##2

純父「おい、俺のビール知らないか?」

純母「昼前からお酒? 勘弁してよね」

純父「いや、そうじゃなくて……買いだめしたやつを今確認したら一つないんだよ」

純母「どうせ飲んだんでしょ」

純父「そんな覚えはないんだが……。純、知らないか?」

純「……知らなーい」

純父「だよなぁ、純が飲むわけないし」

純「……」

純母「純、暇ならちょっと買い物行ってきてちょうだい」

純「えぇ~? 今超忙しいんだけど」

純母「音楽聴いてるだけじゃない」

純「これはジャズの勉強なの!」

純母「いいから行ってきなさい! 人参と玉ねぎ、ジャガイモね」

純母「はいこれお金」

純「……は~い」

純父「母さん、小腹が空いたから何か作って欲しいんだけど…うどんとか」

純母「今超忙しいの。後で」

純父「じゃあ純、何か買ってきてくれ…うどんとか」

純父「あれ、純? もう行ったのか?」

純父「おーい、純ー」

純父「父さんうどん食べたいなー、おーい」

純父「……」


――町中

純「めんどくさいな~…休みなのに」

純「さっさと買い物済ませよ…」

純「……ふぅ」

純「それにしても、春風が気持ちいいな~」

「ヘイ、そこのお嬢さん」

純「!!」

「暇そうだね。よかったら遊ばない?」

純(後ろから声…誰? ナンパ!?)

純(まいったなー、ナンパだなんて。私そんな軽い女じゃ…)チラッ

先輩B「やっほ」

純「……」

先輩B「なんで残念そうな顔してんだよ~」

純「いえ……どうしてセンパイがここに?」

先輩B「ん? 待ち合わせしててね。そんで純を見つけたから声かけたんだよ」

純「待ち合わせ?」

先輩B「もうそろそろ来るはずなんだけど~…」

<プップー

純(クラクション音?)

顧問「お待たせー」

純「あっ…先生」

顧問「お、なんで純がいるの?」

先輩B「さっき捕まえました~」

顧問「そうなんだ」

純「これ先生の車ですか? ていうか先生車持ってたんですね!」

顧問「親のお下がりだけどね」

顧問「…そうだ、純も一緒に来る?」

純「え? どこに…」

顧問「楽器買いにだよ」


――車内

純「へぇ~、じゃあ先生とうとう楽器始めるんですか」

顧問「うん、やっぱ顧問として何かやっておかなくちゃなーと思ってね」

先生B「そんで私は買い出しに付き合わされたってわけ」

純「でも、なんでわざわざ車で遠出するんですか? 楽器店なら近くにあるのに」

顧問「ん? まぁ春休みだしこういうのもいいじゃない」

先輩B「アウトドア派ですね~……ふあぁ~ねむ」

純「私もちょっと眠いような…」

顧問「こんな時間に眠いって…アンタら昨日なにやってたの」

先輩B「ギターいじって本読んでた…ギターいじって」

純「テレビ見てインターネットして…」

顧問「はぁー、これだから若い奴らは。休みだからって怠けないで早く寝ろっての」

先輩B「いや、10時前には寝たんですけどね」

純「私も」

顧問「なんだそりゃ…」

純「そういえば先生、なんの楽器やるんですか?」

顧問「うん? ん~……なにやろうかな」

先輩B「決めてないんですか」

顧問「迷っててねぇ…簡単なやつとかある?」

先輩B「全部それなりに難しいですよ」

顧問「そりゃ困ったなー。学生時代はリコーダーもろくにできない子だったのに」

純「…それでよくジャズ研の顧問になろうとしましたね」

顧問「どうしてもって頼まれてね。他に人もいなかったし」

先輩B「音楽やるような人にも見えませんしね~先生」

顧問「実際にできないから否定しないけどさ…。できる人は全員吹奏楽部や合唱部にいるからな」

顧問「まぁこれからは私もできる側の人間になるわけだけどね」

純「で、なにやるんですか?」

顧問「……指揮者とかは?」

先輩B「一番難しいですよ、それ」

顧問「えぇ!? 棒振るだけの簡単な仕事じゃないの?」

先輩B「その発言は世界中の指揮者を敵に回しますよ~」

純「ジャズって指揮者いるんですか?」

先輩B「ビッグバンドならたま~にいたりするけど~……」

先輩B「まぁ、いらないな」

先輩B「去年のコンテストも他校で指揮者なんていなかっただろ?」

純「コンテストかぁ…今年は私も出れるかな」

先輩B「……かもね。去年より上手くなったし」

純「やった!!」

先輩B「でもリズムセクションは人数枠限られてるから激戦だぞ~」

顧問「初心者多かったんだっけ? 去年」

先輩B「そうですよ~。一昨年は経験者と初心者が半分半分ぐらいだったかな」

先輩B「まぁかつては初心者だった子たちも、今では立派に演奏できるようになったし…」

純「いやーあははは」

先輩B「今年は去年よりさらに練習厳しくしようかな~」

純「えっ!?」

先輩B「それぐらいしないと~、コンテストでグランプリは取れないんだよ」

純「うわ…急に憂鬱に」

先輩B「去年はレギュラーを重点的に練習してたけど、今年は全体的にレベルアップしないとね」

顧問「なんか知らんけど頑張りな。私もこれからはたまに練習参加するから」

先輩B「先生も?」

顧問「だって家じゃ練習できないんだしさ」

先輩B「それはいいんですけど~…」

純「顧問の先生って感じじゃないですよね、それ」

顧問「……すいません」


――パーキングエリア

純「またずいぶん遠くまで来ちゃいましたね」

先輩B「だな」

純(そういえば買い物の途中だったような…)

