菫「どうかされたんですか、お嬢様。最近溜め息ばかりですよ?」

紬「いえ、何でもないの……気にしないで」

菫「そんな……何でもなくなんかありませんよ。最近のお嬢様は何か思い詰めているようで……」

紬「それは……」

紬「…………」

紬「確かに私は女の子同士の恋愛も素晴らしいと思うわ……。でもだからって……私が一番望んでいるのはみんなが仲良くしている事なのに……」

菫「?」

紬「ご、ごめんなさい!!今のは独り言よ、忘れてちょうだい」

菫「お嬢様……?」


――――

斎藤「何?お嬢様の様子が?」

菫「はい。なんだかとっても悩んでいらっしゃる様子で……」

斎藤「むむ、それは由々しき事態。一刻も早く原因を突き止めねば……」

菫「そうですよね!」

斎藤「本来ならば、私が動く所だが……菫」

菫「はい?」

斎藤「そろそろお前も付き人としての修行を本格的に始めなければいけない年頃……
    今回の件は全てお前に一任する。見事お嬢様の心を平穏を取り戻して見せなさい!」

菫「ええ!?」

斎藤「この任務を成功させた暁には代々斎藤家に伝わるダニエルの称号を授けよう!
    くれぐれもしくじる事の無いように!」

菫「は、はい!!」


~~~

菫「という訳で、桜ヶ丘高校に潜入調査にやって参りました」

菫「私の分析によると、きっとお嬢様の悩みの種はお嬢様が所属する軽音部にあると思います」

菫「というわけで、軽音部の活動場所に先回りする予定だったのですが……」

菫「軽音部の活動場所ってどこなんだろう……」


菫「とりあえず誰かに聞いてみよう」

菫「あ、あの~、すいませ~ん」

和「はい?」

菫「軽音部の活動場所ってどこでしょうか?」

和「「軽音部?たしか音楽準備室だけれども……」

菫「そ、そうですか!どうもありがとうございました!」

和「……あんな目立つ子、うちの学校に居たかしら?」

菫「あ、あの~……」

和「あら?まだ何か用?」

菫「音楽準備室ってどこですか?」

和「…………」


―――

菫「ふう……ようやく辿りつきました」

菫「なるほど、ここが軽音部の部室ですか。幸いまだ誰も来ていないようですね」

菫「ええっと……どこか隠れる場所は……っと」

菫「この倉庫みたいなところがちょうどよさそうですね!」

菫「うっ……いざ中に入るとゴミゴミしすぎ……ちょっとは整理しましょうよぉ……」

ガチャ

菫(来た!)

律「そしたら、その時聡のやつがさー……」

澪「それはお前が悪いだろ」

律「ええ~……?」

唯「あはは、聡君かわいそー」

紬「うふふ、いいなぁ、姉弟って……楽しそう!」

律「いやいや、うぜーだけだって実際」

菫(ふむ……部員の素性は既にリサーチ済みです)

菫(ええっと、確かあのおでこの人が部長の田井中律さん、ヘアピンの人が平沢唯さん、黒髪ロングの人が秋山澪さん……)

菫(今のところ、とくにおかしな点は見当たりませんが……)

菫(一体、何がお嬢様をそこまで悩ませているのでしょうか?)

菫(あ……そういえば、軽音部にはあと一人部員がいたような……)

がちゃ

菫(来た!)

梓「こんにちはー。みなさん、もうおそろいみたいですね」

菫(確か、あの人は中野梓さん……軽音部唯一の後輩……)

唯「あ、あずにゃん!」

梓「唯先輩、こんにちは」

唯「う、うん……」

梓「今日は抱きつかないんですか?」

唯「え……?あ……う、うん、そうだね」

唯「えっと……じゃ、抱きついてもいいかな?あずにゃん」

梓「以前まで勝手に抱きついてたじゃないですか」

唯「そ、そうだね……それじゃ、失礼して……」ギュ

唯「えへへへ……////」

梓「…………////」

菫(何だろう……この空気……)


澪「…………」イライライライラ

律「…………」

紬「…………」

唯「えへへ……あ~ずにゃん♪」スリスリ

梓「もう……唯先輩ったら……」

澪「…………」イライライライライライライライラ

律「…………」

紬「…………」

澪(くそっ……何なんだ……梓のやつ……唯に色目なんか使って……)

律(澪……やっぱりまだ私の事は見てくれないのか?)

紬(はぁ……)

菫(何かいきなりすごい険悪な雰囲気になってるんですけど……)

澪(始めは唯は私に懐いてたのに……)

