「あれ、あれ見てよ」

「やぁー何してんのアレー」

A「うぐっ……」

純(怯むことない。怯むことないよ、私)

純「あれはカボチャ、あそこでジロジロ見てくるのはみんなカボチャ」

純「気にしたら……負け! 負け! 負け!」

B「おい、何当てたんだ?」

A「ダメだ。タオルばっかり」

B「おしいな、I賞当たらなかったんだ」

純(I賞……きゅんキャラ狙いかぁ)

純「あれ全部揃えるのは骨が折れるねー」

店員「次のお客様ー」

純「あ、はいっ」

純(これ! このくじを引ける瞬間……! まるでこのために生きてきたような錯覚……ひひひっ)

純「……」

憂「ど、どうだった?」

純「コップとタオルのみっす」

憂「やっぱり難しいね」

憂「でも梓ちゃんのために何とか頑張ってあげたいよ」

純「あ、ああ……そういや梓のために引いてたんでもあったね!」

純「つい夢中になっちゃって忘れてた~……てへへっ」

憂「こらこら」

憂「他にあと引けるお店はー……ある?」

純「あるよ!」

純「あそこなら、あそこならまだある!」

憂「あそこ?」

純「商店街裏のホビーショップ! あそこ穴場なの!」


――――

唯「映画の前売り券! すっかり忘れて……るよね」

律・澪「……」ポカーン

律「くじのことしか頭になかった……」

澪「い、今何時!?」

律「無駄だって、もうこの時間なら完売確定だ」

唯「あきらめるにはまだ早いよ!」

律「早くねー! もう遅いんだよ! 買うのも気づくのも!」

澪「うう……ムギごめんな……」

唯「と、とにかく~! もうくじに専念しようよ! く・じ!」

唯「私走っちゃうよ!」スンッスンッ

律「ああ、車の免許とっときゃよかった」

澪「これならみんなでお金出しあって箱で買えばよかったなぁ」


――――

奥田「斎藤さん、斎藤さん」ユサユサ

菫「ん……」

奥田「ぐっすりだ……」

オーオーオ、オ、オ、オオッ……オー!!

奥田「ひっ、何!?」

E「始まった。始まったんだ、お嬢ちゃん」

E「俺たちの、戦がさ」

奥田「これが……」

菫「ふぁ~……いと」

奥田「斎藤さん! 起きてってば! 起きて!」

奥田(このままじゃ前売り券買えない! このままじゃ)

ポン

奥田「!」

E「さきに行け、お嬢ちゃん」

奥田「は!?」

E「この娘は俺に任せておけ。なぁに、獲って食うようなことはしない」

奥田「そんなこと言われても……怪しいです」

E「俺が信用できないと」

E「安心しろ。俺は約束を守る男だ」

E「今回の多々買い。俺は降りる……いや、引退さ」

E「俺ももういい歳。そろそろ安息を求めたいのさ」

奥田「はぁ……」

E「家に帰ればワイフと娘が待っている。もういいんだ」

菫「ぐぅ」

E「この娘を見ていて気づかされたんだよ。戦争の空しさにな」

E「君たちに俺から言えることはただ一つ」

E「転売はよくないことだ」

奥田「~……」

―――

ヒソヒソ

「おい……一番くじ」

「マジか……」

梓「うん?」

「やっぱり今回も随分捌けてるみたい」

「シークレットは純ちゃんだそうで」

梓「まさかの」

梓「てっきり憂か和さんあたりかと睨んでたのにまさかの純」

梓「これは是非欲しいところだよ……」

「おい! 開いたぞ!」

「「「「「「「わああああああああああああ」」」」」」」

梓「……あ、まずい! 出遅れた!?」


―――

オーオー!オーオー!オーオー!

