私達はまたもや今来た道を引き返すことになった。

途中でさっきの【2のAの教室】の前を通ることになったが、特に何事も起きずに通り過ぎることができた。


律「さて、【2階・東階段】の前についたわけだが……」


澪「【2階・東階段】?」


律「あぁ、階段が2つもあったら分かりづらいだろ?だから、さっきの【1のA】に近いところが【2階・西階段】でこっちが【2階・東階段】だ!」


律「ちなみに、玄関に行くときに降りた階段は【1階・西階段】と命名させてもらった!」


      ブブッ


澪「変なとこで、きちょうめんだな……。」


      ブブッブブッ


律「まぁな……てか、さっきからハエがブンブン飛び回って邪魔だ!」


律が顔の前で手をしきりに左右に振る。


澪「律……ちゃんと風呂くらい……」


律「いや、ちゃんと毎日入ってるよ!?」


澪「こっち側にも通路があるんだな……」


      ブブッ


律「曲がり角になってたみたいだからな。」


律「さっ、ハエもうっとおしいことだし、そっちは後にして3階に上がろうぜ!」


澪「……あぁ。」


【3階・東通路】


律「どわっ!?」


澪「どうした!?」


律「あっ、あれ!」


澪「うっ……また……死体か……。」


律「あぁ……完全に白骨化してるな……。」


3階に着いた私達を出迎えてくれたのは、座った状態で力無く壁にもたれ掛かっている骸骨だった。

セーラー服を着ていることから、その子が女子であることが一目でわかった。


澪「……頭の部分が割れてる……」


律「何か固くて重いもので思いっきり殴られて死んだのかもな……。」


澪「……いったい誰に?」


律「……さぁ?」


……誰彼かまわずに生存者を探すのはもしかしたら危ない行為なのかもしれない。


律「……んっ?」


澪「なんだ?」


律「いや、この骸の手の下に、くしゃくしゃになった紙切れが……よっと。」


律は死体を動かさないよう、器用に紙切れを抜き取った。


律「……、」



澪「……なんて書いてあるんだ?」


律「……いや、たいしたことは書いてないが。」


澪「……いいから見せてみろ。」


ポケットに紙切れを突っ込もうとする律を止めて、私は紙切れをひったくる。


澪「これは……。」


そこにはこう書かれていた。

 " かみさ まは
   きっと たすけ てくれる "


