##11
唯「あっずにゃーん!」バッ
梓「!?」サッ
唯「あっ、逃げちゃダメだよあずにゃん!」
梓「出会い頭に抱きついてこないでください!」
唯「憂! あずにゃん捕まえて!」
憂「え? うん」ガッ
梓「憂っ!? 裏切ったの!!?」
憂「ごめんね梓ちゃん」
唯「つっかまえたっ!!」ガバッ
梓「に゛ゃっ!?」
唯「ふっふっふ、では一緒に部室へ行こうかあずにゃんよ」
梓「い、行きますから離れてください」
唯「えー、このままでいいじゃーん」
梓「よくないです!」
純「相変わらず異様に仲良いね、あの二人」
憂「そうだね。それにお姉ちゃん、学園祭に向けて練習頑張るって朝から張り切ってたんだよ」
純「へぇー、そうなんだ。じゃあ私もジャズ研行ってくるね」
憂「ジャズ研も学園祭の練習?」
純「それもあるけど、うちはどっちかと言うと来月のコンテスト重点の練習かな」
憂「そうなんだ、頑張ってね純ちゃん」
純「うん、いってきまーす」
――ジャズ研 部室
純「ねぇ、もし私がいきなり抱きついたりスリスリしたらどう思う?」
後輩c「へぇっ!?」
純「どう思う?」
後輩c「ど、どうって……いきなりは困ります…かも」
純「だよねー、私もそれはできないもん」
後輩c「あ…そうなんですか」
純「やっぱ恥ずかしいじゃん? あはは」
後輩b「なんの話をしてるんですか?」
純「私がみんなに抱きついたらどんな反応するかなって話」
後輩a「どうしたんですか急に」
純「気になっただけだって。何なら私に抱きついてもいいよ?」
後輩a「それは…いいです」
純「断られるとちょっとショックだね」
純「でさ、私考えたんだけどね」
後輩b「はい」
純「ジャズ研はもっと先輩と後輩が打ち解けてもいいんじゃないかな、って」
後輩a「打ち解け…ですか?」
純「そう! 今みたいな上下関係もいいけど、もっとこうフレンドリーな感じもよさそうじゃない?」
純「ねっ」
後輩c「は、はい!」
後輩b「でも、具体的にはどんなことするんですか?」
純「例えば……お菓子を食べたり」
後輩a「お菓子?」
純「ここにポッキーあるから、みんなで食べていいよ」
後輩b「あっ、どうもです」
純「こんな感じでお菓子食べながら、お茶してお話して交友を深めるってのはどう?」
後輩a「いいですね、最高です!」
後輩c「お茶はどうしますか?」
純「お茶は…あっ、飲みかけだけどフルーツオレあるよ。飲む?」
後輩c「えっ」
後輩c(の、飲みかけ…!?)
純「いらない?」
後輩c「い…欲しいです!」
純「じゃあはい」
後輩c(や、やった……純先輩の飲みかけ…)
純「そういえばもうすぐ文化祭だけど、一年はなにやるの?」
後輩a「私たちはお化け屋敷です」
純「へぇー、懐かしい。私たちも一年の頃はお化け屋敷だったなぁ」
後輩a「純先輩はなんのお化けやったんですか?」
純「なんだっけ。確か……吸血鬼だったかな」
後輩b「あっ、似合いそうですね」
純「写メ見る? たぶん携帯に残ってるはずだから」
後輩a「見せてください」
純「えーっと…あった、これこれ」
後輩c「わぁ…!」
後輩a「確かに似合ってる」
後輩b「ねー」
純「あはは…なんか恥ずかしいね」
後輩a「あっ、もっと見せてくださいよ」
純「えー、しょうがないなー」
後輩b「そういえば、純先輩のクラスは今年なにやるんですか?」
純「うちのクラスは喫茶店みたいなの。和風な感じで」
後輩a「絶対行きますね」
純「うん、来て来て。大歓迎するから」
