##6
――2年1組
憂「今日も雨だね…」
純「イヤになっちゃうよね。朝大変だし」
憂「洗濯物も乾きにくくなるし」
純「そこら辺を心配するとは……さすが憂」
梓「おはよ」
憂「あっ、おはよう梓ちゃん」
純「おはよー。どうしたの? 濡れちゃってるじゃん」
梓「うん…来る途中に車にひっかけられちゃって」
憂「風引いちゃうといけないし、タオル貸してあげる」
梓「ありがとう、憂」
純「梓も朝からご苦労なことで」
梓「ほんと、早くやんでほしい…」
純「あーあ、こういう日はなにもやる気が起きないなぁ」
梓「ふぅ…」ゴシゴシ
純「一時間目なんだっけ?」
憂「体育だよ」
純「うわ…めんどくさい」
憂「雨だから体育館だね」
純「体育館行くのもめんどくさいなぁ…」
梓「憂、タオルありがとう」
憂「どういたしまして」
純「はぁ~…動きたくない」
梓「こうもどんよりしてると…なんかイヤだよね」
純「今日休みだったらよかったのに…」
――体育館
カッ コーン
パコーン パカッ
梓「卓球かぁ…」
純「……」ボケー
梓「どうしたの?」
純「なんか疲れた……」
梓「早っ…まだ授業始まったばかりなのに」
憂「二人とも、あっちの台空いてるからやろうよ」
梓「うん。いこっ、純」
純「は~い……私、審判でいいよ」
梓「いい加減、元気出しなよ」
純「なんかどうもね……今日は調子悪い」
憂「保健委員の人呼んでこよっか?」
純「あっ、ううん。そこまでじゃないから。大丈夫大丈夫、ごめん」
カッ
パコッ
純「……」
憂「えいっ!」
パコーン!
梓「にゃっ!?」
憂「やったー!」
梓「はぁ…憂強いなぁ」
純「……」
梓「純、何対何?」
純「……」ボケー
梓「純ってば!」
純「え? あぁ…ごめん、なに?」
梓「私たちの点数聞いてるのっ」
純「あっ、えっと……何点だっけ?」
憂「10対2だよ」
純「あっ、そうそう」
梓「もう…純が覚えてなくてどうするの」
純「あはは……ごめんごめん」
放課後
純「じゃあ私、ジャズ研行ってくるね」
憂「うん、ばいばい純ちゃん」
梓「…今日の純、めずらしく元気ないね」
憂「そうだね…」
梓「風邪とかじゃないとは思うけど……あっ、私も軽音部行かなきゃ」
憂「うん、行ってらっしゃい梓ちゃん」
梓「じゃあまた明日ね」
憂「ばいばーい」
憂「……はぁ、帰ったらどうしようかな」
憂「……」
憂「雨かぁ」
――ジャズ研 部室
先輩B「っくしゅん」
先輩C「風邪か?」
先輩B「う゛ん……そうかも」ズズッ
先輩C「まったく、だらしない生活してるからそうなるんだぞ」
先輩B「だらしなくないよ~。…体弱いんだし仕方ないじゃん」
純「……」ボケー
先輩B「純も元気ないね」
純「へっ? あっ……はい」
先輩B「めずらしいね~、純が元気ないなんて。そりゃ雨も降るはずだ」
純「元気ないわけじゃないんですけど…」
先輩B「あ~……寝たいね~」
純「ですねー……」
先輩A「風邪なら今日は帰って休んだほうがいいんじゃない?」
先輩B「う~ん……そうしよっかな。誰かに移すといけないし」
純「はぁ……」ボケー
先輩C「なんだこの空気は…なんで今日はこんなどんよりしてるんだ……」
先輩B「んじゃぁ~~…あとは副部長よろしく」ズズッ
先輩C「明日には治しておくんだぞ」
先輩B「あ~い」
先輩C「はぁ…まったく」
純「……」
先輩A「純ちゃんも風邪?」
純「あっ…私は大丈夫です」
先輩C「だったらシャキっとしろ」
純「す、すいません…」
先輩C「全員集まったか?」
「まだです」
先輩C「もうすぐ練習時間だっていうのに…」イライラ
先輩A「みんな色々あるんだし、いいじゃない。まったりやりましょうよ」
先輩C「そんな余裕はないだろ……コンテストまであっという間なんだぞ?」
先輩C「とにかく私が仕切る以上、今日はいつもより厳しくやるかな」
先輩A「こわーい」
先輩B「ジャズ研絶対王政時代の到来だよ~」
先輩C「お前は早く帰れ!!」
後輩C「おはようございます」
純「あ、うん。おはよ」
後輩C「今日もじめじめしてますね…」
純「そうだねー…イヤになっちゃう」
純「早く夏にならないかなぁ」
後輩C「あのっ……純先輩」
純「ん~?」
後輩C「昨日練習したフレーズがまだできなくて……その、教えてもらえませんか…?」
純「うん……あとでね」
後輩C「あ…はい……」