澪「……神頼みか。」


律「……、なぁ!私達も神に祈っとこうぜ!ほら、もしかしたら祈りが届くかもだし……」


澪「……必要ない。」


律「えっ……?」


澪「……だって、祈った結果がこれだぞ?」


澪「私もできるなら神様がババッと解決してくれたほうがいい。」


澪「でも、これ見てるとわかる通り、神様ってのは肝心な時ほど助けてくれないもんなんだよ。」


律「……あ、あぁ。悪い……。」


澪「……いいよ。私も気持ちはこの人と同じだから。」


律「……うん。」


澪「ほら、さっさとこの階を調べよう。」


    ━━━━━━━。


澪「【2階・東階段】しか無いってことは、あのバリケードでふさがれているフロアとは別の空間なんだな、ここは。」


律「そうだな、2階より格段に狭いしそれは間違いないだろう。」


澪「目立ったものと言えば、さっきの死体と……」


律「ウジ虫のわいた、何が入ってるのか得体の知れないバケツ……」


澪「後は【厠(かわや)】くらいか……」


律「なぁ、澪!」


澪「んっ?」


律「【厠】って何?」


澪「あぁ、確かトイレの昔の呼び方だよ。」


律「なーる!トイレか!ラッキー♪」


澪「どうした?行きたかったのか?」


律「そうそう、ちょっとねん♪」


律がスキップしながら女子用の厠に向かう。


    ゴゴゴゴゴ━━


律の前に姿を現したのは、そういう効果音がよく似合うくらい、真っ暗で荒れ果てた状態の不気味な女子用厠だった。


やはりここも木造で、異様な雰囲気を放っている。


律「ウッ……」


澪「わぁ……これは怖いな……」


律「な、なぁ……澪……。」

澪「嫌だ。」


律「まだ何も言ってな……!?」


澪「嫌だ……っと言いたいが、今日の律はなんだか頼りないからな。ついてってやるよ。」


律「サンキュー♪ツンデレ澪さん素敵ッ!」


澪「なっ///そんなこと言ってるとついてってやんないぞ!」


律「へいへい、すいませんでした~!」


    ━━━━━━━。

澪「……よし、何もいないし大丈夫みたいだな。」


律「でも、何でだろう?ここの個室だけ開かないなんて……。」


律が左から2番目の個室を開けようとガタガタと音を立てて引っ張る。


律「……誰か入ってんのかな?」


律「お~~~~い」ヒョイ


澪「ちょっ、り、律……」


律が扉の下の隙間から中の様子を覗きこむ。


こ、こいつ、怖がってたわりには、また考え無しなことを……。


律「んん━━━?誰かいれば足だけでも見えるかなって……」


律「…………でも、誰もいないみたいだ……。」


……やっぱり 変だな……誰も入ってないのにここだけ開かないなんて……


澪「じゃあ、立て付けが悪いってことなのかなぁ?」


律「だなぁ。他は、特に変わったところは無いみたい~~」


澪「そっか。よかったじゃないか、律。入っても大丈夫だよ!」


澪「じゃあ、私は外で待ってるからな。なんかあったら呼んでくれ。」


律「あっ、ちょっと待ってちょ~だい!」


律「澪、『アレ』持ってない?」


息を吹き掛けるようにして律が私の耳元で囁いてくる。


澪「あ……『アレ』って……?」


律「お尻の薬!塗るやつだ!」


澪「なんだ またぁ?それでトイレ行きたかったのか?」


律「うん……最近なんかお尻の調子が悪くてさ~」


澪「普通の軟膏ならあるよ、ホラ。」


律「お━━━ さすが澪お母さん!」


澪「お母さんって……こんな大きい子産んだ覚えなんてないよ///」


律「アハハ♪ありがとなぁ!じゃ、行ってくるぜ♪」


律「イエ~~~~イ♪」


澪「もうちょっと恥じらえよ……///」


扉の閉まる音が聞こえたのを確認して、私は厠の外に出た。


澪「……なんか、嫌でもあの死体が目につくなぁ……。」


澪「他殺……なんだよな。」


澪「なぁ、あなたは誰にやられたの?」


当然、屍が答えるわけがない。


澪「……だよなぁ。まぁ、答えたら答えたで怖いし……」


澪「……あれ?」


どうやら、死体の背中に隠れて読めないが、壁に張り紙がしてあるみたいだった。


澪「なんでこんな位置に張り紙が……?」


澪「……なんて書いてあるんだろう。」


澪「……この子、動かない よね?」


私は死体をそっと脇に移動させて張り紙を読む。


 "お前たちは 本当は   お互いが 嫌い
   いすれ 殺し合う゛

澪「……殺し合う?まさかこの子……友達に……?」


もし、そうだとしたら律と一緒にいる私だって殺し……


澪「……なに考えてるんだバカ澪!」


澪「私達が殺し合いなんてするわけ無いじゃないか!」


澪「それに、ここにはお互いが嫌いって書いてある!私達には当てはまらない!!」


澪「……そうだよな、律……?」


自然と厠に目が行く。
律はまだ出てこない。


澪「……一人はやっぱり心細いな……」


澪「いったい、なんでこんなことになっちゃったんだろ?」


   オネエチャァン━━━━


澪「……!?今の声、あれは……?」


 ウッ……グスッ、オネエチャン━━


澪「また聞こえたっ!間違いない、この声!」


澪「どこからだ?下の階の方から聞こえてくるのは分かるが……。」


澪「……よし、確かめに行こう!」


そう意気込んだ私は階段に足をかけて不意に足を止める。


澪「……律をそのままにしちゃまずいよね……。」


私の頭の中では、『置いていけ』とか『逃げろ』とか負の考えが渦を巻いていた。

それでも、私はそんな考えを投げ捨てて律を呼びにいった。


澪「律っ!いるかっ!?」


律「ん~~?どうしたぁ~~?」


予想してたものより、のんびりとした返事が返ってきて少し緊張がほぐれる。


澪「憂ちゃんだ!……憂ちゃんの声が聞こえた!」


律「なにっ!?本当か!?」


ジャーっと水の流れる音がした後、左から2番目の個室から律が勢いよく扉を開けて出てきた。


律「お待たせ!んで、どっから声がしたんだ?」


澪「わからないけど、ここよりは下の階みたい。」


律「よし、急いで下へ降りよう!」


私達は勢いよく駆け出した。


澪「……ところで、律。」


律「どった?」


澪「お前、あの開かない個室から出てきたけど、扉開いたんだな?」


律「へっ?そうだっけ?」


律「なんとなくあの個室に入ったんだけど……。」


澪「……そっか(やっぱり立て付けが悪かっただけなのかなぁ)?」


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最終更新:2011年06月15日 03:11