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休み時間
――2年1組
純「あっ、また漏らしちゃった」
梓「えっ!?」
純「ん? どしたの梓」
憂「じゅ、純ちゃん…」
梓「いや…ちょっと、……大丈夫?」
純「なにがよ」
梓「今…も、漏らしたって…」
純「あぁ、…私なわけないでしょ! これよ、これ」
純「携帯で飼ってるペット」
梓「ペット?」
純「うん、そういうアプリがあるの」
憂「わぁ…かわいいね!」
梓「びっくりした…私はてっきり純が」
純「だからそんなわけないっての」
梓「でも純ってさ、猫飼ってるよね」
純「うん」
梓「なんでわざわざ携帯でも…」
純「それはそれ、これはこれ」
憂「ねぇねぇ純ちゃん、そのアプリどこにあるの?」
純「えっとね――…」
梓「ペットか…」
梓「本物飼うより携帯の方が楽かもね」
純「本物は本物で楽しいけどね。梓もなんか飼ってみれば?」
梓「私は…いいや。前に純から猫預かったときも大変だったし」
純「でも可愛かったでしょ?」
梓「それはまぁ、…可愛かった」
梓「可愛かったけど、やっぱり毎日面倒みるのは大変そう…」
憂「私は何か飼いたいなぁ」
憂「犬とか猫とか」
梓「憂ならちゃんと世話できそうだね」
純「ていうか、憂にとったらお姉ちゃんがペットみたいなもんじゃない?」
梓「言えてるかも」
憂「お、お姉ちゃんはペットじゃないよ!」
憂「あ…でも」
憂(もしお姉ちゃんがペットだったら…)
――――――――――――――――
―――――――――
―――――
憂『お姉ちゃん、お手!』
唯『わん!』
憂『お座り!』
唯『わん!』
憂『よーし、いい子いい子』ナデナデ
唯『くぅ~ん』ペロペロ
憂『きゃっ! お姉ちゃんくすぐったいよぉ』
唯『わん!』
―――――
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――――――――――――――――
憂「えへ…えへへ///」
純「憂の考えることって、時々分からなくなるよね…」
梓「うん…」
梓「あっ、そういえば」
梓「軽音部で亀飼うことになったんだ」
純「亀?」
梓「うん、スッポンモドキのトンちゃん。結構かわいいんだよ」
純「へぇ~……」
純「…なんで部活で亀なんて飼ってるの?」
梓「いや…唯先輩たちが勝手に買ってきて…」
梓「……」
純「部室で飼うなんて、相変わらず奇想天外なことしてるね」
梓「ち、違うの! これは…」
梓「新入部員! そう、新入部員なの!」
純「えっ、新入部員? 亀が??」
梓「……なんでもない、忘れて」
憂「なんか話してたら、ペット欲しくなったなぁ」
純「じゃあ本格的に飼う?」
憂「う~ん…お母さんに聞かないと分からないけど…」
憂「どうだろう、難しいかな。でも飼ってみたいなぁ~」
純「あっ、なら帰りにペットショップ行く?」
梓「ペットショップ?」
純「うん。見てるだけでも楽しいと思うし、飼うとしたら参考にもなるかもしれないから」
憂「わぁ、いいかも!」
純「でしょっ」
梓「あっ、じゃあ私も行く。今日練習ないし」
純「よし、けってー!」
憂「どれぐらいの種類がいるんだろう」
純「私が猫買ったペットショップには、いろんな動物がいたよ」
純「犬や猫以外にも…ウサギとか鳥とか魚とか」
憂「ウサギ! いいな~」
純「おぉ…憂が珍しくはしゃいでる」
梓「よっぽど楽しみなんだね」
純「あっ、あと……ワニもいた気がする」
憂「ワニ!?」
純「ガブッと噛み付かれたりしてね」
憂「も~、変なこと言わないでよ純ちゃん」
純「あはは、ごめんごめん」
放課後
――2年1組
純「憂は?」
梓「まだ掃除」
純「そっか…美術室の掃除だっけ? それじゃあしばらくかかりそうだね」
梓「うん」
純「そういえばさ、結局部員来なかったの? 軽音部」
梓「…うん」
純「残念…だね」
梓「ううん、平気。しばらく五人のままでいいって決めたから」
梓「今は…まだこのままで」
純「そっか。でも来年は大変じゃない?」
梓「それは…その時になんとかする」
純「ふーん…まぁ軽音部なら大丈夫だろうね」
梓「うん…」
梓「…純」
純「うん?」
梓「ジャズ研は何人入ったの?」
純「うちは……何人だっけ、忘れちゃった」
純「でも結構入ったよ。入りやすいと思われてるのかな」
梓「結構入ったんだ…」
純「まぁね」
梓「ジャズ研か…私も去年見学に行ったなぁ」
純「どうして入部しなかったの?」
梓「え……なんていうか…」
梓「うーん…『これじゃない』って気がしたというか」
