桜が丘女子高等学校サッカー部

通称HFC(放課後フットボールクラブ)は大変な危機に直面していた

今まで11人で構成されていたHFCだが
部員の一人が転校し、人数が足りなくなってしまったのである

中島信代
ポジションGK

このままでは夏の大会に出られない……

そんな時、監督である山中さわ子が現れた

さわ子「みんな、キーパーを探してきて頂戴」

「「「はい!」」」

部員達はさっそくキーパーを探すべく四方八方へ散った
そんな中、その場から動かない人間が四人いた

唯「ん?」

澪「どうした?」

律「うるせーな」

紬「おかわりあるからね」

HFC屈指の足枷
ディフェンス四人組である

ここでポジションを紹介しておこう

センターバック
平沢唯、琴吹紬
左サイドバック
秋山澪
右サイドバック
田井中律

彼女達は未だティータイムを続けている

さわ子「あなた達……私の話聞いてた?」

唯「ごめん、聞いて無かったや」

律「さわちゃんもお茶にしようぜ!」

紬「お菓子もありますよー」

澪「いい風だな」

さわ子「もう一度説明するわ」

さわ子「信代ちゃんっていたでしょ?」

唯「うん」

さわ子「その信代ちゃんが転校しちゃったの」

律「そっか残念だな……」

さわ子「つまり、今部員が10人しかいないの!」

澪「つまり?」

さわ子「もう一人入部させないと夏の大会に出場できないのよ」

紬「夏の大会出たかったなぁ……」

さわ子「勝手に諦めないで。他のメンバーはとっくにキーパーを探しに行ったわよ」

唯「あ、私トイレに行ってくるね」

律「おう、いってら」

さわ子「ちょっと!」

澪「まぁまぁ、唯が帰ってきたらもう一度説明して下さい」

紬「監督はポカリでいいですよね?」

さわ子「はぁ……頂くわ」


一方唯は

唯「トレイじゃないよトイレだよ~♪」ジャー

唯がトイレを済ませ外に出ると一人の少女を見つけた

梓「うーん」

何やら掲示板を見て悩んでいるようである

唯「ねぇねぇ、なにやってるの?」

梓「あ、部活を探してるんです。せっかく高校生になったので何か始めようと思いまして」

唯「そっかぁ、偉いねぇ」

梓「あの、えーと」

唯「私は唯だよ」

梓「唯先輩は……サッカー部なんですか?」

唯「そうだよ。通称HFC!今日も部活が楽しいよ」

梓「HFC?」

唯「放課後フットボールクラブ!あ、君も入りなよ」

梓「楽しい部活なんですね。ちょっと見学させてもらいます」

唯「楽しいよ~じゃあ着いてきて」

唯は梓をグラウンドまで連れていった

さわ子「収穫無し……ね」

「「「すみませーん!」」」

さわ子「いいのよ。あなた達だけが私のオアシスだから。ディフェンス陣は聞いてるの!?」

唯「みんなただいまー。キーパー連れてきたよ」

さわ子「え!?見つかったの?」

唯「そうだよ。掲示板の前でウロウロしてたから確保したんだよ」

梓「え……見学のつもり」

さわ子「お手柄よ唯ちゃん!たまには役に立つのね!」

唯「でへへ、あ、君の名前聞いて無かったね」

梓「あ、私は中野梓です」

こうして唯と梓は運命的な出会いを果たした

さわ子「じゃあさっそく入部届書いちゃって」

梓「え……あ、はい」カキカキ

唯「可愛い字だね」

さわ子「じゃあ梓ちゃん。これからよろしくね!」

梓「あの……サッカーのルールとか良く知らないんですケド」

さわ子「大丈夫。ゴールの前で立ってるだけの簡単なお仕事だから」

梓「それってやっぱり」

さわ子「そう、GK」

梓「ゴキ……ゴールキーパー……」

唯「じゃああずにゃんの入部を祝して乾杯しようか」

梓「ほんとに入部決定なんですね……」

唯「その前に自己紹介しよっか。私達四人がディフェンスね。いつもあずにゃんの前にいるよ」

律「私は右の方にいる律だ。ちなみに部長じゃないからな」

梓「はぁ、律先輩ですか」

澪「私は左利きってだけで左サイドバックにされた澪だ。よろしくな」

