言った
少し話してみるとどうやらシジマという男は、荒れた天気の時には今みたいな修行をしているとのことだった

律「……ったく……修行かよ」

と、ぼやいた律の言葉はシジマの耳にははいらなかった
なぜならシジマはアゴに手をあて、ストライクを眺めながらなにか考え事をしていたからだ

シジマ「……うむ、少女よ。一つ提案がある」

なにかを考えていたシジマが律へとそう言いながら、指を立てた

律「?」

シジマ「ここで一戦ワシと戦ってみんか?」

律「ポケモンバトルかっ!!……って駄目だ」

一瞬テンションの上がった律だが、すぐに肩を落とした
その様子を見たシジマがなぜと問いかけると

律「私はあと一時間くらいでこの島をさらなきゃならない。急ぎの用があるんだ」

シジマ「ふむ、一時間か……ならどうじゃ、1対1の勝負で。
     交代はなし。時間が来たときに決着がついていなければ引き分けということで」

律「……うん、それならなんとか」

シジマ「よし、決まりじゃな!! ガハハ、まぁ心配はいらん。30分で終わらせてやるからのう」

律「……言ったな」

シジマ「ワシはこのニョロボンで行くとしよう」

律「……!! なら私はこのストライクで行く」

律が咄嗟に言葉を返す
舐められたというほどではないが、やはり対等でやりたかったからだ

シジマ「ガハハハ、その負けん気いいなぁ。しかし、こちらも勝負は負けん。
そうだな、修行に付き合ってもらう礼としては、ワシに勝てればジムバッチをやろう」

律「……ジムリーダー!!」

驚きの反応を見せた律にシジマが言う

シジマ「なんじゃ知らんかったのか」

律「……あ、あぁ」

シジマ「萎縮したか?」

すると律が首を横に振った
そして不敵に笑い

律「いいや、俄然やる気がでてきた」



闘いの始まりは律からだった。

律「ストライク、高速移動」

今まで敵のニョロボンを見据えていたストライクが消える。
そして現れる場所は、ニョロボンの真後ろ。
ニョロボンの反応はない。
だから

律「もらった、れんぞくぎり」

ストライク「――!!」

背中を目掛けた一振りが走った。
完全な不意。ニョロボンの意識の外の攻撃だ。
だが

シジマ「みきれよ、ニョロボン」

背中側から振り下ろされる一撃。
それに対してニョロボンが取った行動は簡単なものだった。
自分の体へ届く前の刃。その側面へ手のひらをかざし、体の外側へと押し出す。
ただそれだけの行為。
だが、それを背中側をも見ずに腕と手の動きだけで行った。

ストライク「!?」

ストライクの鎌が受け流されるまま地面へと刺さった。

律「――!! なんだ!?来る攻撃が分かっていたのか」

その質問への答えはない。
その代わりに

シジマ「ニョロボン、気合をためろ」

律「!!」ゾクッ

ニョロボンが拳を構えた直後、律の背中に寒気のようなものが走った。

律「かげぶんしん!!」

シジマ「……ほぅ……察したか」

とっさにストライクが、地に刺さった鎌を抜きステップを踏んだ。
ニョロボンを囲むように、走り出したストライクが影をそこへと置いていく。
1つ……2つ……3つ……ニョロボンの周りに三体のストライクが現れる。
だが、さらにその3体はスピードを上げ、その倍――6体のストライクをニョロボンの目に映し出した。

律「(よっし……これでピンポイントにうつ打撃などは当たらない……)」

シジマ「今、安堵の顔を作ったな?」

シジマが口端を吊るすように上げ

シジマ「それが隙に……っと」

と言いかけたところでシジマがさらに声を張り上げた。

シジマ「じごくぐるま!!」

律「(なんだ……あのニョロボン今一瞬目を閉じた?)」

見間違いか、と律が思った、直後。
ニョロボンが浜の砂を蹴り、走った。
そのさきには一体のストライクがいる。

律「まずい!!」


44
最終更新:2011年06月13日 21:10