卒業二ヶ月前

唯「ほえ~」

梓「この人は相変わらず……もう」

梓「ちゃんと練習しましょうよ!」

律「まぁまぁ、暖をとってからな」

梓「そんなこと言って昨日もサボったじゃないですか!」

澪「とはいえ文化祭も終わったしな……」

紬「ライブが無いと……モチベーションが、ねぇ?」

梓「澪先輩にムギ先輩まで!」

唯「でも卒業ライブが出来ないのは残念だねぇ」

澪「私達だけが卒業するわけじゃないからな。式の独占は良くない」

梓(そう……このメンバーで出来るのは、あと僅かなのに)

律「ぶっちゃけ私らがどうこうより、来年を心配しろよ梓」

梓「え?」

律「え? じゃなくてさ、来年は梓一人になるんだから放って置いたら廃部だぞ?」

梓「あ……」

澪「忘れてたのか……」

唯「も~あずにゃんたら、うっかりにゃんなんだから~」

梓「そ、そんな事はどうでもいいんです! 今は練習しないのが問題です!」

紬「落ち着いて梓ちゃん、ほら美味しいケーキよ」

梓「ケーキ……」

梓「って! 誤魔化されませんよ! 練習、練習です!」

唯「ぷー」


♪♪♪

唯「ふわふわた~いむ♪」

梓(唯先輩……信じられないくらい上達してる)

梓(他の皆さんだって……)

梓(後一年……後一年だけで良い、放課後ティータイムの演奏を続けたい!)

澪「……梓!」

梓「ふぇ!?」

澪「何をボケっとしてるんだ?」

律「言い出しっぺがだらけてどうすんだよ」

梓「す、すいません!」

紬「うふふ、そういう時もあるわよ。じゃ、もう一回最初からね」

律「あいよー、1,2,3,4!」


唯「疲れた~もうだめ~」

律「右に同じ~」

澪「ったく!」

紬「でも確かにそろそろ下校時刻ね」

梓「あ、だったらもう一曲だけ……」

律「悪い、帰って勉強しないと」

梓「律先輩が!?」

律「酷い反応だなおい」

澪「ギリギリまで進路決めないから今更焦るんだよ」

律「大学に一人じゃ不安だって泣いてた奴は誰だっけ?」

澪「う、うるさいな!」

紬「うふふ」

梓「じゃ、じゃあ唯先輩……」

唯「ん? 良いよ」

梓「はい!」



帰り道!

梓「すいません、付き合わせたみたいで」

唯「良いよ~どうせ帰っても暇だし」

紬「じゃあ私はこっちなので」

唯「ばいば~い」

梓「お疲れ様です」

テクテク

梓「唯先輩は来年からどうするんですか?」

唯「華の女子大生! それも芸術大学だよ!」

梓(一芸入試の幅が広がったとはいえ、ギター一本で大学合格って凄い)

梓「やっぱり大学でバンド組むんですか?」

唯「多分ね。というか授業に組み込まれてる……って憂が言ってたよ」

梓「じゃあ……先輩達が卒業したら」

唯「放課後ティータイムは解散かな?」

梓「!」

梓「……よくそんなにあっさりと言えますね」

唯「え、だって……」

梓「先輩は嫌じゃないんですか!? 寂しくないんですか!?」

唯「嫌だし寂しいけど……皆進学先はバラバラだし……しょうがないよ」

梓「そんな言い方……」

唯「それに一生会えないわけじゃないし、りっちゃんも言ってたけどあずにゃんは来年の事を……」

梓「い、いらない!」

唯「あずにゃん!?」

梓「せ、先輩達と出来ないなら……来年なんて……後輩も軽音部もいらないです!」

唯「あずにゃん……」

梓「……帰ります」ダッ

唯「……」


……

唯「ただいま~」

憂「おかえり、ご飯出来てるよ」

唯「うん。ありがとう」

憂(お姉ちゃん元気無い?)

唯「いただきまーす」

憂「召し上がれ」

唯「パクパクモグモグ」

憂「お姉ちゃん、何かあった?」

唯「え、なんで?」

憂「なんとなく」

唯「憂には隠し事は出来ないね」

憂「ふふ」

唯「何かあった……って言うか」

唯「かくかくしかじか」

憂「梓ちゃんが……」

唯「私のせいで怒らせちゃって」

憂「ううん、お姉ちゃんのせいじゃないよ」

憂「多分、梓ちゃんが一番寂しいんだよ」

憂「お姉ちゃん達が卒業しても梓ちゃんだけは軽音部に残る」

憂「寂しくて寂しくて……どうしたら良いかわかんないんじゃないかな」

唯「でも……」

憂「うん。お姉ちゃん達が残るわけにもいかない」

唯「私もどうしたら良いかわかんないよ」

憂「う~ん……こればっかりは本人の問題だから……私より軽音部の皆さんに相談したら?」

唯「そうする」



唯の部屋!