純「怒られちゃうな~…これ」

先輩B「あっ、サルがいた」

純「えっ! どこですか!?」

先輩B「ほらあそこ」モコモコ

純「えー……見えないんですけど」

先輩B「あっちだって、ほら」モコモコ

純「……なにしてるんですか」

先輩B「噂に聞く純の髪をモコモコしてる」モコモコ

純「噂?」

先輩B「あいつ(先輩A)が言ってたんだよね~…」モコモコ

先輩B「『純ちゃんの髪モコモコしてかわいいのよ~』って」モコモコ

純「か、かわいいって言われるのは嬉しいんですけど、それ以上やられると髪型が崩れ…」

先輩B「あ~~、これ確かにさわり心地いいな~」モコモコ

先輩B「ジャズ研の名物にしよっか? 純ちゃんモコモコ、って感じで」モコモコ

純「純ちゃんモコモコ……いいかも」

純「いやそうじゃなくて!! いい加減髪が~…」

先輩B「おっと、失礼失礼~」

先輩B「髪の毛は女の命みたいなモンだもんね~……はい、整った」

純「癖毛は特に大変なんですよ。毎朝鏡の前で格闘してるし」

先輩B「ふ~ん、そうなんだ。純もちゃんと女子高生してるんだね」

純「今度ストレートに挑戦してみようかなぁ…」

先輩B「それはダ~~~メっ」

純「ウェイ(Why)!?」

先輩B「ストレートになったらモコモコできないだろ~、せっかく面白いもん見つけたのに」

純(面白いもの…)

先輩B「純がストレートになったら大勢の人が悲しむぞ~、全米が泣くぞ~」

純「私としては大喜びなんですけど」

先輩B「とにかくストレートはダメ。これは部長命令だからナ」

純「職権濫用だー!!」

先輩B「あはは、じゃあ~来年は純が部長になって好き放題やればいいじゃん」

純「私が…部長!? 本当ですか!?」

先輩B「もしもの話だよ。もしも」

純「私が部長かぁ…部長になったら何しようかなぁ」

先輩B「聞いてねえ~」

男1「ねぇねぇ、君たち何してるの?」

純「え…」

先輩B「ん?」

男2「あれっ! 君かわいいね~!!」

男1「なになに? 二人でドライブしに来たって感じ?」

先輩B「はあ…?」

純(こ、これって……ナンパ!? 本物のナンパだ!!)

先輩B「まぁ~~そうですね~、そんな感じです」

男1「ならさ、俺たちとも一緒にドライビングしない? 俺、ここら辺のオススメスポットとか詳しい感じなんだよね」

純(ど、どうしよう…こういう時どう対応すれば…)

先輩B「それは素敵な感じですね~」

男2「な? いいべ? 一緒に行こうや」

先輩B「え~、どうしようかな~」

純(ヤバいよ~…このまま連れていかれたらどんなことされちゃうんだろう)

先輩B「私たち~、行くところあるんで~」

男1「そんなこと言わない感じでさぁ」

男2「行こうぜ、な?」

純「……」

純(ていうか…)

先輩B「困ります~」

男1「お姉ちゃんみたいな素敵な女の子と一緒にドライビングしたい感じなんだよ、お願い!」

男2「絶対後悔させないから、な?」

先輩B「無理で~す」

純(さっきから私はおもいっきりスルーされてるし!!)

男1「そんな感じはやめてさぁー、もっと楽しい感じでいかない?」

先輩B「しつこいな~…しつこい人は嫌いですよ」

男2「つれないなー、俺たちとデートしようぜ?」

先輩B「ほら、行こう純」

純「あ、はい」

男1「あんな子ほっといてさぁー、俺たちと一緒に行こうよ」

純(むっ、あんな子って…)

先輩B「…言っときますけど、私にとったらあんた達より純といる方がよっぽど楽しいんで」

先輩B「私たちの邪魔しないでください」

男1「じゃあこの子も一緒に」ガッ

純「いたっ! 引っ張んないで!!」

先輩B「っ!!」ドンッ

男1「うおっ!?」

先輩B「逃げよ、純」

純「は、はい!」

男2「おいコラ待てやぁ!!」

純「わわっ…」

先輩B「しつこいな~もう~~」

顧問「おーい、飲み物買ってきたぞー」

先輩B「あっ、お母さん助けて~!」

男1「!?」

男1(母親…だと!?)

男2(親連れかよ! でも結構美人だヒャッホーイ!!)

顧問「あ? なに言ってんの」

先輩B「あの人たちがしつこいよお母さ~ん」

顧問「いや、お母さんって…」

先輩B(ほら純、お前もやれ)チラッ

純「あっ…」

純「た、助けてお母さーん」

先輩B「お母さ~ん」

純「ママー」

先輩B「マミ~」

顧問「…なんかよく分からんが」

顧問「こいつらに手ぇ出したらタダじゃすまないよ?」ギロッ

男1・2「!!?」ビクッ

男1(ヤベぇ…マジヤベぇよパネェ…)ガクガク

男2(アレぜってー本物だよ。元族のベッドとかだよ…)ブルブル

顧問「ほら、はやく散れ」

男1「え…」

顧問「散れって言ってんのが分かんないんかい」

顧問「目の前から消えろって言ってんだよ!!」

男1「ご、ごめんなさい!!」

男2「すいませんでしたぁー!!!」

ダダダッ

純「す、すごい…逃げてった」


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最終更新:2011年07月12日 00:05