先輩B「作戦成功~、イぇい」

顧問「なにがイぇいだ」ポカッ

先輩B「あだっ」

ポカッ

純「いたっ! どうして私も!?」

顧問「私のどこがお前たちの母親なんだよ。まだ全然若いんだろ」

先輩B「ヤンママに見えますね」

顧問「ヤンママ…」

純「怒った時はすごい迫力でしたよ。本物みたいでかっこよかったです」

顧問「あのな……はぁ」

先輩B「あっ、お母さ~ん、たこ焼き買って~」

顧問「…アンタだけここで降ろそうか?」

先輩B「やっぱたこ焼きはいいです」

純「でも、先生のおかげで助かりました。ありがとうございます」

顧問「まったく…ナンパ断るにしても、もうちょいやんわりと断われっての」

先輩B「すいませ~ん」

純「結局私は声かけられなかったけど…」

先輩B「純の魅力に気づかないあの男たちがバカなのさ」

純「センパイ…!」ジーン

顧問「ほらなにやってんの、行くよ」

純「…センパイ」

先輩B「ん~?」

純「先生って、カッコいいですよね!」

先輩B「そうだな~、ワイルドだな」

純「ドラゴ○ボールの18号にも似てるし」

顧問(褒められてんのか…? これ)

純「――それにしても、あんな所でナンパされるなんて大変でしたね」

純(ほとんどセンパイ目当てだったけど)

顧問「私も若い頃はよく声かけられたもんだよ」

先輩B「一応美人ですもんね」

顧問「一応ってなんだい。一応って」

純「先生、もうちょっと着飾ればいいのに。メイクとかも」

先輩B「Tシャツとジーンズじゃ色気ないよな~。様にはなってるけど」

顧問「自然体が一番なんだよ。ていうか休みの日ぐらい楽な格好させてくれよ」

先輩B「普通休みの日だからこそおしゃれするよな」

純「女捨ててるって感じですよね」

顧問「ひどいなお前ら」

先輩B「でも私たちはそんな先生が大好きですよ」

純「私も、大好きです!」

顧問「えぇっ…な、なんだよ急に~。照れるじゃん///」

先輩B「本音言っただけだよな~」

純「そうですよねー」

顧問「…ったく、おだてたって何も出ないぞ」

顧問「はぁ……腹減ったしたこ焼きでも食べるか」

先輩B・純(やった!)


――楽器店

先輩B「ようやく着いた~…こんな遠い楽器店来たの初めてだよ」

純「売ってるものは近所にあるやつと大して変わりませんね」

先輩B「何のためにここまで来たんだか」

顧問「気分だよ、気分。なんか新鮮な気分だろ?」

先輩B「疲れた~って気分です」

顧問「なら早く買って帰るか」

純「なにやるか決めたんですか?」

顧問「そうだな~…純は何やってるんだっけ?」

純「ベースですよ」

顧問「ベース? どれ?」

純「ほら、ここに置いてある…」

顧問「へぇー、これがベースか。……あれ? 弦が四本しかないじゃん」

純「それがベースですから」

顧問「ベース……ベーシック…。なるほど、初心者用のギターか」

先輩B「先輩がいたら怒ってますよ」

純「ギターとベースは全然違いますって」

顧問「違うのか……よく分かんないなー」

純「それで本当によく顧問やってこれましたね…」

顧問「ベースは…いいや」

顧問「あっ、これはいいかも」

先輩B「どれ?」

顧問「ラッパ」

先輩B「サックスです、それは」

顧問「これがサックスか…いいな」

先輩B「先生タバコ吸ってんでしょ? 吹奏楽器にタバコはあんまりオススメできないですよ」

顧問「そっか……いや、それもいいかもな」

顧問「これを機にタバコやめよう」

先輩B「あれ、やめるんだ」

顧問「まぁー…ね。体にも財布にも悪いし。やめよう、うん」

顧問「どのサックスにしようかな…」

純「私、ベース見てますね」

先輩B「はいよ」

顧問「うーん…高いなぁどれも」

先輩B「このアルトサックスとかどうですか?」

顧問「おっ、いいな……。あっ、でもこれもいい」

顧問「どれにしよう……う~ん」

純「ふむ……」

純(楽器店来るたびにベース見てるけど……良いのはやっぱどれも高いなぁ)

純(ま、私には愛用のベースがあるから別にいいけど)