唯「さっそくりっちゃんに電話だ!」

ピリリリリ

律『おう唯か、どうした?』

唯「今電話して大丈夫?」

律『あぁ丁度休憩中だから大丈夫だよ。巨乳縞パンスパルタ家庭教師もいないしな』

唯「澪ちゃんに言いつけちゃお」

律『おい止めろ! ……って何の用だったっけ?』

唯「そうそう、実はあずにゃんが……」

律『あー、大体わかった。どうせ先輩卒業しないでー、とかだろ?』

唯「す、凄いねりっちゃん……」

律『伊達に部長じゃないぞ!』

律『まぁ私らも可愛がり過ぎたからな』

唯「あずにゃんって温かいよね~つい抱き締めたくなるよね」

律『そういう意味じゃなくて……』

唯「?」

律『とにかく梓もそろそろ独り立ちさせなきゃな』

唯「どういう事?」

律『澪とムギは多分大丈夫として……唯、お前が一番の問題だ』

唯「え、え?」

律『お前が先輩として本当に梓が大事なら……梓に教えなきゃいけない事がある』



翌日!

梓「今日も張り切って練習しましょう!」

唯「おー!」

律「しゃー!」

澪「妙に張り切ってるな?」

唯「練習の後はケーキだよ!」

紬「ちゃんと持ってきてるわよ」

律「さすがムギだ!」

梓「結局ティータイムはありですか……」

澪「ま、順番が入れ替わっただけ良いんじゃないか」

梓「そうですね、先輩達もようやく……」



練習後

律「あー、この一杯の為に生きてるな」グビグビ

澪「どんだけ親父臭いんだお前」

紬「でも美味しそうに飲んでくれると淹れたかいがあるわ」

梓「あ、あの皆さん!」

唯「どうしたの?」

梓「卒業ライブ……やりませんか? そんな大々的じゃなくても……どこかのライブハウスで」

澪「ムギの家の系列にあったっけ?」

紬「ええ、場所は問題無いけど」

律「時間がなぁ」

梓「なんとかなりますって!」

澪「新曲は無理だろうけど、今ある曲なら……」

梓「じゅ、十分ですよ! 是非やりましょう!」

紬「でもりっちゃんの勉強が……」

律「正直キツいけどさ、最後だしたまには死ぬ気でやってみるか」

律「なんだかんだで、これでサヨナラは味気ないしな」

唯「じゃ、卒業ライブ決定だね!」

紬「場所は私に任せて」

澪「呼ぶのも先生とか和とか憂ちゃんに絞れば……なんとかなるか」

紬「解散ライブ……ね」

澪「そうか……そうだな」

唯「悔いの無いようにしなきゃね!」フンス

梓「そうですよ……最後……なんですから」

澪「ライブは良いけど、滑って最悪の空気とか作るなよ」

律「それは家庭教師の腕にかかってますねぇ、せ・ん・せ」ハァト

澪「はぁ……ダメな気がしてきた」

紬「りっちゃんなら大丈夫よ」

律「その通り!」

梓「ふふ……そうだ、親に買い物頼まれてたので先に帰ります!」

唯「まったねー」

梓「はい」

タタタ

紬「嬉しそうだったわね」

澪「よっぽどライブやりたかったんだろうな」

律「それだけじゃないだろうけど」

澪「わかってるよ」

紬「梓ちゃん……来年大丈夫かしら」

澪「先輩しかいない状況だったからな……」

律「いきなり大人になれって言われてるようなもんだからな」

律「私らが居なくなるのが不安なんだろ」

唯「あずにゃん可哀想だよ……」

律「だから最後に思いっきり甘えさせてやろうぜ」

澪「要は最高の演奏で梓に思い出を残してやるんだろ?」

紬「それが私達に出来る梓ちゃんへのプレゼント」

律「そういう事」

唯「でもその後は……」

律「言うな唯、今は卒業ライブに備えとこう」

唯「うん」

紬「何だかりっちゃん頼もしいわ」

澪「最後にやっと部長らしくなってきたか」

律「どういう意味だコノヤロー」

唯「あ、一個だけ提案があるんだけど……」ゴニョゴニョ

澪「なるほど」

紬「良いわね」

律「採用だ、唯隊員」

澪「でも時間無いぞ、大丈夫か律?」

律「言ったろ、死ぬ気でやってやるよ」

唯「りっちゃんかっこいいー!」

律「武勇伝武勇伝」

紬「デデンデンデデン♪」

澪「……古い」


2
最終更新:2010年01月17日 00:07