純「映研の友達」
映女「まさかこんな所で純に会えるとは思わなかった」
純「それはこっちの台詞だって。なんでペットショップなんかに?」
映女「実は今度の映画に――」
憂「あのー…」
純「どうしたの? 憂」
憂「その犬…マルチーズじゃなくてポメラニアンって書いてありますよ」
映女「えっ」
映女「………あっ、本当だ」
純「……」
映女「……」
映女「まぁどれも似たようなもんじゃない。足4本だし」
映女「それより! 私がここに来た理由、知りたい?」
純「ううん、別に」
映女「実は今年の文化祭は、犬の映画を撮ろうと思ってるのよ!」
純「あれ? 去年も犬の映画じゃなかったけ?」
映女「違う違う! 去年はタヌキ!!」
純「あぁ…思い出した。確か着ぐるみの…」
映女「そう、『人類滅亡 エピソード・パラダイスロスト』」
純「そんなタイトルだったんだ…」
映女「でも今年の映画は一味違うの。着ぐるみじゃなくて本物の犬を使おうと思ってね」
映女「それでペットショップでモデルの犬をどれにしようか探してるってわけ」
純「へぇー、本物使うんだ。なんか本格的だね」
映女「そ、だから今年の文化祭は楽しみにしててね」
純「うん、期待はしないでおく」
映女「じゃあ私、もう行かなきゃいけないから。ばいばーい」
純「はいはい、さいならー」
憂「映研…なんだかすごそうだね」
純「そうでもないよ? 去年の作品とか…あんま覚えてないけど正直面白くはなかったし」
梓「映研ってもう文化祭の準備始めてるんだ…早いなぁ」
純「映研が大々的に発表できるのって文化祭ぐらいしかないからね」
梓「そっか…なるほど」
純「さてと、他も回ろっか」
純「猫とか、かわいいよ?」
梓「!」
憂「猫もいっぱい種類があるねー」
梓「かわいい…」
梓「ね、純が飼ってるやつってどれ?」
純「うちの? 確かねー…」
純「これ! …じゃない」
純「こっち! …でもない」
純「あれ…どれだっけ?」
梓「なんで覚えてないの…」
純「それよりあの猫、可愛くない?」
憂「しっぽ振っててかわいいね」
純「あれはイライラしてるのよ」
憂「そうなの?」
純「うん。しっぽを早く左右に振ってるときはそうなの」
憂「へー、さすが純ちゃん。猫に詳しいね」
純「まぁそれほどでもー」
純「猫ってしっぽを見ると気持ちが分かるんだよ」
梓「ねぇ純、あの猫は? ゆっくりしっぽ振ってるよ」
純「あれは…確かリラックスしてる証拠」
憂「じゃあ、あれは? しっぽが立ってる」
純「え? うーん…怒ってる…のかな」
梓「あのしっぽを曲げてる猫は?」
純「なんか…悲しい気分なんだと思う」
憂「あっちの猫は足の間にしっぽを入れてるね」
純「しっぽが痛いんじゃないかな」
梓「…だんだん適当になってない?」
純「そんなことないよ」
・・・・・
純「憂、なに飼うか決まった?」
憂「まだ飼うってわけじゃ……それに見ただけだ満足しちゃったかも」
純「そっか、満足しちゃったか」
憂「でもまだ見て回りたいな」
純「じゃあ別のフロア行こうよ。犬と猫以外もいるし」
梓「……」ジーッ
純「ほら梓、行くよ」
梓「……」ジーッ
純「梓?」
憂「どうしたの? 梓ちゃん」
梓「なんか…この猫がさっきから私のことジッと見つめてくる」
猫「……」ジーッ
純「梓のことが気になるんじゃない?」
梓「えっ」
憂「真っ白なかわいい猫さんだねっ」
猫「……」ジーッ
梓「……」ジーッ
純「ほんとだ…梓をひたすら見つめてる」
憂「好きなのかな?」
純「付き合っちゃえば?」
梓「猫だし!」
猫「……」ジーッ
梓「むむ…」ジーッ
純「ほら、それより早く行こ」
梓「ちょっと待って。ずっと見られてるとこっちも視線を外しづらくて…」
猫「……」ジーッ
梓「……」ジーッ
猫「……」ジーッ
梓「……」ジーッ
猫「……」ジーッ
梓「……」ジーッ
猫「……」ジーッ
純「いつまでやってんの…」
憂「本当に梓ちゃんのことが好きなんだね、あの猫さん」
梓「……」ジーッ
猫「……」ジーッ
純「はい、もう終了。行くよ梓」グイッ
梓「にゃっ!?」
純「そんな気に入ったんなら、飼えば?」
梓「気に入ったとかじゃなくて、なんというか目が離せないというか…」
猫「……」ジーッ
純「まだ梓のこと見てるね…」
猫「……」ジーッ
梓「……行こっか」
憂「いいの?」
梓「うん…ずっと見ててもしょうがないし」
梓「じゃあね」
猫「……」ジーッ
梓「あの猫、なんだったんだろう」
純「梓に惚れたか、もしくは梓に恨みがあるか」
梓「恨まれるようなことなんてしてないけど…」
憂「じゃあやっぱり梓ちゃんのことが好きだったんだね」
九官鳥「アズサ! スキ! スキ!!」
梓「うわっ、びっくりした」
