【後編】 梓「ドッグイヤー」
律「なぁ~あずさー」
梓「んー…」カキカキ
律「あずさってばぁ~」ユサユサ
梓「ちょっと!?揺らさないでよ!?データ消える!」
律「あ。す、す、すいません!?」バッ
律「…って揺らすだけでデータ消えるわけないだろ!!」
梓「うん。だね」カタカタ
律(相手にすら…されて…ない…!?)
律(…さみしーし)
律「…」
梓「…」カタカタ
律「なぁなぁ」
梓「…」カタカタ
律「ねぇねぇ」
梓「…」カタカタ
律「…」しょぼーん
梓「……なに?」カタカタ
律「うさぎってさみしくて死ぬらしいぞ」
梓「へー、そうなんだぁ」カタカタ
律「だからさ、旅行行こうぜ」
梓「…」ピタッ
律(おっ!やっと止まった!そのままこっち向けっ!!)
梓「まっっったく意味がわからない」カタカタ
律「…」
梓「…」カタカタ
律「まちぼうけーまちぼうけーある日せっせとのらかせぎぃー」
梓「…」カタ…カ、タ
律「そこへうさぎが飛んで出て…ころりころげた…木の…ねっ…あー…もうっ!!」
梓「?」ッターン!
律「あー、さ、いや、あのね、だから旅行行こうって誘ってんの!」
梓「うさぎの話してたじゃん、さっきまで。てか、歌うたってたじゃん。そのまま歌ってなよ」カタカタ
律「うさぎはもうどっか行きましたー。ころげましたー」
梓「ころげたっていうか、まぁ、首の骨折ちゃって死んじゃうんだけどね、うさぎ」カタカタ
律「」
梓「…」カタカタ
律「…」
律「…お茶のむ?」
梓「…」コクン
律「こういうときだけ反応しやがって…調子のいいやつめ…」ッタク
律「ええぇ…っと…、今、紅茶の葉っぱ、なにがあったっけか…」トタトタトタ
梓「…」
梓(…旅行かぁ…)
梓(2年前は結局、行こうとしたけど律が風邪ひいていけなかったんだっけ…たしか)
梓(・・・…あれも2年前のことなんだ…)
梓(時間って過ぎるのはやいなぁ…私ももう、大学2年生か…せわしない2年だったな、なんか)…カタカタ
梓「…」カタ、タ
梓(最近、青空見てないなぁ…)カタカタ
梓(まぁ、学期末のレポートに追われてるからしかたないんだけどね…)カタカタ
梓(…でも、これが終わったら…)チラッ
律「まちぼうけぇ~♪」トタトタトタ
律「ん?なんだよ、人の顔みて」
梓「えっ!?あ、ううん!な、なんでもないっ!!」
律「?…まぁ、いいか。ほれ!これ飲んで効率あげろよっ!!」スッ
梓「うん、ありがとう」
律「・・・」
梓「?なに?律こそ人の顔みて」
律「いや?なんでもないっ!」ヨイショ
梓「変なの」フーフー
律「お前に言われたくないね」フーフー
梓「うっさい」ゴクッ
律「・・・」ゴクッ
梓「・・・!」
梓「あれ・・・こんな紅茶うちにあったっけ・・・?なんかはじめて飲むような・・・」ゴクッ
律「うまい?」
梓「うん・・・おいしい」
律「それはよかった。こないだ出かけたときに紅茶専門店みたいなとこで買ってきたんだ」
梓「へ~、そうなんだ。てか、そんな店近くにあったの?」
律「うん、ちょっと遠かったけどなかなかいい店だったよ」ゴクゴク
梓「そうなんだ・・・」ゴクッ
律「なんか珍しい紅茶がたくさんあってさ。この紅茶もその1つで、四葉のクローバーの紅茶なんだってさ」
梓「四葉のクローバーねぇ・・・、たしかに飲んだことないな・・・」
律「…でも、うまいな」ゴク
梓「うん」ゴク
律「へへへ・・・、っと、もうこんな時間か・・・バイト行かなきゃ」ドッコイショ
梓「あ…」
律「ん?まぁ、邪魔者は消えるんでしっかりレポート仕上げとけよぉ!!」ニシシ
律「今日はあんま遅くならないで帰れると思うからっ」
梓「・・・あ、う、うん。じゃあ、バイトがんばってね。私もレポートがんばる」
律「おーう。じゃ、いってきます」
梓「うん、いってらっしゃい」
バタン
梓「・・・てか、律ってレポートとかないのかなぁ・・・してるとこみたことないけど・・・」
梓「まぁ、3年生だし、そういう授業はもうないのかもね」
梓「…よしっ!!人のことよりまずは自分のことだ!!レポート残り3本がんばるぞー!!」オー
