##13


純「今年の文化祭は喫茶店かぁー」

憂「楽しみだねー」

純「んー…なんか別なのがよかったかな。飲食店って他のクラスも結構やってそうだし」

梓「じゃあ何がよかった?」

純「……まぁ喫茶店もいっか」

梓「思いつかなかったか」

純「だって急に言われても」

憂「そういえば、今年は人手が足りなそうだね」

純「部活とかで駆り出される子もいるからしょうがないよ」

憂「なんか当日までドタバタしそう」

純「お祭りに参加するのはいいけどさ、準備が大変なんだよね」

純「おまけにテスト期間もあるし、この時期は忙しいなぁ…」

憂「でもそういうのも楽しそうじゃない?」

純「うーん、私もスイッチが入ればなんでもばばーっとこなせちゃうんだけどね。やればできる子だから」

梓「で、今はやらないの?」

純「今は…やる気スイッチが見つからない」

梓「やる気スイッチか……そんなのあるんだったら部活の先輩達に押してあげたい」

梓(いつまでも先輩達のペースに巻き込まれていたら私までダメになってしまう……というか最近本格的にダメになってきてるような)

純「なに悩んでんの?」

梓「え? あ…ううん、別に」

純「あっ、そろそろ時間だから行ってくるね」

憂「うん、いってらっしゃい」

梓「……私も早く行かないと」


――ジャズ研 部室

純「こんちわー」

先輩B「うーむ……」

純「あれ、どうしたんですかセンパイまで悩んで」

先輩A「文化祭でやる部活の出し物を考えてるの。なかなか決まらなくて」

純「え? ライブやらないんですか」

先輩B「今年はね。それよりもお金が必要だし~」

純「お金?」

先輩B「機材とかさ、壊れたりして不足してるのがあるんだよ~。それに本格的にウッドベースとかも置いておきたいし」

先輩B「そんで先生に聞いてみたら文化祭での売上金の一部は部費に足せるみたいだから、ならやろうって思ってね~」

純「へー」

先輩B「そして肝心の出し物なんだけど…何がいいかな~」

先輩C「ジャズ喫茶でいいだろ」

先輩B「ありきたりすぎ、喫茶店なんてどこでもやってんじゃん~」

先輩B「純のクラスはなにやるの?」

純「喫茶店です」

先輩B「ほら」

先輩B「やっぱね、他とは違うお店をやってお客を集めないと」

先輩C「ジャズの時点で十分他と差別化できてると思うぞ」

純「あのー」

先輩B「ん?」

純「ジャズ喫茶ってどういうお店なんですか?」

先輩B「んー、簡単に言えば音楽聞きながらコーヒー飲むお店」

先輩A「生演奏とかすればけっこう盛り上がるかもね」

先輩C「よし、決まりだな」

先輩B「えぇー…ほんとにいいの~?」

先輩C「まだ何かあるのか?」

先輩B「ん~~……ジャズお化け屋敷とかは?」

先輩C「適当なことを言うな!」

先輩B「…じゃあしょうがない、それでいいよ。ジャズ喫茶わたしも賛成」

先輩B「やるならきっちりやろっか、さっき言ってた生演奏も」

純「生演奏……」

先輩B「どうせならローテーション組んで部員全員が演奏できるようにしようよ」

純「それって私もやれるってことですか?」

先輩C「人前で演奏するのに慣れておいて方が良いだろ」

先輩B「みんなのスケジュールと…曲目も考えないとね~。歌も歌ってみる?」

純「いやー、人前で歌うのはちょっと」ニヘラ

先輩B「いや、歌うのは純じゃないから」

純「あれ!?」

先輩B「ていうか純って歌えるの?」

純「そこそこ歌えますよ、そこそこ」

先輩B「ほんとに?」

純「ほんとです!」

先輩B「……本当に?」

純「なんで二回も聞くんですか」

先輩C「で、歌うのか?」

先輩A「私?」

先輩C「歌えるのはお前ぐらいだろ」

純「センパイって歌上手いんですか?」

先輩B「上手いよ~、すごく。一回歌ってみてよ~」

先輩A「きゅ、急には恥ずかしいって」

先輩B「聞きたいよね?」

純「はい!」

先輩B「ではどうぞ」

先輩A「えぇ~……もう、一回だけだからね」

♪~~~~~~~~~~~~♪

純「……」ポカーン

先輩A「ど、どう?」

純「上手い! 上手いですよ! 歌だけでお金取れますって!!」

先輩A「そ、そこまでかな…」

先輩B「じゃあ歌は決定ってことで~」

先輩A「……本当にやるの?」

先輩B「お金のためだから、ね」

先輩A「はぁ……」

先輩B「純も歌ってみるかい?」

純「えっ、私も?」

先輩B「そこそこ歌えるんだったら、ボーカルデビューできるかもね~」

純(ボーカルデビュー…!!)

