澪「どうしたんだ、さっきからうつむいて」
唯「そうだよ、どうしたの?」
律「ふーむ、なんか顔色悪くないか?」
紬「気分でも悪いの?」
梓「いえ、そんなことはありません」
唯「あずにゃん……何か悩みごとでもあるの?」
梓「あ……その、それは」
紬「梓ちゃん、悩んでることがあったら打ち明けてくれていいのよ」
澪「そうだぞ、梓のためならいくらでも力になるぞ」
唯「そういうことだよ、あずにゃん、何かあったの?」ナデナデ
律「なんなら部長直々に相談に乗ってやるぞ?」
澪「律じゃ何の参考にもならないよ。梓、私が相談に乗ろうか?」
律「なにお~!!」
紬「あらあら」
唯「あずにゃん、どうなの?」
梓「うっ……く」ジワ
澪「!?…梓!」
梓「うぅ」ガタッ
律「梓!!」ガタッ
梓「うぅぅ……追わないで…ください!!」タタタッ
バタン
律「あ、あずさ?」
タッタッタッタッ
梓「はぁ…はぁ…」
梓(いまどういう状況なんだろう?)
梓(いきなり飛び出しちゃって……)
タッタッタ…
梓(どうしよう)
タッタッ……スタッ...
梓「どうしよう……」
ぽつーん。。。
梓「……」クスン
梓「律先輩、ごめんなさい……」
梓「もう、戻れないのかな……」ポロポロ
「……梓ちゃん?」
梓「うっ、うぅっ……」
「梓ちゃん?」
梓「……?」
和「梓ちゃん?…どうしたの廊下でうずくまって」
梓「!?……うぅぅ」
和「泣いてるの?」
梓「ぐすっ」
和「梓ちゃん……」
和「もし…よかったら、何があったか聞かせてくれない?」
梓「……」
和「ごめんね、言いにくいかな」
梓「……うぅぅ、真鍋先輩」
:
:
:
和「そうなんだ」
梓「……私が嘘でごまかしてるのに、先輩達が優しくしてくれて」
梓「それが心苦しくて飛び出してしまいました……」
和「うーん……梓ちゃん、とりあえず場所を変えようか?
唯達のことだから、いまごろあなたを追いかけてると思うの
ここだと整理のつかないうちに追いつかれちゃうわよ?」
梓「大丈夫だと思います。追いかけないでと伝えて飛び出しましたから……」
和「追いかけないでって言ったの?」
梓「はい……先輩方に申し訳なくて……こんな最低な後輩、見捨てて欲しかったんです」
和「最低だなんて、どうしちゃったのよ」
梓「大事なカチューシャを壊した上に、先輩方に嘘をついて騙したんです」
梓「どのみち、軽音部には居られないです……」グスッ
和「……梓ちゃん」
梓「……」
和「梓ちゃんは……唯達がまだカチューシャのことに気づいてないと思ってるの?」
梓「えっ」
和「おそらくだけどみんな、梓ちゃんとカチューシャのことに気づいてるんじゃないかと思うの」
梓「どうしてそんなことが言えるのですか……?」
和「話をまとめると、律が私のところへ書類提出してる間に
カチューシャがなくなったってことなのよね?」
梓「はい」
和「実際のところ、律が書類提出で部室を空けたのは、
だいたい20分くらいだと思うのよ」
梓「はい…」
和「時間としてもそんなに長くないし、
その間にみんながカチューシャの在り処を忘れるなんて思えないの」
和「まして盗難でもないとすると……
どう考えてもその間に部室にいた梓ちゃんが何かしたと思うはずなのよね」
梓「……」
和「唯達からなにかそれを思わせるような言動はなかった?」
梓(『なんか、こういうタイミングでこんなことを
聞くのもなんだけど……お前、胸おおきくなった?』)
和「おそらく、あの子達はもう気づいてると思うし、その上でやさしく接してるのよ」
梓「そ、そんな……」
和「きっと、唯達は梓ちゃんが本当のことを言うのを待ってるんじゃないのかな」
梓「そ、そんなこと……」
和「きっと、いまでも……」
梓「うぅぅ……そんなこと……」ポロポロ
和「……」
梓「そん…な……こと……」ガクッ
和「梓ちゃん……」
・・・・・・・・・
梓「……真鍋先輩すみません、制服……汚してしまいましたね」グス
和「いいのよ、涙なんてキレイなものよ」
梓「……やっぱり、待ってくださってるんですかね……?」
和「……おそらく、そうだと思うわ」
「あずにゃーん!!」
和「あら?」
梓「…えっ?」
「あずにゃん!!」
梓「唯…せんぱい」
唯「……はぁはぁ、ごめんね、あずにゃん。心配で追いかけてきちゃったよ」
和「唯、みんなで追いかけてるの?」
唯「うん、居ても立ってもいられなくて」
和「だってさ、梓ちゃん」
梓「……はい」
唯「和ちゃんは?」
和「私? わたしは放課後の見回りをしてたところよ」
和「ちょうど廊下で梓ちゃんと出会って話をしてたの」
唯「そうだったんだ……和ちゃん、うちのあずにゃんをありがとうございます!」ペコリ
和「いいのよ、たいしたことしてないんだから」
和「それより梓ちゃんはもう落ち着いたの?」
梓「はい、落ち着きました」
和「そう、それはよかったわ」
梓「真鍋先輩、わたし軽音部に戻ります」
和「あら、そうなの」
梓「はい、戻ります………そして、私……」
和「ふふっ、言わなくてもわかってるわ」
和「梓ちゃん、いってらっしゃい」ニコッ
梓「は、はい、真鍋先輩!!」
和「いい返事。それじゃ私、つづきに行くね」スタスタ
唯「うん、ありがと和ちゃん!!」
梓「先輩、ありがとうございました」
・・・・・・・・
唯「……行こっか、あずにゃん」
梓「はい、唯先輩」
:
:
:
唯「あずにゃん、落ち着いてよかったよ」トコトコ
梓「唯先輩、ほんとうにすみません」トコトコ
唯「いいのいいの、かわいい後輩だもの、そんな後輩の面倒を見るのは先輩のつとめだよ!!」フンス!