後輩c「わ、私も……」
先輩B「楽しんでるところ悪いけど、もうそろそろ練習始めるよ~」
純「あっ、はーい」
純「それじゃ、練習がんばろっか」
後輩c「は、はい!」
先輩C「鈴木」
純「なんですか?」
先輩C「お菓子を食べるのはいいけど…」
純「ゴミはちゃんと捨てますって」
先輩C「むっ……分かってればいいんだ」
純「あっ、ポッキー一本余ってますから先輩よかったらどうぞ」
先輩C「あ、あぁ…うん」
先輩C「……」ポリポリ
純「よし、じゃあ練習がーんばろっと!」
先輩C「……」
先輩B「なんかさ、純もたくましくなったね」
先輩C「元からああいうやつだろ?」
先輩B「そういえばそうだったかもね~」
先輩C「ま、そうじゃないと困るけど」ポリポリ
先輩B「いいな~ポッキー。私にもちょうだい、半分でいいから」
先輩C「やだ、私の」
先輩B「け~ち~、副部長のくせに」
先輩C「副部長は関係ないだろ」
先輩B「人の上に立つということはそれなりに器が大きくなければいけないのだよ、ワトソン君」
先輩C「誰がワトソン君だ!」
・・・・・
純「そこ、ちょっと早いよ」
後輩c「は、はいっ」
純「焦んなくていいから、落ち着いて弾いても平気だよ?」
後輩c「す、すいません。でも……」
純「大丈夫大丈夫、ミスしても平気だって。そんなの気にしなくていいんだから」
後輩c「えっ」
純「だって練習中なんだし、ミスしたらまたやり直せばいいじゃん」
純「失敗を恐れないでさ」
後輩c「純先輩…」
純「もう一度やろっか」
後輩c「…はいっ!」
・・・・・
先輩B「そんじゃあ~、今日はここまで。お疲れ~」
純「ふぅ……」
純「……」
純(それにしても、我ながらさっきはいいこと言ったかも)
純(失敗を恐れない、か……カッコいい)
純「……」
先輩B「なにニヤニヤしてんの?」
純「えっ…あ、いえ何でもないですよ。あはは」
先輩B「ふ~ん……リボン」
純「へ?」
先輩B「制服のリボン、取れかかってるよ」
純「あれっ、本当だ。いつのまに…」
先輩B「ほら、結んであげる。こっちおいで」
純「すいません、わざわざ」
先輩B「先生に見つかるとうるさいからね~、緩めるなら校舎出てからにしな」
先輩B「はい、完成」
純「ありがとうございます」
先輩A「ふっふっふ~、見ちゃった」
純「え?」
先輩B「なにが?」
先輩A「今純ちゃんのリボン直してあげたでしょ?」
先輩B「うん」
先輩A「それってね、桜ヶ丘高校に伝わる姉妹の契りなのよ」
先輩A「リボンを直した人は、直してあげた人のお姉さんになるの!」
後輩c「!?」
先輩B「なんじゃそりゃ」
純「聞いたことないしちょっとよく分からないんですけど」
先輩A「そう? 一部じゃ結構有名よ?」
先輩B「しょせん一部でしょ。誰かが面白がって適当に広めた噂だって~、オカ研辺りとかが」
先輩A「もう、ロマンないんだから」
純「それにリボン直しただけで姉妹って…なんで」
先輩A「でもそういうのっていいと思わない? だって憧れの人に近づけるかもしれないんだし」
純「憧れの人……」
純(澪先輩…!!)
純「確かに……いいかもしれませんね」
先輩B「えぇ~、純まで~? じゃあ今から私と純は姉妹になるってわけ?」
純「あの……できればノーカンで」
先輩B「そう言われるとなんかちょっとショック」
後輩c「……」
後輩c(リボンを緩めて、それを直してもらえば……)
後輩c(純先輩と姉妹に…!!)