―――――
梓「・・・お、おわっ・・・た・・・」グッタリ
梓「一晩で3本とか、・・・やればできるじゃん・・・わたし・・・へへ・・・へ」
梓「・・・多少、むりくり文章つなげたり、文章の最初と最後で言ってること違ったりして、
まっしろに燃え尽きた感はあるけど・・・」スッ
梓「・・・へへへ・・・りつ、喜んでくれるかな・・・?」
梓「・・・よし」ペラッ
梓「・・・ふむ・・・ふむ・・・」ペラッ
梓「・・・あ、いるか。それにシャチも!!」オリッ
梓「・・・ふむ」ペラッ
―――――
バターン
律「ただいまーーー!!」
梓「あ、お、おかえ、り・・・りつ・・・」
律「ん?ど、どうしたんだ、お前そんなに息絶え絶えで・・・」
梓「・・・ちょっと、限界点突破しちゃったというか・・・へへ」
律「?」
梓「ねぇ、りつ」
律「ん?なに?てか、お前晩御飯食べた?なんか・・・出かけたときとあんま部屋の様子が変わってないような気がするんだけど」
梓「旅行いこ」
律「腹減ってるならなにか作ろうか?たぶんチャーハンくらいなら材料あると・・・」
梓「あ、じゃあ、チャーハン食べたい。今日昼から何も食べてないから」
律「おっけ~、なら、すぐ作るなぁ~」ガサガサ
梓「はーい」
律「♪~~」ガサガサ
律「・・・ちょっと待て」ピタッ
梓「?」
律「今なんつった?」
梓「旅行いこうって言った」
律「・・・」
律「・・・」
律「・・・っつえ!?」
梓「なんて声だしてんの・・・」
律「旅行って・・・!?えっ!?旅行!?梓が!?1人で!?」
梓「なに言ってんの。1人でなわけないでしょう。
あなたと行くんです。ほら、これを見なさいっ!」スッ
律「うん?」
律「あーー!!旅雑誌っ!!」
梓「えへへー、もう行きたいとこたくさんチェックしてるからねー」
律「え・・・、な、なんで急に!?」
梓「急にじゃないよ?ちゃんと計画してたんだから」
律「え、え、え?てか、お前、レポートは!?」
梓「まぁ、予想外の授業で思わぬレポート提出があったから余裕で計画狂ったけど、
もうそれも終わらせたし、大丈夫」
律「・・・」
梓「・・・あ、あれ?黙らないで何か言ってよ?」
律「・・・梓」
梓「なに?」
律「私は今・・・猛烈に感動しているぞ~~~」ガバッ
梓「うわっ!?」
律「へっへ~~、まじかーそうかー!!うわー梓と旅行いけるのかー!」ギュウ
梓「ちょ、ちょっと!くるしい!くるしい!?」
律「あ、す、すまん。うれしくてつい」ユルメ
梓「ったく・・・そんなにうれしい?」
律「あたりまえじゃないですかー!!」エヘヘ
梓「・・・そっか、ならよかった」エヘヘ
律「ん~~・・・そっかそっか~旅行かぁー旅行かぁー♪」
梓(なんかすっごい浮かれてる・・・・こんな律、久しぶりにみたかも・・・)
律「あ、雑誌見せて!見せて!!」
梓「あ、うん。はい」スッ
律「お、さんきゅ~。あ、ページ折ってるな、・・・えと、あれ?これってなんていったっけ?たしか動物の名前だったよな・・・」
律「にゃんこいやー?」ダッケ
梓「ドッグイヤー!」ダヨ
律「あぁ!!そうだったそうだった!!ドッグイヤーだ!!」
律「・・・それにしても、あずさ、結構おったな・・・大概ページの端折ってるじゃん」
梓「・・・いいじゃん、別に・・・なんか、どこ行こうって考えてたらいきたいとこたくさんあってさ・・・」
律「へへ、だよな。これって、どこいこうかって、考えながらページ折るの楽しいんだよな」
梓「・・・どこいきたい?」ペラペラッ
律「ん~~、どこがいいかなっ・・・、このページの折られてるとこ・・・・あ、いるか!いるかみたいな!!」
梓「そうなんだ。イルカいいね!!」
律「あ…シャチがいる!!梓!!ここ、シャチがいるよ!!」
梓「そうなんだ~、シャチがいるんだねぇー」ヘェー
律「おう!うれしいな!シャチ見たかったんだよな、シャチ!!でもって次は~次は~~」ペラペラペラッ
梓「・・・えへへ」
律「ん?どした?あずさ」
梓「んーん、なんでもなーい!」
旅行前日
律「♪~~」
梓「すっごい楽しそうだね」