憂「九官鳥だ!」
九官鳥「スキ! スキ!」
九官鳥「アズサスキ!」
純「モテモテだね、梓」
梓「うれしくなーい!」
九官鳥「アズサ! アズサ!」
純「九官鳥って本当に人の言葉真似するんだ」
憂「テレビで見たことある。舌の動きが人間に似てるんだって」
憂「意味は分かってないみたいだけど」
純「へぇー」
九官鳥「アズサ、スキ! アズサ、スキ!」
梓「どうでもいいけどやめさせてよこれ…すごい恥ずかしいんだけど…」
純「面白いじゃん」
梓「面白くない!」
九官鳥「アズサ、スキ!」
梓「はぁ…」
純「なんか適当に言ってみれば? そうしたら言葉変えるかも」
梓「うーん…」
憂「お姉ちゃん!」
九官鳥「オネエチャン! オネエチャン!」
梓「本当だ…」
純「ドーナツ!」
九官鳥「オネエチャン! ドーナツ!」
九官鳥「オネエチャンドーナツ!」
純「お姉ちゃんドーナツ? なにそれ」
憂「あは、おもしろい」
九官鳥「オネエチャンドーナツ!」
純「ほら、梓もなんか言ってみなよ」
梓「…じゃあ」
梓「唯先輩、ちゃんと練習してください」
純「長いって」
梓「えっと、それなら……唯先輩、練習して!」
九官鳥「ユイセンパイ! レンシュウシテ!」
梓「言った!」
純「それにしても、なんで唯先輩指定?」
梓「なんとなく思いついたから」
梓「それに、まじめに練習してないのは本当だし」
憂(お姉ちゃん…)
九官鳥「ユイセンパイ! レンシュウシテ!」
九官鳥「ユイセンパイ! レンシュウシテ!」
梓「…部室に置いておきたいかも」
純「もう動物園にしちゃいなよ、軽音部の部室」
・・・・・
純「結局、憂はどうするの? 飼う?」
憂「とりあえず今はいいかな。でもいつかは飼ってみたい」
純「私ももう一匹ネコ欲しくなっちゃった」
梓「猫か…」
梓(あの猫なんだったんだろう…)
憂「あっ、これ欲しいかも!」
純「どれ?」
憂「犬のストラップ!」
純「あぁ…グッズか」
憂「かわいいね~」
純「ストラップぐらいなら私も買おうかな。ちょうど携帯につけるやつ欲しかったし」
梓「あっ…私も買う」
純「憂はどれにする?」
憂「うーんとね…この犬のやつにしようかな」
純「ほうほう、じゃあ私は……どれにしよう」
梓「私は…猫のやつの」
純「え? 憂は犬で梓は猫…」
純「じゃあ私は……うーん」
純「…犬と猫二つとも買っちゃお!」
梓「二つも?」
純「だって二つとも可愛いんだもん」
純「二人のともお揃いだし」
憂「…じゃあ私も猫のやつ買おうかな」
純「え?」
梓「……私も。二つ買う」
純「なに、どうしたの二人とも?」
憂「猫もかわいいなーって思って」
――帰り道
純「結局、三人とも同じもの二つ買っちゃったね」
純「なんか変なの」
憂「でもかわいいよ~、これ」
純「まぁそうだけどさ」
梓「……」
純「梓、なに考えてるの?」
梓「さっきの猫のこと。ずっと頭から離れなくて」
梓「なんだったんだろうなー…」
純「まじめな話、梓に飼ってもらいたかったんじゃないの?」
梓「私に?」
純「きっとそうだって」
梓「そう言われてもなぁ…」
憂「あっ、私この辺で。買い物しなきゃいけないから」
純「うん、じゃあね憂。また明日」
梓「ばいばい」
憂「また明日ね!」
純「さてと、私もここら辺で」
梓「うん、またね」
純「そうだ…今度またうちの猫預かってみる?」
梓「え……いいの?」
純「梓が迷惑じゃなかったらいいよ」
梓「……」
梓「じゃあ…今度お願い」
純「おっけー、任せて」
純「それじゃ、ばいばい梓」
梓「ばいばい…また明日ね」
・・・・・
純「二つも買っちゃたけど、どうしよう」
純「二つとも携帯につけよっかな…」
純「あっ、バッグにつけてもいいかも」
純「どれどれ……うん、いい感じ!」
純「ふぅ…」
純「お腹すいたな…早く帰ろっと」
純「……」
純「……?」
純「あれ…なんか忘れてるような…」
純「なんだっけ…」
純「……」
純「あっ、猫のエサ買うの忘れてた」
翌日
――ペットショップ
唯「見てみて~! 犬や猫がいっぱいだよー!」
律「またなんで急にペットショップに行きたいとか言い出したんだ?」
唯「昨日憂が行って、楽しかったって聞いたから」
唯「みんなかわいいね~!」
澪「すごい数だな…」
律「…ワニとかいたりして」
澪「そ、そんなのいるわけないだろ!」
律「分かんないぞー」
律「こう…飼育箱から抜け出して澪を…」
律「ガブガブガブー!! っと」
澪「ひいぃぃ!?」
唯「あっ、ムギちゃーん。鳥さんがいるよ」
紬「それは九官鳥ね」
唯「へぇ~、これが九官鳥かぁ」
九官鳥「ユイセンパイ! レンシュウシテ!」
唯「!?」
##4 おわり
最終更新:2011年07月12日 00:28