奥田「つっ、潰される! 人の波に押し潰される!」

店員「しっかり順番に販売しますのでっ、どうか押さないでくださーい!」

「だったらさっさと売れよ! おせぇよ!」

「こっちはいつから並んでると思ってんだよー!」

ワーワーワー

奥田「まるで人の悪意が見えるよう……」

C「ぶひ。君は中々わきまえてる様で」

奥田「あ、あなたは」

C「ああいう奴らがいるから俺たちのモラルが下がったと言われるんだ」

C「なんと嘆かわしいぶひか」

奥田「ところで何で皆さんこんなに必至なんですか?」

奥田「私、まだよくわからなくて」

C「は」

C「こぉれだからにわかはぁぁああ~」

奥田「な、何ですか。急に……」

C「あんたも何? 単にこのビックウェーブを楽しみに、笑いに来たタチ?」

C「あ~あぁ! あ~あぁ!」

奥田(すごいムカつく……)

C「ガッッッカリした! ぶひっ! ガッカリしたよ!」

店員「あの、お客様ー」

C「あ、けいおん!10枚ください」

店員「お一人3枚までで」

C「ふがっ!? うそ!?」

奥田「プークスクス」

奥田(あれ、でもよく考えたら私も3枚しか買えないじゃない)

奥田「これじゃあ5種類揃わないんじゃ」

菫「大丈夫です!」

奥田「あわわっ!?」

菫「そんなに驚かなくても……」シュン

奥田「あ、ああ。うん、ごめんなさい……でもなんでここに斎藤さんが?」

菫「だって梓先輩に命令されましたし、それに私も一兵士なんです! はい!」

奥田「へ、兵士っ」

菫「さ、買いましょう。私たち2人で6枚! 揃ったら素敵ですねっ」

奥田「お、おー……」

店員「後が詰まってますので、はやくしてくだしゃい!」

―――

店員「B賞」

純・憂「きたぁーーーー!!」

店員「C賞」

純・憂「きゃあああぁーーーー!!」

店員「H賞」

純・憂「はい」

店員「C賞」

純・憂「あああぁぁぁーーーー」

店員「お姉ちゃんたち、うるせぇ(笑)」

純・憂「てへへ……」

店員「A賞」

純・憂「やったあああぁーーーー!!」

店員「よかったなぁ(笑)」

憂「」ウシッウシッ

純(わかりやすい喜び方)

純「よしよし、いい感じに揃ってきた!」

憂「ねっ」

純「残る上位は……」

憂「DとEだけだよ」

純「私ら運いいんじゃないかな! うははは!」

「憂ー?」

憂「え?」

唯「うーいぃぃぃ!」

憂「お姉ちゃん!?」

純「唯先輩じゃないですかっ、ご無沙汰です」

唯「くじ……」

憂「くじ?」

唯「くじ引けなぁい……」ショボリ

店員「1回分なら」

唯「い、1回!? うそぉー……」

純「ごめんなさい。私たちが先に引いちゃったから」

唯「いいの……引けるだけでも嬉しいからそれで……」シナシナ

憂「お姉ちゃぁん……」

唯「お願いします!」

店員「では、どうぞ」

唯「……んー、ん~」ガサゴソ

純(1つしか入ってないのにすごい時間かかってる)

