梓「ふぅ、一通り掃除したし。これで大丈夫かな」
梓(それにしても、ムギ先輩がうちに来るなんて・・・・・・)
梓(けっこういきなりだったし、どうしたんだろ)
梓(ちょっと緊張するなぁ・・・・・・)
ピンポーン
梓「あ、来たかな」
梓「はーい」
梓「いらっしゃいです」
紬「こんにちは~」
梓「どうぞ、あがってください」
紬「おじゃましま~す」
梓「今日も寒いですね。外はどうでした?」
紬「うん、ちょっと風が強かったかな」
梓「やっぱり迎えに行ったほうが良かったですかね」
紬「ううん、場所は知ってたし。梓ちゃん寒いの苦手でしょ?」
梓「すみません、なんか気を使わせちゃって」
紬「気にしないで」
梓「それじゃあ、こっちです。ムギ先輩うち来るの初めてですよね」
紬「そうね、遊ぶときはいつも唯ちゃんの家だったから」
梓「そうですよね」
紬「梓ちゃん家にはレコードがたくさんあるって聞いて楽しみだったの~」
梓「あ、今お茶持ってきますね」
紬「手伝おっか?」
梓「いえ、いつも淹れてもらってますし」
梓「ムギ先輩のみたいにおいしく淹れられるかわかりませんけど」
紬「そっか、じゃあ楽しみにしてるね」
梓「はい。それじゃあ適当にくつろいでてください」
紬「は~い」
梓(とは言ったものの)
梓(ムギ先輩の口に合うかな・・・・・・)
梓(やっぱり手伝ってもらえばよかったかも)
梓「お待たせしました」
紬「いただきま~す」
梓「どうですか?」
紬「ん、おいしいよ」
梓「そうですか、よかったです」
梓「えっと、それじゃあなにしましょうか」
梓「うち、あんまり遊ぶものとかないんですけど」
紬「うん、あのね、今日は梓ちゃんにギター教えてもらおうと思って」
梓「あ、そうでしたか。それならお安い御用です」
紬「お願いしま~す」
梓「はい!それじゃあうちにあるギター使って一緒に練習しましょうか」
梓「どこかわからないところあったら聞いてくださいね」
紬「うん、ねぇ梓ちゃん。これなんだけど・・・・・・」
梓「はい、そうですね・・・・・・これは・・・・・・」
梓「コツは手首の力を抜いてブラブラさせる感じです」
紬「ブラブラ?」
梓「はい!腕を振る勢いで手首をこう・・・・・・ブラブラ~っと」
紬「こう?」
梓「ん~まずはギターを持たずにやってみましょうか」
紬「うん」
梓「空中にこんな感じでブラブラっと」
紬「ブラブラ・・・・・・」
梓「そうですそうです!そんな感じです!ブラブラ」
紬「ブラブラ」
梓「ブラブラ」
紬「ありがと梓ちゃん!教えるの上手よね!」
梓「いえ、そんな。ムギ先輩の飲み込みが早いんですよ」
紬「そう?」
梓「そうですよ」
梓(唯先輩もムギ先輩くらい真面目にやってくれればいいのになぁ)
梓(ムギ先輩、一生懸命やってくれるし教えてて楽しい・・・・・・)
梓(ギターもすごい似合っててかっこいいし、トリプルギターなんてできるようになったりしたら・・・・・・)
紬「梓ちゃん?」
梓「え!?はいっ!なんでしょうか!?」
紬「えっと、次はどうすればいいのかなって」
梓「あ、そうですよね!次はですね・・・・・・」
―――――――
―――
紬「ふぅ、ちょっと指が痛くなってきちゃった」
梓「それじゃあ今日はこのへんにしておきましょう」
紬「はーい」
紬「梓ちゃんは指痛くならないの?」
梓「ええ、私は慣れてますし」
紬「やっぱりギターは痛みに耐えられるようになるのが重要なのね・・・・・・」
梓「だから違いますって」
梓「そういえば先輩」
紬「なぁに?」
梓「どうしてギターを練習しようと思ったんですか?」
紬「だってかっこいいじゃない?」
梓「え?それだけですか!?」
紬「あとは、弾けるようになったら作曲のときの参考になるかな~って」
紬「本当はベースやドラムもできたほうがいいかなって思うんだけど」
梓「すごい・・・・・・やっぱりムギ先輩はすごいです・・・・・・」
紬「へ?そんなこと・・・・・・」
梓「だって作曲だってほとんど1人でやってるのにその上各パートの練習もだなんて・・・・・・」
梓(考えてもみれば、あのレベルの曲を作るのは並大抵の努力じゃ足りないと思うし)
梓(バンド経験は高校からみたいだからかなり勉強したんだろうな)
梓(そもそもティータイムだって全部ムギ先輩が用意したものだし)
梓(もしかして軽音部ってムギ先輩がいなかったら崩壊するんじゃ・・・・・・!)