純「じゃ、じゃあ一曲だけ」

先輩B「はい、どぞ」

♪~~~~~~~~~~~~♪

先輩B「……」

純「ど、どうでしたか?」

先輩C「まぁ…その……がんばれ」

先輩B「うん」

純「あれ?」

先輩B「そんじゃ大まかなこともバンバン決めちゃいましょうか」

純「あの、私の歌は?」

先輩A「メニューはどうしよう」

純「あの、歌は!?」

先輩C「お前の取り柄は歌だけじゃないさ」

純「えぇー……」

先輩B「メニューか…コーヒーとジュースと」

先輩A「なにか甘いものは?」

先輩C「甘いものか……」

先輩B「あっ、甘いもので思い出したけどさ~、この前のマラソン大会最悪だったよね」

純「なんでマラソン大会が出てくるんですか」

先輩B「ほらあれがあったじゃん、おしるこ」

純「あー、ありましたね」

先輩B「あんなにマズイおしるこは初めてだったナ~」

先輩A「そんなにまずかったっけ?」

先輩B「だってさぁ~、暑さも残った時期に4~5㎞走らされて疲れた後に出されるのがおしるこだよ?」

先輩B「食べたくないって。カキ氷出せよって」

先輩A「まぁ…おしるこはね、正直微妙だった気もするけど」

先輩B「学校側は絶対にわたし達のこと馬鹿にしてるよ~、なんだよおしるこって~。しかも私の順位下から5番目だったし」

先輩C「それはお前の足が遅いからだろ」

純「私はけっこう食べれましたけど、おしるこ」

先輩C「私もな」

先輩B「えっ、うそ~」

先輩C「いいか、おしるこっていうのは糖分と塩分、炭水化物とたんぱく質が一気に摂れるから最適なんだ」

先輩C「汗で身体が冷えるのも防げるしな」

純「そうですよ!」

先輩C「そうですよって、お前はよく分かってないだろ」

純「あはは」

先輩B「う~ん~……いや、おしるこは認めない」

先輩B「ていうか~二人は甘いもん好きなだけでしょ?」

先輩C「私は理に適ってるって言ってるだけだ」

純「そうそう!」

先輩B「じゃあ質問するけどさ~、アイスクリーム好き?」

先輩C「まぁ…好きな方だけど」

純「好きですよ」

先輩B「ケーキは?」

先輩C「嫌いなやつなんていないだろ」

純「好きですね」

先輩B「じゃあ茶碗蒸しは?」

先輩C「茶碗蒸し? 好きってほどでも……」

純「昔プリンと間違えたことあったっけ……あんまり好きでもないですね」

先輩B「プリンは好きなの?」

純・先輩C「好き」

先輩B「ミートソースのスパゲッティは?」

先輩C「好きだ」

純「はい、好きです」

先輩B「焼き魚は?」

先輩C「嫌いではないけど、好きでもない」

純「不味くはないけど食べづらいから微妙かな」

先輩B「ハンバーグは?」

先輩C「好き」

純「美味しいですもんね」

先輩B「じゃあそのハンバーグの上に目玉焼きが乗ってたら嬉しい?」

先輩C「嬉しいに決まってるだろ」

純「まぁ乗ってた方がいいですよね」

先輩B「ほら、舌が子供だからおしるこも食べれたんだって」

先輩C「どういう理屈だ!?」

先輩B「どうせ甘かったりソースがかかってたりしてりゃ何でもよかったんでしょ?」

先輩C「馬鹿にするな!!」

純「うーん、そう言われてしまうと…」

先輩C「納得するな!!」

先輩A「二人とも大味なものが好きそうだしね」

先輩B「道端にコーヒーとコーラが落ちてたらどっち飲む?」

先輩C「コーラ」

純「私も」

先輩B「やっぱり」


25
最終更新:2011年07月12日 00:58