一週間後

律「練習だー!」

唯「おー!」

澪「勉強するぞ!」

律「よっしゃー!」

紬「休憩も大事よ」

澪「もちろん!」

唯「ムギちゃん合わせよー!」

紬「ドンと来いです!」

梓「かつてこれほど活気ある部活があっただろうか……」


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二年生の教室

梓「最近先輩達凄くやる気でね」

憂「うんうん」

梓「律先輩なんか勉強と両立してるし……」

梓「澪先輩だって律先輩の勉強見ながら自己練欠かさないし」

梓「ムギ先輩も皆に気を配りながら大変だと思う」

梓「唯先輩も昼休みに練習してるんだよ!」

憂「お姉ちゃん、家でもずっと練習してるよ」

梓「そうなんだ……ライブ、楽しみだなぁ」

憂「ところで新入生は入りそうなの?」

梓「……わかんない」

憂「力になれることがあったら何でも言ってね」

梓「うん」

梓「憂は寂しくないの? 唯先輩、一人暮らしするんでしょ?」

憂「寂しいのもあるけど、心配が上回るかな」

梓「なるほど」

憂「でも良い機会だし、お姉ちゃんを応援したいのが一番かな」

梓「そうなんだ……憂は強いね」

憂「あはは、実際に引越しの日になったら泣きそうだけど」

梓「あー、二人とも号泣しそう」

憂「そうなんだよねぇ、でも泣いたらお姉ちゃんが気持ち良く行けないだろうし、頑張る!」フンス

梓(良い妹だ……)

梓(先輩達は卒業して……)

梓(憂も唯先輩と離れる事を受け入れてる……)

梓(私も……しっかりしなきゃなぁ)



某大学入試日

律「……ゴクリ」

澪「が、ががががガラにも無く緊張してのか?」

紬「澪ちゃんの方が緊張してない?」

唯「私は入試なんて全然緊張しなかったよ」

和「自分の番まで寝てたのは前代未聞だったらしいわね」

律「……ま、ここまで来たらなるようになるさ」

澪「そそそそそうだぞ! まったく、皆に見送りまでさせて」

律(頼んだのお前だろ)