純「……」ボケー
後輩C「……」
後輩C(センパイ大丈夫かな…調子悪そうだけど……)
・・・・・
ザアアアアア――――
先輩C「…こうも湿度が高いと、楽器の状態も心配になるな」
先輩A「雨、いつになったらやむんだろう…」
先輩C「今週末までずっとらしい……ん?」
純「……」ボケー
先輩C「……」
純「……」ボケー
先輩C「鈴木、なにをしてるんだ」
純「え? あ、はい……休憩です」
先輩C「そうじゃなくて…何でさっきから床をじっと見つめてるんだ」
純「マスを数えてて……」
先輩C「…お前、本当に風邪とかじゃないんだろうな?」
純「だ、大丈夫ですよ」
先輩A「でも見るからに元気ないし…」
先輩C「ほら、ちょっとおでこかしてみろ」
純「……」
先輩C「…熱はないみたいだな」
純「だから風邪じゃないですって」
先輩C「なら一体何が原因だ…?」
先輩A「…………お腹痛いの?」
純「いや、大丈夫ですけど…」
純「ていうか……今日の私ってそんなに変ですか?」
先輩A「うん」
先輩C「変だな」
純「そうですかぁー? ……確かにちょっとダルかもしれないけど」
後輩C「純先輩……よかったらこれどうぞ」
純「え?」
後輩C「純先輩が好きだって言ってたお菓子です…」
先輩C「今は部活中だぞ。そんなものは後にしろ」
後輩C「あっ…ご、ごめんなさい!」
先輩A「いいじゃない、一つぐらい。休憩時間なんだし」
先輩C「むぅ……」
純「じゃあ……一つもらうね」パクッ
先輩A「私もいい?」
後輩C「は、はい。どうぞ」
純「うん…おいしい」
先輩C「……」ジーッ
先輩A「食べないの?」
先輩C「わ、私は別に…」
先輩A「食べたかったらそう言えばいいのに」
先輩C「うっ……」
後輩C「…あ、あの、どうぞ」
先輩C「……じゃあ一つ」
純「……」ポリポリ
先輩A「……」ポリポリ
先輩C「……」ポリポリ
後輩C「……」
先輩C「…これどこに売ってたんだ?」
後輩C「えっ……駅前のコンビニですけど」
先輩C「そうか、なるほど」
先輩A(はまったんだ)
純「はぁ~……」ボケー
先輩A「疲れてるの?」
純「いえ…」
先輩C「やる気がないなら帰れ。そのままいても迷惑だ」
純「うっ……」
先輩A「そこまで言わなくても……あっ、分かった!」
先輩C「何が」
先輩A「ふふーん…純ちゃん、ズバリあなたは今……恋をしてるのね!」
純「…………え?」
先輩C「恋?」
先輩A「そう! これはきっと恋煩いの症状よ!」
先輩A「そうでしょ純ちゃん? 恋してるんでしょ?」ズイッ
先輩C「してるのか?」
純「いやいやいや、してませんって! 何でそうなるんですか!?」
先輩A「だってずっとボケーッとしてるし、それしかないじゃない」
先輩C「そうなのか?」
先輩A「そういうものなの、恋っていうのは」
先輩C「よく分からないな…」
純「あの……私の話聞いてます?」
先輩A「恋したことないの?」
先輩C「そういうものは……ずっと女学校だったし…」
先輩A「へー以外」
先輩C「…って、私のことはどうでもいいだろ! 問題は鈴木だ」
先輩A「あっ、そうだった。相手はどういう人?」
純「もー! だから違いますってー!!」
先輩A「えー、でもこの様子は間違いなく…」
純「なんか…今日のセンパイはノリノリですね…」
先輩A「そう? でもこういう話は盛り上がるよねー」
先輩C「どうでもいいから…とりあえず鈴木はもう少し部活に集中しろ。そんな状態で練習しても身にならないぞ」
純「ご、ごめんなさい…。気をつけます」
先輩C「ん…それでいい。いつまでもそんな調子だったら外周させてるところだ」
純「あはは…勘弁してください。雨なのに」
先輩C「ならしっかりやるんだぞ。もう二年生なんだからな」
純「はい…」
後輩C「……」
部活終了
先輩C「よし、今日はここまで。帰ったらちゃんと楽器の手入れをしておくんだぞ」
先輩A「お疲れ様」
純「ふぅ……」
同級生「純、帰ろっ」
「待って、あなたは私と残って居残り特訓よ」
同級生「えぇ!?」
「いいでしょ?」
先輩C「あまり遅くならないようにな。先生には私から言っておく」
「ありがとう。じゃあ早速はじめようね」
同級生「そんな~!!」
純「ご愁傷様……私たちは行こっか」
後輩C「はいっ」
最終更新:2011年07月12日 00:37