【2階廊下】


澪「2階まで降りてきたはいいが……」


律「どっちに行けば憂ちゃんにあえるのかわかんない……。」


澪「……まだ調べてないところあるし、ひとまず先に進んでみよう。」


律「先に進むって……憂ちゃんを探すんじゃないのか!?」


澪「いや、探すよ?
だが、探すにしても手がかりがないんだから、校舎のまだ見てない所を巡りながら憂ちゃんを探した方が色々と効率がいい。」


律「そ、そっか。悪ぃな!なんか憂ちゃんは後回しみたいに聞こえたからさ……。」


澪「バカいうなバカ律。私だって、何よりも早くみんなの無事を確認したい……」


?「だからって……じっとしてなんて居られません! どいて」


律「うぉっ!?今の声って!?」


澪「……さわ子先生だ!すぐそこから聞こえたぞ!」


律「あの教室だ!急ぐぜ!」


澪「あぁ!」


    ━━━━━━━。


澪「この教室って……」


律「【2のAの教室】の隣みたいだな……。」


澪「なぁ、律……」


律「おう……」


澪「こんなとこに教室ってあったか?」


律「私も今同じことを思ってた……。……【3のAの教室】か。」


澪「……でも、ここで声がしたよな?」


律「あぁ、それは間違いないよ……あれっ?鍵かかってる?」


澪「鍵?」


律「さわちゃん!さわちゃ~~ん!いたら返事しろぉ!」


律が扉をドンドンと叩く。ずいぶんと乱暴なノックだ……。


律「……いないみたいだな?」


澪「鍵か……なぁ、もしかしてこの鍵あわないかな?」


律「あぁ、あのどこのか分からない【不明の鍵】か……ちょうどいいし、試してみようぜ!」


澪「うん……。」


私はポケットから鍵を取り出して、鍵穴に差し込んだ。


なんだろう……さっきからするこの胸騒ぎは。


      カチャリッ


澪「……開いちゃった。」


律「おぉ!やったじゃん、澪!さっそく入ろうぜ!」


澪「あ、あぁ……。」


律に急かされて私は扉に手をかけた。


澪「うっ……」


律「今度はなんだ!?」


澪「な、なんか今 一瞬だけ胸を押し潰されたような痛みが……」


澪「やっぱり……ここ入るの……止めないか?」


律「えっ?でも、さわちゃんがいるかもしれないんだぜ?」


律「それに、この鍵は私達に必要だって言ってたろ?」


律「だったら、この部屋に何か大切なことが隠されてんじゃないか?」キラリ


澪「それはそうだけど……」

律「ほらっ、ぐちゃぐちゃ言ってないで入るぞ!」ガラッ


澪「ちょっ……うん。」



【3のAの教室】


この教室は、教室内の半分ほどがもうすでに床が崩れていた。
地震の影響をもろに受けたのか、今まで見た教室の中で一番荒廃としており、不穏な空気が流れている。


律「さわちゃ……やっぱり、いないな。どこ行っちゃったんだろう?」


澪「いや……いないって決めつけるのは早いかもしれない。」


澪「……あれを見ろ。」


律「うっ……また骸骨……。って、もしかして……さわ……ちゃん……?」


澪「と、とにかく調べてみよう……。」


私達は死体を調べた。


律「おっ、名札発見!えっと……愛知 心さんだって!」


澪「先生じゃないのか……。」


私はホッと安堵の息をもらした。
間違いなく、人が死んでいるというのに、それが知り合いのものじゃなかっただけで安心できる自分に少し畏怖の念を抱いてしまう。


律「……目立った損傷も血痕もないところを見ると、ガス殺かな?」


律がそれに手を合わせながら私に訊ねてくる。


澪「……いや、ここにガスが充満してたなら私達も、もう何かしらの症状が出てるはず……。だったら、ガス殺よりは、餓死の方が可能性は高いよ。」


澪「餓死……餓死か……。そういえば、ここに来てから何も食べてない……。」


澪「私達、いつここを出られるんだろう……?」


水も無いし、もしかしたら私達に残されてる時間って24時間もないんじゃ……。


律「……大丈夫!その内みんなで脱出できるって!」

澪「そうだといいけど……。あれっ?」


律「どうした?」


澪「この子……床に何か書き残してるぞ!?」


床には強引に爪で引っ掻いて書いた文字が見えた。


律「ホントだ!えぇっと……なになに?
"奥にある新聞紙を絶対に読んではいけない"……?」


澪「うっ……(また胸に痛みが……)」


澪「な、なぁ。もう出よう……?やっぱりここなんか変だよ……。」


律「えぇっ……?
でも、気になるなぁ……あの新聞紙……」


律「……やっぱりちょっとだけ見てみるよ!」ダッ


澪「あっ!?おい!」ダッ


律「なぁんだ、結局澪もついてくるんじゃん!」


澪「……、」


律「じゃあ読むぞ♪」


■天神町奉知新聞■
【 児童四名 連続誘拐・殺害事件 速報 】


我が町の誇る学び舎『天神小学校』に於いて、忌むべき犯罪が勃発した。

ここひと月の間に、町内で多数発生していた『連続児童失踪事件』は当局の調査の結果、

急転直下 最悪の形で解決へと向かった。

昭和四拾八年九月拾八日
午後七時、同校内にて失踪中の児童たちの亡骸と

