純「お母さんはいないし、自分で作ろうかな」
ヴーヴー
純「お?」
―――――――――――
From:中野梓
Sub :じゃあさ
―――――――――――
今お昼だし料理でもすれ
ば?
―――――――――――
純「今まさにそう思ってたところだよ、梓」
純「『ちょうど作ろうとしてた』」
純「うーん……何作ろうかな」
純「あっ、そうだ」
純「『メニューは麻婆豆腐!』。送信」
純「よし、作るぞー!」
純「……って、作り方分かんないや」
純「憂に聞こうかな…いやでも今食事中だし」
ヴーヴー
―――――――――――
From:中野梓
Sub :麻婆豆腐?
―――――――――――
作れるの?
難しいんじゃない。
―――――――――――
純「……『なんとかなるって』。送信」
ヴーヴー
―――――――――――
From:中野梓
Sub :写メで見せてね
―――――――――――
純がちゃんと作れるのか
な?
完成したやつ、後で見せ
てね。
―――――――――――
純「むっ、私だってやればできるんだからね」
純「『究極の麻婆豆腐を作ってあげるよ』っと。送信」
――台所
純「ひき肉とか材料は…バッチリ」
純「それじゃあ作るとしますか!」
純「まずは――どうするんだろう」
純「とりあえず豆腐とか切ろう」ザッザッ
純「それと後は――…下味かな?」
純「味がついてないと美味しくないもんね」
純「ボールに材料を全部入れてーっと」ドバドバ
純「う~む……まず何を入れれば…」
純「確か料理の『さしすせそ』だか『あいうえお』があったはず…」
純「とりあえず『さ』は『お酒』だよね。お父さんの飲んでるやつ使おっと」
純「冷蔵庫の中に……あった」
純「……ビールでもいいかな」プシュッ
純「うわ、ビールのにおいがする」
純「入れるのは少しだけ、大さじ一杯くらい。これぐらいが多分いいんだよね」パッ
純「残ったのは……」ペロッ
純「まずっ! 捨てちゃおっと」
純「次に『し』!」
純「『し』は――はっ、醤油か』
純「今日は冴えてるなー私」ドバッ
純「え~っと、『す』は…お酢」ドバッ
純「『せ』は………せ?」
純「…………せ!?」
純「せは…なんだろうな~」
純「石油?」
純「せ、せ、せ……」
純「……」
純「『せ』飛ばそう」
純「『そ』! これは間違いなくソース」ドバッ
純「…よし、こんなもんか」
純「あとは混ぜて焼いて…」
純「あっ、辛いもん入れないと」
純「唐辛子唐辛子…これでオッケー」パパッ
純「あとは焼くだけだよね」
ジュージュー
純「……」
ジュージュー
純「……」
ジュージュー
純「ヤバい……臭い」
ジュージュー
純「これが…失敗ってやつかな」
ジュージュー
純「ど、どうしよう! なんでこんなことに!?」
純「『せ』を飛ばしたから!?」
ジュージュー
純「と、とにかく応急処置を…」
純「赤ワイン投入!」ザバッ
ジュバァァアアアアッ!!
純「あつっ!?」
――――――――――
―――――――
――――
純「……」
純「完成したけどこれは…」パクッ
純「っ!?」
純「……………まずい」
純「ひどいまずさだ…」
純「やっぱり『せ』がないのはダメなのかな……ていうか『せ』ってなんなのよ」
純「あー! これじゃあ梓に見せられないよー!!」
純「究極の麻婆豆腐どころか地獄の麻婆豆腐だ…」
純「いや、麻婆豆腐でもないか」
純「……」
純「とりあえずこれどうしよう…」
純「むぅ~……しょうがない、憂に助けてもらうしかない。電話してみよう」
Prrrr、Prrrr
純「……」
Prrrr、Prrrr
純「出ないし…」
純「どうしよう…どうすれば」
純「こんなの作っただなんてお母さんにバレたら怒られちゃうよぉ~…」
純「……あっ、そうだ」
Prrrr、Prrrr
先輩B『もしも~し』
純「出てくれた!!」
先輩B『何がだよ。いきなりどうしたんだ~?』
純「そ、そうだ。センパイって料理得意ですよね?」
先輩B『うん? まぁね~、そこそこできるよ』
純「実は折り入ってお願いしたいことがあるんですが――」
・・・・・
先輩B『――なるほど、麻婆ね~~』
純「どうにかなりませんか? せっかく作ったんだし捨てるのももったいないし…」
純「それにこのままじゃ餓死しちゃいますよ」
先輩B『餓死すんのか、そりゃ大変だな~』
先輩B『そうだな~~~……まぁなんとかしてやるよ』
純「本当ですか!?」
先輩B『とりあえずカレーのルーはある?』
純「カレーですか? ………あっ、ありました」
先輩B『よし、じゃあ~鍋に水をたっぷり入れろ』
純「はい!」ジャー
先輩B『玉ねぎと人参とジャガイモ、お肉を切って。あと麻婆と一緒に鍋の中入れて』
先輩B『そんでカレーのルーを入れて煮れば完成~』
純「はぁ…?」
先輩B『じゃあ細かい下ごしらえを今から教えるぞ~。まずは玉ねぎを――』
:
:
:
純「できました!」
先輩B『味はどうだ~?』
純「美味しいです! まさかこんな美味しいのを自分で作れるなんて…驚きましたよ」モグモグ
先輩B『そうか、よかったな~』
先輩B『んじゃ私はこれで』ピッ
純「これなら梓も驚くだろうなー、うん」
――中野家
梓「今のうちに明日の準備でもしよっと」
ヴーヴー
梓「あっ…純からメールだ」
梓(そういえば麻婆豆腐作るとか言ってたけど、どうなったんだろう?)
梓「ちゃんと作れたのかなー♪」
―――――――――――
From:鈴木純
Sub :これが私の実力よ
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すっごく美味しかった!
今度梓と憂にも作ってあ
げるね!!
写メで撮ったから見てみ
て↓
:
:
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梓「……」
梓「これカレーじゃん」
##1 おわり
最終更新:2011年07月12日 00:03