律「おう!明日は旅行だからな!!楽しみすぎて今日は練れないかもっ!!」
梓「いや、そこは寝ようね、ちゃんと」
律「あったりまえだろ~~♪」ハッハッハ
梓「うわー、テンション高くてちょっとついてけないなー」
梓「とりあえず・・・テンション高いまんまでもいいんだけど、そろそろ寝ないと明日起きれないよ?」
律「だな~♪電車の時間も早いし・・・そろそろ寝るかっ!!」
ピリリリリリ
律梓「ん?」
律「あ、私のケータイだ」
梓「こんな時間に誰から?」
律「誰だろう・・・あ、唯だ!」
梓「?」
ピッ
律「もっしー、どうしたゆいー」
唯『りっちゃーーん!!たすけてぇええええええ!!!!』
律「は?いきなりどうしたよ、お前」
唯『レポートが終わらないよぉおおおお!!!!』
律「…」
律「・・・レポート…って?」
梓「・・・」
唯『え?りっちゃん忘れたの?水曜日の1コマ目のやつ。
あれ、学期末のテストない代わりにレポート提出だったじゃん!』
律「え・・・」
唯『・・・もしかして、りっちゃん忘れてた・・・?というか、私もさっき思い出したんだけどね!!』
律「いや、そこはお前いばれないだろ・・・ははは・・・つ、つーかさ、ゆい!」
唯『なに?』
律「そのだな、ものすごい、嫌な予感しかしない上であえて聞くんだけどさ・・・・」
唯『うん』
律「そのレポートの提出って・・・もしかして・・・」
唯『明日だよ』
律「」
律「」
律「」
梓「・・・りつ?どうしたの?」
律「・・・どうしよう、あずさ・・・」
梓「え?なに?唯先輩、またなにかやらかしたの?」
唯『ちょっと!?あずにゃん!!「また」ってなに!「また」って!!ちゃんと聞こえてるよっ!?』
梓「あっ!?・・・ちょっと、りつ、かして」
律「あ・・・う、うん・・・」
梓「いや・・・ご、ごめん・・・別に唯先輩がどうっていうことではなくてね・・・」
唯『もう!!いくら私でも傷つくよ!?』
梓「・・・ごめん」
唯『っていうか、あずにゃん!!思い出した!!たすけて!!』
梓「え・・・?たすけてって・・・どうしたの?」
唯『あのね、私とりっちゃんがとってる水曜の授業のレポートが明日までの提出なんだけど』
梓「」
唯『私、すっかり忘れてて・・・りっちゃんに助けてもらおうと思ったんだけど・・・って、あずにゃん聞いてる?もしもし、もしも―』
ピッ
梓「・・・」
律「・・・」
梓「・・・忘れてた?」
律「忘れてた…」テヘッ
梓「こ・・・」
律「・・・こ?」
梓「このばかりつっ!!」ゲシッ
律「あいたっ!?この痛みひさしぶりっ!?ってか、やっぱすね狙いなんですねっ!?」
梓「え~~!?てか、なんのレポート!?枚数は!?」
律「えーっ・・・たしか・・レポートについてのメールが・・
ここら辺にあったようなないような…あ、あった・・・」カチカチ
律「なになに・・・・」
律「」
梓「なんて書いてあったの・・・?」
律「・・・朝8時までに・・・レポート・・・・10枚」
梓「10枚・・・なんなのその授業・・・来年、私、絶対とらないようにしよう」
律「ああぁ・・・そうしろよ・・・よかったな、いい反面教師がそばにいて」
梓「うん・・・」
律「・・・」
梓「・・・」
梓「ちょ、ちょっと!?固まってないでよっ!?」
律「はっ!?す、すまん!?もう現実逃避に入ってた!!」
梓「やろう!とにかくレポート終わらせよう!!」
律「えぇ~~!?無理だろ!!今1時だぞ!?・・・今から10枚とか・・・」
律「明日・・・旅行だってのに・・・またキャンセル料フラグかよ・・・」トホホ
梓「・・・それはやだ!!」
律「あずさ・・・」
梓「律バカなんだし、忘れてても当たり前だよ!」
律「」
梓「もう過ぎたこと悔いてもしかたない!!やろう!!私も手伝うから!!」
律「・・・うれしいけど、けなされてもいるからなんか悲しい・・・気分・・・」
梓「ほら、がんばろう!!」
律「あ、じゃあ、まずは紅茶いれてくる~」
梓「ふざけんなーー!!」
律「ぎゃー!?」
最終更新:2011年06月26日 22:01