【前編】律「にゃんこいやー」
律「なぁ~あずさー」
梓「んー…」カキカキ
律「あずさってばぁ~」ユサユサ
梓「ちょっと!?揺らさないでよ!?字がブレる!」
律「あ。す、す、すいません!?」バッ
梓「…」カキカキ
律(殴られさえ…しない…!?)
律(…さみしーし)
律「…」
梓「…」カキカキ
律「なぁなぁ」
梓「…」カキカキ
律「ねぇねぇ」
梓「…」カキカキ
律「…」しょぼーん
梓「……なに?」カキカキ
律「くじらって自分の身体の重みで死ぬらしいぞ」
梓「へー、そうなんだぁ」カキカキ
律「だからさ、旅行行こうぜ」
梓「…」ピタッ
律(おっ!やっと止まった!そのままこっち向けっ!!)
梓「まったく意味がわからない」カキカキ
律「あー…もうっ!!」
梓「?」カキカキ
律「あー、さ、いや、あのね、だから旅行行こうって誘ってんの!」
梓「くじらの話してたじゃん、さっきまで」カキカキ
律「くじらはもうどっか行きましたー。水平線のかなたー」
梓「じこちゅう」カキカキ
律「じこちゅうじゃありませんー」
梓「その語尾のばすのやめて。なんかイライラしてくる」カキカキ
律「」
梓「あと」
律「…ん?」
梓「旅行はムリ」カキカキ
律「なんで!?」ガーン
梓「いや…なんでって言われても」カキカキ
律「金ならあるぞ!?私いっぱいバイトしたから!!」
梓「いや、…お金の問題でもなくってさ」カキカキ
律「なんだよ…なにが問題だっていうんだよ」
梓「私、受験生なんだけど」カキカキ
律「はっ」
梓「いや、忘れてないでよ」
律「わ、忘れてなんかないぞ!?」
梓「はいはい、目を泳がせないで」
律「ぐぅ~~」
梓(あ、今の顔かわいい)
律「いいじゃん、いいじゃん。お前頭いいんだし。2、3日くらい休んでも大丈夫だって」
梓「そりゃたしかに。私、律より頭いいけどさ」
律「おい」
梓「こないだの模試もちゃんと合格圏内には入ってるけど」
律「ちょっと待て。それは聞いてないぞ」
梓「うん。今初めて言ったから。すごいでしょ?」フフン
律「うん…すなおにすっごいです…」
梓「というわけで、旅行はムリです」カキカキ
律「いやいやいやいや。ちょっと待って。お待ちになって梓さん」
梓「あー!もー!!」
律「どうしたいきなり牛になって」
梓「りつー、勉強の邪魔しないでよー!!」
律「せっかく会いに来たのにこの言い草!?」
梓「だって、律が勝手に会いにきたんじゃん…今日会う予定じゃなかったのに」
律「…」
梓「いつも平日は部活と律の話相手でちゃんと勉強できてないから、
休日の今日くらいはちゃんとしようと思ってたのにさ」
律「…」
律「…わかったよ…勉強の邪魔してごめん…」スッ
梓「あ…(ちょっと言い過ぎたかな。帰っちゃう…?)」
ガサゴソ
梓「ん?」
律「寝るから、ひと段落ついたら起こして」ゴロン
梓「…私のベッドなんだけど」
律「うるせー勉強しろおやすみ」
梓「…」
梓「おやすみ…」
律「…」スヤスヤ
梓(バイトで疲れてるのかな?)
梓「…私も勉強がんばろう」ヨシッ
―――――
ペラッ
ペラッ
律「…あ、そだ」
ガサゴソ
律「へへへ…いつもは嫌がって撮らせてくれないからな」
パシャ
律「…うん。…やっぱ、かわいいじゃんか」
律「保存、保存っと…」ピッピッピ
梓(…ん、なんかまぶしかった…)
ペラッ
律「うむ~」
梓(あれ…律がいる…なんで…?夢…?)
律「ここじゃないんだよなぁ~」ペラッ
梓(夢だよね?いつも会いたくても会えないんだし)
律「…お!ここいいかも!!候補候補!!」オリッ
梓(…りつ…どうせ夢だし抱きついちゃえ)
ぎゅぅうううう
律「うへ!?」
梓「えへへ~~、りつぅ~~会いたかった~~」
律「え!?あ、あずさ!?いきなりどうしたんだ!?」
梓「会いたかったぁよぉ」ぎゅううう
律「え?あ、う、うん。私も会いたかった…って、うん!?」
梓「ん~~~」
律(え?なにこれ!?ほんとになにこれ!?)