梓「もう、唯先輩そろそろ離れましょうよぉ……」

唯「えへへ~、もうちょっと~」

澪「っ!!いい加減にしろ、お前ら!部活をなんだと思ってるんだ」

澪「特に梓、わざわざ唯にハグをねだるんじゃない!!」

梓「なっ……べ、別に私はそんなつもりじゃ……」

澪「何を言っているんだ!!お前が口に出さなければ何事もなかっただろうに!」

律「み、澪……落ち着けって!」

唯「澪ちゃんごめん!悪いのは私だからあずにゃんを怒らないであげて!」

澪「お前らは口を挟まないでくれ!!」

紬「お、お茶にしよう?ね、お茶にしよう?」

菫(…………)

澪「あぁ、もうやってられるか!!練習しないんなら私は帰るぞ!」

律「ま、待てよ澪!そうだ!澪が好きなあのバンドの新譜昨日買ってきたんだよ!だからさ、今日は家に……」

澪「そのCDならとっくに買ったよ!話はそれだけか?それじゃ私は帰るぞ」

律「お、おい澪、待てって!」

菫(なんだか壮絶です……)

唯「あ、澪ちゃん!律ちゃん!いっちゃった……」

梓「どうしましょうか……」

紬「はぁ……しょうがないから今日はお開きにしましょうか……」

唯「うん、そうだね……」

梓「あ、あの唯先輩……唯先輩まだ新曲で上手く弾けない所ありましたよね?今見てあげますよ」

唯「え、本当ありがとう!あずにゃん」ダキッ

梓「にゃ……!」

紬「それじゃ、私は帰るわね」

唯「ムギちゃんは練習していかないの?」

紬「うふふ、仲良しな二人の邪魔したら悪いからね」

梓「そ、それは……////」

唯「えへへ……////」


菫(…………)

菫「ふう……なるほど今日の調査で大体の事情は掴めました」

菫「お嬢様の頭痛の種……それはずばり、軽音部内の痴情のもつれ!」

菫「ムムム……これはなかなか厄介ですよぉ……」

菫「とりあえず現状を纏めるとこうなりますね」

 梓=唯←澪←律

菫「これの一番簡単な解法は……っと」

 梓=唯 澪=律

菫「矢印の向きを一本変えればいいだけ!簡単!」

菫「さて、現状把握と解決方法さえ分かれば後は行動あるのみです!」

菫「というわけで、取り出しましたるこの秘薬……琴吹製薬の技術の粋を集めて作られたその名も、惚れ薬 ナナリンX!!」

菫「この薬を澪さんに飲ませて律さんにホの字にさせてしまえば万事解決!なべて世はことも無しです!」

菫「そうすればきっとお嬢様の悩みも解決!」

菫「うふふ、お嬢様褒めてくれるかなぁ……?」


翌日

澪「入るぞー」

ガチャ

菫「どうもです」

澪「あぁ……何だムギだけか……いや、待てよ……」

澪「…………」

澪「誰だお前は!」

菫「きゃ、キャメロン ディアスです!」

澪「嘘付け!確かに日本人離れしてるけども!」

菫「実は私妖精なんです……」

澪「はあぁぁ……?」

菫「う、嘘じゃないですよ!?私はあなたの恋のキューピッド!」

澪「さわ子せんせーーーーー!!!!」

菫「うわわわわ!!!ま、待ってください!!!とりあえず話だけでも!」

澪「お前みたいな不審者の話聞けるか!」

菫「ま、待ってくださいよ!!あなた平沢唯さんのことが好きなんでしょう?」

澪「うっ……どうしてそれを……」

菫「キューピッドですからね!色恋沙汰は何でもお見通しです!」

澪「そ、それであんたは私の恋を叶えてくれるのか!?」

菫「当然です!」

澪「い、一体どうやって……?」

菫「簡単です!このジュースを飲んでください!」

澪「そ、それだけでいいのか?」

菫「はい!それだけで唯さんはもうあなたにメロメロです!」

澪「ま、マジか……」

菫「マジです!!」

澪「わ、わかったよ……ありがとう……」

菫「いえいえ……健闘を祈ってます!」

菫(なーんてね!実はあのジュースは飲んだ後一番最初に見た相手を好きになってしまうという惚れ薬なんですよ)

菫(今日お嬢様、唯さん、梓さんの三人はそれぞれの用事で部活に遅れてる事は調査済み!)

菫(ということはこの後一番早く部室にやってくるのは律さんです)

菫(そうなれば澪さんが律さんに惚れるのは必然)

菫(我ながら上出来です!)


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最終更新:2011年06月22日 22:25