梓「澪先輩ですか」

紬「私はキック力だけを評価されてセンターバックになった紬よ」

梓「便宜上ムギ先輩って呼ばせてもらいますね」

唯「そして余ったポジションにすっぽり入った唯だよ!」

梓「唯先輩ですね」

唯「じゃあお茶にしようか」

梓「え、他のみなさんは練習してるみたいですケド」

紬「ポジション別に別れて練習してるからね」

澪「FW陣とMF陣は練習熱心だからな」

律「私らDFはマイペースに練習してるのさ」

梓「なるほど……」

唯「それじゃあいただきまーす」

梓「いただきます」

ティータイムは完全下校の時間まで続いた

唯「あずにゃん、疲れたでしょ?」

梓「あ、全く。寧ろ動きたかったくらいです」

唯「おぉ!頼もしいね!」

梓「ずっと座ってただけじゃないですか」

唯「まぁいいや。部室とか備品の場所案内するね」

梓「はい、お願いします」

唯「ここが部室だよ。臭いね」

梓「散らかってますね」

唯「あずにゃんはこのロッカー使って」ガパッ

梓「はい。あの、靴とかは自分で買ってくるんですよね?」

唯「スパイクのこと?信代ちゃんが色々置いて行ってくれたから良かったら貰いなよ」

梓「サイズ合いますかね」

唯「女の子の足なんか大体同じくらいだよ。これ履いてみて」

梓「はい」カポッ

唯「どお?爪先痛くない?」

梓「全然大丈夫です。ちょっと余裕があります」

唯「よかったー。じゃあユニホームと短パンとストッキングと……」

梓「なんか一式いただいちゃって申し訳ないです」

唯「いいんだよ。誰も使わないし」

梓「えと、唯先輩。私をサッカー部に誘って下さってありがとうございました」

唯「こちらこそ、入ってくれてありがとう」

唯「せーの」

律澪紬「サッカー部へようこそー!」

梓「先輩方……」ジワ

梓「私、たくさん練習して立派なGKになります!」

唯「その意気だよ!頑張ろうね~」


次の日、始めての練習試合

梓「唯先輩……凄く緊張してます」

唯「大丈夫だよ。みんなが点取ってくれるからね」

梓「はい」

唯「じゃあ整列するよ」

審判「では、これよりHFC対THFCユースの試合を始めます。礼っ!」ピッ

梓「唯先輩、私はここにいればいいんですよね」

唯「そうだよ。先輩達に任せなさい!」

梓「唯先輩の背中……凄く頼もしい……!」キュン

試合開始のホイッスルがグラウンドに響いた

梓「……」

<ミギキレー!ミギー!

梓「……」

<マイボ!マイボ!

<ハリー!ハリー!

梓「……」

<ナイシュー!ナイキー!

梓「唯せんぱーい!」

唯「え?どうしたの?」

梓「えっと、なんかボール来ませんね」

唯「まあね、FWとMFは全員県のトレセン行ってるし」

梓「トレセン?」

唯「えーと、ディフェンス以外が優秀過ぎてね、ここまで攻め込まれないんだよ」

梓「じゃあほんとに立ってるだけでいいんですか!?」

唯「そうだね。ゴールキックはムギちゃんが蹴ってくれるよ。あずにゃんは座っててもいいよ」

梓「わざわざ長袖着てるのに……!」

唯「相手にクリアすらさせないって凄いよね。あ、また点入った」

梓「キーパーいなくても勝てるじゃないですか……」

唯「そんなことないよ!あずにゃんが後ろにいなかったら私不安だもん」

梓「でも、先輩方が前線で走り回ってるのに私はなんにもできないなんて……」

唯「そっか、あずにゃんも戦いたいんだね」

梓「はい!」

唯「今、コーナーキックだよ。行ってきな」

梓「いいんですか?」

唯「大丈夫。あずにゃん不在の間、私がゴールを守るよ」

梓「ありがとうございます!いってきます」

さわ子「ちょ、あの子なにやってるの!?」

梓「うおおおおおおおおおおおおお!!」

<カウンター!


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最終更新:2011年06月13日 21:52