律(起きたら梓が机に突っ伏して寝てたから
ベッドに寝かしてその横で旅行雑誌みてただけなんだけど)
梓「すき」
律「…へ?」
梓「大好きだよ~、りつ」ぎゅうう
律「うっ…っはぁ///」カァア
律「ちょ、ちょと!?あずさぁ!?こ、これ以上抱きつかれるとなんというかりっちゃん正気が保てなくなってやばいんですけど!?///」
梓「ん~~あったかーい」モゾモゾ
律「いや、いやいや、背中に腕回すなよ!?み、密着度が上がってるって!?///」
律「ってか、もしかしてこれって遠まわしに『もういいよ』みたいなこと言われちゃってる!?」
梓「ん~~♪」
律「…ってそれはないか」
律「梓が高校卒業までダメってあれほど言ってたしな…」
律「…寝ぼけるほど、疲れてるのかな?」チラッ
律「おーい、おーい、あずさやーい」ユサユサユサ
梓「ん~なに~りつぅ~~、夢の中くらい自由にさせてよぉー」
律「いや、夢じゃないからこれ。私、今ここに存在してるから」リアルリアル
梓「ん~…」
梓「・・・・・・・へ?」ガバッ
律「お、おはよ~あずさぁ」ハハハ
梓「え?…え?あれ?夢だよね?あれ?」
律「いや…お前私が部屋に遊びに来てるの忘れたのか?」
梓「」
律「…」
梓「あ」
律「お前が机で寝てたからさ、ベッドに運んだんだよ…」
律「疲れてるみたいだな…いつもちゃんと寝てるか?」
梓「」
律「おい、なんかしゃべれよ…てか、そろそろ離れてほしいんだけど」
梓「」
律「話すか離すかしてくんないと、襲っちゃうぞ~」ガオー
梓「う」
律「う?」
梓「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
どんっ
律「おわっ!?」
梓「うわああ恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!私とんでもないこと口走った」
律「いきなり大声だすなバカ!!びっくりするだろ!!
あと、私をぞんざいに扱うな!」
梓「うああああああ!!恥ずかしい恥ずかしい!!消えたい!!今すぐ灰になりたい!!」
律「あぁ…たしかにお前の性格だと恥ずかしいな、あれは。
でも、それでも私は梓に生きることをぜひお願いしたい」
梓「うわああああん!!!」(枕エコー中)
律「まぁ…しばらくはそうして枕に顔突っ伏しとけよ…そっとしといてやるから」
梓「ああああん!!!さっきの私きえろ!!きえろぉおおおお!!!!」(枕エコー中)
ペラッ
ペラッ
律「あーここもいいなぁ。しるし、しるしっと」オリッ
梓「」
律「…」
律「…おーい、そろそろ枕から頭あげろよ。放置プレイはさみしいんだぞー?」
梓「ん"ー、りつぅ~」モゾモゾ
律「たはは…、ばっか、お前…なんて顔してんだよ」
律「顔真っ赤じゃん」
梓「…だって」
律「ん?」
梓「幻滅…してない?」
律「なにが?」
梓「…あんなこと言っちゃって…」
律「あー…たしかにな。梓に『好き』」だなんて久しぶりに言われたよ」
梓「…そんなことないと思うけど」
律「…まぁ、べつにいいけどな」
梓「うれしい?」
律「当たり前でしょ」
なでなでなで
梓「えへへ…頭なでられるのすき」
律「それは奇遇だな。私も梓の頭をなでるのが好きだよ」ナデナデ
梓「…ねぇ」
律「ん?なに?」
梓「りつと…もっと一緒に居たい…」
律「…え?なに…さっきので頭おかしくなった…?」
梓「…なんで?」
律「なんでって…そんなこと普段言わないじゃんか」
梓「…そうかな?」
律「そうだろーが。私の声聞きゃ『ばか』『でこ』言いまくりやがって」
梓「だって」
律「なんだよ」
梓「つよがんないとさ、律の悪口言ってないとさ、寂しくていろいろ嫌んなっちゃうんだもん…」
律「…」
律「…そっか」
梓「うん。そうだよ。だから、毎日電話してても全然たんないんだよ?本当は」
律「あぁ…うん。そうだな…それは、まぁ、その…私も同じだよ」