梓「……」
唯「ところでさ、あずにゃん。やっぱ悩みごととかあるの?」
梓「えっ」
唯「あっ、ごめん、忘れて」
梓「えっ、あっ……その……実は……悩み……というわけではありませんが」
唯「?」
梓「実は…これ……」
唯「……これって、りっちゃんの?」
梓「はい、カチューシャです」
梓「先輩達が生徒会室に行ってる間に、私が…いたずらして折ってしまいました」
唯「え゛っ!?」
梓「あっ…その……部室に置いてあったのをアタマに着けたり、
引っ張ったりしてたら、折れてしまったんです」
唯「ふむふむ」
梓「それで謝ろうと思っていたのですが、そのタイミングがつかめなくて」
梓「……謝れないまま話が進んじゃって……」
梓「……気がついたら部室の外でした」
唯「あずにゃん……」
梓「でも……真鍋先輩と話して落ち着きましたし」
梓「やっぱり、早く謝らなきゃいけないと思いました」
唯「……部室にもどったらすぐに謝るってこと?」
梓「……はい」
唯「……ねぇ、あずにゃん」トコトコ
梓「はい」トコトコ
唯「きっと……大丈夫だよ……りっちゃんは許してくれると思うよ」
梓「……そう…ですかね?」
唯「たしかにりっちゃんだって、あのカチューシャは大事にしてたから
ひょっとしたらとっても怒るかもしれないよ?」
梓「……」
唯「でも、りっちゃんって、とっても前向きだから、
そのことでずっとあずにゃんを責めたりなんかしないだろうし…」
唯「それにもし、あずにゃんと……りっちゃんが……
ケンカにでもなっちゃったりしたら……そのときは……」
梓「そのときは……」
唯「私が……」
梓「先輩が……?」
唯「私があずにゃんを守ってあげるよ!!」ガシッ
梓「えっ」
唯「あずにゃんのためなら、いつでも伝言だって手伝ってあげるし!!」
唯「仲直りだっていーっぱい協力してあげる!!」
梓「唯先輩……」
唯「だからあずにゃんは…」ダキッ
唯「……安心してりっちゃんに謝るといいよ」ナデナデ
梓「先輩……?」
唯「大丈夫だよ……あずにゃん」
梓「せんぱい…ありがとうございます」ジワ
唯「よーし!!あとすこし勇気の出ないあずにゃんに、唯先輩分をわけてしんぜよう」ギュゥ
梓「にゃっ!」
唯「……」ギューッ
梓「……」ギュッ
・・・・・・・・・・・
唯「…よしっ!!あずにゃん、これで大丈夫!!さあ、行こっ!!」ポンポン
梓「はいっ、先輩!」
トコトコ...
紬 ●REC
ぶしつ!
唯「あっ、みんな戻ってきてるよ」
ガチャ
梓「ただいま戻りました」
律「おおっ、梓!!」
紬「梓ちゃん、もう大丈夫なの?(なんとか間に合ったわ)」ハァハァ
梓「はい、ご心配をおかけしました」
澪「そうか。よかった梓」ナデナデ
梓「ありがとうございます///」
律「……梓、事情は…聞かないほうがいいか?」
梓「いえ、先輩――」
梓「むしろ……聞いてください!!」
律「なっ……そうか、じゃあ聞かせてくれ、梓!!」
梓「はい!!」
梓(ふぅー………)
梓(唯先輩分も満タン、きっと大丈夫……)
梓(がんばれ、梓!!)フンス!
梓「り、律先輩!」
律「なんだ、梓!!」
梓「今日、カチューシャを探しておいででしたよね?」
律「ん?ああ」
梓「実は、そのカチューシャなんですけれど……」
律「あ、ああ」
梓「これです」
カチュ ーシャ
律「……」
最終更新:2011年07月07日 01:10