唯「これ!」パッ

店員「これしか入ってませんもんね。えっと」

店員「I賞」

唯「一番下っぱ……」

純「ほ、ほら! 残り物には福がある!」

憂「そうだよ! だから落ち込まないでー……」

唯「ぐすんすん、ぐすんすんっ……」

純「それで中身は?」

唯「ん」パカ

唯「あ、純ちゃん」

純「私? てか私!?」

憂「し、しーくれっと」

憂「シークレットだよ! お姉ちゃんっ、やったよ!」

純「私シークレット!?」

唯「すごいの!? ムギちゃんよろこんでくれる!?」

パンパカパーン

唯・純「やっほーい!!」

――――

梓「はぁ、はぁ……」

梓「はぁ……ふふふ」

梓「あはははは! なんでだろっ、すごい笑える! 楽しいー!」ケラケラ

梓「はははは、はぁ、はぁ、はぁー……はぁ」

梓「……むぷぷっ」ニコニコ

梓「ムギ先輩のバースデーカード、ムギ先輩のバースデーカードだよ♪」

梓「見て見て! これムギ先輩が飛び出す! 飛び出すんだよー!」

梓「わぁーい!」

ヒソヒソヒソ…

「……」「……」

「……」「……」

…ヒソヒソヒソ

梓「あ……///」

「ふふふ」

梓「うう……」

「胸が高まるその気持ち、わかりますよ」

「私も今すぐこの場で叫び出したい」

梓「あなたは」

「ああ、失礼。私は通りすがりの者です」

「この日のために鹿児島からはるばるやって来ました」

「今日はめでたい日だ。そうでしょう?」

梓「そうですね……そう思います」

「ふふ、それでは。私はこれからむぎゅをお祝いしなければいけませんので」

「失礼」ス

梓「紳士……あの人とっても紳士」

梓「ムギ先輩のバースデーカードは何とかなった」

梓「けど、他の4人はどうだろ。特にくじ」

梓「ううぅ……ここまで来たらなんとかなってほしい」

Prrr

梓「も、もしもし」

菫『やりました! やってやりましたよー!』

菫『勝利です! 勝利なのです!』

梓「……つまり?」

奥田『そういうことですよ』

奥田『梓先輩!』

梓「はぁぁぁ……っ!」

梓「ぃぃぃいやっほおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」ピョーン


――――

澪「唯が1回引けたみたい!」

律「マジ!? でも1回なの!?」

澪「引けただけでもいいだろぉ……」

澪「それより、私たちも唯に負けてられないよ」

澪「ムギも心待ちにしてるんだしな」

律「ムギぃー……前売り券ってかアイマスクごめんなぁ」

律「頑張ろう。ムギのために頑張ろう」

澪「恩返しでもあるし、お祝いでもあるんだもん」

澪「ここが正面どころ! ファイトだ!」

律・澪「おー!!」

・・・

律「やっぱどこにもねぇよ……」

澪「箱買いされてると腹立ってくる……」

―――

梓「……」

梓「……あの」

菫「はい?」

梓「本当にこれで全部だよね? そうなの?」

菫「そうですよ、6つ! 購入規制があったから私と奥田さんで3つずつ買ったんです!」

菫「これで、いいんですよね?」

奥田「何か問題ありました?」

ソワソワソワ…

梓(買ってきてくれたのはとってもありがたい!)

梓(けど6個中4個がムギ先輩のアイマスクってどういうこと……!!)ムギューン

アイマスク獲得品 梓×1 澪×1 紬×4

梓「逆にすごいよ、これ!」

奥田「同じの被っちゃいましたけど、ほら! 可愛いですよ」

菫「きっとお嬢様が今日お誕生日だからいっぱいゲットできたんですね~」

梓(ああ……)

梓「……そうだ!」

梓「交換! 交換すればいいんだよ!」ピッピッ

奥田・菫「?」

梓「けいおんグッズ交換スレ! これの存在を忘れていた」

梓「えーっと、ムギ先輩のアイマスクをあげますので、唯先輩のをください、と」

奥田「交換って……交換しちゃうんですか!?」

梓「そう! これはね、自分が欲しいものを確実にいただける素晴らしいことなの!」

梓「私も相手も得をする。誰も不幸にならない! みんなハッピー、えへへっ」

菫「そんな……簡単に手放しちゃうなんて。お嬢様のアイマスクたちが泣いていますよ……」

ムギマスク×4「ムギューン…」

奥田「先輩……」

菫「梓先輩……」

ムギマスク×4「ムギューン」

梓「うっ……やめてよ」

梓「そんなつぶらな瞳で見つめたって、ダメなんだから!」

梓「ダメなんだからぁ……」

梓「はぁ……」

梓「わかった、わかったよ」

梓「せっかく2人が頑張って手に入れてきてくれたものだもん、大事にしないと」

菫「あ、梓先輩ぃ」

奥田「さすが部長です! あ、ちょっとこれ試しにつけてみてくださいよ」サ

梓「……」←梓マスク装着

菫・奥田「すごい! ぴったり!」

梓「でしょうね」


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最終更新:2011年07月04日 20:45