後輩c「……」
後輩c「……」スルッ
後輩c(こ、これぐらいでいいかな……)
後輩c(……ちょっとわざとらしすぎるかも)
後輩c「……」イジイジ
純「どうしたの? 帰らないの?」
後輩c「あ…い、今行きます」
後輩c(これなら…大丈夫、かも)
――廊下
純「でね、帰りにコンビニ寄ろうと思うんだけど」
後輩c「はい」
後輩c(純先輩……気づいてくれないのかな)
後輩c「……」チラッ
純「あの雑誌、今日発売だしね」
後輩c「……」チラッ
純「ついでにヘアゴムも買っておかないと」
後輩c「……」チラチラッ
純「そうだ、私教室に忘れ物あるから悪いんだけどここで待ってもらえる?」
後輩c「あ……はい」
純「ごめんね、すぐ戻るから」タタッ
後輩c「……」
後輩c「はぁ……」
後輩c(もっと積極的になった方がいいのかなぁ…)
後輩c「……」
後輩c「……」
さわ子「ちょっと、そこのあなた」
後輩c「は、はい」
さわ子「制服、ちゃんと着なさい」
後輩c「す、すいません…」
さわ子「もう、放課後だからってだらしない格好しちゃダメよ。分かった?」
後輩c「ごめんなさい…」
さわ子「次からは気をつけてね」
後輩c「はい……」
後輩c(怒られた……)
後輩c「……はぁ、なんで私ってこんな間が悪いんだろう」
後輩c「……」
後輩c(あ、そうだ。さっき純先輩からもらったフルーツオレ……あった)ゴソゴソ
後輩c(さっきは緊張して飲めなかったけど、今は誰も見てないし……)
後輩c「……」
後輩c(純先輩と…間接キ、キス……!!)
純「おまたせー…って、なにしてるの?」
後輩c「はわっ!?」
純「あれ、それさっきのフルーツオレ…?」
後輩c「こ、これは…そのっ……」
後輩c(な、なんて言えば……)
純「もしかして、捨てようとしてた?」
後輩c「え?」
純「貸して」ヒョイッ
後輩c「あっ……」
純「えっと、確かこの辺にゴミ箱が……あった」
純「それっ」ポイッ
後輩c「あ…あぁっ……!?」
ヒュー・・・ガサッ
純「ナイッシュー!」
後輩c「……」
純「さてと、行こっか」
後輩c「……」プルプル
純「なにしてるの?」
後輩c「い、いえ……」
純「よし、じゃあ早くコンビニにゴー!」
後輩c「ご、ごー……」
後輩c(はぁ……)
純「ついでにドーナツも買っちゃおうかなぁ」
後輩c「……」
後輩c(でも……純先輩も楽しそうだし…いいかな)
翌日
憂「あっ、梓ちゃんリボン緩んでるよ。直してあげる」
梓「ありがとう、憂」
純「!?」
憂「はい、できた」
純「こ、これって……!」
梓「どうしたの純?」
純「憂と梓が姉妹になっちゃった!!」
憂「え?」
梓「……なにそれ」
純「そういう噂があるんだって。制服のリボンを直すと…」
唯「あっずにゃーん!」ダキッ
梓「にゃっ!?」
梓「な、なんですかいきなり!」
唯「えへへ~、あずにゃんを見つけたらつい」
梓「ついじゃありませんよ、もう」
唯「ごめんごめん。それより部活行こうよ!」
梓「いいですけど……あっ」
唯「なに?」
梓「唯先輩、リボン少しずれてます」
唯「へ?」
梓「ほら、ここ」キュッ
純「!?」
唯「ありがと~、あずにゃん」
梓「しっかりしてくださいね」
唯「えへへ。じゃあ憂、行ってくるね」
憂「うんっ、いってらっしゃーい」
唯「純ちゃんもばいばーい」
純「あ…さようなら」
純「……」
憂「どうしたの純ちゃん?」
純「梓が唯先輩のリボンを直した……つまり梓は唯先輩のお姉さん!?」
憂「え?」
純「でも憂はさっき梓のリボン直してたから梓のお姉さんであって……」
純「唯先輩は憂のお姉ちゃんだから…梓は憂の………あ、あれ、どうなってるの?」
憂「よく分からないけど…これからケーキでも食べにいく?」
純「行く!」
##11 おわり
最終更新:2011年07月12日 00:51