梓「あっ、別にジャズ研が悪いってわけじゃないよ!」
純「分かってる分かってる」
純「でもさ、私たまに考えるんだよね」
梓「なにを?」
純「もし梓がジャズ研に入ってたらなー…って」
梓「えっ…」
純「一緒に練習してたりするのかな」
梓「そう…なるのかな」
純「それとは逆にね、私が軽音部に入部してたらってことも考えた」
純「軽音部のハチャメチャにはついていける自信ないけど」
梓「…純なら対応できるよ」
純「そうかな」
純「でもどっちにしろ、梓と練習できたらなぁって思うよ」
梓「私と?」
純「うん」
梓「……」
純「あれ? …迷惑?」
梓「…ううん、嬉しいよ」
梓「今度一緒に練習しようね」
純「あっじゃあさ、ジャズ研と軽音部で合同練習ってのはどう?」
純「部長に掛け合ってみようかな…」
梓「そ、それはいいよ……たぶんうちが迷惑かけちゃうから」
憂「お待たせー!」
純「おっ、憂が来た」
憂「ごめんね、ちょっと時間かかちゃって」
梓「大丈夫だよ」
純「よし、三人そろったし行こっか」
憂「うんっ!」
――繁華街
純「結構大きなペットショップでさ、中も広くて色々あるんだよね」
憂「色々?」
純「ペット用品とか…あとグッズとかも」
憂「なんだか楽しそうだね」
純「ついでに猫のエサ買っておこうかなー」
梓「私もトンちゃんのエサ…はムギ先輩が持ってくるんだった」
純「…梓、前から聞きたかったんだけどさ」
梓「なに?」
純「紬先輩って、どれぐらいお金持ちなの?」
梓「え…ムギ先輩?」
純「そう、そのムギ先輩」
梓「どれぐらいって言われてもなぁ…」
梓「うーん……」
梓「とにかく…すごいお金持ちだよ」
純「もっと具体的に!」
純「通学の時は大きな車で来たりとか、純金のシャーペン使ってたりとか」
純「夜道を札束燃やして明るくしたりとか!」
梓「ムギ先輩はそんなことしないから!!」
憂「むしろ庶民的なことに憧れてるってイメージがあるよね」
梓「うん、些細なことでも興味持ったりとかして」
純「へー…そうなんだ。なんか意外」
純「もっとこう…豪勢な人だと思ってた」
純「ケーキいっぱい持ってきてるんでしょ?」
梓「そうだけど、全部もらい物って言ってた」
純「そんなにケーキもらえるなんて…どんな生活してるんだろう」
純「私だったら部活に持っていかないで一人で食べちゃうかなー」
憂「純ちゃんったら食いしん坊なんだから」
純「いやー、あはは」
純「でもいいよねー、紬先輩」
純「美人でお金持ちだし」
梓「なに考えてるか分からない時があるけど、基本的に優しいし…」
純「なんか…私みたいな庶民と比べるとすごい……なんていうか…」
梓「気持ちは分かるよ…」
憂「?」
――ペットショップ
純「さて、着いた着いた」
憂「わー! 犬がいっぱいいるー!」
純「とりあえず適当に見て回ろっか」
憂「かわいい~!」
梓「やっぱり小型犬がかわいいよね」
犬「わん!」
憂「あっ、今挨拶してくれた」
憂「こんにちわ」
犬「わん!」
憂「君のお名前は?」
犬「わん!」
憂「そうなんだ~」
純「本当に会話できてるのかな、アレ」
梓「さぁ…?」
憂「この子、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルっていう名前なんだって」
純「それ種類だし。上に書いてあるし」
憂「えへへ」
梓「聞いたことない種類…色んなのがいるんだね」
純「パグ、チワワ、トイプードル…」
梓「シー・ズー、チン…」
純「え? もう一回言って」
梓「だからシー・ズーとチン」
純「最後のほうだけもう一回」
梓「チン」
純「繰り返して」ニヤニヤ
梓「?」
梓「チンt」
梓「!?」
梓「こら純ーーー!!」
純「あはは!」
憂(チンを二回だから、チンチ……はっ!)
憂「うぅ…///」
純「あっ、見てみて。日本スピッツだって」
純「なんだかカッコいい名前だね」
梓「ごまかさないの! もう…」
純「ごめんごめん」
純「でもさっきの言葉だけどさ、犬のしつけでもあるじゃん」
憂「なにが?」
純「え? だからチンt…」
純「あぶなっ!?」
梓「おしい!」
憂「あとちょっとだったのにねー」
純「憂までひどい!?」
梓「ほら純、もう一度ちゃんと言って」
純「そんな手には乗らないもーんだ!」
梓「むっ、私をはめようとしたくせに」
純「それより、もっと見て回ろうよ」
純「この犬とかかわいいよ。なんだろコレ…」
映女「その犬はマルチーズね!」
純「へー……うん?」
映女「こんにちはー」
純「あれっ、なんで!?」
梓「だ、だれ…?」
最終更新:2011年07月12日 00:27