##14
純「すいません、買い物に付き合ってもらって」
先輩A「いいのいいの。欲しいもの、見つかってよかったね」
純「助かりました、ありがとうございます」
先輩A「ところでそれ、何に使うの?」
純「これはですね…」
ぽつ……ぽつ……
純「あれ?」
先輩A「雨…かな。いきなりくるかも」
――…ザァァアアーー
純「わっ!? ほんとにいきなり降ってきた!!」
先輩A「と、とりあえずあっちで雨宿りしないと」
ザァァアアー
純「うわー…本降りだ」
先輩A「天気予報は晴れって言ってたんだけどね」
純「天気予報なんて全然当たらないんだからあんなの意味ないですよ」
先輩A「本当よね」
純「考えてみれば、こんなに文明が発達してるのに天気一つも当てられないなんておかしいと思いませんか?」
先輩A「そうねぇ…自然には勝てないってことかしら?」
純「情けないなぁ、人間。……それよりどうしよう、こんな大降りで」
純「これじゃあ帰りはずぶ濡れ……」
先輩A「泊まろっか」
純「……え? どこにですか?」
先輩A「今連絡入れるから、ちょっと待ってて」
純「はぁ……?」
プルルル、プルルル
先輩A「あっ、もしもし。いきなりごめんね、今近くまで来てるんだけど…」
純(どこだなんだろ。センパイのことだから怪しい所じゃないと思うけど……)
先輩A「うん、分かった待ってる。ありがとね、じゃ」ピッ
先輩A「今むかえに来るって」
純「誰がですか」
先輩A「純ちゃんもよく知ってる人」
純「私も? えーっと……?」
純「とりあえずその人の家に行くってことで?」
先輩A「うん、そう」
純(私の知ってる人……誰?)
先輩A「家がちょうど近くでよかった」
先輩A「……あっ、純ちゃんの方は不都合ある?」
純「私の方は後で親に連絡しておけば大丈夫ですけど」
先輩A「そっか、よかった。純ちゃんも泊まってくれればきっと喜ぶわよ」
純「……で、誰の家に行くんですか?」
先輩A「うーん……秘密、来てからのお楽しみ」
純「えー、教えてくださいよぉ」
先輩A「それより雨、すごいね」
ザァァアアー
純「うわ……どしゃ降り。髪がしおしおになる……」
先輩A「こんなことなら折り畳み傘でも持ってくればよかったかな」
純「で、どこに行くんですか?」
先輩A「やっぱり気になる?」
純「そりゃ気になりますって」
先輩A「じゃあね……ヒントは女の人」
純「女の人……うーん」
先輩A「分かった?」
純「分かりませんよ。女の人はいっぱいいるじゃないですか」
先輩A「じゃあヒントその2は……その人は胸が大きい」
純「胸!?」
先輩A「胸」
純「えぇっと……グラビアアイドルの誰か?」
先輩A「そこまで有名じゃないかな」
純「もぉー、分かんないですよ」
先輩B「ヒントその3、とっても優しくて強いジャズ研の部長です」
純「優しくて強い…? って、部長!?」
先輩B「むかえにきたよ~」
先輩A「ありがと」
純「なんだ…家って部長の家だったんだ。ていうか来るの早いですね」
先輩A「すぐ近くだしね」
純「それより優しくて強いって……」
先輩B「優しくて強いだろ~? 私。はい傘」
純「あっ、どもです」
純(強い…?)
先輩A「家、大丈夫?」
先輩B「へーきへーき」
純(センパイの家に行くのかー……なんか友達と違って緊張する)
先輩B「途中スーパーに寄ろっか」
先輩A「うん、わかった」
――B家
先輩B「はい到着~」
純「……」
純(アパート住み!? しかもちっちゃ!!)
純(なんか…意外な所に住んでた……)
先輩B「今ちっちゃくてボロいとこ住んでると思った?」
純「えっ、いやボロいとは思っていな……」
先輩B「じゃあちっちゃいとは思ったのか~」
純「あっ、いやー、えっとぉ……あははー」
先輩B「ま、実際そうだからいいけど」
先輩A「でも私は独り暮らしする分にはちょうどいい所だと思うけどなぁ、ここ」
純「えっ、部長って独り暮らしだったんですか?」
先輩B「あれ、言ってなかったっけ」
純「言ってないですよ」
先輩B「そっか、まぁいいじゃんそんな細かいこと」
純「そりゃぁ……そうですね」
先輩B「はい、あがってあがって。いつまでも外にいたら風邪ひくよ~」
先輩A「お邪魔しまーす」
純「お、お邪魔します」
先輩B「飲み物、お茶でいい?」
先輩A「うん、ありがと」
純(ここがセンパイの家……なんか色んなものが置いてある)
純(ぬいぐるみとか……仏像……)
純(仏像? なぜ仏像?)
先輩B「さっきから棚をジ~~ッと見て、なんか欲しいものでもある?」
純「あ、いえ。なんでもないです」
先輩B「はい、お茶」
純「センパイの家って、意外と綺麗ですね」
先輩B「意外とかい」
・・・・・
ザアァァアア
先輩B「雨ひどいなぁ~、洗濯物ほさなくてよかった」
純「独り暮らしってことは…家事とかも全部一人でやってるんですか?」
先輩B「いや、メイドさん雇ってやらせてる」
純「えっ!?」
先輩B「嘘だけどね」
純「なんでそんな嘘つくんですか…」
先輩B「とりあえず夕飯でも食べよっか。私たちはカレー食べるけど、純はキュウリでいいよね?」
純「よくないですよ!? 河童じゃないんですから!」
先輩A「料理作るから手伝ってー」
先輩B「はいよ~」
純「キュウリだけはいやですよ」
先輩B「わかってるわかってる」
・・・・・
TV『今日降り出した雨は、明日の午前中まで……』
純「ごちそーさまでした」
先輩A「お皿そこに置いといていいよ。あとで洗うから」
純「はーい」
先輩A「お茶、淹れるね」
先輩B「かあさ~ん、わしにも温かいお茶を~」
先輩A「はいはい」
純「センパイってよく泊まってるんですか?」
先輩A「たまにね、いつもの三人で」
純「へー」
先輩A「純ちゃんは泊まったりしないの? 友達の家」
純「一回…だけですね。確か三年が修学旅行のときに」
先輩A「そっか。楽しいよね、友達の家に泊まるのって」
先輩B「……食べたら眠い。やっぱコーヒー淹れて~」
先輩A「はーい」
先輩B「……」ボケー
純「センパイセンパイ」
先輩B「ん~?」
純「この写真の人って、センパイのお父さんですか?」
先輩B「そうだよ~。お父さんと、お姉ちゃん」
純「へ~…お姉ちゃんいたんですか」
先輩B「いるんですよ」
純「あっ、そうだ。センパイの卒アルとか見せてくださいよ」
先輩B「いいけど~…どこ置いたかな~卒アル」
先輩B「ちょいと待ってて」ガサゴソ
最終更新:2011年07月12日 01:00