梓「ほんとう?」
律「本当だよ。電話、毎日してるけど…って言っても私がバイトで遅いときはメールで終わっちゃうけど!」
律「何回してもさ、なれないよな、電話切る瞬間のあの寂しい感じは、さ」ハハハ
梓「うん…律も?」
律「おう。寂しくてたまんないよ。梓の声聞いた後で1人であの部屋に残されるのは」
梓「…」
律「だからさ、たまには一緒に、本当に1日中ず~~っと2人で一緒に居たいな、って思って」
梓「だから、旅行?」
律「そゆこと」
梓「…旅行かぁ」
律「だめかな…?」
梓「…変なことしない?」
律「するわけないじゃん。こんなに拒まれるのだって、梓に考えがあるからっしょ?」
律「なに考えてるのかはしらないけどさ」
梓「うん…まぁ…」
律「それなら、手だせるわけないじゃん」
梓「でも、たまに胸さわる!」
律「それはあれだ。手が重力に負けて、その落下地点がたまたま梓の胸なだけだ」
梓「なに言ってるの?」
律「うん、ほんとになに言ってるんだろうって自分でも今思ったからツッコミはなしでお願い」
梓「…ったく」
律「で、旅行、どうっすか!?」
梓「どうって言われてもなぁ…」
律「さっきも言ったけど、バイトしてお金はたくさん余ってるから費用は全部こっちもちでいいぞ!」
梓「え…いや、なんかそれは悪いよ。律が自分で働いて稼いだお金なんだから自分のために使いなよ」
律「なに言ってんだよ。だから、旅行費に使うんだよ」
梓「…なかなか恥ずかしいことをいうね、キミは」
律「自分の気持ちに正直なだけです」
梓「言うようになったね」ヨイショ
律「うるせぇ。お前は生意気すぎる!!あとなんでカチューシャとってんだ」
梓「最近カチューシャしてるとこしか見てないから」
律「あぁ…たしかに、最近ずっとつけてるかも」
梓「私と律は対等じゃなきゃ意味がないんだよ」
律「それ、いまいち意味わかんないんだけど。あと対等ならこれもとっていいよな」ホドキホドキ
梓「また結ぶのめんどくさいんだけどなぁ…」
律「まぁまぁまぁまぁ!いいじゃんいいじゃん!!」ヘヘッ
梓「…ゴムちゃんと置いといて」
律「ん」
梓「…わかんないならわかんないでいいからさ」
律「ん?」
梓「いつまでも、傍にいてね?」ギュ
律「…おう。まぁ、それはこっちのせりふだけどな」
梓「え?なんで?」
律「あたりまえだろ。お前ふつーにかわいいんだから。
いつぞやも一緒に街歩いてて、どっか行ったと思ったら、なんか変な男に囲まれて困ってるしよ」
梓「だ、だって、あれはそのっ!!
律が歩くの速くてさっさと行っちゃうから…そしたら声かけられて…」
律「あー、思い出したらむしゃくしゃしてきた」ガシガシ
梓「ご、ごめんっ」
律「じゃあ、旅行行こうな?」
梓「え…それとこれとは別…」
律「な?」
梓「…」
梓「…いいよ」
律「ほんと?」
梓「うん…その、私も行きたくなってきた。律と旅行」
律「うわぁーー、なんだかうれしいな!!旅行いけるのかぁ!!梓と!!」
梓「へへ…うれしい?」
律「おう!!よし、そうと決まったらさっそく…!!」ドン
梓「あ、旅行雑誌…」
律「どこ行くかこれ見て決めようぜ~♪」
梓「てか、ちょっと待って」
律「ん?なんだよ。ほら、梓も見てみろよ。いいとこいっぱい載ってるぞ?」
梓「この雑誌、…ちょっと角折りすぎじゃない?」
律「ん?これ?あぁ、ドッグイヤーっていうんだよ。梓知らないの?」
梓「いや、知ってるけど。これ、雑誌のほとんど折られてるじゃん」
律「あぁ、うん。だな。見てたら行きたいとこいっぱいあってさ~」
梓「…そんなに楽しみ?」
律「そんなに楽しみ!」
梓「そっか。ならいっか」
律「ん?なにが?」
梓「ん~ん。なんでもないよ」
律「そか。あ、梓!!これみてこれ!!シャチが見られるんだって!!ここの水族館!!」
梓「シャチかぁ~~、私はイルカが見たいなぁ~~」
最終更新:2011年06月26日 21:59