先輩B「色々あるな~」

純「あっ、センパイ。先生ほっといていいんですか?」

先輩B「なんか~~、二つのうちどれか迷ってるみたいなんよ…」

先輩B「だから後は一人で決めさせる」

純「意外と優柔不断なんですね」







顧問「こっちにしようか…」

顧問「いや、肌触りはこっちの方が…」

顧問「あ、でもこれはあれだな、しっくりくる」

顧問「いや、これはこれで…」

顧問「……う~ん」



先輩B「純はこの中で欲しいものある?」

純「私ですか? 弾いてみたいのはありますけど……これといって欲しいものは…」

純「それにやっぱ自分のベースが一番だし」

先輩B「そりゃいい心がけだね」

先輩B「自分で買ったの? そのベース」

純「はい、中古で」

先輩B「それじゃあ思い入れもあるはずだ」

純「てへへ…」

先輩B「純はベース好き?」

純「好きですよ」

先輩B「なんか目標とかある?」

純「えっ……目標?」

先輩B「目標だよ、なんかあるだろ?」

先輩B「レギュラーになりたいとか、憧れのベーシストみたいになりたいとか…」

先輩B「部長にもなりたそうにしてたじゃん、さっき」

純「そうですねー……」

純「なれるんだったら全部なりたいかも」

先輩B「欲張りだな」

純「そっちの方がいいじゃないですか」

先輩B「…フッ」

純「なんか鼻で笑われたー…」

先輩B「まぁ…やりたいことが決まってる分、そっちの方が全然良いな」

純「…?」

顧問「おーい、決まったぞ! これにした」

先輩B「…決まったんだって。行こ」

純「あ…はい」

・・・・・

顧問「いやー、いい買い物だった」

先輩B「三日坊主にはならないでくださいよ」

顧問「平気平気。さて、そろそろ帰ろっか」

純「すいません、ちょっとトイレ行ってきていいですか?」

顧問「うん、いってらっしゃい」

純「すぐ戻ってきまーす」タタタッ

先輩B「……」

顧問「あ~疲れた。こんな遠くまで来る必要なかったよ」

先輩B「今さらですか」

顧問「そういえばお前、進路とか決めたの?」

先輩B「いえ…ま~だですよ~~」

顧問「休日にこんなこと言いたかないけどさ、早めに決めておきなよ」

先輩B「は~い…」

先輩B「……」

顧問「ふぅ…」ガサゴソ

先輩B「…先生~、なにやってるんですか?」

顧問「え? 何ってタバコを吸おうと……はっ」

顧問「危なっ!? いつの間に吸おうとしてたんだ私!!」

先輩B「もう捨てちゃえばいいのに」

顧問「けど…私にとっては長年付き合ってた彼氏みたいなもんなんだよ」

顧問「やっぱりそんな簡単には…」

先輩B「未練がましいな~…タバコさんは捨ててサックス君と付き合ってください」

顧問「くっ…」

純「お待たせしましたー」

顧問「タバコさん…ごめんなさい!」バッ

純「え? バタコさん?」


――車内

顧問「そろそろ暗くなるなぁー」

先輩B「遠出した割には滞在時間短かったですね」

顧問「ドライブできたと思えばいいじゃん」

顧問「そうだ、なんか買うものとかある? せっかくこんな所に来たんだし」

先輩B「私は特にないです」

顧問「純は?」

純「私も特に…でもお腹すいたなぁ」

顧問「おっ、ならそばでも食べる?」

先輩B「そば?」

顧問「ほらあのお店。お土産のそばも売ってるんだって」

顧問「ついでに買いたいし、行こっか」

純「お土産かぁ…私も買っておこうかな」


――鈴木家

純「すいません、わざわざうちの前まで」

顧問「いいっていいって、付き合わせたこっちも悪いんだし」

先輩B「純、ちゃんと自主トレやっておくんだぞ」

純「分かってますって」

先輩B「じゃ、また新学期にナ」

純「はい、お疲れ様でした」

顧問「じゃあねー」

純(ふぅ、疲れたー)

純(でも楽しかったなぁ)

ガチャッ

純「ただい――…」

純母「遅い!! こんな時間までなにやってたの!?」

純「ごめん、ちょっとあってね…」

純「そうそう聞いてよ、ナンパされたんだよ私!」

純母「嘘おっしゃい」

純「嘘じゃない…ていうか即否定って」

純(まぁ、目当ては私じゃなかったけどさ)ゴソゴソ

純「はい、これお土産」

純母「……なにこれ?」

純「そば」

純母「頼んだものと違うわよね…」

純「いいじゃん、今日の夕飯はおそばで。おいしいよ?」

純母「はぁ…」

純父「うどん…」


##2 おわり



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最終更新:2011年07月12日 00:06