血の付いた鋏み(はさみ)を持ち放心している教員一名を発見、これを確保した。
遺体は全て、舌が*り取ら*ており、***を凶器*定*


律「下半分がちぎれていてこれ以上は読めないな。」

澪「……ひどい事件。」


律「そういえば何か、昔 そんなことがあったって聞いたことがある……」


澪「私達が、まだ生まれてなかった時代の話だからよく知らないけどね……」


       ガチャリ


澪「……!?」


律「扉が勝手に閉まった……!?」


……今度は何が現れるんだ?
赤い少女か?犠牲者か?
私は思わず身構えた。


………………━━━━━━━━━━━━、、、?


澪「何も現れない……?」


律「……よかったぁ!さぁ、こんなとこさっさと出て━━」


       ガチャリ


澪「あぁ、そうだな。さっさと出よう━━ってどうしたんだ?さっさと扉開けてくれよ?」


律「あの……その……澪さん?」


澪「なんだ……?」


律「扉……開かない……」


澪「なにっ!?」


私は律を突き飛ばして扉の前に立ち、開けようと試みた。


      ガチャリ


やはり、律の言う通り扉はピタリと空間に固定されて開かない。


澪「(この感じ……窓や玄関扉と同じ感覚。)」


澪「閉じ込め……られた。」


瞬間、私の頭の中にさっきの餓死死体が浮かび上がった。
もしかしたら、愛知さんも新聞紙を読んで閉じ込められたのかもしれない。
そして、他に犠牲者が出ないようにするために書き置きを……


澪「……私達、もう出られない……」


律「うぅ……どうしよう」


澪「……っていうかさぁ……」


律「えっ?えっ?」


澪「あぁもう……!もとわと言えばお前の……」


        ガチャリ
      ジジッ━━


私が律を責めようとした時、教室の天井に設備されている蛍光灯が音を立てて一斉につき、さらに先程までビクともしなかった扉がまた独りでに開いた。


澪・律「……!?」


私達は猫に追われた鼠の如く足早に【3のAの教室】を後にした。


    ━━━━━━━。


律「ああ びっくした~、」


澪「……はぁっ」


律「……あれ……?な、無い……無い!」


澪「……なにが?」


律「憂ちゃん達から貰った 紙人形の切れ端……」


律「幸せのサチ子さんのお守りが……ない。」


澪「あぁ……あのおまじない?」


澪「……私のは、学生証入れに入ってるけど。」


律「くそー…… あの時、ポケットに入れたせいかな……」


澪「スグ ちゃんとしまわないからだよ……」


律「しょんぼり……。」


澪「……何か心当たりは?」

律「心当たりかぁ……あっ!?」


澪「心当たりあるのか?」


律「ほら、【2のAの教室】で私、澪と一緒に転んじゃったじゃん?」


律「もしかしたら、あの時に落としちゃったのかも……。」


なるほど、一理ある。
だけど……、


律「私、見てくるよ!」


澪「やめとけ、あそこまだあの女の子がいるかもしれないし……」


律「ヘーキヘーキ♪」


律「ちょっと行って見てくるだけ!澪は足痛そうだしここで待っててくれ!」


澪「ちょ……律っ!」


澪「待てよ……私も一緒に……」


澪「痛ッ……また足が……。」ズキッ


痛みのあまり目をギュッと瞑り、思わず足を手で抑えてしまう。
そうこうしてる間に律は【2のAの教室】に入って行ってしまった。


澪「くそっ、ホントに幽霊がいたらどうすんだよ……。」


澪「これだから律は……」


 "お前たちは 本当は   お互いが 嫌い
   いすれ 殺し合う゛

澪「……、」


澪「……しょうがないな。怖いけど……放ってはおけない。」


私は律の後を追って、再び【2のAの教室】に足を踏み入れることにした。


     ━━━━━━。


  【2のAの教室】


教室に入るなり、律はすぐに見つかった。
何やら、黒板を携帯の光で照らしてボーっと見つめている。


澪「……律!」


律「あっ、澪……ちょっとこれ見てくれ。」


不安そうな顔をしている律。
それは、3秒後の私の顔でもあった。


澪「な、なんだ……これ?」


黒板には何やら、チョークで落書きが施されていた。

あまり上手い絵では無いから具体的には説明しにくいが、どうやら鋏みを持った男一人と子供4人が何かをしている絵のようだ。


律「あの女の子の幽霊が描いたのかな……」


澪「分かんない……でも、子供が書きなぐったような絵だし、唯達ではないと思う……。」


澪「それにこの絵……なんだか嫌な感じ……。」


なんでこんな落書きを……もしこれを書いたのがあの幽霊だとしたら、あの女の子は一体何者なんだ?


律「……あっ!?」


澪「どうした?紙人形の切れ端が見つかったのか?」


律「……いや、そうだと思ったんだが、どうやら違ったみたいだ。だが、おもしろい物見つけたぞ。」


律が脚が一本抜けている机から何かをつまみ上げた。


澪「……これはっ!?」


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最終更新:2011年06月15日 03:13