梓(考えれば考えるほど軽音部にとってのムギ先輩の存在の大きさが浮き彫りに・・・・・・)
紬「梓ちゃん?」
梓「あっ!はい!すみません、ボーっとして」
梓「えと、休憩しましょうか、お茶いれますね」
紬「あ、ねぇ、やっぱり手伝わせて?お願い」
梓「え?はい、私はかまいませんけど」
梓「そうだ、あの!お茶の淹れ方教えてもらってもいいですか?」
紬「もちろん、いいわよ」
梓「はい!お願いします!」
紬「それじゃあまずはお湯を沸かしましょうか」
梓「はい、えと、あの。一応ミネラルウォーターならうちにあるんですけど使いますか?」
紬「ううん、水道水でいいのよ」
梓「そうですか」
紬「あ、電子レンジ借りるわね」
梓「はい、どうぞ」
紬「こうやってポットを温めておくの」
梓「へぇ~」
紬「梓ちゃんはミルクティーでよかったかしら?」
梓「あ、はい。あの、いつもは先にミルクを入れるのに今日はそうしないんですか?」
紬「今日はいつもと違うから後から調整できたほうがいいかと思って」
梓「そうなんですか」
梓(いろいろ工夫してるんだなぁ・・・・・・)
紬「あ・・・・・」
梓「どうかしましたか?ムギ先輩」
紬「外、雨降ってきたみたい」
梓「ほんとですね、けっこう本格的に降りそうです」
梓「ん・・・・・・」
梓「あ、おいしい」
紬「ふふ、よかった」
梓「淹れ方ひとつでこんなに変わるものなんですね」
紬「梓ちゃんにおいしく飲んでもらいたかったから」
梓「いつもこんな苦労してらしたんですね。知りませんでした」
紬「苦労なんかじゃないわ。私が好きでやってることだから」
梓「そうですか・・・・・・」
梓(ほんとすごいな、この先輩)
紬「ね、梓ちゃん。レコード見てもいい?」
梓「はい、どうぞ。好きに見てください」
紬「ふむふむ」
梓「気になったのがあったらかけてみましょうか」
紬「いいの?」
梓「いいですよ、もちろん」
紬「でも、ジャズって私あまり詳しくなくって」
梓「確かにあまりポピュラーではないですもんね」
紬「あ、ビートルズとかストーンズもあるのね」
紬「梓ちゃん、これお願いしてもいいかな」
梓「はい、それではちょっと待ってくださいね」
紬「うん」
梓「確かこのアルバムの2曲目って最近映画の主題歌になりましたよね」
紬「そうなの、それでちょっと気になって」
梓「今かけますね」
梓「・・・・・・」
紬「・・・・・・」
梓「なんか、いいですね」
梓「こうしてお茶飲みながらレコードを聴いて」
梓「外は雨が降ってますけど、またそれがいいと言うか」
梓「なんだか物語の世界のできごとみたいです」
紬「そうね」
梓「この部屋だけ世界中から切り取られたみたいですね」
梓「聴こえるのは音楽と雨の音だけで・・・・・・」
紬「梓ちゃん文学少女みたいなことを言うのね」
梓「そんな、ちょっと感傷的になってるだけです」
紬「・・・・・・」
梓「・・・・・・」
最終更新:2011年06月14日 22:00