唯「りっちゃん以外は進路決まって自由登校だもんねー」

和「あんたは卒業自体を心配しなさい」

唯「う、痛い所を……」

澪「お守り持ったか? 鉛筆は? お腹痛くないか?」

律「心配し過ぎだっての」

紬「そろそろ教室入らないと、時間よ」

律「うっしゃー! 律様の出陣だ! 行ってくるぜ皆の衆!」

唯「頑張れー!」

和「あれだけ勉強してたら大丈夫でしょ」

紬「いつも通りにね、平常心平常心」

律「おう!」

澪「……」

唯和紬「ジー」

澪「な、なんだよ……」

唯「わかってるくせにー」ツンツン

和「素直になりなさい」

紬「わくわく」


澪「…………律!」

律「うん?」

澪「あの…その……あれだ……」


律「しーんぱいすんなって! 私が澪を一人にするわけ無いだろ!」グッ

澪「な、何言ってんだバカ律!」

紬「あらあらまぁまぁ」

和「妬けるわねー」

律「行って来るよ、澪。勉強見てくれてありがとな」

澪「そういうのは合格してから言え。ちゃちゃっと決めて来い」

律「うん!」


唯「りっちゃんの背中……カッコいい~! 私が女なら惚れちゃうよぉ」

和「唯、言ってる事無茶苦茶よ」

紬「でも確かにりっちゃんがあの背中で引っ張ってくれてなければ……」

澪「今の私達は無し、か」



部室

梓「律先輩に皆ついて行っちゃって……」

梓「多分そのまま帰るだろうな」

梓「……ソロパートの練習でもしよう」

ガチャ

さわ子「あれ、梓ちゃん一人?」

梓「今日は律先輩の入試ですから」

さわ子「そういえばそうだったわね」

梓「……担任ですよね?」

さわ子「まぁまぁ、細かい事は良いから、梓ちゃん一人なら丁度良かったわ」

梓「?」

さわ子「ズバリ来年どうするか、考えてる?」

梓「来年、ですか?」

さわ子「言うまでも無いけど、このままじゃ廃部よ? 梓ちゃんがそれで良いなら別だけど」

梓「それは……嫌です」

さわ子「でしょ? ある程度猶予はあるけど、対策を考えなきゃ」

梓「でも……」

さわ子「一人じゃどうしたら良いかわかんない?」

梓「……」コクリ

さわ子「それだけじゃなさそうね」

梓「……」

さわ子「全部話しなさい、たまには顧問らしい事しないとね。未来の部長の為に」

梓「私だって……軽音部を残したいです」

さわ子「うん」

梓「律先輩達が頑張って廃部寸前の軽音部を立て直したのも聞きましたし」

さわ子「そんな事もあったわねー」

梓「ムギ先輩の淹れてくれるお茶はいつも美味しくて」

梓「澪先輩は厳しいけど優しくて」

梓「律先輩がいるから皆元気で」

梓「唯先輩は……普段はあんななのに、ライブだと誰より凄くて」

梓「先輩達といると……楽しくて……」

梓「ずっとこんな時間が続けば良いなって……」

梓「でも……そんなの無理だって解ってます」

梓「頭では解ってるんですけど、納得できなくて」

梓「泣きそうです」

さわ子「それだけ?」

梓「え?」

さわ子「唯ちゃん達が卒業するのが寂しい……それが、来年に向けて積極的になれない理由?」

さわ子「私にはそうは見えないけど」

梓「……お見通しですか」

さわ子「これでもあなた達より人生経験豊富なのよ」

梓「正直に言いますが」

さわ子「どうぞ」

梓「新しい人に入って来て欲しくない……そんな気持ちもあります」

梓「新しい人……後輩が入ってきたら……」

梓「先輩達と過ごしたこの部屋や思い出が、塗り潰されていく。そんな気がするんです」

梓「怖いんです。そうやって放課後ティータイムが風化していくのが、どうしようもなく怖いんです」

梓「でも軽音部は潰したくない……それには後輩を入れるしかない」

梓「でもずっと放課後ティータイムでいたい」

梓「バカみたいですよね、仕方ない事なのに」

さわ子「梓ちゃん……」

梓「悩んでる間にどんどん時間は過ぎてくし……もうどうしたら良いかわかりません」

さわ子「そうね」

梓「……何か言ってくれないんですか?」

さわ子「言って欲しいの?」

梓「それもわかんないです」

さわ子「今の頭の中グシャグシャの梓ちゃんに何を言っても無駄よ」

さわ子「そもそも私は説教しに来たわけでもなし。話してスッキリするなら良しってとこね」

さわ子「酷な様だけど、自分で答えを出すしかない無いわね」

梓「……」

さわ子「ま、一つだけ言うなら、それだけ梓ちゃんが思ってくれてるのを皆悪い気はしないはずよ」

梓「先生……」

さわ子(ちょ! なんという上目遣い!)

さわ子「あ~、特別サービスで泣くなら胸を貸すくらいは……」

梓「……!」ガバッ

さわ子「うわ!」

梓「……グス」

さわ子(これは唯ちゃんがいつも抱き着くのもわかるわね)ナデナデ

さわ子(先輩が居なくなる事と、一人になる事、色んな不安で潰れそうなのね)

さわ子(全く、真面目な子の方が返って手が掛かるんだから)

梓「グス……ヒック……先輩……行っちゃ……やだぁ……」

さわ子「よしよし」ナデナデ


ガチャ

唯「あー! さわちゃんがあずにゃんをいじめてる!」

澪「先生、最低です」

さわ子「どうしてこうなった」

さわ子「いじめて無いわよ。ちょっと相談に乗ってただけ」

唯「……」ジー

梓「ほ、本当です!」

澪「相談って?」

さわ子「内容をバラしたら意味無いでしょ。あんたら悪口とかじゃないから安心しなさい」

梓「というか、先輩達どうして?」

紬「少しでも練習したかったから、ね」

律「ドラム……私のドラムはどこ?」ヨロヨロ

さわ子「このりっちゃんに似てる生霊は何?」

紬「入試で全エネルギーを使い果たしたらしくて……」

律「ははははは! もう私を妨げる物は何も無い!」ダダダダダダ

澪「走り過ぎだバカ!」

唯「さっきはあんなにカッコ良かったのに」

紬「緊張の糸が切れたのね」

梓「これじゃ逆に練習にならないですよ」

さわ子「梓ちゃんの言う通りよ、今日は休憩にしなさい」

紬「じゃ、紅茶でも」

唯「わーい!」

律「いーやーだー! たーたーかーせーろー!」

澪「はいはい、回復したらな」

唯「りっちゃんはこんらんしている!」

梓(なんて珍しい光景)

唯「入試の後はケーキに限りますな!」モグモグ

梓「先輩は受けてないでしょ」

律「…………zzz」

さわ子「死んでるわね」

紬「よっぽど疲れたんでしょうね」

澪「……頑張ってたからな」ボソ

さわ子「寝かしといてあげましょ」

唯「うへへへ、りっちゃん隙だらけ~」

澪「おいそのマジックは……」

唯「肉……と」

梓「しーらない」

唯「キン律マ~ン~ゴーファイト♪」


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最終更新:2010年01月17日 00:09